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人ならざる反応
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穏やかではないそのこうけいに、一向の緊張感は高まる。何が起きたのかと周囲を見渡すシン達と、早速周辺の生物の気配と精気の流れを探すケネト。特に慌てる様子のないアクセルらから、既に彼らはこの場が荒らされたようになっている事を知っているかのようだった。
「アクセル、何故ここはこんなに荒らされているんだ?今までのところは荒らされてなかったのに・・・」
「単純に整備されていないからってのもある。こういった開拓の山道ってのは、到達点に近付けば近づくほど、目印が付けられた当時から放置されてる事も少なくない」
「誰も直しに来ないのか?」
「わざわざ整備された登山道があるのに、こんな山道を好き好んで登る奴がいると思うか?ここは俺らみたいな地理に詳しい依頼請負人みたいな連中しか使わない。まぁ、整備された登山道が壊されたら話は別だが」
人の気配が滅多に近づかないという奥地に行けば行くほど、そこに住む生物やモンスターも活発になり、その中で生じる争いの中でこういった人工物なども壊れてしまうようだ。
それを危険を顧みず、いちいち直しに来る者も向かわせるような真似も誰もしないだろうとアクセルは言う。だが彼らのように、たまたま依頼で近くに寄った者達が善意で修理する事もあるようだ。
「しかし今回は捜索の道具しか持ち合わせてねぇし、今回はこのまま・・・?」
すると、ツバキが自身の荷物から道具を取り出して、折られた目印を簡易的に修復し建て直した。ケネトが周囲の感知を終えるまでの間に、手際よく進めたツバキ。
「おいおい、また直ぐに壊されちまうんだから」
「いいじゃねぇか。どうせ暇なんだし、だったら俺達が戻って来れるようにする為にも、今だけでも起こしておこうぜ!」
「変わった奴だな。それにしても器用だな坊主」
「坊主はやめろって!俺ぁツバキだって言ったろ」
アクセルはツバキの手際を見て、さぞかし彼の師匠は教え方が上手かったのだろうと褒めると、思いの外ツバキは満更でもないといった様子を見せ、ツバキがウィリアムの事について語り出そうとしたところでケネトが周囲の様子を探り終えた。
「周りに大きな反応はない。モンスターはいるようだ大した数でもない」
「精気はどうだ?」
「まだ感じられないな。恐らくもっと奥に向かったんだろう。それと・・・」
ケネトは周囲を探る中で気になる反応を見つけたのだと言う。勿体ぶるケネトに何があったのかと尋ねると、どうやら精気の流れ自体は周辺にはないのだが、精気の反応と同じものを宿した何かが近くにあると言うのだ。
感知系のスキルを得意とするケネトですら、その反応が生物なのか物体なのか、或いは空間なのか。その一切の詳細が掴めないのだと語る。そういったものは良くあるのかと尋ねるシンだったが、アクセルは無言で首を横に振った。
「彼らでも分からない反応って・・・。せめてそれが生き物なのか物質なのかだけでも分かればいいんだけどね」
すると、六号目に到着してからというものの、特に口を開く事なく珍しく大人しかったミアが、自身の精霊であるウンディーネに、ケネトと同じく周囲の気配の感知を任せてみたところ、生命体とも概念とも言い難い反応を同じく見つけていたようだ。
「どうやら精霊でも詳しくは分からないらしい。どうせ当てもなく探索するんだ、目的があった方がいくらかマシってもんじゃないか?」
「あぁ、取り敢えずその反応を追ってみよう。どうだろうアクセル」
「おいおい、俺だって何も反対なんかしてねぇぜ。モンスターに襲われて時間も食っちまったし、早いとこその反応とやらのところへ行くとするか!」
一行は再び目印のところへ戻って来れるように、新たに分かりやすい明かりを灯した目印を設置し、周囲を片付けて野営の準備を施し謎の反応の元へと向かう。
その道中、何度か五号目で襲われたモンスターと同じ精気を纏うモンスターに襲われながらも、特に危なげなくその不可解な反応のある場所にやって来ると、そこにはとある人物が横たわっていた。
「人だ!人が倒れてるッ!」
先頭を歩いていたシンとアクセルが、地面に倒れる人物に駆け寄って行く。
「そんな・・・人の反応なんて間違える筈は・・・」
ケネトは自分のスキルに反応しなかったその人物を見て、頭が真っ白になっているかのように唖然としていた。それはミアの精霊ウンディーネも同じだった。
だが彼女の場合は、その場でその人物を目の当たりにした時、何故その人物が感知に人として反応しなかったのかを理解した様子だった。ウンディーネが何やら納得している横で、倒れる人物に見覚えがあるのか驚いた表情を見せたのは、ミアとアカリだった。
「そんな・・・何で“彼”がこんなところに・・・?」
「居なくなったミネを探しに来たんだろう。だがあの時はただの少年のように見えたが・・・。一体何があった?」
