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強化による弊害
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しかしバッハは身体を煙のように変えて、ブルースの一撃を巧みに躱す。だがこれによりバッハによる肉体強化のバフを掛けていると思われる演奏は中断された。
再び演奏を再開しようと、バッハは身体の形を形成すると手の下に短めの鍵盤を出現させる。すかさず連撃を放ち、攻撃を重ねて演奏させまいと、当たらぬ攻撃を繰り返しバッハに打ち続けるブルース。
「チッ・・・!何故当たらない!?避けられているのか?それもとも・・・」
ブルースはバッハへの攻撃の途中で、教会の床に散らばるバルトロメオが破壊した瓦礫の欠片を拾い上げると、それをフリスビーのように回転させて投げる。
しかし、ブルースの拳と同様に瓦礫はバッハの身体に命中することはなく、演奏しようとする腕を胴体から切り離し、腕の方は煙となって一時的に消えていった。それ自体にダメージはないようで、すぐにバッハの腕は再び煙のように現れる。
だがブルースの投げた瓦礫の欠片は、その先にいた謎の人物に命中し消滅させた。投げた欠片には、ブルースの腕から放出される魔力が乗せられており、謂わばエンチャントされた状態にあった。
故に謎の人物には命中し、その姿を消し去ることには成功していたという事になる。もしブルースが戦っているバッハが、アルバに蔓延る謎の人物達と同じであれば、先程の謎の人物と動揺に欠片はバッハの腕を切り裂いていたはずなのだ。
しかし結果として、バッハにはそれは通用しなかった。彼の前にいるバッハは謎の人物達と同じようであり、同じではないことが証明された。ではその正体とは一体何なのか。
彼らが真相を知るのはもう少し先の事になる。
ブルースの活躍により、バッハにはダメージを与えることは出来ないものの、演奏を中断させ一行を苦しめていた謎の強化バフを解除することには成功した。
身体の動きが徐々に通常のものへと戻ってくる。それに伴い、謎の人物達を食い止めていたバルトロメオと、隙を伺っていたツクヨが感覚を取り戻し始める。
少しづつ自分の身体が普段通りに動き始めることを実感しつつある一行だったが、それと同時に彼らを襲ったのは通常ではあり得ないパワーを得たことによる身体への負担と疲労だったのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・。身体は動くようになってきたがよぉ・・・。何だよこの疲労感は・・・!?」
最初の暴れ具合とは比べ物にならないほど、攻撃や動きが鈍り始めるバルトロメオ。人一倍動いていたこともあり、その影響を大きく受けていたのはバルトロメオだった。
しかしながら、一行を襲った身体への負担と疲労感は、何もしていなくとも彼らの機動力と心の余裕を奪っていった。まるで限界まで長い距離を走り込んだ後かのように、胸を押さえて呼吸を荒立て始まるアカリとゾルターン。
これにより、ゾルターンが従えていた土人形の動きも彼からの魔力供給量が激減し、謎の人物達に押され始めてしまう。
「何・・・?急に呼吸が・・・」
「さっきの妙な強化バフの影響か・・・?クソッ・・・!人形達に送っていた魔力が過剰に送られていたのか・・・。もう戦わせるほどの魔力がッ・・・」
アカリ以上に疲労感を抱えていたゾルターンは、その場に四つん這いになるように崩れてしまい、何か支えがなければ上体を起こしていられない程疲れ切っていた。
それにより、押されていた土人形達も徐々にやられ始めてしまい、手の空いた謎の人物達が各々別の標的を定め襲い始めた。元々近接戦を得意とするバルトロメオやツクヨは、体力的にも何とか敵を退けるだけの余力は残っているようだが、問題は作戦を実行するブルースの方へも取り巻きが向かっていってしまった事だった。
バッハへの攻撃を続けていたブルースの背後に、突如謎の人物が接近し彼に攻撃を始める。
「何ぃッ!?バルトとゾルターンは何をしている!?・・・ッ!?」
