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依頼人と受注者
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その中に依頼が受諾され、これから山へ向かうものはないかを探し出す。何もシン達は報酬が欲しい訳ではない。ハインドの街で北の山へ向かう、山に詳しい同士が欲しかったのだ。
ミアとアカリが現在の調査隊である者達と接触している事を知らない二人は、山の依頼を請け負った者の中で捜索開始の日付が一番近いものを探して行くと、どうやら明後日の早朝に山での依頼を請け負う一行が居るのを見つけ出す。
「おっおいツクヨ!あったぞ、これなんてどうだ?」
「日付は・・・明後日の早朝か。うん、悪くないね!この人達に話を聞いてみよう。そして可能であれば一緒に山を超えてもらえればってところだね」
早速帳簿をカウンターへと戻し、その依頼を受けた一行が今何処の宿に泊まっているのかを尋ねる。ギルドとしても連絡を取る以上、泊まっている宿屋の情報は掴んでいた。
依頼を受けている一行の宿を突き止めた二人は、直ぐに彼らのいるという宿へと向かった。宿屋はギルドからそれ程離れておらず、位置を確認するだけで迷わず辿り着く事が出来た。
代表者の名前は、“アクセル”と記載されていた。受付で宿屋の者にその名を告げると、確かに部屋を取っていることが分かった。彼らは部屋にいるかと問うと、今は依頼人のところへ向かっていったとの事だった。
流石に宿屋では彼らの依頼人が何処にいるのかまでは把握していなかった。協力を仰げるかも知れない者達への綱を漸く手繰り寄せたと思ったら、そこで彼らの掴んだ綱は途切れてしまった。
また一から、名前しか知らない人物を探さなければならない。そう思った時、ツバキが落ち込んで溜息を漏らすツクヨに、見せたい物があると言ってとある小型の機械を取り出した。
「何だい、コレは・・・」
「まぁ見とけって」
自信満々な表情を浮かべながら、ツバキが丁度ピンポン玉くらいの大きさの機械に触れて指をなぞらせる。するとその球体から羽が生えて宙へと飛び上がる。
「おぉッ!飛んだ!」
「それだけじゃねぇんだな、これが!」
飛び回る球体を呼び寄せたツバキが、再び球体に触れて何やら操作をすると、表面に穴が現れそこからカメラのレンズの様なものを覗かせる。レンズから光が放たれると、近くの民家の壁に何やら映像の様なものが映し出される。
「これは・・・ギルドの中かい?」
「そうそう。そしてこれを見ろ」
映像の中には、先程まで二人が探していた“アクセル”という人物の名が記された依頼書の詳細が映されていた。そこには依頼を出したと思われる人物の名前と居場所が記されていた。
「撮ったのかい!?勝手に」
「仕方ねぇだろ、こうでもしないと依頼人のところまでは辿り着けなかったんだぜ?」
「はぁ・・・全く、抜け目ないんだから・・・。依頼人のところに着いたら消しなよ?」
「分かってるって!必要以上には使わねぇよ」
依頼人の名前は“トミ・キヴェラ”。ハインドの街の端で農家を営む夫婦だった様だが、少し前に共に山の麓まで行った際に、少し目を離した間に妻が山へと入って行ってしまい、後を追いかけたが見失ってしまったのだそうだ。
居なくなってから既に数日経っており、気が気でない毎日を送り心身共に衰弱してしまっているらしい。
「奥さんが・・・」
「何で山になんて行ったんだ?危険って言われてんだろ?」
「分からない・・・。けど、行かざるを得ない事情があったんじゃないかな」
「・・・ツクヨ?」
依頼人の状態を知り、ツクヨは現実世界での嘗ての自分を思い出していた。何気無い会社の帰り、普段より少し遅れて家に着くと、玄関に施錠がされていない状態になっており、扉を開けると明かりも付いていなかった。
ただ玄関の鍵を閉め忘れたまま寝てしまったのだろう。そう思って自宅の廊下を進んでいくと、そこには見たこともない血の跡が残っており、胸を打ち鳴らす鼓動を全身に感じながらリビングへと向かうと、そこには・・・。
唐突に訪れた平穏な世界の終焉。あまりにも衝撃的過ぎて、現実を受け入れることが出来なかったツクヨは、それから暫くの記憶を失ってしまっていた。
意識がハッキリと戻った頃に込み上げてくるものは、失われてしまった何気ない幸せな平穏への消失感と焦燥、そして止めどなく流れる涙ばかりだった。
恐らくこの依頼人も同じ思いをしているに違いない。自分ではどうにも出来ない事に対し、誰かが手を差し伸べてくれるのを待っている。居なくなってしまった妻がどうなったのかの答えを出してくれるのを待ち続けているに違いない。
