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第二話 火起こし
しおりを挟むふぅ、なんとか初日を生き残れたようだな。バケツでイノシシき立ち向かった経験のある人間はこっちとあっちの世界を含めても俺くらいだろう。
「だぁーー! しんどっ!」
そう言ってその場に大の字で寝転んでみた。
グーーーー
「あ、」
腹減った。腹減った、腹減った? ん、やばくね? 俺どうやって食事するんだよ、人間飯を食わないとやっていけないぞ? あと水、あーどうしよ、なんなら寝床すらない。
俺はこの異世界にクソスキルしばりというだけでなく、サバイバルまで強いられるのか? 嫌だ、嫌だぞそんなのは。サバイバルなんて見るのは好きだがやるとなると話は違う。それに生死がかかってるとなると尚更だ。
グーギュルギュルギュル
やばい、空腹がマックスになってきたぞ。とりあえず何か食わねば、何かないか何か……
「……あ、」
イノシシ、イノシシがいるじゃん。頭を潰されて無残な姿になってはいるが、イノシシはイノシシだ。つまり肉だ、食える。
そう考えてみると、さっきまで俺の命を脅かす存在から、急に食物提供者の様に思えてきた。ヤバい、人って空腹が極まってくると余裕で野生に戻れるんだな。今すぐにでもかぶりつきたくなってきた。
しかし、待てよ、このままでは流石に食えなくねーか? 流石に流れてる血をみると理性が戻ってくるな。生肉は空腹が満たされてもお腹を壊して第二の人生終了だな。
ってことはどうにか調理まではいかなくとも処理をしなければならないのだが……
火が欲しい。
火があれば殺菌できるし大抵のモノは食えるだろ。どうにか火を生み出せねーかな。木の棒をグリグリしてもできる気しないよな。どうしたもんかな……
「あ、そうだ」
俺にはガチャというスキルがある。火を起こすという俺の戦闘に対して使えねーかな? やるだけやってみるか。
「【ランダム武器生成】」
『ランダム武器:くまのぬいぐるみを生成しました』
はい、使えませんでした。なんだよくまのぬいぐるみって、せめて武器をよこせよ武器を。火を起こすことが戦闘に含まれるなら俺の気持ち次第で戦闘かどうかが決まるのか。
それよりも、ぬいぐるみなんて火起こしに一切使えねーじゃねーか、まじでクソスキルだな。くそ、こつなったら意地でも火をつけてやるからな。
「お、これ良さげ!」
俺はいい感じの木の板の様なものをみつけた。それをそこら中に落ちている木の枝を拾ってきてはグリグリとやっていた。もう、とっくにお腹の限界はきている。
「おりゃああああああああ」
とから元気で声を出して木の枝を回してみても虚しく少し削るだけだ。俺ってこんなに力弱かったっけ?
ポキッ
そして、グリグリしてると必ず途中で木の枝が折れてしまうのだ。そしてまたグリグリ、グリグリ、グリグリ。もう、どれだけグリグリしていただろうか、気がつくと、日が傾き始めていた。どうやら、かなりの時間が経っていたようだ。
よし、もうあと一回グリグリして無理だったら生のまま食おう。そうしなきゃ死んでしまう。
「おりゃああああああああああ!」
全力を出した。今までにないスピードと回転数、そして気合、それらをもって臨んだのだが……無理だった。そして、
「グルルルルるる」
今までとは毛色がかなり異なる新たな音が俺の耳に届いた。
おいおい、マジかよ……
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