辺りを見渡したところで、ブルースは漸く周りに起きている異変に気がついた。何故彼だけが異変に気づくのが遅れたのかは、彼だけがバッハの奏でる曲による強化バフの影響を受けていなかったからだ。
変化のなかった彼には、変化が治まった事による影響を知ることが出来なかった。当然彼も、元凶であるバッハを相手にしておりそれどころではなかった。
バッハ自身も、ブルースが攻撃を仕掛けてきた事により彼を敵対者と認識したのか、演奏と同時にもう片方の腕を振るい物理的な攻撃を仕掛けていた。直接攻撃に当たることはなかったものの、バッハの腕がブルースの身体を掠めると、触れた部分に衝撃が走り破損しているのが確認できる。
それを知ってからブルースは、あれに触れられてはならないと大袈裟に攻撃を避けるようになり、バッハに攻撃を当てる方法や決定打を打ち込む為の策を考える余裕も無くなっていた。
そこへ飛び込んできた仲間達の突然の疲弊は、彼の作戦を根本から崩す大きな痛手となっていた。遠くに見えるゾルターンの状態からも、無事に教会を脱出することすら難しくなってしまった戦況も後押ししていた。
やはり一撃で生死を彷徨う事になる攻撃を持つ相手に、事前の情報が少な過ぎたかと後悔する中で、このまま攻めるべきか引くべきか判断に迷っていると、ブルースの迷いの隙を突いた謎の人物が襲い掛かる。
「ッ!?」
気づいた時には既に避けきれない体勢になっており、ブルースが攻撃を受ける覚悟を決めて衝撃に備えたところで、その謎の人物を切り裂く一撃が放たれる。
謎の人物が真っ二つになり、塵となって消えた向こう側に現れたのはツクヨだった。彼はリナムルで入手した刀を手に、ブルースの援護に入る。
「身体は大丈夫なのか?」
「少し疲れてるけど、まだ戦えるよ」
素早い刀捌きで、まだまだ戦えるというところを証明するように、ブルースに群がっていた謎の人物達を切り裂くツクヨ。彼の剣術を間近で見たブルースは、一見してエンチャントが施されているとは思えなかった彼の刀に、何かしらの不思議な力を感じた。
それはまるで、肉体を失い魂だけとなった存在であるブルースを、本来あるべき場所へ連れて行こうとする禍々しい視線に睨まれているかのような、悍ましい悪寒がブルースが感じる筈のない感覚を全身に味わわせた。
再び演奏を再開しようと、バッハは身体の形を形成すると手の下に短めの鍵盤を出現させる。すかさず連撃を放ち、攻撃を重ねて演奏させまいと、当たらぬ攻撃を繰り返しバッハに打ち続けるブルース。
「チッ・・・!何故当たらない!?避けられているのか?それもとも・・・」
ブルースはバッハへの攻撃の途中で、教会の床に散らばるバルトロメオが破壊した瓦礫の欠片を拾い上げると、それをフリスビーのように回転させて投げる。
しかし、ブルースの拳と同様に瓦礫はバッハの身体に命中することはなく、演奏しようとする腕を胴体から切り離し、腕の方は煙となって一時的に消えていった。それ自体にダメージはないようで、すぐにバッハの腕は再び煙のように現れる。
だがブルースの投げた瓦礫の欠片は、その先にいた謎の人物に命中し消滅させた。投げた欠片には、ブルースの腕から放出される魔力が乗せられており、謂わばエンチャントされた状態にあった。
故に謎の人物には命中し、その姿を消し去ることには成功していたという事になる。もしブルースが戦っているバッハが、アルバに蔓延る謎の人物達と同じであれば、先程の謎の人物と動揺に欠片はバッハの腕を切り裂いていたはずなのだ。
しかし結果として、バッハにはそれは通用しなかった。彼の前にいるバッハは謎の人物達と同じようであり、同じではないことが証明された。ではその正体とは一体何なのか。
彼らが真相を知るのはもう少し先の事になる。
ブルースの活躍により、バッハにはダメージを与えることは出来ないものの、演奏を中断させ一行を苦しめていた謎の強化バフを解除することには成功した。
身体の動きが徐々に通常のものへと戻ってくる。それに伴い、謎の人物達を食い止めていたバルトロメオと、隙を伺っていたツクヨが感覚を取り戻し始める。
