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待ち伏せ
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一つは当然、ここでヴァイオリンを持ち出し屋上にいるというアンブロジウスと対峙する為のチーム。そしてもう一つは、チェンバロという楽器を探しブルース達に知らせるチームだ。
それぞれに必要な人材は一部決まっている。しかし問題なのは、戦えるのがオイゲンだけだという事だろう。その上、オイゲンは内心いち早く屋上の状況を知りたがっている。
つまり屋上チームの一人はオイゲン。そして必要不可欠なヴァイオリン奏者として、アンドレイか音楽学校の生徒である三人の内誰かになるのだが、実力的に言えばアンドレイとレオンが適任だろうと予想される。
「ここで更に二手に・・・ですか」
「えぇ、少し危険な賭けですが悠長にしていられる時間も、恐らくは我々にはありません。現地で戦っているという彼らが、楽譜の力を使った霊達といつまでも持ち堪えられる保証は何処にもないのですから・・・」
ケヴィンの言葉に、一行は司令室での戦闘を思い出す。あれだけの人数が居ながら、戦えぬ者達は瞬く間に姿を消し、いざ戦闘が始まると熟練した猛者達がたった一人の音楽家に押されてしまうほどの戦力差があった。
相手の出方や能力が分からない上に、守りを優先していた者達も多いという事もあるが、それを抜きにしても月光写譜の特殊な能力はとても侮れるものではない。
「それは確かにそうかもしれませんが、オイゲンさんの力無くして何処にあるかまだ確定した訳でもないチェンバロを探すのは、かなりリスキーだと思いますよ」
「おっしゃる通り・・・。ですが」
突然ケヴィンらしからぬ提案をし出したことに、オイゲンとアンドレイは何か違和感を覚えていた。そしてその場にいた誰もが、アンドレイの指摘と同じ事を思っていただろう。
レオンとカルロスだけは道中の会話の件もあり、密かにケヴィンの提案に賛同していた。どちらにしろレオンとカルロスは別々の戦場へ向かうことになる。
ジルのいる宮殿入り口へ向かいたいと言えば、当然許諾されそうにない目的を抱えている以上、如何にして別行動を取る機会を得るか、そのタイミングを伺っていた。
だがそんな不毛な言い争いをしている場合ではないと、ケヴィンが自分の為に無理を言っているのだと察したオイゲンが、その必要はないと口を開く。
「よせケヴィン。気を使う必要はない。アンドレイの言う通り出来るだけ危険は避けるべきだ。先ずはヴァイオリンを持って皆で屋上へ向かう。その後で対ベルンハルト用の楽器であるチェンバロの場所を・・・」
オイゲンがケヴィンの提案に変わる作戦の指示を話し始めた時、彼らにとって不測の事態が起こり始める。
「マティアスさんッ!!」
クリスの声とほぼ同時に、オイゲンとケヴィンも一行の元に差し迫る何かの気配に身構える。部屋の入り口に最も近かったマティアスは、咄嗟に動いたクリスの判断で廊下へと飛び出す。
その時一行を襲ったのは、複数の謎の人物だった。これまで不気味な程姿を見せなかったのは、彼らを楽器のある部屋へ誘い込む為だったのか、一行の行手を阻むかのように入り口を破壊した。
クリスとマティアスが辛うじて廊下へ飛び出したものの、部屋を封鎖するように瓦礫が崩れ落ち、オイゲン達が閉じ込められてしまう。
「皆俺の側へ!決して離れぬように!」
部屋の外にも中にも謎の人物達が続々と集まってくる。瞬く間に囲まれてしまう一行。部屋の中にはオイゲンがいるが、分断されてしまった外には戦える者はいない。
だが、宮殿内の構造に詳しい案内役の二人が部屋の外に追い出されてしまった。不幸中の幸いと言うべきか、チェンバロがあると思われる場所については、オイゲンらは二階にある倉庫が怪しいと聞いている。
故に案内役としての役割を果たしているとも言える状況だった。大きな声で外の様子を確認するオイゲン。マティアスは一先ず無事ではあると伝えるものの、外も同じように謎の人物達に囲まれてしまっているという状況を伝える。
オイゲンはなるべく早く片付けるとマティアス達に伝え、可能な限り生き延びる手段を取るようにだけ伝える。しかしどうやらそれも長くは保たなかった。
全力で部屋の内部の敵を一掃するオイゲンだったが、外からはマティアスとクリスの悲痛な悲鳴が響き渡っていた。分断されてしまった時点で、一行は嫌な予感がしていた。マティアスとクリスはここまでだと。
必死に名前を呼ぶレオンとカルロスの声も虚しく、返事は返ってくる事はない。諦めムードの中、オイゲンは一人黙々と部屋の内部に入り込んだ敵を倒しきり、扉への道を塞ぐように立ちはだかる瓦礫を吹き飛ばし、廊下へと飛び出すオイゲン達。
しかしそこには、既にマティアス達の姿は無かった。
「そんな・・・クリス・・・マティアス司祭・・・」
「こうなってしまった以上、部隊を分けるのは不可能だ。このままヴァイオリンを持って屋上へと向かう。いいな?ケヴィン」
