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次なる犯行の兆し
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一行は新たに行動を共にすることになったオイゲンやニノンから、情報を聞き出しながら食事を済ませ、得られた情報を元に事件について考える。時間は瞬く間に過ぎていき、交流を深める晩餐は空腹が満たされると共に終わりを告げる。
食後に出された高級な茶葉から採れる、胃を活発にし消化を助ける効果があるというお茶で一息ついていると、厨房のスタッフやシェフの苦労を労って食器をカウンターへと運ぶケヴィン。
「座っていて下さい。お客人にこのようなこと・・・」
「いえいえ、私がやりたくてやっているんです。どうか私の勝手をお許し下さい下さい」
シェフの静止を振り切り、少しでも彼らの仕事を減らせないかと手伝いを買って出るケヴィン。その姿を見送りながら、やや困ったような表情を浮かべるシェフに、オイゲンが歩み寄る。彼もまた、ケヴィンと同じようにテーブルに置かれた食器を手にしていた。
「オイゲンさんまで・・・」
「このような状況なのだ。例外の事例として受け入れてくれたまえ」
「貴方がそうおっしゃるのであれば・・・」
仕方がなく厨房の方へと引いていくシェフ。そこへ食器をカウンターへ運んだケヴィンが戻ってくると、オイゲンの横をすれ違うようにわざわざ道を選んでやって来る。
「オイゲン氏・・・後で少しお話が・・・」
「ん?あぁ、構わないが・・・」
ケヴィンは誰にも悟られぬようにオイゲンを呼び出す。呼び出されたオイゲンの方は一体何の話なのかはわかっていない様子だった。質問があるなら、何故晩餐の時にしなかったのか。それともシン達やニノンの前では話しづらいことだったのだろうか。
「はぁ~食った食ったぁ~。こんなに美味いモンが食えるなら、俺ぁもっとここにいてもいいけどなぁ」
「料理はとても美味しかったですけど・・・。ですがやっぱり、事件が起きているところに長居すると言うのは不安です・・・」
「大丈夫!アカリもツバキも、みんなで守るからさ」
心配そうに語るアカリに、ツクヨは明るい表情で答える。彼の言うように、ジークベルトやルーカスがどのような状況で襲われたのかは分からないが、少なくとも同じ部屋で寝泊まりしている以上、全く気づかれずに犯行を許すほど気は緩んでいない。
この時ばかりは、約束できないようなことを口にするもんじゃないというツッコミを飲み込んだミア。そもそも犯人がいるとして、音楽に疎い上に教団のことは何も知らず、アルバにも初めて来たような者達をターゲットに選ぶとは考えづらい。
それはケヴィンも言っていた、犯人のターゲットからも推測がつく。それ故にマティアス司祭は教団の護衛達によって身柄を確保され、現在も厳重な警備体制のもと、取り調べが行われているのだから。
カップに注がれたお茶を飲み干し、席を立つ準備を進める一行は片付けを手伝っていたケヴィンとオイゲンが戻っていないことに気がつく。
「私には座ってろって言ったけど、当の本人はどこまで片付けの手伝いに行ったのかしら?」
「そういえばケヴィンも戻ってこないな・・・」
何気なく手伝いをしていた二人がいないことに気がつき、周囲を見渡し始める。すると丁度二人とも厨房の方から姿を表し、こちらへと向かって来ていた。
「厨房の方まで手伝いに行ってたのか?」
「彼らもこんな状況で料理を作らされるのでは、色々と大変でしょうからね。他に手伝えることはないかと言ったら、皿洗いをさせられてしまいました」
「オイゲン、貴方まで・・・」
「皿洗いなど一体いつぶりだっただろうか。たまには他の職に触れてみなければ、見えないものもあると言うのは本当だな」
僅かに打ち解けたようにも見える二人と合流し、一行も衝動の方へと見送りに来たシェフに感想を述べて、その場を後にした。
「厨房の方でも聞き込みしてたのか?」
「そうですね。取り調べでどのようなことを聞かれたのか、食材に何かが混入したような形跡はあったかなど色々と・・・」
「何か進展は?」
「いえ、大司教の時もそうでしたが大した発見はありませんでしたね。ルーカス司祭の事となれば尚更です。毒の件もありましたし、運ばれた料理は厳重にチェックされていたとのことで、疑う余地はなさそうでした」
「そうか・・・。じゃぁやっぱり、マティアスも危ないかもしれないんだな?」
「断定はできませんが・・・。これまでの傾向から教団関係者を狙っているであろうことは分かります。そして恐らく犯人がいるのなら、我々がそれに気が付いている事も織り込み済みでしょう」
犯人が教団の役職についているような重要人物を立て続けに狙っていることから、捜査員が犯人の狙いが教団関係者である事に気がつくというのは、犯人も分かっていた事だとケヴィンは語る。
もしも次のターゲットにマティアス司祭を狙うのであれば、他の二人に比べ更に犯行のリスクは大きくなる。今度は四六時中誰かしらと共にいるであろうマティアスをどうやって殺すのか。
それとも事件はこれ以上起きないのか。マティアス司祭に注目が集まる中、犯人の次なる動きがあるとすれば、やはり二件の事件の時と同じく、真夜中から早朝になるだろう。
