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救出と攻略法
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不意を突かれた彼らは、何人か謎の人物によって攻撃され塵となり消えてしまった。それを見た者達が更に恐怖しパニックになることで現場は混乱していた。
「彼らを助けて下さい!」
オイゲンら教団の護衛に中枢を担う部隊と合流する為に駆け出した一行に、ケヴィンは早速目的と違った新たな依頼をミア達に託す。
「はッ!?今はオイゲンと合流するのが先だろ?」
「我々に命を救われたとなれば、彼らも我々のことを無碍には出来なくなります。道端の小石がいずれ自分を支える礎になることだって事です。それに、部屋でアレを退けた皆さんなら、難しい話ではないのではありませんか?」
「ふん、調子のいいことを」
救助の目的を述べると共に一行を煽てるような言葉を添え、ケヴィンの指示に従いミアとツクヨ、そしてツバキの三人が戦地へと飛び出して行き、各々警備隊と教団の護衛らを襲う謎の人物を退ける。
残されたケヴィンとアカリ達は、混乱する彼らに声をかけ助けに来た事を伝える。ケヴィンは言葉で、そしてアカリはリナムルで学んだ薬草やリラクゼーション効果のあるハーブを使った“香り“によるメンタルの回復を行なっていた。
彼女がツバキと同じように、待ち時間の間部屋で作っていたものとは、小さな試験管の中に入れられた薬草と何らかの液体によって生み出される特殊な効果を齎す香りを閉じ込めた物だったようだ。
「嬢ちゃん・・・これは?」
「蓋を外して香りを嗅いでみて下さい。心と身体が癒されますよ」
普段であればこのような奇妙なものを試すなど、薬物による殺人事件を経た後からすると疑いを持っても不思議ではなかったのだが、窮地から救ってくれた者達である事と、アカリのような人畜無害で無邪気そうな見た目から、すんなりと受け入れられるようになっていたのだろう。
アカリの持ち込んだ香料、フレグランスにより心と身体の安定と回復を受けた彼らは、落ち着いたところで漸くケヴィンの話を理解できるようになった。彼が話したのは、宮殿を襲撃している謎の人物達との闘い方についてだった。
その間、謎の人物達と戦っていたミア達はそれぞれ属性や特殊な能力を持った武器、ガジェットを使ってこれを退ける。ミアは魔力を込めた銃弾である“魔弾“を。ツクヨはリナムルの地下研究所で手に入れた刃を刀に加工してもらった物で、次々に謎の人物を始末していく。
しかしツバキのガジェットは、実体を持たない謎の人物達に触れることは出来るものの、消し去るほどの決定打には欠けていた。
「くそッ・・・くそッ!しつこいっての!!とっとと消えろよッ!!」
ミアに注意された事に気をつけ、吹き飛ばさないようにその場で確実に消滅を確認しなければならないと、ツバキはガジェットを巧みに制御しながら拳や蹴りを放っていく。
恐らくダメージ自体は入っているのだが、ミアの銃撃やツクヨの斬撃とは違い、痛みを感じないような相手に対し悶絶するような苦しみを与える打撃だけでは、自身の攻撃が通用しているという実感が生まれなかった。
やはりまだミア達に比べ戦闘経験のないツバキには早かったのか。すると、ミアやツクヨが次々に謎の人物を始末していく姿に焦りを感じていたツバキが、攻撃時に魔力を纏うという攻略法を怠ってしまい、謎の人物に打ち込んだ拳が身体をすり抜けてしまい、身体を貫通したように取り込まれてしまう。
「やべっ・・・ッ!?」
謎の人物の身体を貫通したツバキの腕。一見してツバキが優勢に見える場面だが、そこには本人にしか分からない出来事が起きていた。謎の人物を貫いたツバキの腕を伝い、なんとツバキの身体には突然の疲労感と衰弱が起きていたのだ。
「うッ・・・!なんッ・・・!?」
突然血相の変わるツバキの額には大粒の汗が滲んでいた。まるで長距離のレースを走り切った後かのような息切れを起こし、ツバキは謎の人物に腕を取り込まれたまま、その場に膝をついて崩れてしまう。
「ツバキッ!」
彼の様子の変化に気がついたミアとツクヨが援護に入ろうとするが、それを遮るように邪魔をする他の謎の人物達。
「どけッ!!」
謎の人物の身体を貫くミアの魔弾。彼女は邪魔に入る謎の人物ごと撃ち抜いた先に、ツバキを捕らえる人物目がけて銃弾を撃ち放つ。銃弾は頭部に命中し、本来であれば謎の人物が塵となって消える筈だった。
しかし、ツバキを捕らえていた謎の人物は、煙の塊を空気弾が撃ち抜いたかのように風穴を開けると、すぐに元の人の形へと再形成されてしまった。
