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何もない部屋
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すると最初に動き出したのはケヴィンだった。彼は部屋を見渡し、食器が仕舞われている棚へと足を運ぶ。そしてガラス越しに見える食器を凝視しながら、昨日の事件との関係性について話し出す。
「ルーカス司祭の死亡推定時刻は、昨日のジークベルト氏の亡くなった時刻とほとんど変わらなかったそうです。これが偶然だったのか、犯人の行動を示す手掛かりとなるかは分かりませんが、一考の余地はありそうです」
「発見されたのが早朝だったか?じゃぁ犯行時刻はもっと前ってことか。深夜も深夜じゃねぇか・・・それならある程度犯人を絞れそうなもんだがな」
ミアが言うように、深夜に自室を出て行動することができる人間は限られている。食事はルームサービスの使える部屋ではそれを活用するように言われているため、大概の者は部屋を出る要件などない筈だ。
「そうですね。ジークベルト氏の時はそれ程行動制限が厳しくもありませんでしたが、先程の警備隊の方を聞く限りだと、今後はもっと厳しくなりそうですからね」
「そうじゃなくてよぉ。そんな深夜に動ける権限のある奴って誰なんだ?」
「調査の主導権を握っている教団の関係者や、アルバの警備隊が主になるでしょうね。ただパーティー会場で受けたような、スキルの使用チェックは確認していなかったそうです。なので、あまり当てには・・・」
「んだよ、人を疑う癖にそう言うところはザルなのかよ・・・」
「まぁそこは今日から導入されるでしょうね。なので、現場に直接訪れなくても、十分犯行は可能だったと言う訳です」
つまり、自分のいる部屋からスキルによって遠隔で犯行を行う事も可能なので、深夜に部屋を出入り出来るかどうかでは犯人を絞ることは難しいであろう事をケヴィンはミアに伝える。
すると、現場を下手に触ることも出来ない状況の中、立ち続けていることに疲れてしまったのか、ツバキが部屋の外で待っていてもいいかと尋ねる。本来別行動になってしまうのは、宮殿側の決め事に反してしまうが、同僚のルーカスの死を知りショックを受けていた様子のマティアス司祭が、自分も具合が悪いとツバキの見張りがてら、部屋の外でケヴィンらが満足いく調査を行われるまで一緒に廊下で待機すると提案する。
「えぇ、それなら警備隊にも怪しまれる事はないでしょうし、許可も得られるでしょう。アカリさんもよろしければ・・・」
「・・・すみません、それじゃお言葉に甘えて・・・」
二日続けての早起きに、アカリも流石に眠そうに目を擦っていた。マティアス司祭がついているので、一人増えようが二人増えようが変わらない。どのみち二人には退屈な時間となってしまう上に、事件現場がそもそも広くないので丁度良かったかもしれない。
「しかし、こうも何もないと調べようが・・・」
シンが口走った言葉に、一行は口をつぐんでしまう。そもそも一件目の時のように証拠と言えるような物的証拠や、状況証拠なども見当たらない。捜査状況としても、今回のルーカス司祭の件の方が得られるものは少ない。
何より死因が心臓発作という、明らかにジークベルトの時とは違い、他殺というよりも突然死といった線が濃厚である。取り調べやあらぬ疑いを必要以上に掛けられた事による、精神的なショックが原因と考えるのが妥当だろう。
素人のシン達では何も調べることは出来なかったが、唯一錬金術を扱えるミアは、部屋に残る残留魔力の反応を精霊の力を使い探る。
「どうだ?ミア。何か感じ取れたか?」
「いや、どこにでもあるような反応しか感じられないな・・・。それとこの街特有なのかもしれんが、聞こえてくる音楽にも少なからず魔力っぽい反応があるが・・・」
今まで感じたことのなかった音に宿る魔力反応に疑問を抱くミアだったが、ケヴィン曰くアルバの街では人によって魔力によって音の調律や、音量の調整などを施す場合があるのだという。
中には完全な防音室を作り上げるため、魔力で部屋を覆い尽くすという事というのも珍しくはないのだとか。
それに音楽に関しては、昨夜から街の中でも徐々にいつものアルバの顔へと戻り始めていた。夜に聞こえた心地の良い音楽は特に、一行にとっても記憶に新しい。
「ややこしいな。こりゃぁ魔力反応で調べるよりもスキルの発動自体を感知できるスキルとかじゃねぇと、判断がつかないな・・・」
「そうですね・・・。期待していたような証拠もなさそうですし、ここは素直に調査結果を伺いにいきましょうか」
結局ケヴィンの方でも何もお掴めぬまま、ルーカス司祭の遺体が発見された現場を後にする。部屋を出て廊下に出ると、そこには外で待っていたはずの人物が一人いなくなっていた。
「あれ?マティアス司祭は?」
部屋の前ではツバキとアカリ、そして事件現場を警備している者達が数人いるだけで、二人の見張り役として一緒に出ていた肝心のマティアス司祭の姿だけが見えなかったのだ。
