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クリストフォレッティ
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バルトロメオ・クリストフォレッティ。
その男はとある大公国の君主に仕える楽器製作家だった。類稀なる才能と器用さから、噂を聞きつけた王族自らは彼を名指しでスカウトに来たと言われるほど、目を見張る発明をしていたバルトロメオだったが、彼の工房やその周りに住む者達からは極めて変わった人物として、煙たがられているという側面も持っていた。
依頼された仕事は期限内に仕上がらないのは当たり前。他人の話に全く聞く耳を持たず、特に貴族や王族には彼ならではの強い偏見を抱いていた。
以前住んでいたという国では、あまりにも手にを得なくなった為か、何度も投獄されていたという噂まであった。名前を偽り、彼がその名を知らしめる様になるきっかけとなった国にやって来た時は、偽名を使い別人として楽器の製作をする工房で働きながら、隠れて発明も行っていたのだという。
バルトロメオがやって来てからというものの、その工房は大いに繁盛し、そこで作られた楽器は他国からも欲しがる者達が続出する程有名になった。
彼の活躍に目を付けたのが、大公国の君主である人物で、宮廷お抱えの楽器製作家として迎え入れたいと自ら工房へと足を運んだという。楽器製作や発明の腕前は確かなのだが、その素行に大きな問題があったとされていたバルトロメオは、工房から追い出される様に宮廷へと向かわされた。
半ば強制的に働かされる事になったバルトロメオは、仕事につくや否や並の職人と変わらぬ働きしかしなくなり、大いに周りの人間達を困らせたという。宮廷に招かれるにあたって、多くの条件を突きつけて来たバルトロメオだったが、それらの行動が響き、優遇されていた待遇は全面的に廃止され、他の職人らよりも低い賃金や報酬で働かされる事になった。
しかしそんな状態になっても、彼が宮廷から去らなかったのにはある理由があったのだ。それは彼のもう一つの顔である発明家としての側面が関係していた。
良くも悪くも目立った活躍をしていたバルトロメオは、元々住んでいた国で違法な取引や売買を行う闇のブローカーと繋がっていたのだ。彼らから依頼された発明した物も多く、その筋では彼の名を知らずともその代物は知っているという人は少なくなかった。
だが彼がそんな危険な橋を渡るのには、ある理由があったのだ。彼が主に関わっていた闇取引は、命を金や利益の為の商品として取引する“人身売買”だった。
国の中枢と関わる立場にあった彼は、貴族や王族に不当な仕打ちは人を人とも思わぬ者達の行いに激しい嫌悪感を持っており、権力者に囚われる謂わば奴隷の様に扱われる者達を、密かにブローカー達へ横流ししていたのだ。
その際に用いられていたのが、バルトロメオの発明した代物であり、それらは大いに彼らのその後の人生の手助けになったという。その発明の中には義手や義足といった、奴隷生活の中で失われたものを補い、万が一の時には戦えるだけの性能が施されていた。
しかし闇のブローカーに受け渡された彼らが果たして、今の生活よりもマシな生活が出来るのかと問われれば、普通はそうは思わないもの。そこでバルトロメオの意思と同調し、同じ志を持った者が裏の世界にもいた。
彼が取引していた人物とは、シン達も良く知る人物であり、共に海上レースで鎬を削った“あの男”組織だったのだ。
だが当然、彼のそんな行いは貴族や王族達からすれば、家から勝手に財産を外へと横流ししている盗人行為と変わらない大罪。救われる者もいれば救われない者もいる。そういった嫉妬が彼の行いを報告する者を生み、上の者に報告されてしまいバルトロメオの身にも危機が迫る。
それを助けたのが、宮廷にも潜り込んでいた教団の者達だった。彼らの計らいにより、別の人物をバルトロメオに仕立て上げ、公開処刑させる事で一連の問題を解決させるに至るのだが、その際に命を落とした者と入れ替わるのが条件だった。
表向き外見的にはバルトロメオが処刑された事になったが、その者はバルトロメオの素養を引き継いだ上で処刑される事により、周りの者達の認識や記憶から彼は死んだものだと思わせるという、教団の用意した集団的無意識に干渉する大掛かりなスキルの一種を受けたのだ。
その為には、これまでバルトロメオが培って来た才能や経験を捧げる必要があり、代わりに失われる者の培って来たものを受け取る事も出来るのだと教団は彼に説明した。
