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窓際親父はスーパーヒーロー

28.ガネーシャ様

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ピンピンピラピラ、ピンピンピラピン、ピンピンピラピラ、ピンピンピラピラピン
「おー、愛の目覚めー!さわやかな朝だー」
基本休みの日は元気に目覚める...
「今日はやな、ガネーシャ様とお話して久々に街に出よう!りんりんにも会いたいしな」

冬場はいつものTシャツとシャツにジャンバー。
寒くなると重ね着して、暖かくなると脱ぐ。
シンプルな私服である。

三蔵は年に何度か朝食メニューを変えることがある。
いつと言うことはなく、気分で変えるのである。

「今日から朝食メニューを変えるかな?まずはキャベツを千切りにして、塩コショウとカレー粉で味付けをする。次に荒引ソーセージをラップしてチン。ホットドックのパンに縦に切れ目を入れて、キャベツとソーセージを挟んだら、オーブントースターに!焼きあがったらケチャップとマスターとをかけて出来上がり!」
なかなか懐かしいお味である!

昔、海水浴とか行くときに道端で売ってたホットドックをイメージしているらしい。

「昔は魚肉ソーセージだったかな?でも懐かしいんやな、これ!うん、美味い!」
大満足のようだ。

「まだ早いしテレビでも見るかな?岬テレビっと」

「今日は美味しいラーメン屋さん特集でした。続いてはお天気です。杉林さーん」
「はーい、まずは今日のお天気です。今日の岬市は概ね晴れ。北風も穏やかで、日中は過ごしやすいでしょう」
「あれ?みきちゃん?3月からじゃなかったのかな?でもまあ順調なようでなにより。やっぱり可愛いよな」

あとで聞いた話だが岬テレビでは3月にすぐにデビューができるように、早めに内定を出してアナウンサー教育をするらしい。
中でも出来の良い人は今回のようにお天気などから実践を積ませるらしい。

「次にニュースです。賢明なリハビリを続けていた白鳥しのぶさんが、来年2月に行われるオリンピックの予選会を兼ねた全日本女子水泳にエントリーすることが正式に決定しました」
「自信ですか?タイムのほうも依然と変わらない状態にはなってきています。目指すはオリンピックメダルなので、出場するからにはベストタイムを目指しますよ...」
「白鳥さんから心強いメッセージをいただきました。応援したいと思います、頑張ってください!」

「おー凄いな、オリンピックかー。良かった良かった」
やっぱり欲しい情報が流れるミラクルな岬テレビである...ガネーシャ様かな?...

さあ、ガネーシャ様のところに言って来るか...
今日の三蔵はガネーシャ様に聞きたいことがあった。
答えていただけるかはわからないが、自分でも分からないことがたくさんある...

パンパン「いつも刺激のある日常をありがとうございます。今日はガネーシャ様にお聞きしたいことがあります」
本殿でお参りした三蔵は神社の裏手にやって来た。

「ガネーシャ様どうか教えてください」
するといつものようにピーンと張りつめた空気があたりに漂い、祠が現れた。

「ガネーシャ様ありがとうございます。どうしてもお聞きしたいことがあります」
「申してみよ」
「はい、私はガネーシャ様のお力をちゃんと使えてるのでしょうか?」
「ふむ、助けた人間はどうなった?」
「今のところ良くなってるように思います」
「お前はどうだ?」
「私ですか?凄く幸せです」
「それが答えではないか」
「数々のミラクルもガネーシャ様のお力なんでしょうか?」
「それは必然。お前の行いが起こしたもの。行いが間違っていればもうとっくに力はなくなっているはずではないか?」
「そうですね、分かりました。これからも人のために有意義に力を使わせていただきます、どうもありがとうございました」
「そう願う」
そう言うとまたピーンとした空気がなくなり、祠も消えてしまった。

何となくガネーシャ様の言葉は三蔵に自信と責任感を与えた。

街へ出るとそこはクリスマスムード一色。
お店のウインドーはクリスマスの飾りつけ、街にはクリスマスソングが流れている。

「ニューヨークはもっと賑やかなんだろうな?いくこさんも幸せなクリスマスだったらいいな...」

三蔵はどの店に入っても、これなら彼女に似合うかな?とか、喜ぶかな?とかばかり...
まるで片思いの人のように今でも考えてしまうのである。

「こんな風に考えながら街を歩くのも久しぶりかも知れんなー意外に嫌じゃないな」

そんなことを考えながらも行きつくところはカフェリンリンである。

「おっちゃんさーん、いらっしゃい!」
「りんりん、買ってきたよ、うんこケーキ」
「なんやねーん、うんこケーキって!」
下手な関西弁である。

「どれどれ、わーほんとだ、モカクリームぐりぐりのカップケーキじゃない。美味しそう!」
「そやろ?うんこケーキや!」
「もうクリスマスやしね」
「クリスマスはどうしてるの?
「クリスマスライブに行くよ」
「そうか、いいね」
やっぱりみんなクリスマスは予定あるよな...

「今日はソイラテのホットにする。テラス席でもいいかな?」
「良いけど寒いよ」
「うん、わかってる。ちょっと綺麗な夕焼けが見たいからね」
「おー、なんかロマンティックなこと言うじゃないですか?」
「ははは、よろしく」

冗談じゃなく海に沈む夕焼けが綺麗だ。
三蔵はテラスで一番夕焼けが綺麗な席に座った。
海に沈む夕焼け。
そして、その海の向こうにいるそれ以上に美しい女性を想っていたのだ。

「おっちゃんさん、唇紫じゃないですか!凍え死にますよ!さあ早く中入りましょう!」

確かに寒かった...ガタガタ震えている...あほやった...
温かいソイラテをおかわりして、何とか蘇った三蔵であった。

「おっちゃんさん!これ」
「何?あっ、帽子やん」
「そう、頭は他の人より寒いでしょ?だからクリスマスプレゼント」
「わーありがとう!暖かいわー」
「でしょ?可愛い!クリスマスのビリケンさんみたいー」
「そうか?ご利益あるぞー」
もはや嬉しくて怒るというツッコミは出ない。

「ありがとうな、りんりん良いお年をー」
「おっちゃんさんもねー」

何か楽しい日だったな...いくこさんにも一度SNSしてみようかな?
帰り道、何となくそんなことを考える三蔵であった...
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