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神代 コウ

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襲撃の狙いと犯人の思惑

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 楽器の置かれていた部屋を襲撃した謎の人物達。その襲撃を皮切りに、ちらほらと謎の人物達が彼らの行く手を阻むように現れるようになった。

「クソッ!何だってんだ?急に!」

「妙ですね。まるで先程の襲撃が合図だったかのように急に攻撃が始まりました」

「アンドレイ氏はどうお考えなのです?」

 ケヴィンは自分の推理をひけらかすのを差し置いて、同じく事件に興味を示しているアンドレイの考えを伺う。実のところ、ケヴィンはアンドレイの考察に興味があった。

 彼の洞察力や情報網は、ケヴィンのものとは違うところから同じ結論へと至る。要するに道は違えど、行き先は同じ。ただそれは推理や考察においておかしな点でもある。

 結論が同じなのなら、得る情報も同じでなくてはそうそう被る事もないだろう。共通する正しい情報があるからこそ、想像する結論が同じ道を歩むというもの。アンドレイはケヴィンらの知らない情報を握っている。或いは知っている筈のない情報を既に仕入れている可能性があると踏んだのだ。

「そうですね・・・。犯人は我々が楽器を求めてやって来る事を知っていた・・・そのように考えますが、探偵のケヴィンさんはどうお考えですか?」

「大方、私も同じですよ。ただ待ち伏せをしていたというのであれば、幾つか妙な点があります」

「妙な点だと?ええい!お前らはどうしてこうも回りくどい言い方なのだ!結論を話せ結論を!」

 迫り来る謎の人物を振り払いながら屋上への道を切り開くオイゲン。忙しいせいか、あまり考えることに労力を割けないでいるのか、まるで探り合うかのような二人の会話に苛立ちの様子を見せる。

 そんな中、友人となったクリスとその恩師であるマティアスを失った事に、少なからずショックを受けている様子のレオンとカルロス。当然と言えば当然だろう。まだ大人というには幼い二人の前で、同じ年頃の少年が悲痛な声を上げながら消されたのだ。

 この状況下で、次は自分かもしれないと想像するのはごく普通な事と言える。それでもパニックを起こさずにいられるのは、彼らの精神が大分早熟しているからだろう。

 しかし、そんな彼らの容態を心配する余裕もなく、会話を続けるケヴィンとアンドレイは、先程の楽器のあった部屋で起きた一連の出来事の不審点について話し始めた。

「待ち伏せをしていたのなら、そこに目的があったのは確かでしょう。それでいて犯人側の主戦力と言えるバッハの一族がいなかったというのが気になります」

「本来、待ち伏せという計略は敵の不意を突いた奇襲になり、多少の戦力差であれば容易に覆すことが可能でしょう。犯人はこちらの戦力を見誤ったのか、それとも何か他に目的があったのか」

「言われてみれば確かに。戦力で言えば俺の不意を突いて負傷させる方が余程こちらの戦力を削げる。屋上へ向かうという計画も頓挫しかねない。だが結果として、道案内の役割を終えたマティアス達が始末されただけで、こちらには大きな痛手はない・・・」

「えぇ、それにチェンバロについてもおおよその場所は彼らが教えてくれました。ではあの襲撃は一体何を成すための襲撃だったのでしょう?」

 ケヴィンとアンドレイの疑問の意味を理解したオイゲンも、その話を聞いてから襲撃の目的が何だったのか疑問を抱くようになる。単なる時間稼ぎだったのか、彼らの言うように何か他に目的があったのか。

 楽器の部屋を襲撃することで、結果として成された事はマティアスとクリスの消滅だけ。本来なら全員を部屋に閉じ込め、もう少し長く部屋に閉じ込めておく予定だったのか。

「教団の関係者、それも護衛隊には目もくれず立場のある者や精通している者を狙っていたとするならば、マティアス司祭や教団の仕事にも関わっていたクリス君を狙ったのなら、一連の犯行にも合理性がありますが・・・」

「もうすぐ屋上だぞ!ヴァイオリンはしっかり持っているな!?」

 オイゲンは一行に向けて、いよいよ出番だとばかりに調子を伺う声をかける。持ち出したヴァイオリンは二挺で、それぞれ演奏ができるアンドレイと自分のヴァイオリンを持ってきているレオンが各自大事そうに持っていた。

 屋上へ到達した後に、アンドレイかレオン、或いはこの二人ともを屋上に置いていき、残りの者達でチェンバロの場所を探す為にもう一度宮殿内へ戻っていく事になる。

 確定している人物として、探偵であるケヴィンと学生のカルロス。オイゲンには是非とも彼らと共に行動を共にしてもらいたいと思うところだが、それは屋上の戦局次第だろう。

 何よりオイゲンが屋上へ向かいたがっていたのは、ニノンが心配だったからというものが大きい。もし彼女の身に何かあれば、代わりに彼が屋上で戦闘に参加するという流れも十分に考えられる。
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