話からも分かる通り、それを受け取らない選択肢もあったのだが、その場合生き残ったバルトロメオという器は空っぽになってしまい、最悪の場合廃人となってしまう可能性もあると聞かされ、受け入れざるを得なかった。
その時彼が受け取ったのが、破戒僧という立場とクラス、そしてスキルだったのだ。要するにバルトロメオも、ブルースと同じく一度自分というものを失い、別の器に魂を移されたも同然だったという事だ。
先に施術を受けたバルトロメオの方が、技術の過程にあった為にデメリットも多く、この様な形になってしまったが、バルトロメオとしての人格は確かに新たな器へと移され生き続けている。
教団側も彼の素性を知っていた為か、なるべく近しい思想や理念を持った人物を選別したようで、彼の器となった破戒僧もまた、自身の所属する宗教団体の悪事から貪られる者達を救っていたのだという。
他人に興味のなかったバルトロメオは、自分の器となった人物にも興味を示すことはなく、大方の人物像だけ聞くとこれからは俺がバルトロメオだといって、暫く教団の中で生活をしていた。
だが当時の器用さや知識は失われ、代わりに彼には戦う力が与えられた。聖職者とは程遠い人間が、今度は聖職者のクラスとして生きていくとは何という皮肉かと、バルトロメオの性格もまた当時よりは大人しいものとなっていった。
後に彼の前に現れたのは、嘗て自分が利用していた音楽という分野に命を賭けて生きる人物、ヴァルター・シュレジングァこと“ブルース・ワルター”と出会う事になり、彼と共にいれば嘗ての記憶や能力に目覚めるかも知れないという進言を受け、ブルースの護衛として付き人になる事となった。
「シュレジングァ・・・か。確か奴隷の中に同じ様な名前の奴らがいたな。なるほど・・・それでコイツは・・・」
教団と共に生活する中で、嘗ての自分の行いや救われて来た奴隷や差別を受けて来た者達の名前を聞く機会があった時に、シュレジングァという性が酷い差別を受けているという話を聞いた事があったバルトロメオ。
そして彼の嘗ての行動を密かに記録していた資料によると、数名同じ性を持った人物が記録されていた事を思い出し、ブルースもまたそういった差別から逃れる為に一度死ぬ必要があった事を悟る。
何処に行こうと人というものは変わらないのだと呆れたバルトロメオは、ブルースの側で嘗て自分が手掛けてきた楽器を使い、人々の意識を変え、心を豊かにし幸福を届ける活動を目の当たりにしながら、新たな人生を歩み始める。
その男はとある大公国の君主に仕える楽器製作家だった。類稀なる才能と器用さから、噂を聞きつけた王族自らは彼を名指しでスカウトに来たと言われるほど、目を見張る発明をしていたバルトロメオだったが、彼の工房やその周りに住む者達からは極めて変わった人物として、煙たがられているという側面も持っていた。
依頼された仕事は期限内に仕上がらないのは当たり前。他人の話に全く聞く耳を持たず、特に貴族や王族には彼ならではの強い偏見を抱いていた。
以前住んでいたという国では、あまりにも手にを得なくなった為か、何度も投獄されていたという噂まであった。名前を偽り、彼がその名を知らしめる様になるきっかけとなった国にやって来た時は、偽名を使い別人として楽器の製作をする工房で働きながら、隠れて発明も行っていたのだという。
バルトロメオがやって来てからというものの、その工房は大いに繁盛し、そこで作られた楽器は他国からも欲しがる者達が続出する程有名になった。
彼の活躍に目を付けたのが、大公国の君主である人物で、宮廷お抱えの楽器製作家として迎え入れたいと自ら工房へと足を運んだという。楽器製作や発明の腕前は確かなのだが、その素行に大きな問題があったとされていたバルトロメオは、工房から追い出される様に宮廷へと向かわされた。
半ば強制的に働かされる事になったバルトロメオは、仕事につくや否や並の職人と変わらぬ働きしかしなくなり、大いに周りの人間達を困らせたという。宮廷に招かれるにあたって、多くの条件を突きつけて来たバルトロメオだったが、それらの行動が響き、優遇されていた待遇は全面的に廃止され、他の職人らよりも低い賃金や報酬で働かされる事になった。
しかしそんな状態になっても、彼が宮廷から去らなかったのにはある理由があったのだ。それは彼のもう一つの顔である発明家としての側面が関係していた。
良くも悪くも目立った活躍をしていたバルトロメオは、元々住んでいた国で違法な取引や売買を行う闇のブローカーと繋がっていたのだ。彼らから依頼された発明した物も多く、その筋では彼の名を知らずともその代物は知っているという人は少なくなかった。