「何ッ!?」
まるで生命エネルギーを吸い取られているかのように弱っていくツバキは、咄嗟に取り込まれたガジェットへと手を伸ばす。こんな状態になりながらも、ツバキの頭の中では、まだ戦わなければという強い意思が残っていたのだ。
その意思がツバキの腕に取り付けられたガジェットを犠牲に、彼の命を救った。
ツバキがガジェットに何かを施すと、取り付けられた魔石が暴走し、蓄えられた魔力を暴発して粉々に砕け散った。魔石が砕けると同時に、中身の魔力が周囲へ爆散し、謎の人物の身体を粉々に吹き飛ばしたのだ。
「ツバキぃぃぃッ!!」
素早い身のこなしで床に倒れるツバキの元に駆けつけるツクヨ。それを援護するように魔弾を撃ち込んでいくミア。
爆発を起こしたガジェットは、動力源である魔石を失いその役目を果たしたかのように壊れてしまった。朦朧としながらも意識を保っていたツバキは、ツクヨに抱き抱えられながら、いつものように強がって見せた。
「し・・・心配させちまったかよ・・・。今度はちゃんとやり切ったぜ・・・?」
「バカッ・・・無茶をするな」
ツクヨはツバキを抱えたままアカリの元へと向かう。
「アカリ!ツバキを頼む」
「ツバキ君!?一体何が・・・」
すぐに彼の回復に努めるアカリ。しかしツバキには外傷はなく、精神や内面的なダメージを負っていた。奇しくもアカリは、そういった面での回復の方が得意であり、薬草やハーブを使った香りや周囲の魔力を使った回復を試みる。
倒れたツバキにも声を掛けに行くケヴィン。少年でありながらも大人顔向けに、未知なる存在に立ち向かい、死ぬかもしれないという瀬戸際においても戦うことを諦めなかったその姿を、彼は称賛した。
「その小さな身体に、まるで何度も死地を乗り越えてきたかのような精神力。感服しましたよ」
「へっ・・・誰が“小せぇ“だ。それより、役に立つか分からねぇけどよ・・・」
「何ですか?」
「アイツら、魔力を纏った攻撃でも打撃には耐性があるみたいだ。けど“内側“は違った・・・。中から魔法を放ってやりゃぁ簡単に消し飛ぶぜ・・・?」
自身の身よりも、情報を先に伝えようとするツバキの姿に、ケヴィンはその強い意志に素直に感服した。彼が必死で掴んだ謎の人物との戦闘における有効打になり得る情報。
それを踏まえて対策を練ることが、情報と思いを引き渡された者の責務であり、アルバを襲う事件を解決に導く重要な役割であることを実感した。
「彼らを助けて下さい!」
オイゲンら教団の護衛に中枢を担う部隊と合流する為に駆け出した一行に、ケヴィンは早速目的と違った新たな依頼をミア達に託す。
「はッ!?今はオイゲンと合流するのが先だろ?」
「我々に命を救われたとなれば、彼らも我々のことを無碍には出来なくなります。道端の小石がいずれ自分を支える礎になることだって事です。それに、部屋でアレを退けた皆さんなら、難しい話ではないのではありませんか?」
「ふん、調子のいいことを」
救助の目的を述べると共に一行を煽てるような言葉を添え、ケヴィンの指示に従いミアとツクヨ、そしてツバキの三人が戦地へと飛び出して行き、各々警備隊と教団の護衛らを襲う謎の人物を退ける。
残されたケヴィンとアカリ達は、混乱する彼らに声をかけ助けに来た事を伝える。ケヴィンは言葉で、そしてアカリはリナムルで学んだ薬草やリラクゼーション効果のあるハーブを使った“香り“によるメンタルの回復を行なっていた。
彼女がツバキと同じように、待ち時間の間部屋で作っていたものとは、小さな試験管の中に入れられた薬草と何らかの液体によって生み出される特殊な効果を齎す香りを閉じ込めた物だったようだ。
「嬢ちゃん・・・これは?」
「蓋を外して香りを嗅いでみて下さい。心と身体が癒されますよ」
普段であればこのような奇妙なものを試すなど、薬物による殺人事件を経た後からすると疑いを持っても不思議ではなかったのだが、窮地から救ってくれた者達である事と、アカリのような人畜無害で無邪気そうな見た目から、すんなりと受け入れられるようになっていたのだろう。
アカリの持ち込んだ香料、フレグランスにより心と身体の安定と回復を受けた彼らは、落ち着いたところで漸くケヴィンの話を理解できるようになった。彼が話したのは、宮殿を襲撃している謎の人物達との闘い方についてだった。
その間、謎の人物達と戦っていたミア達はそれぞれ属性や特殊な能力を持った武器、ガジェットを使ってこれを退ける。ミアは魔力を込めた銃弾である“魔弾“を。ツクヨはリナムルの地下研究所で手に入れた刃を刀に加工してもらった物で、次々に謎の人物を始末していく。
