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厨房の先客
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先程廊下で会ったブルースの護衛らとは違って、今度の者達は何処かの民族のような独特な衣装をしていた。パーティーの時の格好とは違う為、一見して何処の者達か分からなかったが、その表情をよく見てみるとシンには見覚えのある顔ぶれに見えた。
「あれは・・・VIPルームにいた・・・」
「えぇ、どうやら彼らも事件について調べているようですね。先を越されてしまいましたが、私達も行ってみましょう」
状況が把握出来ぬまま、一行は厨房でシェフの話を聞いている一団の元へと歩み寄る。すると、護衛の一人が一行に気づき、話を聞いていた彼らのボスを呼ぶ。
「アンドレイ・・・」
「ん?あぁ、別の客人が来てしまいました」
そういうと、特徴的な衣装をした者達の影から、やや背の低い若めの男性が現れ一行の方へと歩み寄ってきた。
「貴方はかの有名な探偵の“オーギュスト・ケヴィン“さんですね!お会いできて光栄です」
「いえいえ、こちらこそご丁寧にありがとうございます。“アンドレイ・ネルソンス“氏」
護衛を後ろに下げ、自らケヴィンに握手を求める美形の青年。その見た目からは一瞬性別の判断に困るほど整った顔立ちをしている。シンが見覚えにあったのは、彼がクリスやジルらと同じ音楽学校の学生のように見えたからだったのだ。
VIPルームに何故学生が混じっているのか。彼もまた特別な地位や権力を持った人物なのかと思っていたが、まさか彼がアルバに招待された要人の一人だとは、その時は思いもしなかった。
「彼がアンドレイ・ネルソンス・・・」
ケヴィンが行動を共にしている人物達に興味を持ったのか、アンドレイはシン達の方にも視線を送り、自己紹介と共に丁寧にも会釈をしたのだ。これまでの要人の護衛が印象が悪かったからか、まさかこんなにも丁寧に迎え入れられるとは思っていなかったシン達は、思わず言葉を失い困惑してしまう。
「皆さんもアンドレイ殿がまさかこんなにもお若いとは思わなかったでしょう?」
絶妙なタイミングでその場を繋いだのは、それまであまり前には出てこなかったマティアス司祭だった。彼もアンドレイとは交流があったのか、先程のブルースの護衛達の時とは違い、かなり友好的に接している。
「えっ・・・えぇ、まぁそれはそうですが・・・」
「もしや、他の方々から酷い扱いでも受けましたか?全く・・・品のない方々だ。気にする必要はありませんよ。皆、疑われて気が立っているのでしょう」
「だからってあの態度は許せませんわ!アンドレイ様に楯突いたこと、必ず後悔させてやります!」
「よしなさい、“シアラ“。私は一切気にしていませんよ」
「私の気が治らないのです!」
アンドレイの護衛の一人が、シン達と会う前に出会した人物達のことで荒れていた。どうやら先程のこの厨房に、廊下で会ったブルースの護衛らが訪れていたようだ。
そこでも彼らはアンドレイらに因縁をつけては牙を剥き、一触即発の雰囲気に陥っていたようだった。そこでも何か用事があったのか遅れてやって来たオイゲンとアンドレイが、護衛達の仲裁に入ったらしい。
「アンタらもアイツらに因縁つけられたのか。やる時は呼んでくれよ?加勢するからさ」
「あら、貴方達も?アイツらとは大違いね。何だか気が合いそうだわ」
アンドレイの護衛でシアラと呼ばれた女性は、妖艶なドレスを身に纏い褐色の美しい見た目をしていた。言動からも敵対する相手には好戦的なようで、ミアとは非常に馬が合いそうだった。
「これ以上、余計な事件は起こさないで下さいよ?マティアス氏も困っておいでですし」
「そっそうですね。先ずは何よりも大司教の件を何とか解決しなければ・・・」
「だ、そうですよシアラ。これは“命令“です。余計な手間は取らせないで下さいね?」
「・・・わかっております。冗談ですよ、冗談」
ミアにも言えることだが、彼女らのような勝ち気な女性の冗談は冗談に聞こえないと、周りの者達は内心一致した思いを抱いていた。
「さて、話が逸れてしまいましたが、あなた方もここへ何か聞きに来たのでしょう?私達はもう結構ですので、これにて失礼します。行きましょうか皆さん」
顔合わせと挨拶を終えたアンドレイ一行は、話を聞いていたシェフにお礼をした後、そのまま行動を共にしていた者達を連れて厨房を去っていった。すると、アンドレイらと話していたシェフは真っ直ぐケヴィンの元へと歩み寄り、慣れた様子で話を切り出してきた。
「貴方達も大司教様の事で・・・ですよね?どうぞ、何でもお話ししますよ」
「その様子だと、もう何度も同じ質問をされたようですね・・・」