だが彼がそんな危険な橋を渡るのには、ある理由があったのだ。彼が主に関わっていた闇取引は、命を金や利益の為の商品として取引する“人身売買”だった。
国の中枢と関わる立場にあった彼は、貴族や王族に不当な仕打ちは人を人とも思わぬ者達の行いに激しい嫌悪感を持っており、権力者に囚われる謂わば奴隷の様に扱われる者達を、密かにブローカー達へ横流ししていたのだ。
その際に用いられていたのが、バルトロメオの発明した代物であり、それらは大いに彼らのその後の人生の手助けになったという。その発明の中には義手や義足といった、奴隷生活の中で失われたものを補い、万が一の時には戦えるだけの性能が施されていた。
しかし闇のブローカーに受け渡された彼らが果たして、今の生活よりもマシな生活が出来るのかと問われれば、普通はそうは思わないもの。そこでバルトロメオの意思と同調し、同じ志を持った者が裏の世界にもいた。
彼が取引していた人物とは、シン達も良く知る人物であり、共に海上レースで鎬を削った“あの男”組織だったのだ。
だが当然、彼のそんな行いは貴族や王族達からすれば、家から勝手に財産を外へと横流ししている盗人行為と変わらない大罪。救われる者もいれば救われない者もいる。そういった嫉妬が彼の行いを報告する者を生み、上の者に報告されてしまいバルトロメオの身にも危機が迫る。
それを助けたのが、宮廷にも潜り込んでいた教団の者達だった。彼らの計らいにより、別の人物をバルトロメオに仕立て上げ、公開処刑させる事で一連の問題を解決させるに至るのだが、その際に命を落とした者と入れ替わるのが条件だった。
表向き外見的にはバルトロメオが処刑された事になったが、その者はバルトロメオの素養を引き継いだ上で処刑される事により、周りの者達の認識や記憶から彼は死んだものだと思わせるという、教団の用意した集団的無意識に干渉する大掛かりなスキルの一種を受けたのだ。
その為には、これまでバルトロメオが培って来た才能や経験を捧げる必要があり、代わりに失われる者の培って来たものを受け取る事も出来るのだと教団は彼に説明した。
話からも分かる通り、それを受け取らない選択肢もあったのだが、その場合生き残ったバルトロメオという器は空っぽになってしまい、最悪の場合廃人となってしまう可能性もあると聞かされ、受け入れざるを得なかった。
その時彼が受け取ったのが、破戒僧という立場とクラス、そしてスキルだったのだ。要するにバルトロメオも、ブルースと同じく一度自分というものを失い、別の器に魂を移されたも同然だったという事だ。
先に施術を受けたバルトロメオの方が、技術の過程にあった為にデメリットも多く、この様な形になってしまったが、バルトロメオとしての人格は確かに新たな器へと移され生き続けている。
教団側も彼の素性を知っていた為か、なるべく近しい思想や理念を持った人物を選別したようで、彼の器となった破戒僧もまた、自身の所属する宗教団体の悪事から貪られる者達を救っていたのだという。
他人に興味のなかったバルトロメオは、自分の器となった人物にも興味を示すことはなく、大方の人物像だけ聞くとこれからは俺がバルトロメオだといって、暫く教団の中で生活をしていた。
だが当時の器用さや知識は失われ、代わりに彼には戦う力が与えられた。聖職者とは程遠い人間が、今度は聖職者のクラスとして生きていくとは何という皮肉かと、バルトロメオの性格もまた当時よりは大人しいものとなっていった。
後に彼の前に現れたのは、嘗て自分が利用していた音楽という分野に命を賭けて生きる人物、ヴァルター・シュレジングァこと“ブルース・ワルター”と出会う事になり、彼と共にいれば嘗ての記憶や能力に目覚めるかも知れないという進言を受け、ブルースの護衛として付き人になる事となった。
「シュレジングァ・・・か。確か奴隷の中に同じ様な名前の奴らがいたな。なるほど・・・それでコイツは・・・」
教団と共に生活する中で、嘗ての自分の行いや救われて来た奴隷や差別を受けて来た者達の名前を聞く機会があった時に、シュレジングァという性が酷い差別を受けているという話を聞いた事があったバルトロメオ。
そして彼の嘗ての行動を密かに記録していた資料によると、数名同じ性を持った人物が記録されていた事を思い出し、ブルースもまたそういった差別から逃れる為に一度死ぬ必要があった事を悟る。
何処に行こうと人というものは変わらないのだと呆れたバルトロメオは、ブルースの側で嘗て自分が手掛けてきた楽器を使い、人々の意識を変え、心を豊かにし幸福を届ける活動を目の当たりにしながら、新たな人生を歩み始める。
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