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神代 コウ

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形勢逆転と一騎打ち

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 無数の糸がブルースの身体を絡め取り、謎の人物と彼の身体が光を反射してキラキラと光る糸でがっちりと繋がれる。ここまで絡んでしまうと、最早バルトロメオの青い炎や紅葉の火の粉では焼き切る事は不可能。

 引火させようものなら、ブルースの身体も無事では済まない。それを謎の人物達が意図的に救助できないようにしたのかは定かではないが、これによりある危険性が証明された。

 それは、相手側のほぼ無制限とも考えられる謎の人物達が、ベルンハルトの影響を受けると全身を糸の性質へと変化させることがあるという事。

 全ての謎の人物達がブルースを捕らえた個体と同じように、全身を糸に変えることができると確定したわけではないが、少なからず彼らのいる司令室とその周辺、及びベルンハルトの周りに現れる謎の人物達にはそのような特徴があると考えておいた方がいいだろう。

 これにより何が考えられるか。要するに自身の命を顧みない行動を行える謎の人物達による“自爆“なのだ。ブルースの身体を捕らえたように、糸への対策が不可能な状態に持ち込まれてしまえば、救う方法がなくなってしまうということだ。

「はぁッ!?んだよあれ!」

「奴自体が糸になった・・・だと!?」

 その様子を見ていた一行の脳裏には、その衝撃的な光景からその後起こり得るであろう出来事の想像が容易に出来た。だがあくまで、糸は音の振動を特定の場所に集約し、伝える手段に過ぎない。

 これまで説明してきたものは、所詮導火線に過ぎず起爆剤や引火といった根源となるものはベルンハルトの能力にある。つまり本体であるベルンハルトを止めることが出来れば、全ての問題が解決する事になる。

 謎の人物が糸でブルースの身体を捕らえたのを確認したベルンハルトは、演奏に強めの音を混ぜるアクセントを加えた。演奏から伝わる音の振動は、謎の人物の糸からなる身体を媒体に集まり蓄積される。

 そして一定数を超えると糸を伝って、繋がれたブルースの身体へと一気に流れ込み、振動は衝撃へ変わり、集められた衝撃は威力を増して爆発を引き起こす。

「ッ!!」

「チッ・・・!悪いな、大将・・・。一旦ゾルターンの元に・・・!?」

 衝撃が謎の人物からブルースへと伝わる瞬間、彼らの身体が細かく振動し一気に爆発する。しかし爆発したのは、彼らの身体から成る床に映し出された影だったのだ。

「なッ何が起こった!?」

 何の変哲もなかった床が突如爆発した事に驚く一行。そしてその爆発はベルンハルトのすぐ側で起きた。これにより激しく飛び散った床の破片が、演奏するベルンハルトへと命中する。

 ただ命中するといっても、身体を透過したに過ぎず、一時的な命中した部位の消失に留まる程度だった、だがそれだけでも、ベルンハルトの演奏を止めるのには十分だったのだ。

 破片は彼の腕へと飛んでいき、肘の部分が透過した事によりその先の腕や手がその身体の形状を保てず、一時的にその姿を消したのだ。これにより今まで司令室に流れていた演奏が止まる。

 どうやら背中を透過した瓦礫がもう片方の腕も使用不可能な状態にしたようで、一行に降り掛かっていた過剰な身体能力を向上させるバフ効果が解かれた。

「身体がッ・・・。よっしゃ!今のうちに仕留めてやる!」

「今の爆発は・・・?いや、今は奴を止めるのが先かッ!」

 身体に起きている変化は自分自身が一番よくわかる。演奏が止まった事により、戦えないレオンやクリスらだけでなく、シンやオイゲン、そしてバルトロメオらも身体の制御を考えずとも自由に動けるようになり、一気に形勢は逆転。

 最もベルンハルトに近い位置にいたブルースだが、謎の人物に拘束されたまま動けない。一旦彼を下がらせる為、バルトロメオは腕を召喚しブルースの身体を謎の人物から切り離した。

 バフ効果が切れた事により、思う存分能力を振るえるようになったバルトロメオは、ブルースの身体を確保すると同時に彼と糸で繋がる謎の人物を別の召喚した腕で掴み取る。

 そして謎の人物を掴んでいる手に青い炎を着火させ、脆くなった糸を更に別の腕の指を器用に使い、切断することで彼の救出に成功した。その隙にガジェットで急接近したシンが、不安定な身体になったベルンハルトに魔力を帯びた拳を打ち放つ。

 すると、シンとベルンハルトを閉じ込めるようにドーム状のバリアが張られる。これはオイゲンがシンとベルンハルトを、一対一の状況にする為のステージを作り上げたのだ。

 突如覆われたバリアの中でも、シンはまずはベルンハルトに一撃を入れてからだと判断し、考えるよりも先に攻撃を優先する。演奏を止められたベルンハルトは、当然閉じ込められたその範囲から脱出を試みようとするも、彼らを覆うドーム状のバリアは床も透過出来ないように塞いでいたようだ。
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