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古楽の演奏
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するとベルンハルトはその場で両腕を広げると、彼の正面に光が集まりチェンバロと呼ばれる鍵盤楽器が召喚される。チェンバロはルネサンス音楽やバロック音楽で幅広く使われてきたとされているが、その後十八世紀後半から現代でも多くの人々に馴染みのあるピアノの興隆により、徐々にその姿を消していってしまう。
しかし二十世紀から演奏上の要素の解釈や、当時の音律や楽器の特性などの演奏様式を考慮した演奏が行われるようになり、再びその姿を表すようになったという。
古楽とされる時代に演奏をしていたベルンハルト本人の演奏ともなれば、今の音楽家である彼らにとっても、例えそれが魂の記憶が再現する演奏だとしても、これ以上ない程貴重な経験になる。
故にその場にいたブルースやアンドレイ、そして音楽学校のレオンやクリスは、その演奏が何かの引き金であろうとも、奏でられる演奏に耳を傾けずにはいられなかった。
「何だ?演奏でも始める気か?」
「あまりいい予感はしませんね・・・。先程からの糸が音の振動を伝えるものと考えると、楽器は正しく音を奏でるものですから・・・!?」
オイゲンらがベルンハルトの奇行に身構えていると、ケヴィンがその演奏自体が何らかの攻撃になるのではないかと話し、何かされる前に演奏を止めるよう声をかける。
「あれは“攻撃“です!早く止めて下さいッ!」
「攻撃?あの演奏がか?」
「お忘れですか!?今まで私達を襲っている攻撃は、その殆どが音によるものです。どんな攻撃かは分かりませんが、彼に音を奏でさせてはいけません!」
オイゲンと部隊員の二人は視線を合わせて頷くと、ケヴィンの言葉とこれまでの経験を踏まえ、ベルンハルトの演奏を止める為に動き出す。彼は既に召喚したチェンバロの前に座り、手にしていた楽譜を開き演奏を始めようとしていた。
いつまた糸の攻撃がやってくるか分からない中、オイゲンによる光の加護を付与された隊員二人が剣を構え、演奏するベルンハルトへと切り掛かる。しかし、それを阻むように床を擦り抜けて現れた謎の人物達が目の前に立ちはだかる。
「邪魔だッ!」
「どけッ!」
素早く鞘から引き抜かれた剣を振るい、飛び出してきた謎の人物達を一撃で斬り捨てる。だがその一瞬の間が、ベルンハルトの指は鍵盤に触れて音を奏で始めてしまう。
昨日の記憶を引き継いでいると言うブルースは、バルトロメオの召喚する手によって包み込むように身を守り様子を伺っている。それを横目に見ていたアンドレイは、ベルンハルトが何かを仕掛けてくるのだと悟り、ツバキとアカリ、そして紅葉にシンの周りへ集まるように呼びかける。
「シンさん!何か守りのスキルはお持ちですか?」
「みんなの影を使って衝撃を受け流すことくらいなら」
「構いません、急ぎお願いします!」
突然守りを固めるように言われたシンは、各々の影を本人の身体に染み込ませるように吸収させる。シン達は一時的に影を失うが、影は彼らの身体を覆い身を守る膜のように全身に纏っていたのだ。
攻めや守りを固める彼らに対し、マティアス達は身を守る術を持っていなかった。糸を断ち切るくらいの魔力はあるものの、マティアスも戦闘を行えるクラスではないので、それぞれ行動を起こす者達の中で彼らはどうすることもできず、ただベルンハルトの演奏を聞くしかなかった。
彼らの予想通り、ベルンハルトの演奏はただの音楽ではなく彼らに対する攻撃だったのだ。しかしその演奏による攻撃の攻略法は、何もしない事こそ最も被害を小さく収めるカラクリになっていたのだ。
