機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

ア=ズライグ③

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「アデル様……後はゆっくりとお休みくださいませ……!」

 ハンナさんが嗚咽を漏らしながら、僕を優しく抱き締める。
 ソフィアも、涙を零しながらも必死に僕に【神の癒しキュア】をかけてくれていた。

 そんな僕達を、カルラは茫然と眺め、ただ唇を噛み締めていた。

 だけど……僕はまだ、終わっていない。

「あつ! アデル様!?」

 僕はハンナさんの制止も聞かず、積まれた魔石と全ての魔法陣に両手をかざす。

 さあ……今度こそ本当に、これで最後、だ……。

「——【設計デザイン】!【加工キャスト】!【製作クラフト】!」

 僕は大量の魔石と魔法陣を、極限まで圧縮する。
 どこまでも……どこまでも……!

「ギ……ギギ……!」
「アデル様!」

 ハンナさんが僕を後ろから抱き締めた。

 ああ……ハンナさん……あったかい、なあ……。

 圧縮して、圧縮して、圧縮して……大量にあった魔石は、全部僕の掌に収まってしまっている。

 僕がゆっくりと手を開くと、そこには。

「虹色の、弾丸……?」

 そう……僕が作ったのは、圧縮に圧縮を重ね、この世に存在する全属性の魔法陣を掛け合わせた、途轍もない魔力を包含したたった一つの弾丸・・・・・・・・

「ハン……ナ……さん……」

 僕はハンナさんの手を取り、その弾丸をその掌に乗せた。

「ア、デル……様……!」
「愛……して、ま……す……」

 僕は……最愛の人をこの目に焼き付け……その目を、閉じた……。

 ◇

■ハンナ視点

「っ!? アデル様!? アデル様あっ!?」

 アデル様は最後に微笑んで、私の胸に前のめりに倒れ込む。

 だけど……。

「息、してない……?」

 アデル様の息遣いが、その心臓の音が、何も聞こえない!? 感じられない!?

「そんな! アデル様! アデル様あ!?」

 私はアデル様の身体を何度も揺する。

 だけど、アデル様は何も言ってくださらなくて。
 だけど、アデル様はあの微笑みを見せてくださらなくて。

 アデル様……は……!

「っ! どきなさい!」
「あっ!?」

 突然カルラが私を突き飛ばし、アデル様を抱え込む。

「アデル! 起きなさい! 私が……この私が、アンタが勝手に死ぬことなんて許さないんだから!」

 カルラは必死で何度も胸を押しながら、人工呼吸を繰り返す。

「ソフィア! アンタも[聖女セイント]だったら、そんな呆けてないでアデルを救いなさいよ!」
「あ、ああ……は、はい! 【神の癒しキュア】!」

 カルラの言葉で我に返ったソフィアが、【神の癒しキュア】をアデル様にかけた。

 すると……ソフィアの鼻から血が流れ出した。

「あ、あなた……」
「……アデル、様が……限界のその先を超えてしまわれた、のです……だ、だったら、この私が限界を超えないで、どうやって、アデル様を救おうと、言うのです……か……!」

 ソフィアはただアデル様を見つめ続け、その限界を超えた能力を解き放つ。

 その時。

「っ! アデル! あと少しよ! 頑張りなさい!」

 カルラが必死にアデル様に呼びかけ、心臓に耳を当てた。

「……このバカ」

 そう呟くと、カルラがぽろぽろと涙を零し始めた。

「ア、アデル様は……アデル様はあ……?」
「……還って、来たわよ……!」
「あ……ああ……!」

 アデル様……よか……た……!

「うああああああああああああん……っ!」

 気がつけば、私は子どものように大声で泣いた。
 フギンとムニンをその手に取り、力強く立ち上がりながら。

「……どこへ……行くの……?」

 カルラがアデル様お抱き締めながら問い掛ける。
 だけど、行先は決まっている。

 向かう先は“神の眷属”。

 私は……アデル様が命を振り絞って【製作】された、この弾丸で。

 ——“ア=ズライグ”を殺す。

 ◇

■ライラ=カートレット視点

「あは♪ ようやく姿を見せましたか」

 アデル様によって幾重にも覆われたその拘束を破り、“ア=ズライグ”がその姿を現す。

『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』

 蜥蜴とかげの表情なんて分からないけど、“ア=ズライグ”アデル様に束縛されて怒り心頭だということは理解できた。

 だけど。

「あははははははははははははは! 怒っているのは私のほうなんですよ!」

 蜥蜴とかげの分際で!
 オマエのせいで、アデル様はまた傷ついて! その生命を削って!

「あは♪ これでアデル様にもしものことがあってみろ! オマエの肉片残らず、切り刻んで魚の餌にしてやる!」
『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』

 “ア=ズライグ”は、その標的を私に定め、ものすごい速さで襲い掛かってきた。

 ——キイイイイイイイイイイイン……!

 私はクロウ=システムを発動させ、“ア=ズライグ”の攻撃をかわし、すれ違いざまにその赤い鱗目がけて鎌を振り下ろす。

 ——ザシュ。

『ゴアアアアアッ!?』
「あは♪ さすがはアデル様のお作りになった鎌です! 蜥蜴とかげの鱗も、この武器の前には大して役には立たないみたいですね!」

 私は“ア=ズライグ”に向かってニタア、とわらうと、“ア=ズライグ”は私から離れようと上空へと飛んだ。

『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』

 そして、私を見据えながら“ア=ズライグ”は威嚇するように咆哮を繰り返す。
 “ア=ズライグ”からすれば、上空に逃げてしまえば攻撃も当たらず、大したことはないと考えているのだろう。

「あはははははははははははは! だから蜥蜴とかげだというのですよ! 私の……私のアデル様が、そう易々とオマエを逃すと想っているのか!」

 アデル様……今こそ、アデル様が命を懸けて授けてくださったこの“翼”で、あの“ア=ズライグ”を討つ!

 ——キイイイイイイイイイイイン……!
 ——キイイイイイイイイイイイン……!

 私の背中に背負う一対の漆黒の“翼”から、青白い炎が射出される。

 そして。

『ッ!?』

 ——ザシュ。

 一気に上空を飛行し、私は“ア=ズライグ”の身体を切りつけた。

「あは♪ さあ、蜥蜴とかげの解体ショーの始まりですよ!」

 私は、口の端を三日月のように吊り上げた。
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