隊長さんとボク

ばたかっぷ

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四話

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ボクが隊長さんと初めて会ったのは、まだボクがシーグさんの所に行く前だった。

同じ年に生まれた仲間はみんな里親のもとに行ってしまって、ボク一人だけ神殿に残っていて。神官さまや武官さまや貴族の人たちはボクを見ると、あからさまに顔をそらした。

小さかったボクにも自分が仲間とはなにか違うのは分かってたし、だからボクを引き取る人が現れないんだってこともなんとなく分かってた。

でも違うことがどうして悪いのかなんて分からなくて、独りぼっちなのが寂しくてボクは神殿を抜け出しては聖母樹のもとに行っていた。聖母樹の下にいるとなんだか落ち着いて、寂しい気持ちが少しだけ楽になったから。

ボクは聖母樹を母さまの樹って呼んで、いつもそこで丸くなっていた。聖母樹と神獣の樹には、神獣と神官以外は限られた人しか近付けない決まりだから、その日も安心して眠っていた。

ボクの頭を大きななにかが撫でている感触に目を覚ます。
ゆっくりと開いたボクの目に飛び込んで来たのは、武官の着る制服だった。

あれ…、しかもボク抱き抱えられてる?

温かい膝の上に抱えられ、ボクの背中を大きな手が何度も何度も優しく撫でている。

「きゅ…きゅう~?(え…なにどうしたの?)」

「すまん、起こしてしまったな」

優しいテノールの声。

「あまりに手触りが良いのでつい触れたくなってしまってな、昼寝の邪魔をしてしまってすまなかった」

この人、ボクを見ても目をそらさない…。それにボクの毛並みが気持ちいいって言ってくれた。今までボクの毛並みを見た人はみんな、汚ない色だって言って進んで触る人なんていなかったのに。

「きゅう~(嬉しい…もっと撫でてっ)」

ボクは鼻先をその人の胸元に擦り寄せた。

「ん…?怒ってないのか?」

「きゅっ!(うんっ嬉しいの)」

ボクがすりすりすると、その人はいっぱい撫でてくれた。

うわあ!なんて気持ちいいんだろう。なんてあったかいんだろう。

みんなが見ない振りをするボクを嫌がる様子もなく、こんなに幸せな気持ちにしてくれた。


この人はいったい誰なんだろう…。



それからもボクが母さまの所で寝ていると、いつの間にかその人は現れてボクを抱っこして、ずっと撫でてくれた。

その人に撫でてもらうと、神殿で独りぼっちなことも周りの人が知らんぷりするのも里親が現れないことも、ぜんぶ大丈夫な気持ちになった。

そうしているうちにシーグさんがボクを引き取ってくれることになって、神殿を出て行けるのは嬉しかったけど、その人に会えなくなることだけは悲しかった。

だけど、その人はシーグさんの幼友達で、度々お家に遊びに来てくれたから、ボクはシーグさんとその人…隊長さんと三人で、スッゴくスッゴく楽しくて幸せな生活を送ることが出来たんだ。

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