ベルンハルトの演奏は音楽を嗜む人間でなくても意識を向けられてしまうほど引き込まれる演奏であり、その演奏を聞いてしまった一行は、様々な現象に見舞われる事になる。
先ずはベルンハルトに斬り掛かっていった教団の護衛隊員の二人だが、謎の人物を倒した後に、ベルンハルトの元へと一気に駆け抜けたのだが、二人はチェンバロを演奏する彼の元を通り過ぎ、凄まじい勢いで壁へと衝突して行ったのだ。
「なッ・・・!?」
例え自ら壁に突っ込んで行ったとしても、自身の意識がブレーキになりあそこまでの衝突にはならな筈だった。大きな物音と共に瓦礫の中から姿を見せた二人は頭部から血を流して意識を失っていたのだ。
何が起こったのか理解できず唖然とするオイゲンとケヴィン。その物音に気を取られていた一行の中で、シンとバルトロメオも突然その場に膝をつき倒れてしまう。
「どうしたの!?シンさん」
「見ろ!すげぇ汗だ、何だってこんなに疲労してんだぁ!?」
すぐ側で倒れるシンの音に視線を向けたツバキとアカリが、彼の様子を見てすぐに意識があるか声をかける。だがシンは、まるで限界まで走り続けたかのように大きく口を開けて荒々しい呼吸で、苦しそうにしている。
同じく倒れたバルトロメオも症状は同じだった。彼らの身に何が起こったのか、被害のなかった者達には一切理解する事はできなかった。ただ一人の人物を除いては・・・。
その人物こそ、昨日の失われた記憶を持っているブルースだったのだ。彼だけは常人と同じ身体の構造をしておらず、魂だけの存在であり護衛の一人であるゾルターンの作り出した精巧な人の形をした人形を依代にしている事で、彼らの身に起きた異変を受けることはなかった。
「すまない、バルトロメオ・・・。お前の能力でも防ぎようがなかったとは・・・」
「たっ大将・・・アンタは無事か?」
「あぁ・・・」
「そりゃぁ・・・良かったぜ・・・」
ブルースは倒れるバルトロメオの上体を抱えると、事前にこうなる事を見越していたかのように彼に回復薬を飲ませると、バルトロメオは息を整えて全身を覆っていた疲労感を払拭した。
「同じ轍は踏まないさ・・・。これは奴の演奏による“バフ“効果だ。僅かな力で強力な攻撃を出せる代わりに、疲労や反動が倍以上になって返ってくる」
しかし二十世紀から演奏上の要素の解釈や、当時の音律や楽器の特性などの演奏様式を考慮した演奏が行われるようになり、再びその姿を表すようになったという。
古楽とされる時代に演奏をしていたベルンハルト本人の演奏ともなれば、今の音楽家である彼らにとっても、例えそれが魂の記憶が再現する演奏だとしても、これ以上ない程貴重な経験になる。
故にその場にいたブルースやアンドレイ、そして音楽学校のレオンやクリスは、その演奏が何かの引き金であろうとも、奏でられる演奏に耳を傾けずにはいられなかった。
「何だ?演奏でも始める気か?」
「あまりいい予感はしませんね・・・。先程からの糸が音の振動を伝えるものと考えると、楽器は正しく音を奏でるものですから・・・!?」
オイゲンらがベルンハルトの奇行に身構えていると、ケヴィンがその演奏自体が何らかの攻撃になるのではないかと話し、何かされる前に演奏を止めるよう声をかける。
「あれは“攻撃“です!早く止めて下さいッ!」
「攻撃?あの演奏がか?」
「お忘れですか!?今まで私達を襲っている攻撃は、その殆どが音によるものです。どんな攻撃かは分かりませんが、彼に音を奏でさせてはいけません!」
オイゲンと部隊員の二人は視線を合わせて頷くと、ケヴィンの言葉とこれまでの経験を踏まえ、ベルンハルトの演奏を止める為に動き出す。彼は既に召喚したチェンバロの前に座り、手にしていた楽譜を開き演奏を始めようとしていた。
いつまた糸の攻撃がやってくるか分からない中、オイゲンによる光の加護を付与された隊員二人が剣を構え、演奏するベルンハルトへと切り掛かる。しかし、それを阻むように床を擦り抜けて現れた謎の人物達が目の前に立ちはだかる。
