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伏せられた犯行
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「ブルース・ワルター氏の意識が戻りました!」
「意識が・・・?体調不良じゃなかったの?」
ニノンの問いに答えたのはオイゲンだった。ブルースの容態に異変があった事は彼女にも伏せられていたようだ。
「彼の容態に関してはごく一部の者以外には、体調不良ということで伝えてあったんだ」
「私にも黙ってたの!?」
「犯人が一人であるかも定かではない。どこで誰が聞いているか分からなかったんだ。ブルースらの護衛と一部の者以外には伝えていなかった。すまない、信頼していない訳ではなかったんだが・・・」
「いえ、私も別に問い詰めたい訳じゃないし、それに忙しかったから・・・」
「それで?意識がなかったことをどうして・・・!まさかッ・・・!?」
オイゲンが隠していたブルースの容態に関しては、ケヴィンにも知らされていなかったようだ。彼がその理由について聞こうとしたところで、ケヴィンはその思惑に気がついた。
「直ぐにブルース・ワルターの護衛に向かってくれニノン。今度は信頼できる君にしか頼めないことだ」
「どういう事?」
「“犯行は行われていた“・・・ですよね?オイゲン氏」
「彼から連絡が来た時は驚いた。自分が囮になるなどと彼が言い出すとは思えなかったからな」
オイゲンは宮殿でのジークベルト大司教の事件以降、一度ブルース・ワルターの一行と行動を共にしていた事がある。その時に彼の方からオイゲン、個人的に連絡を取れるようにしておきたいとのことで、通話機能のIDを聞かれたのだという。
それ程親しくなった覚えのないオイゲンは、彼のその行動を不審に思い、何故自分にだけそんな事を聞くのかと尋ねると、命を狙われる可能性があるからだとオイゲンに告げた。
そこでブルースの過去と、現在の存在の在り方について知ったオイゲンは、彼との約束通りそれを他者に明かす事なく今まで隠し通してきたという。しかし今回の襲撃はオイゲンは勿論、ブルース自身にも身に覚えのないものだった。
いつもの刺客ではない謎の人物の攻撃を受けたブルースは、咄嗟にそれを今回の一連の事件の犯人による犯行だと思い、彼に連絡したのだという。
「事態は急を要する。犯人がブルースの意識が戻ったことを知っているかは分からないが、もしそれに気がついたのならば、犯行の手口が漏れる前に始末しに行く筈だ。何人か手練れを連れて行ってくれて構わない。至急ブルースらの救援に向かってくれ」
「了解した。それじゃぁ・・・」
ニノンはオイゲンの指示に従い、共にブルースの元へ向かう仲間を探す。そしてその目に掛かったのは意外な人物だった。
「ミアさんをお借りしてもいいかしら?」
「え?何故ミアなんだ?」
「あら、それを聞くの?女同士の方がやり易い事だってあるじゃない。それに彼女の腕前も気になるの」
「へぇ~、こいつぁ光栄だね。まさか教団の護衛隊様からご指名頂けるとはね。いいよ、アタシもアンタの実力、気になってたし」
二人の利害は直ぐに一致し、出発の準備をするミア。すんなりと受け入れたミアの心境も気になったが、どうしてこんな流れになったのかと動揺するシン。
「大丈夫だよシン。彼女は強いし」
「いや、それは分かってるんだが、何でニノンはミアを・・・。そんなに親しくなってたのか?」
確かにニノンと行動を共にしていた期間も長かったが、それでも部屋の中でミアとニノンが親しく話している光景を見たことがなかったシン。すると、彼の心配を振り払うようにアカリが女性部屋での事を聞かせてくれた。
「でも夜は仲良くみんなで話してましたよ?ニノンさんが教団に入る前の事や、オイゲンさんとの出会いの事とか」
「ほら!私達が気にする程じゃないんだよきっと。だからミアの事はニノンさんに任せよう」
「人を問題児みたいに言うな」
「ミア!」
「安心してくれ、無茶はしないよ。それに別行動ならこれまでもしてきただろ?」
「あぁ、そうだな・・・分かった」
ミアはシンの肩を叩き安心させると、ニノンと一緒に司令室を後にした。
「さて、犯人による犯行が行われていたのなら、カメラに何らかの動きが映っているかもしれませんよ?シンさんも手伝って下さい」
シンはケヴィンに案内され、モニターの前にやって来る。ツバキやアカリの事は教団の護衛やツクヨに任せ、ブルースを狙う犯人の動きを捉える為にもシンは捜査に加わった。
ブルースの部屋を目指す道中、ミアはニノンに自分を選んだ本当の理由について尋ねていた。彼女の口実がどうにも後付けに聞こえてならなかったミア。あの場ではニノンの話に乗っかったが、彼女の本当の思惑とは何だったのか。
「本当に大した理由ではないの。ただオイゲンもケヴィンも、彼のクラスとスキルを頼りにしてるみたい」
「そんなに珍しいモンなのか?アサシンってのが・・・」
「?おかしな事を言うのね。だってアサシンなんてクラス、滅多に耳にするクラスではないもの」
薄々おかしいとは思っていた。ミアやシンはWoFというゲームの中で日々の時間を費やしていた頃、アサシンというクラスは割とメジャーなクラスであり珍しいなどと感じた事など一度もなかった。
ただ、対人要素であるPvPやレイド戦においてはあまり注目を浴びるクラスではなかった為、それ程人口が多いという印象もなかった。爽快感や工夫のしがいがあるクラスに比べ、一般的に花がないクラスといった印象であったアサシンだが、彼らがこの異変に塗れたWoFの世界に転移できるようになってからというものの、アサシンのギルドを見かけないどころか、アサシンのクラスについて知る者自体がほとんどいないのだ。
