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神代 コウ

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有識者の失踪

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 アクセルらに連れられミネの家へとやって来た一行。陽は沈み始めているが、夕暮れ時にはまだ早いくらいの時間帯。他の住宅からは夕食の物と思われる食欲をそそる匂いが風に乗ってやって来る。

「お腹空いたねぇ・・・」

「街は平和なものだな。山の精気が降りて来ている事は、街には全く無害なものなのか?」

 素朴な疑問だった。人々を狂わせる自然豊かな山の光脈。そこから漏れ出した精気が近くの街に住む者達に悪影響を及ぼした事はないのだろうか。それについてはアクセルが説明した。

「街の近くに魔物が出たってくらいの事はあるが、それはどこの街や村でも起こり得る事だし、その為のギルドだ。トミさんみたいに麓まで行けば稀に精気に当てられちまうって事はあるが。兎に角、今まで街にまで影響を及ぼしたことは無いらしいぜ?」

「今回がそう最初の例になる可能性は?」

 口で説明されたり、過去のデータを語られたところで詳しく無いシンとツクヨには安心出来る要素にはならなかった。すると、少しだけ軽い印象を受けるアクセルに代わり、ヒーラーとしての能力を持ち、山での精神汚染を治療し予防出来るケネトが、アクセルの話を後押しする。

「まずあり得ないだろう。そもそも麓の街と言われてはいるが、それほど近いわけでもないし、山からの精気と街の関係性を調べた際にも、精気は山を出ると途端にその密度が薄まる性質を持っている」

「薄まる?でも山の麓の土には光脈に影響で多くの恩恵があるって話じゃなかった?」

「それも実際には土に溶け込んだ精気であって、精気自体は何かに溶け込まなければそのまま無害なものへと変わるんだ。自然な魔力と似ているかもしれないな」

 実際発祥の地との距離の関係はあるようで、他の国や大陸に持ち込もうとすると、移動の途中でその恩恵は消えてしまうようだ。要は山から離れれば影響はなく、街にまで被害が及ぶ事はないのだと言う。

 そんな話をしていると、一行はミネの家へと到着する。足を止めたアクセルらを見て、その建物がミネの家であろう事は察せられたが、想像していたよりも寂れた建物にシンとツクヨは言葉を失っていた。

「ここが・・・調査隊の隊長の・・・家?」

「なんか随分と・・・」

 反応に困っている二人を見て嬉しそうに感想を求めるアクセル。二人を困らせるアクセルを尻目に、ケネトはミネの家の呼び鈴を鳴らす。しかし何度か鳴らしても中からの反応はなかった。

「ん?留守か?玄関は空いてるのか?」

 悪いとは思いつつもケネトは扉に手を掛けてそっと開けようとしてみるも、どうやら中から鍵が掛けられているようで、中の様子を確かめる事は出来なかった。

「仕方がない、近所の人に何処へ行ったか聞いてみよう。誰か見掛けてるかも知れない」

 直ぐに済むと思っていたら用事だが、思っていたよりも時間が掛かりそうな展開になってきた事を、一旦ミアへ報告するシン。すると、一行が探しているミネの行方についてミアから情報が送られて来たのだ。

「えっ?なぁアクセル、俺達の仲間がミネが昨日の夕方頃、北の山へ入っていくところを見たらしいんだが・・・」

「山に向かっただって?」

 アクセルとケネトは顔を見合わせる。自己責任で独自に調査隊を続けているミネが山に入る事は珍しくない。ただ彼も、暗くなれば山が危険である事は知っている筈。

 山を知る者なら、自ら好んで陽の沈む以降の時刻に山へ向かうことなど考えられない。それでも調査隊のミネのことなら、誰も不自然には思わないのだとアクセルは語る。

 しかし妙なのは、昨日の夕方に山へ向かって以降、彼の目撃情報がないということだった。彼の行方と目撃情報を近所の人に尋ねても、昨日の明るいうちまでは見かけたという者もいたが、それ以降に目撃情報については全くだった。

「えっと・・・つまりそのミネさんって人は、昨日の夕方に山に入ってから帰って来てないって事?」

「日を跨いで調査に向かうって事は考えられるのか?」

 シンの問いに眉をひそませるアクセル。今までにあまり例の無かった事とはいえ、調査隊が何日か日を跨いで回帰の山に籠るという事は記録されているらしい。

 だがその結果の殆どは、隊員の中に何人も行方不明者を出してしまうという結果だったようだ。以降、調査隊の中でも日を跨いでの調査はギルドに目をつけられてしまう為、控えるようになったらしい。

 そして今の調査隊の体制になってからも、ミネとカガリだけで山に籠ることなど無かった筈だとアクセルは答えた。

「しかし、あくまで俺の知る範囲での話だ。街の者に見つからぬように、独自に調査をしていたという可能性も無くはない・・・」

「なんで急にそんな事を・・・?」

「もしかしたら、ミネも山の異変に気がついたのかも知れない」

 ケネトの言う山の異変とは、先程一行が体験した山の精気の事だ。精気が降りて来る事は決して珍しいことではないが、今回のように二号目付近までともなると話が少し変わるとケネトは言う。

「じゃぁそのミネって人も弟子のカガリってのも危ないんじゃ・・・」

「彼らには悪いが、これもギルドに報告しておくか。まぁ彼らに関しては捜索隊なんかは派遣されないだろうが・・・」

 山の異変を調べるつもりが、どんどんと雲行きが怪しくなってくる。一先ず一行はギルドへと戻り、ミネとカガリの失踪とミネが昨日の夕方から山に入ったかも知れないという報告と、ギルドの隊員達が戻ったかどうかの確認をすることにした。
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