少しづつ自分の身体が普段通りに動き始めることを実感しつつある一行だったが、それと同時に彼らを襲ったのは通常ではあり得ないパワーを得たことによる身体への負担と疲労だったのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・。身体は動くようになってきたがよぉ・・・。何だよこの疲労感は・・・!?」
最初の暴れ具合とは比べ物にならないほど、攻撃や動きが鈍り始めるバルトロメオ。人一倍動いていたこともあり、その影響を大きく受けていたのはバルトロメオだった。
しかしながら、一行を襲った身体への負担と疲労感は、何もしていなくとも彼らの機動力と心の余裕を奪っていった。まるで限界まで長い距離を走り込んだ後かのように、胸を押さえて呼吸を荒立て始まるアカリとゾルターン。
これにより、ゾルターンが従えていた土人形の動きも彼からの魔力供給量が激減し、謎の人物達に押され始めてしまう。
「何・・・?急に呼吸が・・・」
「さっきの妙な強化バフの影響か・・・?クソッ・・・!人形達に送っていた魔力が過剰に送られていたのか・・・。もう戦わせるほどの魔力がッ・・・」
アカリ以上に疲労感を抱えていたゾルターンは、その場に四つん這いになるように崩れてしまい、何か支えがなければ上体を起こしていられない程疲れ切っていた。
それにより、押されていた土人形達も徐々にやられ始めてしまい、手の空いた謎の人物達が各々別の標的を定め襲い始めた。元々近接戦を得意とするバルトロメオやツクヨは、体力的にも何とか敵を退けるだけの余力は残っているようだが、問題は作戦を実行するブルースの方へも取り巻きが向かっていってしまった事だった。
バッハへの攻撃を続けていたブルースの背後に、突如謎の人物が接近し彼に攻撃を始める。
「何ぃッ!?バルトとゾルターンは何をしている!?・・・ッ!?」
辺りを見渡したところで、ブルースは漸く周りに起きている異変に気がついた。何故彼だけが異変に気づくのが遅れたのかは、彼だけがバッハの奏でる曲による強化バフの影響を受けていなかったからだ。
変化のなかった彼には、変化が治まった事による影響を知ることが出来なかった。当然彼も、元凶であるバッハを相手にしておりそれどころではなかった。
バッハ自身も、ブルースが攻撃を仕掛けてきた事により彼を敵対者と認識したのか、演奏と同時にもう片方の腕を振るい物理的な攻撃を仕掛けていた。直接攻撃に当たることはなかったものの、バッハの腕がブルースの身体を掠めると、触れた部分に衝撃が走り破損しているのが確認できる。
それを知ってからブルースは、あれに触れられてはならないと大袈裟に攻撃を避けるようになり、バッハに攻撃を当てる方法や決定打を打ち込む為の策を考える余裕も無くなっていた。
そこへ飛び込んできた仲間達の突然の疲弊は、彼の作戦を根本から崩す大きな痛手となっていた。遠くに見えるゾルターンの状態からも、無事に教会を脱出することすら難しくなってしまった戦況も後押ししていた。
やはり一撃で生死を彷徨う事になる攻撃を持つ相手に、事前の情報が少な過ぎたかと後悔する中で、このまま攻めるべきか引くべきか判断に迷っていると、ブルースの迷いの隙を突いた謎の人物が襲い掛かる。
「ッ!?」
気づいた時には既に避けきれない体勢になっており、ブルースが攻撃を受ける覚悟を決めて衝撃に備えたところで、その謎の人物を切り裂く一撃が放たれる。
謎の人物が真っ二つになり、塵となって消えた向こう側に現れたのはツクヨだった。彼はリナムルで入手した刀を手に、ブルースの援護に入る。
「身体は大丈夫なのか?」
「少し疲れてるけど、まだ戦えるよ」
素早い刀捌きで、まだまだ戦えるというところを証明するように、ブルースに群がっていた謎の人物達を切り裂くツクヨ。彼の剣術を間近で見たブルースは、一見してエンチャントが施されているとは思えなかった彼の刀に、何かしらの不思議な力を感じた。
それはまるで、肉体を失い魂だけとなった存在であるブルースを、本来あるべき場所へ連れて行こうとする禍々しい視線に睨まれているかのような、悍ましい悪寒がブルースが感じる筈のない感覚を全身に味わわせた。
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