ムク犬の観察日記

ばたかっぷ

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二冊目

にじゅうなな•むく

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宍倉くんの瞼が開いて、綺麗な紅茶色の瞳が僕を見上げた。

「ん…何時?」

慌てて辺りを見回すと、ベッドサイドの時計が五時二十分を示していた。

「ご…、ごじ過ぎ、だよ?」

今の状況に戸惑う僕とは対照的に普段通りの宍倉くん。

「二時間くらいかあ、結構寝たね。頭は痛くない?」

…頭?

「う、うん」

「そう良かった。喉は渇いてない?何か取ろうか?」

「あ、あの宍倉くん。…どうして僕達こんな所にいる…の?」

おそるおそる尋ねる。

「どうしてって…、河合のお願いを聞いたからだけど?」

…僕のお願い?…え?僕何か言ったっけ…??そう言えば、デザート食べてた辺りからの記憶がない…。嘘…っ、どうして…?

「…もしかして、覚えてない?」

「ぼ、僕なにかしちゃった…?」

何をしたの僕、何があったの?どうして覚えてないの…?不安で泣きたくなってきた僕の頭に、ふわりと何かが触れる感触がした。

顔を上げると宍倉くんが、大きな手で僕の頭を撫でながら、優しい眼差しで見ていた。

「大丈夫、何も変な事なんてしていないよ。ホラ、河合サバラン結構食べたでしょ?あれに入ってたお酒に酔っちゃったみたいだね」

サバラン…!あ、あれお酒が入ってたんだ。全然気付かなかった…。パティシエを目指す者としてそれって情けないよ。

「それで河合が寝ちゃったから、部屋を取ったんだよ」

自分の情けなさに落ち込む僕に、耳を疑う事を宍倉くんが言った。

「…え、部屋をとったって」

さっき宍倉くんは、僕のお願いを叶える為とかって言わなかった?まさか僕、ここに泊まりたいなんて言ったりしたんじゃ…。

このお部屋って、テレビとかで観て一度は泊まってみたいねって、よくいっくんとにこちゃんと話したりしてた、スイートルームってお部屋なんじゃ…。

確か滅茶苦茶値段が高いんじゃなかったっけ…?どっ…、どうしよう!僕お金ちょっとしか持ってきてないよ。

たとえ宍倉くんが噂通りにお金持ちのお家の人だとしても、宍倉くんに出して貰うなんて絶対ダメ!


どうしたらいいの…?

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