晩餐を終えた一行は、窓から覗くすっかり陽の光も沈み切った真っ暗な街並みを見ながら自室へ向かう。と、その時、昨晩も聞こえていたような心地の良い音楽が、うっすらと外から聞こえていた。
食後に出された高級な茶葉から採れる、胃を活発にし消化を助ける効果があるというお茶で一息ついていると、厨房のスタッフやシェフの苦労を労って食器をカウンターへと運ぶケヴィン。
「座っていて下さい。お客人にこのようなこと・・・」
「いえいえ、私がやりたくてやっているんです。どうか私の勝手をお許し下さい下さい」
シェフの静止を振り切り、少しでも彼らの仕事を減らせないかと手伝いを買って出るケヴィン。その姿を見送りながら、やや困ったような表情を浮かべるシェフに、オイゲンが歩み寄る。彼もまた、ケヴィンと同じようにテーブルに置かれた食器を手にしていた。
「オイゲンさんまで・・・」
「このような状況なのだ。例外の事例として受け入れてくれたまえ」
「貴方がそうおっしゃるのであれば・・・」
仕方がなく厨房の方へと引いていくシェフ。そこへ食器をカウンターへ運んだケヴィンが戻ってくると、オイゲンの横をすれ違うようにわざわざ道を選んでやって来る。
「オイゲン氏・・・後で少しお話が・・・」
「ん?あぁ、構わないが・・・」
ケヴィンは誰にも悟られぬようにオイゲンを呼び出す。呼び出されたオイゲンの方は一体何の話なのかはわかっていない様子だった。質問があるなら、何故晩餐の時にしなかったのか。それともシン達やニノンの前では話しづらいことだったのだろうか。
「はぁ~食った食ったぁ~。こんなに美味いモンが食えるなら、俺ぁもっとここにいてもいいけどなぁ」
「料理はとても美味しかったですけど・・・。ですがやっぱり、事件が起きているところに長居すると言うのは不安です・・・」
「大丈夫!アカリもツバキも、みんなで守るからさ」
心配そうに語るアカリに、ツクヨは明るい表情で答える。彼の言うように、ジークベルトやルーカスがどのような状況で襲われたのかは分からないが、少なくとも同じ部屋で寝泊まりしている以上、全く気づかれずに犯行を許すほど気は緩んでいない。
この時ばかりは、約束できないようなことを口にするもんじゃないというツッコミを飲み込んだミア。そもそも犯人がいるとして、音楽に疎い上に教団のことは何も知らず、アルバにも初めて来たような者達をターゲットに選ぶとは考えづらい。
それはケヴィンも言っていた、犯人のターゲットからも推測がつく。それ故にマティアス司祭は教団の護衛達によって身柄を確保され、現在も厳重な警備体制のもと、取り調べが行われているのだから。
カップに注がれたお茶を飲み干し、席を立つ準備を進める一行は片付けを手伝っていたケヴィンとオイゲンが戻っていないことに気がつく。
「私には座ってろって言ったけど、当の本人はどこまで片付けの手伝いに行ったのかしら?」
「そういえばケヴィンも戻ってこないな・・・」
何気なく手伝いをしていた二人がいないことに気がつき、周囲を見渡し始める。すると丁度二人とも厨房の方から姿を表し、こちらへと向かって来ていた。
「厨房の方まで手伝いに行ってたのか?」
「彼らもこんな状況で料理を作らされるのでは、色々と大変でしょうからね。他に手伝えることはないかと言ったら、皿洗いをさせられてしまいました」
「オイゲン、貴方まで・・・」
「皿洗いなど一体いつぶりだっただろうか。たまには他の職に触れてみなければ、見えないものもあると言うのは本当だな」
僅かに打ち解けたようにも見える二人と合流し、一行も衝動の方へと見送りに来たシェフに感想を述べて、その場を後にした。
「厨房の方でも聞き込みしてたのか?」
「そうですね。取り調べでどのようなことを聞かれたのか、食材に何かが混入したような形跡はあったかなど色々と・・・」
「何か進展は?」
「いえ、大司教の時もそうでしたが大した発見はありませんでしたね。ルーカス司祭の事となれば尚更です。毒の件もありましたし、運ばれた料理は厳重にチェックされていたとのことで、疑う余地はなさそうでした」
「そうか・・・。じゃぁやっぱり、マティアスも危ないかもしれないんだな?」
「断定はできませんが・・・。これまでの傾向から教団関係者を狙っているであろうことは分かります。そして恐らく犯人がいるのなら、我々がそれに気が付いている事も織り込み済みでしょう」
犯人が教団の役職についているような重要人物を立て続けに狙っていることから、捜査員が犯人の狙いが教団関係者である事に気がつくというのは、犯人も分かっていた事だとケヴィンは語る。
もしも次のターゲットにマティアス司祭を狙うのであれば、他の二人に比べ更に犯行のリスクは大きくなる。今度は四六時中誰かしらと共にいるであろうマティアスをどうやって殺すのか。
それとも事件はこれ以上起きないのか。マティアス司祭に注目が集まる中、犯人の次なる動きがあるとすれば、やはり二件の事件の時と同じく、真夜中から早朝になるだろう。
晩餐を終えた一行は、窓から覗くすっかり陽の光も沈み切った真っ暗な街並みを見ながら自室へ向かう。と、その時、昨晩も聞こえていたような心地の良い音楽が、うっすらと外から聞こえていた。
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