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規格外のモノ
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シンが目を覚ます少し前。ツクヨ達が駆け付けた音に驚き、逃げるように山の奥へと向かう人影。
アクセルはケネトの方を振り向くと、二人は何かを察したように頷く。するとアクセルはその場でツクヨと共にシンの目覚めを待ち、ケネトは逃げた人影を追い始めた。
「え?」
驚きと共に困惑するツクヨ。
「大丈夫だ、アイツは迷わない。ただしここからそう離れなければだが・・・。それよりアンタはソイツを診てやれ」
アクセルはツクヨにシンの心配をするよう促す。彼の言っていた“ここから離れなければだが”というのは、ケネトはアクセルに人影の追跡を任された時に、アクセルらのいるこの地点に、自らの魔力で目印を作り出していた。
それはケネト自身と目印を魔力の糸で繋ぎ、ある程度の範囲内であれば目印の置かれた位置を決して見失うことのない、捜索をする上では非常に役に立つ能力だった。
だがこれはケネトのクラスによる能力ではなく、誰でも習得が可能なスキルのようだ。故に難しい魔力の制御や強力な力などは必要なく、覚えて仕舞えばアカリやツバキにも習得が可能なようだ。
それを自らの修練で精錬し、距離を伸ばしたものらしい。人影を追って真っ暗な森の中を駆け抜けていくケネト。だが間も無く、先程作り出した目印の範囲の限界を迎えそうな距離まで来てしまった。
まだ人影が何処まで逃げて行ったのか、果たして方向を変えていないのか分からない。そんな時、ケネトは地面に落ちている何かを見つける。それは明らかに人工物であり、森のものにしては不自然だったが故に、視界に映った瞬間にケネトの気を引くものとなった。
「何だ?何か落ちている」
すっかり人影を見失ってしまったケネトは、仕方がなくそこで追跡を終了する事にした。ケネトは落ちていたその何かを拾い上げる。どうやら何かのカードのような物のようだ。明かりで照らしてみると、それはミネの調査隊である事を証明するライセンスのカードだった。
「ミネのライセンスだ。じゃぁあの人影は・・・」
一先ずケネトは、その拾ったミネのライセンスを手にアクセルらの居る場所に残した目印を目指して戻る事にした。
一方、ツクヨに抱えられ意識を取り戻したのか、シンがツクヨの呼び掛けに反応する。
「シン!しっかり!」
「意識は戻ったようだな。後は自我があるかどうかだが・・・」
「どういう事です?・・・あ!」
シンの身を案じていたことで忘れてしまっていたようだが、ツクヨは彼の言葉の意味を考え、それが何を言っているのかについて察しがついたようだった。
北の山で意識を失う、自我を失うということは、それ即ち山の光脈が放つ強い精気に当てられてしまったとみて、ほぼ間違いないだろう。自ら身体を動かして意識を戻したことに安心していたツクヨだったが、まだ気は抜けない。
このまま目を覚ましたシンが自我を持っていない状態だったら大変な事になる。それというのも、一度自我を失ってしまった者は、後遺症が残る者も少なくないのだと言う。
そしてゆっくりと目を開けたシンは、ツクヨの呼び掛けに反応して彼の顔を見ると、その後周りを見渡してまるで何処か別の場所で眠っていたかのように目を覚ます。
「ここは・・・俺は一体・・・?」
「シン!しかりしてくれ!俺が誰だか分かるか!?」
一人称が変わっている事から、ツクヨの焦りが窺える。しかしそんな彼の心配を振り払うように、シンは彼の名と自分が何者であるかをはっきりと覚えていたようだ。
「ツクヨ・・・悪い、心配かけた・・・」
「いいんだ、そんな事は。意識はしっかりしているかい?」
「あぁ、大丈夫だ。確か俺は森の奥にいた人影を追って忍び寄ったんだが、捕えようとスキルを発動したら急に真っ暗な空間に飛ばされて・・・」
意識を失っている間に体験した話を口にするシン。その内容はアクセルも聞いた事のない話だったが、内容的にシンの見たという黄金に輝く川というものこそが、この回帰の山という土地に眠る膨大な生命エネルギーを秘めた光脈だったのだろうと、アクセルは語る。
「意識を失っていた人間の殆どは、その時の記憶が無かったりそもそも意識と一緒に自我も失ってしまう者が多かった。アンタの見たという光り輝く川というのも、幾つか記録にはあったようだが、それが光脈だという確証は得られなかった」
「何か身体に異常はない?シン」
「どうだろうな・・・。今の所、どこか痛いとか動かないとかないが・・・」
「光脈とは、要は生物に身体に張り巡らされた血管と同じ。大地に流れる生命エネルギーの血管であり、この山のそれは大地という皮膚を越えて溢れ出すほど、強い生命エネルギーを放っている。それに触れても無事だったという事は、その強過ぎる力に当てられない何かがアンタにはあったのかもしれないな」
アクセルの話を聞き、二人は一つ思い当たる所があった。それは彼らがこの世界の住人ではないという事だった。別世界からWoFというゲームを通して転生して来た彼らには、光脈の強過ぎる生命エネルギーに耐え得る何かがあったのだろう。