謎の反応があった場所に居たのは、ハインドの街で現在も調査隊として活動しているミネの弟子で、カガリという少年だった。その姿は薄っすらと見える光の粒子を纏って倒れていたのだ。
「アクセル、何故ここはこんなに荒らされているんだ?今までのところは荒らされてなかったのに・・・」
「単純に整備されていないからってのもある。こういった開拓の山道ってのは、到達点に近付けば近づくほど、目印が付けられた当時から放置されてる事も少なくない」
「誰も直しに来ないのか?」
「わざわざ整備された登山道があるのに、こんな山道を好き好んで登る奴がいると思うか?ここは俺らみたいな地理に詳しい依頼請負人みたいな連中しか使わない。まぁ、整備された登山道が壊されたら話は別だが」
人の気配が滅多に近づかないという奥地に行けば行くほど、そこに住む生物やモンスターも活発になり、その中で生じる争いの中でこういった人工物なども壊れてしまうようだ。
それを危険を顧みず、いちいち直しに来る者も向かわせるような真似も誰もしないだろうとアクセルは言う。だが彼らのように、たまたま依頼で近くに寄った者達が善意で修理する事もあるようだ。
「しかし今回は捜索の道具しか持ち合わせてねぇし、今回はこのまま・・・?」
すると、ツバキが自身の荷物から道具を取り出して、折られた目印を簡易的に修復し建て直した。ケネトが周囲の感知を終えるまでの間に、手際よく進めたツバキ。
「おいおい、また直ぐに壊されちまうんだから」
「いいじゃねぇか。どうせ暇なんだし、だったら俺達が戻って来れるようにする為にも、今だけでも起こしておこうぜ!」
「変わった奴だな。それにしても器用だな坊主」
「坊主はやめろって!俺ぁツバキだって言ったろ」
アクセルはツバキの手際を見て、さぞかし彼の師匠は教え方が上手かったのだろうと褒めると、思いの外ツバキは満更でもないといった様子を見せ、ツバキがウィリアムの事について語り出そうとしたところでケネトが周囲の様子を探り終えた。
「周りに大きな反応はない。モンスターはいるようだ大した数でもない」
「精気はどうだ?」
「まだ感じられないな。恐らくもっと奥に向かったんだろう。それと・・・」
ケネトは周囲を探る中で気になる反応を見つけたのだと言う。勿体ぶるケネトに何があったのかと尋ねると、どうやら精気の流れ自体は周辺にはないのだが、精気の反応と同じものを宿した何かが近くにあると言うのだ。
感知系のスキルを得意とするケネトですら、その反応が生物なのか物体なのか、或いは空間なのか。その一切の詳細が掴めないのだと語る。そういったものは良くあるのかと尋ねるシンだったが、アクセルは無言で首を横に振った。
「彼らでも分からない反応って・・・。せめてそれが生き物なのか物質なのかだけでも分かればいいんだけどね」
すると、六号目に到着してからというものの、特に口を開く事なく珍しく大人しかったミアが、自身の精霊であるウンディーネに、ケネトと同じく周囲の気配の感知を任せてみたところ、生命体とも概念とも言い難い反応を同じく見つけていたようだ。
「どうやら精霊でも詳しくは分からないらしい。どうせ当てもなく探索するんだ、目的があった方がいくらかマシってもんじゃないか?」
「あぁ、取り敢えずその反応を追ってみよう。どうだろうアクセル」
「おいおい、俺だって何も反対なんかしてねぇぜ。モンスターに襲われて時間も食っちまったし、早いとこその反応とやらのところへ行くとするか!」
一行は再び目印のところへ戻って来れるように、新たに分かりやすい明かりを灯した目印を設置し、周囲を片付けて野営の準備を施し謎の反応の元へと向かう。
その道中、何度か五号目で襲われたモンスターと同じ精気を纏うモンスターに襲われながらも、特に危なげなくその不可解な反応のある場所にやって来ると、そこにはとある人物が横たわっていた。
「人だ!人が倒れてるッ!」
先頭を歩いていたシンとアクセルが、地面に倒れる人物に駆け寄って行く。
「そんな・・・人の反応なんて間違える筈は・・・」
ケネトは自分のスキルに反応しなかったその人物を見て、頭が真っ白になっているかのように唖然としていた。それはミアの精霊ウンディーネも同じだった。
だが彼女の場合は、その場でその人物を目の当たりにした時、何故その人物が感知に人として反応しなかったのかを理解した様子だった。ウンディーネが何やら納得している横で、倒れる人物に見覚えがあるのか驚いた表情を見せたのは、ミアとアカリだった。
「そんな・・・何で“彼”がこんなところに・・・?」
「居なくなったミネを探しに来たんだろう。だがあの時はただの少年のように見えたが・・・。一体何があった?」
謎の反応があった場所に居たのは、ハインドの街で現在も調査隊として活動しているミネの弟子で、カガリという少年だった。その姿は薄っすらと見える光の粒子を纏って倒れていたのだ。
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