すると、頭をかしげるシン達に答えたのは警備隊の男だった。
「彼なら先程、事件の重要参考人ということで調査隊へ引き渡しました」
「!?」
「ルーカス司祭の死亡推定時刻は、昨日のジークベルト氏の亡くなった時刻とほとんど変わらなかったそうです。これが偶然だったのか、犯人の行動を示す手掛かりとなるかは分かりませんが、一考の余地はありそうです」
「発見されたのが早朝だったか?じゃぁ犯行時刻はもっと前ってことか。深夜も深夜じゃねぇか・・・それならある程度犯人を絞れそうなもんだがな」
ミアが言うように、深夜に自室を出て行動することができる人間は限られている。食事はルームサービスの使える部屋ではそれを活用するように言われているため、大概の者は部屋を出る要件などない筈だ。
「そうですね。ジークベルト氏の時はそれ程行動制限が厳しくもありませんでしたが、先程の警備隊の方を聞く限りだと、今後はもっと厳しくなりそうですからね」
「そうじゃなくてよぉ。そんな深夜に動ける権限のある奴って誰なんだ?」
「調査の主導権を握っている教団の関係者や、アルバの警備隊が主になるでしょうね。ただパーティー会場で受けたような、スキルの使用チェックは確認していなかったそうです。なので、あまり当てには・・・」
「んだよ、人を疑う癖にそう言うところはザルなのかよ・・・」
「まぁそこは今日から導入されるでしょうね。なので、現場に直接訪れなくても、十分犯行は可能だったと言う訳です」
つまり、自分のいる部屋からスキルによって遠隔で犯行を行う事も可能なので、深夜に部屋を出入り出来るかどうかでは犯人を絞ることは難しいであろう事をケヴィンはミアに伝える。
すると、現場を下手に触ることも出来ない状況の中、立ち続けていることに疲れてしまったのか、ツバキが部屋の外で待っていてもいいかと尋ねる。本来別行動になってしまうのは、宮殿側の決め事に反してしまうが、同僚のルーカスの死を知りショックを受けていた様子のマティアス司祭が、自分も具合が悪いとツバキの見張りがてら、部屋の外でケヴィンらが満足いく調査を行われるまで一緒に廊下で待機すると提案する。
「えぇ、それなら警備隊にも怪しまれる事はないでしょうし、許可も得られるでしょう。アカリさんもよろしければ・・・」
「・・・すみません、それじゃお言葉に甘えて・・・」
二日続けての早起きに、アカリも流石に眠そうに目を擦っていた。マティアス司祭がついているので、一人増えようが二人増えようが変わらない。どのみち二人には退屈な時間となってしまう上に、事件現場がそもそも広くないので丁度良かったかもしれない。
「しかし、こうも何もないと調べようが・・・」
シンが口走った言葉に、一行は口をつぐんでしまう。そもそも一件目の時のように証拠と言えるような物的証拠や、状況証拠なども見当たらない。捜査状況としても、今回のルーカス司祭の件の方が得られるものは少ない。
何より死因が心臓発作という、明らかにジークベルトの時とは違い、他殺というよりも突然死といった線が濃厚である。取り調べやあらぬ疑いを必要以上に掛けられた事による、精神的なショックが原因と考えるのが妥当だろう。
素人のシン達では何も調べることは出来なかったが、唯一錬金術を扱えるミアは、部屋に残る残留魔力の反応を精霊の力を使い探る。
「どうだ?ミア。何か感じ取れたか?」
「いや、どこにでもあるような反応しか感じられないな・・・。それとこの街特有なのかもしれんが、聞こえてくる音楽にも少なからず魔力っぽい反応があるが・・・」
今まで感じたことのなかった音に宿る魔力反応に疑問を抱くミアだったが、ケヴィン曰くアルバの街では人によって魔力によって音の調律や、音量の調整などを施す場合があるのだという。
中には完全な防音室を作り上げるため、魔力で部屋を覆い尽くすという事というのも珍しくはないのだとか。
それに音楽に関しては、昨夜から街の中でも徐々にいつものアルバの顔へと戻り始めていた。夜に聞こえた心地の良い音楽は特に、一行にとっても記憶に新しい。
「ややこしいな。こりゃぁ魔力反応で調べるよりもスキルの発動自体を感知できるスキルとかじゃねぇと、判断がつかないな・・・」
「そうですね・・・。期待していたような証拠もなさそうですし、ここは素直に調査結果を伺いにいきましょうか」
結局ケヴィンの方でも何もお掴めぬまま、ルーカス司祭の遺体が発見された現場を後にする。部屋を出て廊下に出ると、そこには外で待っていたはずの人物が一人いなくなっていた。
「あれ?マティアス司祭は?」
部屋の前ではツバキとアカリ、そして事件現場を警備している者達が数人いるだけで、二人の見張り役として一緒に出ていた肝心のマティアス司祭の姿だけが見えなかったのだ。
すると、頭をかしげるシン達に答えたのは警備隊の男だった。
「彼なら先程、事件の重要参考人ということで調査隊へ引き渡しました」
「!?」
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