或いは、この世界のモノでは無いが故に、規格外のモノには影響がなかったのか・・・。
アクセルはケネトの方を振り向くと、二人は何かを察したように頷く。するとアクセルはその場でツクヨと共にシンの目覚めを待ち、ケネトは逃げた人影を追い始めた。
「え?」
驚きと共に困惑するツクヨ。
「大丈夫だ、アイツは迷わない。ただしここからそう離れなければだが・・・。それよりアンタはソイツを診てやれ」
アクセルはツクヨにシンの心配をするよう促す。彼の言っていた“ここから離れなければだが”というのは、ケネトはアクセルに人影の追跡を任された時に、アクセルらのいるこの地点に、自らの魔力で目印を作り出していた。
それはケネト自身と目印を魔力の糸で繋ぎ、ある程度の範囲内であれば目印の置かれた位置を決して見失うことのない、捜索をする上では非常に役に立つ能力だった。
だがこれはケネトのクラスによる能力ではなく、誰でも習得が可能なスキルのようだ。故に難しい魔力の制御や強力な力などは必要なく、覚えて仕舞えばアカリやツバキにも習得が可能なようだ。
それを自らの修練で精錬し、距離を伸ばしたものらしい。人影を追って真っ暗な森の中を駆け抜けていくケネト。だが間も無く、先程作り出した目印の範囲の限界を迎えそうな距離まで来てしまった。
まだ人影が何処まで逃げて行ったのか、果たして方向を変えていないのか分からない。そんな時、ケネトは地面に落ちている何かを見つける。それは明らかに人工物であり、森のものにしては不自然だったが故に、視界に映った瞬間にケネトの気を引くものとなった。
「何だ?何か落ちている」
すっかり人影を見失ってしまったケネトは、仕方がなくそこで追跡を終了する事にした。ケネトは落ちていたその何かを拾い上げる。どうやら何かのカードのような物のようだ。明かりで照らしてみると、それはミネの調査隊である事を証明するライセンスのカードだった。
「ミネのライセンスだ。じゃぁあの人影は・・・」
一先ずケネトは、その拾ったミネのライセンスを手にアクセルらの居る場所に残した目印を目指して戻る事にした。
一方、ツクヨに抱えられ意識を取り戻したのか、シンがツクヨの呼び掛けに反応する。
「シン!しっかり!」
「意識は戻ったようだな。後は自我があるかどうかだが・・・」
「どういう事です?・・・あ!」
シンの身を案じていたことで忘れてしまっていたようだが、ツクヨは彼の言葉の意味を考え、それが何を言っているのかについて察しがついたようだった。
北の山で意識を失う、自我を失うということは、それ即ち山の光脈が放つ強い精気に当てられてしまったとみて、ほぼ間違いないだろう。自ら身体を動かして意識を戻したことに安心していたツクヨだったが、まだ気は抜けない。
このまま目を覚ましたシンが自我を持っていない状態だったら大変な事になる。それというのも、一度自我を失ってしまった者は、後遺症が残る者も少なくないのだと言う。
そしてゆっくりと目を開けたシンは、ツクヨの呼び掛けに反応して彼の顔を見ると、その後周りを見渡してまるで何処か別の場所で眠っていたかのように目を覚ます。
「ここは・・・俺は一体・・・?」
「シン!しかりしてくれ!俺が誰だか分かるか!?」
一人称が変わっている事から、ツクヨの焦りが窺える。しかしそんな彼の心配を振り払うように、シンは彼の名と自分が何者であるかをはっきりと覚えていたようだ。
「ツクヨ・・・悪い、心配かけた・・・」
「いいんだ、そんな事は。意識はしっかりしているかい?」
「あぁ、大丈夫だ。確か俺は森の奥にいた人影を追って忍び寄ったんだが、捕えようとスキルを発動したら急に真っ暗な空間に飛ばされて・・・」
意識を失っている間に体験した話を口にするシン。その内容はアクセルも聞いた事のない話だったが、内容的にシンの見たという黄金に輝く川というものこそが、この回帰の山という土地に眠る膨大な生命エネルギーを秘めた光脈だったのだろうと、アクセルは語る。
「意識を失っていた人間の殆どは、その時の記憶が無かったりそもそも意識と一緒に自我も失ってしまう者が多かった。アンタの見たという光り輝く川というのも、幾つか記録にはあったようだが、それが光脈だという確証は得られなかった」
「何か身体に異常はない?シン」
「どうだろうな・・・。今の所、どこか痛いとか動かないとかないが・・・」
「光脈とは、要は生物に身体に張り巡らされた血管と同じ。大地に流れる生命エネルギーの血管であり、この山のそれは大地という皮膚を越えて溢れ出すほど、強い生命エネルギーを放っている。それに触れても無事だったという事は、その強過ぎる力に当てられない何かがアンタにはあったのかもしれないな」
アクセルの話を聞き、二人は一つ思い当たる所があった。それは彼らがこの世界の住人ではないという事だった。別世界からWoFというゲームを通して転生して来た彼らには、光脈の強過ぎる生命エネルギーに耐え得る何かがあったのだろう。
或いは、この世界のモノでは無いが故に、規格外のモノには影響がなかったのか・・・。
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