初めは単純に山へ入る為の協力者を探すつもりだったが、依頼書を見てしまったツクヨは“トミ・キヴェラ”の心中を察し、どうにかしてあげられないものかと考える様になっていた。
ミアとアカリが現在の調査隊である者達と接触している事を知らない二人は、山の依頼を請け負った者の中で捜索開始の日付が一番近いものを探して行くと、どうやら明後日の早朝に山での依頼を請け負う一行が居るのを見つけ出す。
「おっおいツクヨ!あったぞ、これなんてどうだ?」
「日付は・・・明後日の早朝か。うん、悪くないね!この人達に話を聞いてみよう。そして可能であれば一緒に山を超えてもらえればってところだね」
早速帳簿をカウンターへと戻し、その依頼を受けた一行が今何処の宿に泊まっているのかを尋ねる。ギルドとしても連絡を取る以上、泊まっている宿屋の情報は掴んでいた。
依頼を受けている一行の宿を突き止めた二人は、直ぐに彼らのいるという宿へと向かった。宿屋はギルドからそれ程離れておらず、位置を確認するだけで迷わず辿り着く事が出来た。
代表者の名前は、“アクセル”と記載されていた。受付で宿屋の者にその名を告げると、確かに部屋を取っていることが分かった。彼らは部屋にいるかと問うと、今は依頼人のところへ向かっていったとの事だった。
流石に宿屋では彼らの依頼人が何処にいるのかまでは把握していなかった。協力を仰げるかも知れない者達への綱を漸く手繰り寄せたと思ったら、そこで彼らの掴んだ綱は途切れてしまった。
また一から、名前しか知らない人物を探さなければならない。そう思った時、ツバキが落ち込んで溜息を漏らすツクヨに、見せたい物があると言ってとある小型の機械を取り出した。
「何だい、コレは・・・」
「まぁ見とけって」
自信満々な表情を浮かべながら、ツバキが丁度ピンポン玉くらいの大きさの機械に触れて指をなぞらせる。するとその球体から羽が生えて宙へと飛び上がる。
「おぉッ!飛んだ!」
「それだけじゃねぇんだな、これが!」
飛び回る球体を呼び寄せたツバキが、再び球体に触れて何やら操作をすると、表面に穴が現れそこからカメラのレンズの様なものを覗かせる。レンズから光が放たれると、近くの民家の壁に何やら映像の様なものが映し出される。
「これは・・・ギルドの中かい?」
「そうそう。そしてこれを見ろ」
映像の中には、先程まで二人が探していた“アクセル”という人物の名が記された依頼書の詳細が映されていた。そこには依頼を出したと思われる人物の名前と居場所が記されていた。
「撮ったのかい!?勝手に」
「仕方ねぇだろ、こうでもしないと依頼人のところまでは辿り着けなかったんだぜ?」
「はぁ・・・全く、抜け目ないんだから・・・。依頼人のところに着いたら消しなよ?」
「分かってるって!必要以上には使わねぇよ」
依頼人の名前は“トミ・キヴェラ”。ハインドの街の端で農家を営む夫婦だった様だが、少し前に共に山の麓まで行った際に、少し目を離した間に妻が山へと入って行ってしまい、後を追いかけたが見失ってしまったのだそうだ。
居なくなってから既に数日経っており、気が気でない毎日を送り心身共に衰弱してしまっているらしい。
「奥さんが・・・」
「何で山になんて行ったんだ?危険って言われてんだろ?」
「分からない・・・。けど、行かざるを得ない事情があったんじゃないかな」
「・・・ツクヨ?」
依頼人の状態を知り、ツクヨは現実世界での嘗ての自分を思い出していた。何気無い会社の帰り、普段より少し遅れて家に着くと、玄関に施錠がされていない状態になっており、扉を開けると明かりも付いていなかった。
ただ玄関の鍵を閉め忘れたまま寝てしまったのだろう。そう思って自宅の廊下を進んでいくと、そこには見たこともない血の跡が残っており、胸を打ち鳴らす鼓動を全身に感じながらリビングへと向かうと、そこには・・・。
唐突に訪れた平穏な世界の終焉。あまりにも衝撃的過ぎて、現実を受け入れることが出来なかったツクヨは、それから暫くの記憶を失ってしまっていた。
意識がハッキリと戻った頃に込み上げてくるものは、失われてしまった何気ない幸せな平穏への消失感と焦燥、そして止めどなく流れる涙ばかりだった。
恐らくこの依頼人も同じ思いをしているに違いない。自分ではどうにも出来ない事に対し、誰かが手を差し伸べてくれるのを待っている。居なくなってしまった妻がどうなったのかの答えを出してくれるのを待ち続けているに違いない。
初めは単純に山へ入る為の協力者を探すつもりだったが、依頼書を見てしまったツクヨは“トミ・キヴェラ”の心中を察し、どうにかしてあげられないものかと考える様になっていた。
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