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神代 コウ

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報告と失踪

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 二人の会話は宮殿内で発見されたジークベルト大司教の遺体に関する事だった。パーティーの翌日の早朝、護衛の者が彼の部屋をノックするも返事はなく、フロントから持ってきたマスターキーで扉を開け、中へと入ってみると床に倒れるジークベルト大司教が発見された。

 死因は未だに分かっておらず、体内からは微量の毒素が検出されたらしい。その事から毒による犯行なのではないかと推測され、大司教の食事や飲み物、食器の類などが重点的に調べられた。

 後に彼の持ち物の中から、彼の体内から検出されたものと同じ毒素を持つ茶葉が発見されるも、どうやらそれが直接の死因にはならないようだ。現在も調査と取り調べが行われているようで、マティアスやルーカスも暫くの間は教会へは戻って来られないと言うことを話していた。

 教会の者に報告を終えたクリスは、調査に必要なものを取ってくるよう言われたと伝えると、教会の奥へ続く扉の鍵を教会の者から受け取り、通路をさらに奥へと進んで行ってしまった。

 後を追いかけたかったが、流石に他の者達にバレてしまうため、カルロスは暫く教会の中でクリスが戻ってくるのを待つことにしたのだが、一向に彼が戻って来る気配はない。

 クリスが戻らない事に関して奇妙に思っていたのはカルロスだけではなかったようで、先程彼に鍵を渡した教会の者が流石に戻りの遅いクリスの様子を見に、教会の奥へと向かう。

 数分待っていると、先程の教会の者が慌てて戻ってくる。何事かと他の教会の者が尋ねると、奥の部屋に先程クリスに渡した鍵だけが置いてあって、肝心の彼の姿がなかったのだと語る。

 会話を聞いていたカルロスも思わず立ち上がり驚く。奥の部屋からの出口はその通路以外には無い。クリスが向かった部屋には窓や通気口などもなく、完全な密室となっている為、出て来るとしたら教会の者やカルロスらが待つ通路を戻ってくる以外あり得ないのだそうだ。

 突然と姿を消したクリスも妙だが、教会の者の話ではその部屋から何かを持ち出したような形跡はなく、荒らされたような様子もない。普段と変わらぬ形のまま、鍵だけが机に置かれクリスの姿だけがなくなっていると言うのだ。

 奇妙な出来事ではあるが、何も物が盗まれたりしていない以上、別段騒ぎ立てるほどのことでもないと判断したのか、教会の者達は外の警備隊に報告だけ入れて、教会の仕事が済むまでは奥の部屋の施錠をせず、現状のまま通路を封鎖する処置を施した。

 話を聞こうと思っていたクリスの突然の失踪に呆気に取られるカルロス。すると、そんな彼らの元にも、外から聞こえてくる音楽に耳を傾けていたシン達やレオン達と同じ、妙に気を引かれる心地のいい音楽が聞こえ始めたのだ。

 それまで街から聞こえていた音楽や歌声とは明らかにレベルの違うその音楽に、その場にいた者達も不思議と意識を持っていかれ、気持ちのいい音色に耳を傾けていた。

 カルロスも、そのどこからともなく聞こえてくる音楽に耳を傾けていたかったが、レオン達とのことを思い出し、宮殿に向かうと息巻いて出ていったその後のことを話に、先ずはレオンの家へと向かった。

 「それで今に至るって訳か・・・」

 「あぁ。どうやら宮殿の中じゃ誰が犯人だか、色々と調査や事情聴取が行われてるらしいぜ。クリスも色々と調べられたみたいだが、アリバイが証明されたみたいで解放されたんだと」

 「何故アイツはグーゲル教会よりも先に、ニクラス教会へ報告しに行ったんだろうな?マティアス司祭の使いをしてるのはわりかし有名な話だが、ルーカス司祭と親しいイメージは無いが・・・」

 「そうなんだよなぁ、俺もそれが気になってたんだよ。この際クリスの奴が失踪した事よりも、そっちの方が気になるぜ」

 カルロスから聞かされたニクラス教会での会話を思い返している間も、彼らの元へ薄っすらと聞こえて来る謎の音色。不思議と一人で耳にしている時よりも、誰かと会話をしている時の方が気が紛れるようで、二人の話し合いは自然とその音色の方へと流れていった。

 「それにこの音楽だ。一体どこから流れて来てるんだ?」

 「さぁ・・・どっからだろうな」

 「街を歩いてて、音のする方角ぐらい分からなかったのか?」

 「急いでたし、それどころじゃなかったんだよ。何らな今から確かめに行くか?・・・これだけすげぇ演奏、そんじょそこらの奴じゃ到底演奏出来ねぇぜ・・・」

 夜の外出は些か怪しまれる可能性もあるが、カルロスの言うように並大抵の音楽家では、そうそう演奏出来ないレベルのその音を奏でている人物に興味を持っていたレオンは、一体何処で誰が演奏しているのかを確かめにいく事にした。

 「なぁ、ジルも誘うか?アイツも宮殿での事件のこと、知ってただろ?気になってんじゃねぇかな」

 「別にいいだろ。俺がお前から話を聞いた感じだと、全然答えが見えてくるって感じじゃなかったしな」

 「悪かったな、役立たずで」

 「いや、俺は寧ろお前が羨ましかったよ・・・」

 「あ?」

 意味深な言葉を吐き捨てたまま、レオンは心の内をカルロスに語ることなく、なるべく警備隊の目を避けながら二人は音のする方を目指し、夜の街へと消えていった。
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