「邪魔だッ!」
「どけッ!」
素早く鞘から引き抜かれた剣を振るい、飛び出してきた謎の人物達を一撃で斬り捨てる。だがその一瞬の間が、ベルンハルトの指は鍵盤に触れて音を奏で始めてしまう。
昨日の記憶を引き継いでいると言うブルースは、バルトロメオの召喚する手によって包み込むように身を守り様子を伺っている。それを横目に見ていたアンドレイは、ベルンハルトが何かを仕掛けてくるのだと悟り、ツバキとアカリ、そして紅葉にシンの周りへ集まるように呼びかける。
「シンさん!何か守りのスキルはお持ちですか?」
「みんなの影を使って衝撃を受け流すことくらいなら」
「構いません、急ぎお願いします!」
突然守りを固めるように言われたシンは、各々の影を本人の身体に染み込ませるように吸収させる。シン達は一時的に影を失うが、影は彼らの身体を覆い身を守る膜のように全身に纏っていたのだ。
攻めや守りを固める彼らに対し、マティアス達は身を守る術を持っていなかった。糸を断ち切るくらいの魔力はあるものの、マティアスも戦闘を行えるクラスではないので、それぞれ行動を起こす者達の中で彼らはどうすることもできず、ただベルンハルトの演奏を聞くしかなかった。
彼らの予想通り、ベルンハルトの演奏はただの音楽ではなく彼らに対する攻撃だったのだ。しかしその演奏による攻撃の攻略法は、何もしない事こそ最も被害を小さく収めるカラクリになっていたのだ。
ベルンハルトの演奏は音楽を嗜む人間でなくても意識を向けられてしまうほど引き込まれる演奏であり、その演奏を聞いてしまった一行は、様々な現象に見舞われる事になる。
先ずはベルンハルトに斬り掛かっていった教団の護衛隊員の二人だが、謎の人物を倒した後に、ベルンハルトの元へと一気に駆け抜けたのだが、二人はチェンバロを演奏する彼の元を通り過ぎ、凄まじい勢いで壁へと衝突して行ったのだ。
「なッ・・・!?」
例え自ら壁に突っ込んで行ったとしても、自身の意識がブレーキになりあそこまでの衝突にはならな筈だった。大きな物音と共に瓦礫の中から姿を見せた二人は頭部から血を流して意識を失っていたのだ。
何が起こったのか理解できず唖然とするオイゲンとケヴィン。その物音に気を取られていた一行の中で、シンとバルトロメオも突然その場に膝をつき倒れてしまう。
「どうしたの!?シンさん」
「見ろ!すげぇ汗だ、何だってこんなに疲労してんだぁ!?」
すぐ側で倒れるシンの音に視線を向けたツバキとアカリが、彼の様子を見てすぐに意識があるか声をかける。だがシンは、まるで限界まで走り続けたかのように大きく口を開けて荒々しい呼吸で、苦しそうにしている。
同じく倒れたバルトロメオも症状は同じだった。彼らの身に何が起こったのか、被害のなかった者達には一切理解する事はできなかった。ただ一人の人物を除いては・・・。
その人物こそ、昨日の失われた記憶を持っているブルースだったのだ。彼だけは常人と同じ身体の構造をしておらず、魂だけの存在であり護衛の一人であるゾルターンの作り出した精巧な人の形をした人形を依代にしている事で、彼らの身に起きた異変を受けることはなかった。
「すまない、バルトロメオ・・・。お前の能力でも防ぎようがなかったとは・・・」
「たっ大将・・・アンタは無事か?」
「あぁ・・・」
「そりゃぁ・・・良かったぜ・・・」
ブルースは倒れるバルトロメオの上体を抱えると、事前にこうなる事を見越していたかのように彼に回復薬を飲ませると、バルトロメオは息を整えて全身を覆っていた疲労感を払拭した。
「同じ轍は踏まないさ・・・。これは奴の演奏による“バフ“効果だ。僅かな力で強力な攻撃を出せる代わりに、疲労や反動が倍以上になって返ってくる」
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