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重要な文化財
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不可解な犯行手段や被害者達の死因を考えると、ケヴィンがマティアスに渡したという一時的に仮死状態になるという薬も、本来の作用に何らかの手が加えられ犯行に利用されたと考えるのが妥当だろう。
「何にせよ、私はお前がマティアスを殺したとは思っていない。この一件に関しては利用されたと考えるのが自然だろう。私の他にこの話をした者は?」
犯人の目的を先読みし撹乱させるために決行されたマティアス司祭の死の偽造。それを知るのは、計画を発案したケヴィンとそれに同意し薬を服用したマティアス司祭、そして計画を知り犯人の動向を探るのに協力したオイゲンの、計三名しか知らない筈だとケヴィンは語る。
「ケヴィン・・・お前の探偵としての功績やこれまでの人徳と行動を見て、お前が犯人ではないと信用するが。だが・・・」
何も知らない者がケヴィンの薬の件を知れば、間違いなく彼を犯人にしようとするだろう。状況や証言からも、他に手がかりのない以上ケヴィンが犯人として濃厚になることに変わりはない。
だがオイゲンの騎士としての、強打案に属する信徒としての勘が、ケヴィンが犯人ではないといっている。これはそんなに簡単な事件ではないと。しかしケヴィンが無実であるという証拠も、またどこにもないのだ。
それでも自分の勘を貫き通さんとするのは、オイゲンが真に犯人を見つけたいと願うからであった。そしてケヴィンもまた、そんなオイゲンの誠実さを知っていて巻き込んだのだろう。
彼を利用し、教団側の信用を味方につける。犯人の手掛かりを探る為には、ある程度危険な行動も取らねばならないと覚悟していたからだ。その為にも今の宮殿で最も教団としての権力を持っているオイゲンを味方に引き摺り込むのは、必要不可欠な要素だったのだ。
「分かっていますとも。私も逃げる気などありません。もし今回の一件で犯人が挙げられなかった場合、私を犯人として突き出していただいて構いません」
「しかし、皆が納得するような証拠などどこにも・・・」
「今の皆の様子を見れば、納得する必要などないことは一目瞭然。誰かが犯人である可能性があるというのなら、その人物を犯人に仕立て上げ解放を望む者が殆どでしょう」
「真実を闇に葬ってまで、自身の身の解放を望むというわけか・・・」
「誰しもが信念に命を賭けられる訳ではありません。それは本人の意思とは関係なく、周りの者達から与えられる信頼や期待から、そういった判断をしなければならない方々もいらっしゃるでしょう。とりわけここに集められた方々は、そういった者の方が多いようですし、私もそういった他者から寄せられる期待に応える彼らを尊重します」
WoFの世界にとっての音楽はただの娯楽にあらず、聞く者達が心を癒したり鼓舞するのにも用いられる重要なものとなっている。故に各国が有名な音楽家を自国に招き、その文化を発展させる為に勤しんでいるほど重要なものなのだ。
音楽家というものは文化財でもあり、政治的な取引でも使われる価値あるものを他国で失ったとなれば、戦争にも発展しかねない。ベルヘルムの死は彼が滞在していたクレールという街にとって大きな痛手となった事だろう。
幸い、クレールに彼が死んだという報告はまだ届いていない。それに現場となったのは音楽の街として有名なアルバである為、万が一クレールとの関係が悪化しそうになっても優秀な音楽家や次世代の音楽家になるであろう卵達が数多く在籍している。
いくらでも代えが利くという訳ではないが、彼らもそういった保険があるからか、アルバへの遠征に寛容になっている部分もあるだろう。
「話はこの辺で・・・。あまり長居してしまうと、あらぬ疑いをかけられません。一旦部屋に戻って、それから今後のことを考えましょう。あぁそれと、継続して私の見張り役を務めてくれると助かります」
「安心しろ。それについては私よりも適任者が共に交代で見張りにつく。このまま犯人を逃すなど、私が嫌だからな・・・」
「そう言っていただけると思ってましたよ。やはり貴方を選んで正解でしたね」
「減らず口を叩けるのも今のうちかも知れんぞ?」
二人はマティアスの遺体の状態や、鑑識の結果などを確認した後に遺体留置所を後にする。葬儀に関してはすぐに行われないようで、一度騒動が解決したのちに関係者や親族などといった小規模で行われるという。
