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14話 媚び
しおりを挟む『て、天星竜様! もしかしてこの僕を助けてくれたのですか?』
『ええい、違うわい。お主の声がうるさすぎたのじゃ。後は、その周りの奴らもな。儂はただ儂の寝る環境を整えただけじゃ。お主の為では無いからな』 天星竜様がどこまで本当のことを言っているか僕には分からない。もしかしたら、本当に僕のことひいては僕の魔導具のことを寝床としか思っていないのかもしれない。
それでも僕は天星竜様に助けられたのは事実だ。そしてその事実だけあれば十分だ。それに、僕は天星竜様が優しいお方であることも知っている。だから感謝しかない。
そして諦めなくて良かった。いくら天星竜様がついてくれているとは言え、流石に勝手に魔法なんかを使ってしまったら怪しいどころの騒ぎじゃなくなるからね。
でも、この諦めずに済んだのも正直、天星竜様のおかげだ。心のどこかで頼っていたんだろうな。これからはもっと強くならないと。天星竜様の寝床くらいは安静に保てるようにね。
「き、貴様、なんだその魔法は……! 平民如きが調子に乗るなよ、俺様の本当の力を見せてやるっ! くらえ、漆黒の
「そこまで! 一体君たちは何をしているんだい? 今から試験というのに、そんなにはしゃいじゃって」
声の方を向くといつからいたのか、一人の女性が立っていた。多分、この学園の先生なんだろう。気品もあって、何より強そうだ。
「す、すみません」
僕は反射的に謝っていた。これは親方の教育の賜物なんだろうけど、悪い方向には働かないと信じたい。
「ふうん、ま、一応言っとくけど、もしこの学園に入ったら生徒同士の無断の決闘は禁止されているからね。だからといって今しなさいってわけでもないけど。取り敢えず、君たちの顔は覚えた、もし学園に入ったらそれなりの覚悟をしておくんだね」
謝った僕の方を見て、何か反応を示してたんだけど、それがなんなのか僕には分からなかった。何かあったのだろうか。
「おい、貴様! 今日の所は見逃してやる、次は無いと思え。それに、平民は上の者に媚びへつらうのが得意なようだな。下の者は贔屓して貰うために遠慮なくできるのは羨ましいなぁ。まあ、私は贔屓してもらおうとすら思わないがな。ふんっ」
……なんだったのだろうか。嵐のような人だったな。突然きて大迷惑を引き起こして急に去っていく。まあ、嵐は何かしらの役には立っているんだろうけど、この人はそうじゃなかったから、嵐以下ってことになるね。
まあ、嵐って強くてかっこいいイメージだから、あの貴族には似合わないイメージだね。
それよりも、さっきの女の先生の反応は僕が媚を売っていると思ったということだろうか? 僕としては半ば反射的な行動だから、本当にそう思われているのなら訂正したい所だけど、もうどこかに去った後だから厳しい。
それよりも今は、学園への入学試験を突破することだけを考えなくちゃね。
絶対に合格して、僕は強くなるんだ!
「では、入学試験受付を始めます、こちらに並んでください」
よし、ここからが僕の逆転の始まりだ!
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