しかしツバキのガジェットは、実体を持たない謎の人物達に触れることは出来るものの、消し去るほどの決定打には欠けていた。
「くそッ・・・くそッ!しつこいっての!!とっとと消えろよッ!!」
ミアに注意された事に気をつけ、吹き飛ばさないようにその場で確実に消滅を確認しなければならないと、ツバキはガジェットを巧みに制御しながら拳や蹴りを放っていく。
恐らくダメージ自体は入っているのだが、ミアの銃撃やツクヨの斬撃とは違い、痛みを感じないような相手に対し悶絶するような苦しみを与える打撃だけでは、自身の攻撃が通用しているという実感が生まれなかった。
やはりまだミア達に比べ戦闘経験のないツバキには早かったのか。すると、ミアやツクヨが次々に謎の人物を始末していく姿に焦りを感じていたツバキが、攻撃時に魔力を纏うという攻略法を怠ってしまい、謎の人物に打ち込んだ拳が身体をすり抜けてしまい、身体を貫通したように取り込まれてしまう。
「やべっ・・・ッ!?」
謎の人物の身体を貫通したツバキの腕。一見してツバキが優勢に見える場面だが、そこには本人にしか分からない出来事が起きていた。謎の人物を貫いたツバキの腕を伝い、なんとツバキの身体には突然の疲労感と衰弱が起きていたのだ。
「うッ・・・!なんッ・・・!?」
突然血相の変わるツバキの額には大粒の汗が滲んでいた。まるで長距離のレースを走り切った後かのような息切れを起こし、ツバキは謎の人物に腕を取り込まれたまま、その場に膝をついて崩れてしまう。
「ツバキッ!」
彼の様子の変化に気がついたミアとツクヨが援護に入ろうとするが、それを遮るように邪魔をする他の謎の人物達。
「どけッ!!」
謎の人物の身体を貫くミアの魔弾。彼女は邪魔に入る謎の人物ごと撃ち抜いた先に、ツバキを捕らえる人物目がけて銃弾を撃ち放つ。銃弾は頭部に命中し、本来であれば謎の人物が塵となって消える筈だった。
しかし、ツバキを捕らえていた謎の人物は、煙の塊を空気弾が撃ち抜いたかのように風穴を開けると、すぐに元の人の形へと再形成されてしまった。
「何ッ!?」
まるで生命エネルギーを吸い取られているかのように弱っていくツバキは、咄嗟に取り込まれたガジェットへと手を伸ばす。こんな状態になりながらも、ツバキの頭の中では、まだ戦わなければという強い意思が残っていたのだ。
その意思がツバキの腕に取り付けられたガジェットを犠牲に、彼の命を救った。
ツバキがガジェットに何かを施すと、取り付けられた魔石が暴走し、蓄えられた魔力を暴発して粉々に砕け散った。魔石が砕けると同時に、中身の魔力が周囲へ爆散し、謎の人物の身体を粉々に吹き飛ばしたのだ。
「ツバキぃぃぃッ!!」
素早い身のこなしで床に倒れるツバキの元に駆けつけるツクヨ。それを援護するように魔弾を撃ち込んでいくミア。
爆発を起こしたガジェットは、動力源である魔石を失いその役目を果たしたかのように壊れてしまった。朦朧としながらも意識を保っていたツバキは、ツクヨに抱き抱えられながら、いつものように強がって見せた。
「し・・・心配させちまったかよ・・・。今度はちゃんとやり切ったぜ・・・?」
「バカッ・・・無茶をするな」
ツクヨはツバキを抱えたままアカリの元へと向かう。
「アカリ!ツバキを頼む」
「ツバキ君!?一体何が・・・」
すぐに彼の回復に努めるアカリ。しかしツバキには外傷はなく、精神や内面的なダメージを負っていた。奇しくもアカリは、そういった面での回復の方が得意であり、薬草やハーブを使った香りや周囲の魔力を使った回復を試みる。
倒れたツバキにも声を掛けに行くケヴィン。少年でありながらも大人顔向けに、未知なる存在に立ち向かい、死ぬかもしれないという瀬戸際においても戦うことを諦めなかったその姿を、彼は称賛した。
「その小さな身体に、まるで何度も死地を乗り越えてきたかのような精神力。感服しましたよ」
「へっ・・・誰が“小せぇ“だ。それより、役に立つか分からねぇけどよ・・・」
「何ですか?」
「アイツら、魔力を纏った攻撃でも打撃には耐性があるみたいだ。けど“内側“は違った・・・。中から魔法を放ってやりゃぁ簡単に消し飛ぶぜ・・・?」
自身の身よりも、情報を先に伝えようとするツバキの姿に、ケヴィンはその強い意志に素直に感服した。彼が必死で掴んだ謎の人物との戦闘における有効打になり得る情報。
それを踏まえて対策を練ることが、情報と思いを引き渡された者の責務であり、アルバを襲う事件を解決に導く重要な役割であることを実感した。
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