それがたまたま出会いのなかっただけの話なのか、何か理由があってアサシンのクラスが消えてしまったのか。その真相を彼らが知るのはまだ先の話だった。
「意識が・・・?体調不良じゃなかったの?」
ニノンの問いに答えたのはオイゲンだった。ブルースの容態に異変があった事は彼女にも伏せられていたようだ。
「彼の容態に関してはごく一部の者以外には、体調不良ということで伝えてあったんだ」
「私にも黙ってたの!?」
「犯人が一人であるかも定かではない。どこで誰が聞いているか分からなかったんだ。ブルースらの護衛と一部の者以外には伝えていなかった。すまない、信頼していない訳ではなかったんだが・・・」
「いえ、私も別に問い詰めたい訳じゃないし、それに忙しかったから・・・」
「それで?意識がなかったことをどうして・・・!まさかッ・・・!?」
オイゲンが隠していたブルースの容態に関しては、ケヴィンにも知らされていなかったようだ。彼がその理由について聞こうとしたところで、ケヴィンはその思惑に気がついた。
「直ぐにブルース・ワルターの護衛に向かってくれニノン。今度は信頼できる君にしか頼めないことだ」
「どういう事?」
「“犯行は行われていた“・・・ですよね?オイゲン氏」
「彼から連絡が来た時は驚いた。自分が囮になるなどと彼が言い出すとは思えなかったからな」
オイゲンは宮殿でのジークベルト大司教の事件以降、一度ブルース・ワルターの一行と行動を共にしていた事がある。その時に彼の方からオイゲン、個人的に連絡を取れるようにしておきたいとのことで、通話機能のIDを聞かれたのだという。
それ程親しくなった覚えのないオイゲンは、彼のその行動を不審に思い、何故自分にだけそんな事を聞くのかと尋ねると、命を狙われる可能性があるからだとオイゲンに告げた。
そこでブルースの過去と、現在の存在の在り方について知ったオイゲンは、彼との約束通りそれを他者に明かす事なく今まで隠し通してきたという。しかし今回の襲撃はオイゲンは勿論、ブルース自身にも身に覚えのないものだった。
いつもの刺客ではない謎の人物の攻撃を受けたブルースは、咄嗟にそれを今回の一連の事件の犯人による犯行だと思い、彼に連絡したのだという。
「事態は急を要する。犯人がブルースの意識が戻ったことを知っているかは分からないが、もしそれに気がついたのならば、犯行の手口が漏れる前に始末しに行く筈だ。何人か手練れを連れて行ってくれて構わない。至急ブルースらの救援に向かってくれ」
「了解した。それじゃぁ・・・」
ニノンはオイゲンの指示に従い、共にブルースの元へ向かう仲間を探す。そしてその目に掛かったのは意外な人物だった。
「ミアさんをお借りしてもいいかしら?」
「え?何故ミアなんだ?」
「あら、それを聞くの?女同士の方がやり易い事だってあるじゃない。それに彼女の腕前も気になるの」
「へぇ~、こいつぁ光栄だね。まさか教団の護衛隊様からご指名頂けるとはね。いいよ、アタシもアンタの実力、気になってたし」
二人の利害は直ぐに一致し、出発の準備をするミア。すんなりと受け入れたミアの心境も気になったが、どうしてこんな流れになったのかと動揺するシン。
「大丈夫だよシン。彼女は強いし」
「いや、それは分かってるんだが、何でニノンはミアを・・・。そんなに親しくなってたのか?」
確かにニノンと行動を共にしていた期間も長かったが、それでも部屋の中でミアとニノンが親しく話している光景を見たことがなかったシン。すると、彼の心配を振り払うようにアカリが女性部屋での事を聞かせてくれた。
「でも夜は仲良くみんなで話してましたよ?ニノンさんが教団に入る前の事や、オイゲンさんとの出会いの事とか」
「ほら!私達が気にする程じゃないんだよきっと。だからミアの事はニノンさんに任せよう」
「人を問題児みたいに言うな」
「ミア!」
「安心してくれ、無茶はしないよ。それに別行動ならこれまでもしてきただろ?」
「あぁ、そうだな・・・分かった」
ミアはシンの肩を叩き安心させると、ニノンと一緒に司令室を後にした。
「さて、犯人による犯行が行われていたのなら、カメラに何らかの動きが映っているかもしれませんよ?シンさんも手伝って下さい」
シンはケヴィンに案内され、モニターの前にやって来る。ツバキやアカリの事は教団の護衛やツクヨに任せ、ブルースを狙う犯人の動きを捉える為にもシンは捜査に加わった。
ブルースの部屋を目指す道中、ミアはニノンに自分を選んだ本当の理由について尋ねていた。彼女の口実がどうにも後付けに聞こえてならなかったミア。あの場ではニノンの話に乗っかったが、彼女の本当の思惑とは何だったのか。
「本当に大した理由ではないの。ただオイゲンもケヴィンも、彼のクラスとスキルを頼りにしてるみたい」
「そんなに珍しいモンなのか?アサシンってのが・・・」
「?おかしな事を言うのね。だってアサシンなんてクラス、滅多に耳にするクラスではないもの」
薄々おかしいとは思っていた。ミアやシンはWoFというゲームの中で日々の時間を費やしていた頃、アサシンというクラスは割とメジャーなクラスであり珍しいなどと感じた事など一度もなかった。
ただ、対人要素であるPvPやレイド戦においてはあまり注目を浴びるクラスではなかった為、それ程人口が多いという印象もなかった。爽快感や工夫のしがいがあるクラスに比べ、一般的に花がないクラスといった印象であったアサシンだが、彼らがこの異変に塗れたWoFの世界に転移できるようになってからというものの、アサシンのギルドを見かけないどころか、アサシンのクラスについて知る者自体がほとんどいないのだ。
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