「えぇ、致し方がありません。お二人とも、行きましょう」
二人の姿が見当たらぬ廊下で膝をつき、悲しみに暮れるレオンとカルロスを起こし、一行はヴァイオリンを持って屋上へと向かう。
それぞれに必要な人材は一部決まっている。しかし問題なのは、戦えるのがオイゲンだけだという事だろう。その上、オイゲンは内心いち早く屋上の状況を知りたがっている。
つまり屋上チームの一人はオイゲン。そして必要不可欠なヴァイオリン奏者として、アンドレイか音楽学校の生徒である三人の内誰かになるのだが、実力的に言えばアンドレイとレオンが適任だろうと予想される。
「ここで更に二手に・・・ですか」
「えぇ、少し危険な賭けですが悠長にしていられる時間も、恐らくは我々にはありません。現地で戦っているという彼らが、楽譜の力を使った霊達といつまでも持ち堪えられる保証は何処にもないのですから・・・」
ケヴィンの言葉に、一行は司令室での戦闘を思い出す。あれだけの人数が居ながら、戦えぬ者達は瞬く間に姿を消し、いざ戦闘が始まると熟練した猛者達がたった一人の音楽家に押されてしまうほどの戦力差があった。
相手の出方や能力が分からない上に、守りを優先していた者達も多いという事もあるが、それを抜きにしても月光写譜の特殊な能力はとても侮れるものではない。
「それは確かにそうかもしれませんが、オイゲンさんの力無くして何処にあるかまだ確定した訳でもないチェンバロを探すのは、かなりリスキーだと思いますよ」
「おっしゃる通り・・・。ですが」
突然ケヴィンらしからぬ提案をし出したことに、オイゲンとアンドレイは何か違和感を覚えていた。そしてその場にいた誰もが、アンドレイの指摘と同じ事を思っていただろう。
レオンとカルロスだけは道中の会話の件もあり、密かにケヴィンの提案に賛同していた。どちらにしろレオンとカルロスは別々の戦場へ向かうことになる。
ジルのいる宮殿入り口へ向かいたいと言えば、当然許諾されそうにない目的を抱えている以上、如何にして別行動を取る機会を得るか、そのタイミングを伺っていた。
だがそんな不毛な言い争いをしている場合ではないと、ケヴィンが自分の為に無理を言っているのだと察したオイゲンが、その必要はないと口を開く。
「よせケヴィン。気を使う必要はない。アンドレイの言う通り出来るだけ危険は避けるべきだ。先ずはヴァイオリンを持って皆で屋上へ向かう。その後で対ベルンハルト用の楽器であるチェンバロの場所を・・・」
オイゲンがケヴィンの提案に変わる作戦の指示を話し始めた時、彼らにとって不測の事態が起こり始める。
「マティアスさんッ!!」
クリスの声とほぼ同時に、オイゲンとケヴィンも一行の元に差し迫る何かの気配に身構える。部屋の入り口に最も近かったマティアスは、咄嗟に動いたクリスの判断で廊下へと飛び出す。
その時一行を襲ったのは、複数の謎の人物だった。これまで不気味な程姿を見せなかったのは、彼らを楽器のある部屋へ誘い込む為だったのか、一行の行手を阻むかのように入り口を破壊した。
クリスとマティアスが辛うじて廊下へ飛び出したものの、部屋を封鎖するように瓦礫が崩れ落ち、オイゲン達が閉じ込められてしまう。
「皆俺の側へ!決して離れぬように!」
部屋の外にも中にも謎の人物達が続々と集まってくる。瞬く間に囲まれてしまう一行。部屋の中にはオイゲンがいるが、分断されてしまった外には戦える者はいない。
だが、宮殿内の構造に詳しい案内役の二人が部屋の外に追い出されてしまった。不幸中の幸いと言うべきか、チェンバロがあると思われる場所については、オイゲンらは二階にある倉庫が怪しいと聞いている。
故に案内役としての役割を果たしているとも言える状況だった。大きな声で外の様子を確認するオイゲン。マティアスは一先ず無事ではあると伝えるものの、外も同じように謎の人物達に囲まれてしまっているという状況を伝える。
オイゲンはなるべく早く片付けるとマティアス達に伝え、可能な限り生き延びる手段を取るようにだけ伝える。しかしどうやらそれも長くは保たなかった。
全力で部屋の内部の敵を一掃するオイゲンだったが、外からはマティアスとクリスの悲痛な悲鳴が響き渡っていた。分断されてしまった時点で、一行は嫌な予感がしていた。マティアスとクリスはここまでだと。
必死に名前を呼ぶレオンとカルロスの声も虚しく、返事は返ってくる事はない。諦めムードの中、オイゲンは一人黙々と部屋の内部に入り込んだ敵を倒しきり、扉への道を塞ぐように立ちはだかる瓦礫を吹き飛ばし、廊下へと飛び出すオイゲン達。
しかしそこには、既にマティアス達の姿は無かった。
「そんな・・・クリス・・・マティアス司祭・・・」
「こうなってしまった以上、部隊を分けるのは不可能だ。このままヴァイオリンを持って屋上へと向かう。いいな?ケヴィン」
「えぇ、致し方がありません。お二人とも、行きましょう」
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