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音で彩る世界
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ダメージを負った身体では回避が間に合わなかったのか、何とか移動しようとする黒い人物だったが、迫る壁のような衝撃に飲まれた。全身を黒い靄へと変えた彼は、暫くして靄を集めると再び人の身体を形成する。
「ぐッ・・・!オイゲンめ・・・煙に乗じて俺を狙って来たかッ!・・・ふ、何を企んでいるか知らんが、そのせいであなた達はブレインを失った。戦闘のセンスはあれど、彼ほどの策ももう練れないでしょう・・・」
オルガンに近づく人物はなく、アンナの声を用いたソナーもオイゲンの姿を捉えている。しかし姿を消したカルロスの反応がない。アンナは依然として礼拝堂にいる生物、魔力の反応を探している。
「いいでしょう、貴方の相手は俺がして差し上げましょう。どうせこれで“最期”なんだ・・・。存分にこの力を振るうとしよう!」
「何だ?急激に魔力の反応が変わった・・・?」
黒い人物は自身の身体を形成する黒い靄を集めると、頭の周りを飛ぶ三つのシャボン玉のような球体が現れた。それらは一つ一つが振動し、よく見ると小さく震えている。
「音楽は人を変える力を持つ。俺はその影響を受けやすい体質を持っていました・・・」
「?」
突如自分の話をし始める黒い人物。だが口は動かせど、攻撃の手を緩める事はなかった。三つのシャボン玉の内、一つが際立って振動を開始した。すると黒い人物は一瞬にしてオイゲンの視界から消えた。
「俺は音楽を聴くのが好きだった。嫌な事や惨めな現実を忘れさせてくれる・・・」
背後から気配を察したオイゲンが、素早く風を切って近づく何かに合わせて光の壁を張る。背後を振り返るとそこには黒い人物が、足を伸ばしてオイゲンの張った光の壁を蹴っていた。
「音楽を聴いている間だけは、別の何者かになれたような気がした」
攻撃を防がれた黒い人物は再び素早い動きで姿を眩ました。オイゲンの張った光の壁には、今にも割れそうな程のヒビが入っていた。魔力が篭っているスキルで生み出した壁を、単純な物理攻撃でヒビを入れたという事は、先程の黒い人物の蹴りは、容易に物理的な壁などを打ち砕く威力がある事が分かる。
そして引き続き、姿を見せぬまま黒い人物の声だけがオイゲンの周囲で児玉していた。
「まるで物語の登場人物にでもなれたかのように気分が高まる。見えてくる景色も変われば、体調や気分も変わってくる。色の無い世界が、舞台の壇上に変わる・・・」
「・・・・・」
オイゲンには彼の言っている事が理解出来た。感情を持った生き物、意思を持った生き物、或いはこの世に生を受けた全ての生き物にとって、生きる上での安息はひつようである。
それを手助けしてくれる一つの手段として音楽がある。教団に所属するオイゲンは、仕事柄教会で歌を聴く機会も多く、その度に過去の行いと向き合い改めていた。
自身を律し、過去の教訓を戒めて今に活かす。オイゲンにとっての教会という場はそういう意味を持っていた。
だが決してそれが苦になっていた訳ではない。その手で救って来た命もあるが、それ以上に奪ってきた命もある。如何に悪人といえど、意味もなく生み出されるものではない。そこには祝福された命もあっただろう。
それが多くの他者から死を望まれたばかりに殺されてしまう。しかもそれを下すのが、彼らが崇める神などではなく、罪人と同じ生き物。中には命乞いをする者や、年端も行かぬ子供もいた。
彼らの死に際の顔が脳裏にこびり付いて離れない。教団の教えと周りの人々との繋がりのお陰で、何とか精神を保てているが、それらが無くなった時、オイゲンもまた屠ってきた者達と同じ道を歩んでしまうのかもしれない。
「ぐッ・・・!オイゲンめ・・・煙に乗じて俺を狙って来たかッ!・・・ふ、何を企んでいるか知らんが、そのせいであなた達はブレインを失った。戦闘のセンスはあれど、彼ほどの策ももう練れないでしょう・・・」
オルガンに近づく人物はなく、アンナの声を用いたソナーもオイゲンの姿を捉えている。しかし姿を消したカルロスの反応がない。アンナは依然として礼拝堂にいる生物、魔力の反応を探している。
「いいでしょう、貴方の相手は俺がして差し上げましょう。どうせこれで“最期”なんだ・・・。存分にこの力を振るうとしよう!」
「何だ?急激に魔力の反応が変わった・・・?」
黒い人物は自身の身体を形成する黒い靄を集めると、頭の周りを飛ぶ三つのシャボン玉のような球体が現れた。それらは一つ一つが振動し、よく見ると小さく震えている。
「音楽は人を変える力を持つ。俺はその影響を受けやすい体質を持っていました・・・」
「?」
突如自分の話をし始める黒い人物。だが口は動かせど、攻撃の手を緩める事はなかった。三つのシャボン玉の内、一つが際立って振動を開始した。すると黒い人物は一瞬にしてオイゲンの視界から消えた。
「俺は音楽を聴くのが好きだった。嫌な事や惨めな現実を忘れさせてくれる・・・」
背後から気配を察したオイゲンが、素早く風を切って近づく何かに合わせて光の壁を張る。背後を振り返るとそこには黒い人物が、足を伸ばしてオイゲンの張った光の壁を蹴っていた。
「音楽を聴いている間だけは、別の何者かになれたような気がした」
攻撃を防がれた黒い人物は再び素早い動きで姿を眩ました。オイゲンの張った光の壁には、今にも割れそうな程のヒビが入っていた。魔力が篭っているスキルで生み出した壁を、単純な物理攻撃でヒビを入れたという事は、先程の黒い人物の蹴りは、容易に物理的な壁などを打ち砕く威力がある事が分かる。
そして引き続き、姿を見せぬまま黒い人物の声だけがオイゲンの周囲で児玉していた。
「まるで物語の登場人物にでもなれたかのように気分が高まる。見えてくる景色も変われば、体調や気分も変わってくる。色の無い世界が、舞台の壇上に変わる・・・」
「・・・・・」
オイゲンには彼の言っている事が理解出来た。感情を持った生き物、意思を持った生き物、或いはこの世に生を受けた全ての生き物にとって、生きる上での安息はひつようである。
それを手助けしてくれる一つの手段として音楽がある。教団に所属するオイゲンは、仕事柄教会で歌を聴く機会も多く、その度に過去の行いと向き合い改めていた。
自身を律し、過去の教訓を戒めて今に活かす。オイゲンにとっての教会という場はそういう意味を持っていた。
だが決してそれが苦になっていた訳ではない。その手で救って来た命もあるが、それ以上に奪ってきた命もある。如何に悪人といえど、意味もなく生み出されるものではない。そこには祝福された命もあっただろう。
それが多くの他者から死を望まれたばかりに殺されてしまう。しかもそれを下すのが、彼らが崇める神などではなく、罪人と同じ生き物。中には命乞いをする者や、年端も行かぬ子供もいた。
彼らの死に際の顔が脳裏にこびり付いて離れない。教団の教えと周りの人々との繋がりのお陰で、何とか精神を保てているが、それらが無くなった時、オイゲンもまた屠ってきた者達と同じ道を歩んでしまうのかもしれない。
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