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第十八話 宿

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「宿、ですか……?」

 あれ、俺が宿の場所を聞いたはずなのに逆に聞き返されてしまった。もしかして俺が思っている宿と、この世界での宿では意味が違うのかもしれない。

 もしかすると物凄い変な意味の可能性もある。そのせいでこんな変な反応になっているのだとしたら早急に方向転換をしなければならない。

「いや、ど、どうにかこのお金で寝泊まりで着る場所が知りたいのですが……」

「あ、はいでしたら、銀壁の牝鹿亭、という旅亭がございます。ゴージャスなおもてなしをしてくださりますし、ただいま稼がれた金額内ちょうどで泊まれますし、何よりも、ここの料理は……」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 え、何? 銀壁の牝鹿亭? 名前からしてどう考えても高いよね? 俺の稼いだ分全部使わせようとしてるよなこの人? そんなその日暮らしは嫌だぞ?

 全然ひもじくて良いから、もうちょっとリーズナブルなところがいいんですけど……

「あら、お客様、更なる上が宜しいのですか? そうなってくると金壁の牡鹿亭というのがございますが、こちらですと少々お値段が

「ち、違います! あー、その今回の稼ぎの半分、いやもっと少なくてもいいので、お安く泊まれてそこそこサービスも充実している宿ってないですか?」

 ってか、最初は宿って言葉が通じるかどうかを心配してたのになんで、こうなったんだ。

「あ、そうでしたか。お客様はここらのことをよく知らないのですね。8000Gでしたら大抵の宿は泊まれますよ? それこそ先ほど申し上げたこの都最大の金壁の牡鹿亭以外は余裕です。もしご予算を教えていただければ、それに合った宿を紹介しますよ?」

 あ、そういうことか。俺がこのお金でっていうもんだから、受付の人は困惑して聞き返し、挙げ句の果てに超高級宿を勧めるに至ったのか。

 なんだよ、全部俺が悪いじゃねーかよ。なら仕方がない、ってかそりゃそう勘違いするわな、うん。

「す、すみません。で、では800Gほどでいい感じの宿が良いですね」

「わかりました。800Gですね、でしたら白の兎亭、がよろしいかと思われます。そこは料理も美味しく、寝床もしっかりとしているのでちゃんと寛げるかと思いますよ、もし、1000Gまで出されてもいいのでしたら、山吹の象亭なんかもいいのですが……」

 おいおい、ここの宿は全部、~色の動物亭っていうフォーマットなのかよ。まあ、レベルがわかりやすいんだろうな。でも、最上級の奴は金に壁までついてたぞ? レベちすぎんだろ。

 だが、そうなってくると気になってくるものもあるよな。

「すみません、因みに一番お値段が安い所ってどこになるんでしょうか?」

 受付の人、ごめんなさい! ただただ名前が気になるんです! 泊まる気は無いのですが、許してください!

「えーっと、灰のゴブリン亭というのがございますが、正直あまりお勧めはしかねます……」

 そ、そうですか……もう、動物ですらなくなるんだな。ゴブリンって魔物だろ、おい。
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