シン達の待つ部屋へ戻る途中、ベルヘルムの宿泊していた部屋の前を通り掛かる二人。現在は中で鑑識と調査が行われている。そんな場所の前を通って、この男が黙っていられるはずもなく、オイゲンに調査の様子を見学できないかと問う。
「何にせよ、私はお前がマティアスを殺したとは思っていない。この一件に関しては利用されたと考えるのが自然だろう。私の他にこの話をした者は?」
犯人の目的を先読みし撹乱させるために決行されたマティアス司祭の死の偽造。それを知るのは、計画を発案したケヴィンとそれに同意し薬を服用したマティアス司祭、そして計画を知り犯人の動向を探るのに協力したオイゲンの、計三名しか知らない筈だとケヴィンは語る。
「ケヴィン・・・お前の探偵としての功績やこれまでの人徳と行動を見て、お前が犯人ではないと信用するが。だが・・・」
何も知らない者がケヴィンの薬の件を知れば、間違いなく彼を犯人にしようとするだろう。状況や証言からも、他に手がかりのない以上ケヴィンが犯人として濃厚になることに変わりはない。
だがオイゲンの騎士としての、強打案に属する信徒としての勘が、ケヴィンが犯人ではないといっている。これはそんなに簡単な事件ではないと。しかしケヴィンが無実であるという証拠も、またどこにもないのだ。
それでも自分の勘を貫き通さんとするのは、オイゲンが真に犯人を見つけたいと願うからであった。そしてケヴィンもまた、そんなオイゲンの誠実さを知っていて巻き込んだのだろう。
彼を利用し、教団側の信用を味方につける。犯人の手掛かりを探る為には、ある程度危険な行動も取らねばならないと覚悟していたからだ。その為にも今の宮殿で最も教団としての権力を持っているオイゲンを味方に引き摺り込むのは、必要不可欠な要素だったのだ。
「分かっていますとも。私も逃げる気などありません。もし今回の一件で犯人が挙げられなかった場合、私を犯人として突き出していただいて構いません」
「しかし、皆が納得するような証拠などどこにも・・・」
「今の皆の様子を見れば、納得する必要などないことは一目瞭然。誰かが犯人である可能性があるというのなら、その人物を犯人に仕立て上げ解放を望む者が殆どでしょう」
「真実を闇に葬ってまで、自身の身の解放を望むというわけか・・・」
「誰しもが信念に命を賭けられる訳ではありません。それは本人の意思とは関係なく、周りの者達から与えられる信頼や期待から、そういった判断をしなければならない方々もいらっしゃるでしょう。とりわけここに集められた方々は、そういった者の方が多いようですし、私もそういった他者から寄せられる期待に応える彼らを尊重します」
WoFの世界にとっての音楽はただの娯楽にあらず、聞く者達が心を癒したり鼓舞するのにも用いられる重要なものとなっている。故に各国が有名な音楽家を自国に招き、その文化を発展させる為に勤しんでいるほど重要なものなのだ。
音楽家というものは文化財でもあり、政治的な取引でも使われる価値あるものを他国で失ったとなれば、戦争にも発展しかねない。ベルヘルムの死は彼が滞在していたクレールという街にとって大きな痛手となった事だろう。
幸い、クレールに彼が死んだという報告はまだ届いていない。それに現場となったのは音楽の街として有名なアルバである為、万が一クレールとの関係が悪化しそうになっても優秀な音楽家や次世代の音楽家になるであろう卵達が数多く在籍している。
いくらでも代えが利くという訳ではないが、彼らもそういった保険があるからか、アルバへの遠征に寛容になっている部分もあるだろう。
「話はこの辺で・・・。あまり長居してしまうと、あらぬ疑いをかけられません。一旦部屋に戻って、それから今後のことを考えましょう。あぁそれと、継続して私の見張り役を務めてくれると助かります」
「安心しろ。それについては私よりも適任者が共に交代で見張りにつく。このまま犯人を逃すなど、私が嫌だからな・・・」
「そう言っていただけると思ってましたよ。やはり貴方を選んで正解でしたね」
「減らず口を叩けるのも今のうちかも知れんぞ?」
二人はマティアスの遺体の状態や、鑑識の結果などを確認した後に遺体留置所を後にする。葬儀に関してはすぐに行われないようで、一度騒動が解決したのちに関係者や親族などといった小規模で行われるという。
シン達の待つ部屋へ戻る途中、ベルヘルムの宿泊していた部屋の前を通り掛かる二人。現在は中で鑑識と調査が行われている。そんな場所の前を通って、この男が黙っていられるはずもなく、オイゲンに調査の様子を見学できないかと問う。
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