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叫ぶ女霊
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「きっ消えた!?」
「ケイシー!」
「分かってる!・・・ッ!?」
これまで不調だったケイシーの気配探知だったが、その時の彼の気配探知にはハッキリとその人物の気配が感じ取れていた。ケイシーが上だと声を上げると、一行が一斉に上を見上げる。
するとそこには、先程姿を消した謎の人物が残した黒い霧と同じものが、渦を巻いて集まっていた。敵の動きが予測できない中、一行は渦を巻く黒い霧から距離を置きその動向を伺う。
間も無くして黒い霧の中から姿を現したのは、他の教会でシンやブルースらを襲ったものとよく似た、他の謎の人物達より大きく膨れ上がった悍ましい姿の人間だった。
それは上半身のみで一行の前に現れ、長い髪をまるで触手のように不気味に靡かせた女の容姿をしていた。登場と同時に高音の叫び声を上げたその人物の声に、思わず耳を覆う一行。
待機を震わすその声は、博物館内のガラスを次々に割っていった。
「うッ・・・うるせぇッ・・・!」
「頭が割れそう・・・!」
両手を塞がれた一行の中で、唯一尻尾を持つチャドが耳を覆いながらかだを捻ると、勢いよく振られた彼の尻尾が叫ぶ女へ向けて鞭のような一撃を打ち込む。
チャドの尻尾には魔力が纏われている。もしその女が謎の人物達と同じ霊体の特徴を有しているのなら、攻撃が命中する筈。それをまるで理解しているかのように、女はチャドの尻尾を両手で受け止める。
「ッ!」
すると、女の掴んだチャドの尻尾が突然血飛沫を上げた。振り払うように暴れるチャド。女の力はそれ程強いものではなく簡単に振り解くことが出来たが、彼には一体何をされたのか理解する事さえ出来なかった。
「チャド、無事か!?」
「えぇ・・・何とか。でも一体何をされたのか・・・」
竜人族の肉体や皮膚は、そう簡単に突破できるものではない。それこそただの人間の力で打ち破れるものでなければ、刃物を簡単に通すこともない。故にアンドレイの護衛となってからも、チャドはそう簡単に傷を負うこともなかった。
痛々しく鱗の隙間を埋めるように垂れるチャドの尻尾から、アンドレイは彼が受けた攻撃が外部からのものではなく、内部から破壊する攻撃であったことを分析する。
「チャド、その傷・・・」
「え?すみません・・・油断しました」
「そうじゃない。チャドの恵まれた身体はそう簡単に傷つけられるものじゃない筈だ。それが触れただけでこの威力・・・いや、威力とかいう問題ではないのかもしれない」
「どういう事です?」
そこでアンドレイは、過去の経験から守りの硬い相手に対する崩し方の例をいくつか挙げた。その中でも有力候補として彼が推したのは、自分の魔力を相手に流し込み溢れさせるものだった。
文字通り許容量を超えた魔力は、その溢れた部位から溢れ外壁である皮膚や皮を突き破ることがるのだと語った。今チャドが受けた攻撃も、霊体である敵の女の姿からも想像しやすい。
「要するに、彼女に触れられるのは危険だということだ」
「つまり素早い連撃に弱いということですね、アンドレイ様!チャド、貴方はアンドレイ様の護衛に回りなさい」
対策を身につけたシアラが一気に距離を詰め、手にしたナイフに魔力を込めて宙に浮く女に攻撃を仕掛ける。なるべくアンドレイから離したかったのか、魔力を帯びた攻撃の他に物理攻撃も織り交ぜながら、後方へ退かせていく。
柔軟な動きでシアラが翻弄している間に、アンドレイらはジルとカルロスを連れて部屋を離れ、なるべく広いところを確保しようと博物館の外を目指すのだが、先程の女の叫びにより誘われた謎の人物達が、外に通じる博物館の扉を守るかのように集まっていたのだ。
「アンドレイ様!」
「やべぇぞ!さっきのあの声で、外の奴らが集まって来やがった!」
「他に出口は!?」
一行が入ってきた正面の入り口は、既に何人もの謎の人物達によって固められていた。だがこちらへ攻め込んでくる様子はなく、近づかなければ襲いかかってくる様子もない。
この者達もやはり他の教会に現れた親玉と同じように、彼らを従えているのだろう。違いがあるとすれば、博物館に現れた女の霊は謎の人物達に指令を出し、言うことを聞かせているという事だった。
そうでなければ、入り口で待機することなどなく襲い掛かってくる筈。ジルはカタリナと博物館の代物を返しに来た時に、別の入り口から博物館へ入ってた。すぐに思い浮かんだ別の入り口に一行を案内するジル。
しかし、案の定他のルートも既に集まっていた謎の人物達によって守りを固められていた。自分が道を切り拓くと身構えるチャドだったが、それに合わせるように数を増す謎の人物達。
ジルやカルロス、そして戦えぬ主人であるアンドレイらを守りながら戦い抜けるか、僅かに迷いが生まれるチャドだったが、そこへ追い打ちをかけるように、殿を務めるように霊体の女を引き止めていたシアラのいる部屋の方から、再び耳を覆いたくなるような高音の叫び声が響き渡る。
