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若かりし頃の一匹狼
しおりを挟む数十年前のハインドの街、とある日のギルド本部内にて。別の街から数人の隊員がこの街に赴任して来た。その中には若かりし頃のライノ・ルオッカの姿があった。
「本日より、ここでお世話になる事となりました“ライノ・ルオッカ”と申します!以前のギルドでも山道での任務を多くこなしておりましたので、その経験を活かせればと思います。よろしくお願いします!」
大きくハッキリとした声で自己紹介を行うライノに対し、ハインドのギルドの隊員達も大きな声で返事を返した。
当時のハインドのギルドは人員不足になっており、ライノが招集させられた今回も、本来であればもっと多くの隊員がやって来る予定だったのだが、回帰の山を担当出来る人材が確保しきれなかったようだ。
通常の山とは大きく異なる性質を持つ回帰の山の噂は他国にも広く知れ渡っており、そこの調査を担当させられるハインドのギルドへの移動を自ら望む者は殆どいなかったが、その分生活や金銭面での優遇はされていた。
そして何より、ハインドの街での経歴が長ければ長いほど、ギルド内での出世にも大きな影響があると言われており、それらを目的に志願する者も中にはいたが、これまでの隊員の多くがどうなったかの記録を見れば、結果は想像するに容易いだろう。
ライノもまた貧しい国の出で金には困っていた。故に冒険者ギルドの隊員になったのも、初めから回帰の山での調査をする為に、別のところで下積みをしてその資格を獲得していたのだった。
新しい仲間の到着に期待を寄せるギルド内の様子を、遠くから眺める一人の男がいた。それは当時の調査隊の中でも、他の者達とは馴染もうとせず一匹狼のように振る舞っていた問題児である“ミネ“という男だった。
ギルドに到着して最初にライノが学んだのは、ギルドと調査隊の確執についてだった。彼がハインドの街に来た時には、既に調査隊の肩身は狭くなっており、ギルドに回帰の山の調査権があったという。
調査隊の記録もこの時点ではギルドが管理しており、ハインドの街の住人であれば自由に目を通すことが出来た。しかし、そこには未だ回帰の山の謎についての答えは記されていなかったという。
ギルド独自の調査だけでは危険だと提案するライノは、調査隊との協力を申し出るがギルド側はこれを拒否。無論、調査隊も彼の申し出を受け入れる事はなく、冷たく追い返すだけだった。
ハインドの街に来て何度目かの調査を行うライノとギルドの隊員達だったが、安全を第一に考えるが故に、光脈にはあまり近づこうとしないギルドのやり方にモヤモヤしていたライノは、それ以降も少数精鋭で調査を行う者達に個別で頼みに行くなど、精力的に山の謎を解き明かす為に尽力していた。
しかしその行動がギルドの上層部の目に止まろうかという頃、ライノは回帰の山に入った際にモンスターに襲われる当時のミネを救出する。
「ご無事か!」
「ちっ・・・!余計なお世話だ、ギルドの新人」
「はは、ご存じだったか。よくギルドの動向を観察していらっしゃる」
「なッ・・・!おちょくってんのか!?お前ェッ!!」
当時のミネは、今シン達がハインドの街にやって来た時に居たミネよりも若く、口調もその頃のギルドと調査隊の関係性を表しているかのように荒々しかった。
「時に貴方は、もしやミネさんでは?」
「あ?何だ、お前も随分とこっちのこと観察してやがるじゃねぇか」
「そりゃぁそうだ。今のギルドのやり方じゃ、いつまで経っても真相には辿り着けない・・・」
「・・・・・」
ギルドのやり方に不満を漏らすライノの愚痴を、若かりしミネはただ黙って聞いていた。同じ組織のはみ出し者同士、何か感じるものがあったのか、ライノと一緒にいる時はミネも何処か他の者といる時とは違い、まるでカガリといる時のような穏やかさを見せた。
「ってな具合で。あれじゃ結局いつまで経っても進展なんてないのにッ・・・!」
「だが、奴らのやり方は組織をやりくりしていく上では、何も間違っちゃいねぇよ」
「けど!それで調査が長引けば、それだけ多くの犠牲が・・・」
「犠牲・・・か。そんな言われ方されちゃぁ、居なくなった連中も報われねぇな・・・」
「え?いや、しかし・・・」
するとミネは突然彼の話の途中で、森の中へと歩みを進めようとする。どこへ行くのかと尋ねると、ライノの覚悟が本物であるのかを確かめると言って、何処かへ案内し始めた。
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