World of Fantasia

神代 コウ

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脱出する者と救援に向かう者

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 しかしケヴィンの話では、街へ向かわせたカメラは何らかの妨害を受けて引き返させるを得なかったと言っていた。彼自身もそれを何かしらの妨害電波ではないかと予想していたようだが、それなら何故今になって通信が届いたのだろうか。

 「ちょっと待てよ。シンが何だって?アンタさっきは電子機器も宮殿の外へは行けなかったって言ってなかったか!?」

 「私だって分かりませんよ。でもシグナルはありました。犯人は電子機器を破壊することはしていないようです。つまり妨害できる範囲には限りがあるのか、または例外があるのか・・・」

 これまで宮殿の外に向かった警備員や護衛は戻って来ていない。しかし、ケヴィンが受け取ったというシグナルは確実に街の方から来ている。つまり二人は無事にアルバの街へと向かえた事になる。

 宮殿を取り囲む謎の人物達を退ける実力があるのなら、宮殿から街へ向かうことはできるようだ。問題はその後。壁を一つ乗り越えても、その先にある何かによって彼らは先へ進むことも戻ることも許されない状況に陥ってしまうのか。

 「じゃぁアタシも行く。アンタ、戦えないんだろ?」

 「ですが、アカリさんやツバキ君は・・・」

 「あの二人には私が付いてます。それに貴方がここへ私達を連れてきてくれたのは、宮殿で最も安全な場所だからでしょ?ミアもこっちのことは任せてくれていいからね」

 ツクヨの後押しもあり、ミアはケヴィンの後に付いていく事になる。ケヴィンはオイゲンの方を見ると、勝手な行動を取ることを容認してくれるかどうかを目で訴える。

 「既に何人か宮殿を出ていってしまっている。最早ここに止まらずとも、お前達が犯人であるとは思っていない」

 「感謝します、オイゲン氏。ニノンさんの事は任せて下さい」

 オイゲンの信頼も得たところで、ケヴィンとミアもまた宮殿を飛び出し、街の方から送られてきたシグナルを辿り、街の方へと向かう。だが予想していた通り、宮殿から街へ向かおうとすると、シン達の時と同様に謎の人物達が行くてを阻むように二人の前に現れた。

 「やっぱりそう簡単にはいかねぇか・・・」

 「思っていた以上に数が・・・。あの二人もこれを乗り越えられたという事でしょうか」

 ミアとケヴィンの前に現れた謎の人物は、シンとニノンが宮殿を出る時に戦った数の倍以上の人数で、二人の前に立ち塞がる。何故襲い掛かってきた数が違うのか。犯人はどこからかこの状況を見ているのだろうか。

 「いくら貴方でも、この数を相手には・・・」

 「無理だな。道を切り開いて突破する。覚悟はいいか?」

 自信があるようには見えなかったが、ケヴィンもあれだけ啖呵を切って飛び出してきたからには、今更安全策だけを選んでのんびりもしていられないと、固唾を飲んで頷く。

 「ウンディーネ、力を貸して」

 すると、彼女の周りに水飛沫が上がり始め、水を纏った妖精のようなものが姿を現す。

 「構わないけれど、あの時の海でのようにいかないわ」

 「十分。そこの男を奴らの攻撃から守ってやって」

 ミアは銃に魔力が込められた弾を込めていく。錬金術における四大元素の内の一つである水を司るウンディーネ。大海原での戦いでは、ミアを助ける大きな力として活躍していたが、彼女曰くそれは海という途方もない程の量の水が側にあったからこその力だったようだ。

 陸地であり、尚且つ海や川にも面していないここアルバにおいて、ウンディーネの本来の力は発揮されないという事らしい。しかし今、ミアが頼れるのは彼女しかいない。

 それに彼女も、守るだけならそう難しい話ではなさそうな口振りでもあった。

 ゆっくりと距離を縮めてくる謎の人物達に、ミアは魔弾を込めた銃口をむけて撃ち放つ。



 一方、時間は少し遡り、宮殿から派手な脱出劇を繰り広げたブルース一行。彼らもまた、宮殿の外で街に向かおうとしたところ、ミア達と同じように複数の謎の人物達に行くてを阻まれていた。

 「へ!何だよ、雑魚が一丁前に俺達を止めようってのかぁ!?」

 「さっさとコイツらを退かしてくれ、バルトロメオ」

 「あぁ!?オメェもちったぁ手伝えよ、“ゾルターン“」

 ブルースの護衛で、バルトロメオと共に宮殿を抜け出したもう一人の男。彼は何者かに襲われたブルースの身体を支えながら、治療のような行為を行なっていた。

 「俺は今手が離せない。見て分からんのか?それにお前のその能力なら、数がいようと関係ないだろ」

 「あのなぁ~・・・俺のこの力だって無尽蔵じゃぁねぇんだぞ?」

 「そうか。ならお前の存在価値そのものが揺らいでしまうな」

 「あぁ!?んだとコラァッ!!」

 二人が言い合っている間に、謎の人物達が彼らを取り囲み一斉に襲い掛かる。触れられれば一気に戦力を削がれてしまう謎の手段を用いる敵に、バルトロメオは再び自身の周りに魔力で作り出したかのような無数の腕を出現させると、襲い掛かる敵を一辺に払い退ける。

 「鬱陶しいんだよッ!」

 バルトロメオが暴れている内に、ゾルターンはブルースを連れて街の方へと向かう。全くベルトロメオの事など意に介せずといった様子でブルースを連れていくゾルターンに、バルトロメオは少しでも彼に戦闘の労力を分らせようと、本気を出せば助けに向かえるのに、二人に襲い掛かろうとする敵を敢えて見過ごした。

 背後から飛び掛かろうとする謎の人物に、ゾルターンの後ろ髪の奥からキラリと光る何かが覗いている。そして謎の人物の腕が彼らに触れようかというその刹那、突如謎の人物は空間に吸い込まれるようにしてその姿を消したのだ。

 「・・・バルトロメオ。手を抜くんじゃぁないぞ。これは大将を守る為だと言っただろ?」

 「お前もしっかり“仕込んでる“じゃねぇか。チッ・・・しょうがねぇなぁ」

 バルトロメオはゾルターンがしっかり防衛策を準備していたことにがっかりした様子を見せると、諦めたのか周囲の謎の人物達を無数の腕で握り潰すと急いで二人の跡を追った。
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