「ケイシー!」
「分かってる!・・・ッ!?」
これまで不調だったケイシーの気配探知だったが、その時の彼の気配探知にはハッキリとその人物の気配が感じ取れていた。ケイシーが上だと声を上げると、一行が一斉に上を見上げる。
するとそこには、先程姿を消した謎の人物が残した黒い霧と同じものが、渦を巻いて集まっていた。敵の動きが予測できない中、一行は渦を巻く黒い霧から距離を置きその動向を伺う。
間も無くして黒い霧の中から姿を現したのは、他の教会でシンやブルースらを襲ったものとよく似た、他の謎の人物達より大きく膨れ上がった悍ましい姿の人間だった。
それは上半身のみで一行の前に現れ、長い髪をまるで触手のように不気味に靡かせた女の容姿をしていた。登場と同時に高音の叫び声を上げたその人物の声に、思わず耳を覆う一行。
待機を震わすその声は、博物館内のガラスを次々に割っていった。
「うッ・・・うるせぇッ・・・!」
「頭が割れそう・・・!」
両手を塞がれた一行の中で、唯一尻尾を持つチャドが耳を覆いながらかだを捻ると、勢いよく振られた彼の尻尾が叫ぶ女へ向けて鞭のような一撃を打ち込む。
チャドの尻尾には魔力が纏われている。もしその女が謎の人物達と同じ霊体の特徴を有しているのなら、攻撃が命中する筈。それをまるで理解しているかのように、女はチャドの尻尾を両手で受け止める。
「ッ!」
すると、女の掴んだチャドの尻尾が突然血飛沫を上げた。振り払うように暴れるチャド。女の力はそれ程強いものではなく簡単に振り解くことが出来たが、彼には一体何をされたのか理解する事さえ出来なかった。
「チャド、無事か!?」
「えぇ・・・何とか。でも一体何をされたのか・・・」
竜人族の肉体や皮膚は、そう簡単に突破できるものではない。それこそただの人間の力で打ち破れるものでなければ、刃物を簡単に通すこともない。故にアンドレイの護衛となってからも、チャドはそう簡単に傷を負うこともなかった。
痛々しく鱗の隙間を埋めるように垂れるチャドの尻尾から、アンドレイは彼が受けた攻撃が外部からのものではなく、内部から破壊する攻撃であったことを分析する。
「チャド、その傷・・・」
「え?すみません・・・油断しました」
「そうじゃない。チャドの恵まれた身体はそう簡単に傷つけられるものじゃない筈だ。それが触れただけでこの威力・・・いや、威力とかいう問題ではないのかもしれない」
「どういう事です?」
そこでアンドレイは、過去の経験から守りの硬い相手に対する崩し方の例をいくつか挙げた。その中でも有力候補として彼が推したのは、自分の魔力を相手に流し込み溢れさせるものだった。
文字通り許容量を超えた魔力は、その溢れた部位から溢れ外壁である皮膚や皮を突き破ることがるのだと語った。今チャドが受けた攻撃も、霊体である敵の女の姿からも想像しやすい。
「要するに、彼女に触れられるのは危険だということだ」
「つまり素早い連撃に弱いということですね、アンドレイ様!チャド、貴方はアンドレイ様の護衛に回りなさい」
対策を身につけたシアラが一気に距離を詰め、手にしたナイフに魔力を込めて宙に浮く女に攻撃を仕掛ける。なるべくアンドレイから離したかったのか、魔力を帯びた攻撃の他に物理攻撃も織り交ぜながら、後方へ退かせていく。
柔軟な動きでシアラが翻弄している間に、アンドレイらはジルとカルロスを連れて部屋を離れ、なるべく広いところを確保しようと博物館の外を目指すのだが、先程の女の叫びにより誘われた謎の人物達が、外に通じる博物館の扉を守るかのように集まっていたのだ。
「アンドレイ様!」
「やべぇぞ!さっきのあの声で、外の奴らが集まって来やがった!」
「他に出口は!?」
一行が入ってきた正面の入り口は、既に何人もの謎の人物達によって固められていた。だがこちらへ攻め込んでくる様子はなく、近づかなければ襲いかかってくる様子もない。
この者達もやはり他の教会に現れた親玉と同じように、彼らを従えているのだろう。違いがあるとすれば、博物館に現れた女の霊は謎の人物達に指令を出し、言うことを聞かせているという事だった。
そうでなければ、入り口で待機することなどなく襲い掛かってくる筈。ジルはカタリナと博物館の代物を返しに来た時に、別の入り口から博物館へ入ってた。すぐに思い浮かんだ別の入り口に一行を案内するジル。
しかし、案の定他のルートも既に集まっていた謎の人物達によって守りを固められていた。自分が道を切り拓くと身構えるチャドだったが、それに合わせるように数を増す謎の人物達。
ジルやカルロス、そして戦えぬ主人であるアンドレイらを守りながら戦い抜けるか、僅かに迷いが生まれるチャドだったが、そこへ追い打ちをかけるように、殿を務めるように霊体の女を引き止めていたシアラのいる部屋の方から、再び耳を覆いたくなるような高音の叫び声が響き渡る。
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