「えぇ、まぁ・・・。鑑識結果が出てから、皆さん食事や食器についていろいろ聞きにいらっしゃっておりました。なんでも、毒素になり得る成分が検出されたそうですね・・・」
「もうご存知だったのですね」
「誰が出したとか誰が料理したとか。準備はいつからしてたとか色々と。私達も全員取り調べや事情聴取は受けました」
「その上で彼らはどんな質問を?」
するとシェフはケヴィンの質問に対し、少し考えるそぶりを見せた後、先程のアンドレイ一行に妙な質問をされたと語った。
「そういえばアンドレイさんのところは、他とは違う質問が多かったですね」
「他とは違う・・・どんな質問でしたか?」
シェフが言うには、彼らはやたらと料理に使っていたハーブや植物の類について質問していたという。他の者達が毒素そのものについて追求する中、変わった質問の数々に強く印象に残ったのだそうだ。
「あれは・・・VIPルームにいた・・・」
「えぇ、どうやら彼らも事件について調べているようですね。先を越されてしまいましたが、私達も行ってみましょう」
状況が把握出来ぬまま、一行は厨房でシェフの話を聞いている一団の元へと歩み寄る。すると、護衛の一人が一行に気づき、話を聞いていた彼らのボスを呼ぶ。
「アンドレイ・・・」
「ん?あぁ、別の客人が来てしまいました」
そういうと、特徴的な衣装をした者達の影から、やや背の低い若めの男性が現れ一行の方へと歩み寄ってきた。
「貴方はかの有名な探偵の“オーギュスト・ケヴィン“さんですね!お会いできて光栄です」
「いえいえ、こちらこそご丁寧にありがとうございます。“アンドレイ・ネルソンス“氏」
護衛を後ろに下げ、自らケヴィンに握手を求める美形の青年。その見た目からは一瞬性別の判断に困るほど整った顔立ちをしている。シンが見覚えにあったのは、彼がクリスやジルらと同じ音楽学校の学生のように見えたからだったのだ。
VIPルームに何故学生が混じっているのか。彼もまた特別な地位や権力を持った人物なのかと思っていたが、まさか彼がアルバに招待された要人の一人だとは、その時は思いもしなかった。
「彼がアンドレイ・ネルソンス・・・」
ケヴィンが行動を共にしている人物達に興味を持ったのか、アンドレイはシン達の方にも視線を送り、自己紹介と共に丁寧にも会釈をしたのだ。これまでの要人の護衛が印象が悪かったからか、まさかこんなにも丁寧に迎え入れられるとは思っていなかったシン達は、思わず言葉を失い困惑してしまう。
「皆さんもアンドレイ殿がまさかこんなにもお若いとは思わなかったでしょう?」
絶妙なタイミングでその場を繋いだのは、それまであまり前には出てこなかったマティアス司祭だった。彼もアンドレイとは交流があったのか、先程のブルースの護衛達の時とは違い、かなり友好的に接している。
「えっ・・・えぇ、まぁそれはそうですが・・・」
「もしや、他の方々から酷い扱いでも受けましたか?全く・・・品のない方々だ。気にする必要はありませんよ。皆、疑われて気が立っているのでしょう」
「だからってあの態度は許せませんわ!アンドレイ様に楯突いたこと、必ず後悔させてやります!」
「よしなさい、“シアラ“。私は一切気にしていませんよ」
「私の気が治らないのです!」
アンドレイの護衛の一人が、シン達と会う前に出会した人物達のことで荒れていた。どうやら先程のこの厨房に、廊下で会ったブルースの護衛らが訪れていたようだ。
そこでも彼らはアンドレイらに因縁をつけては牙を剥き、一触即発の雰囲気に陥っていたようだった。そこでも何か用事があったのか遅れてやって来たオイゲンとアンドレイが、護衛達の仲裁に入ったらしい。
「アンタらもアイツらに因縁つけられたのか。やる時は呼んでくれよ?加勢するからさ」
「あら、貴方達も?アイツらとは大違いね。何だか気が合いそうだわ」
アンドレイの護衛でシアラと呼ばれた女性は、妖艶なドレスを身に纏い褐色の美しい見た目をしていた。言動からも敵対する相手には好戦的なようで、ミアとは非常に馬が合いそうだった。
「これ以上、余計な事件は起こさないで下さいよ?マティアス氏も困っておいでですし」
「そっそうですね。先ずは何よりも大司教の件を何とか解決しなければ・・・」
「だ、そうですよシアラ。これは“命令“です。余計な手間は取らせないで下さいね?」
「・・・わかっております。冗談ですよ、冗談」
ミアにも言えることだが、彼女らのような勝ち気な女性の冗談は冗談に聞こえないと、周りの者達は内心一致した思いを抱いていた。
「さて、話が逸れてしまいましたが、あなた方もここへ何か聞きに来たのでしょう?私達はもう結構ですので、これにて失礼します。行きましょうか皆さん」
顔合わせと挨拶を終えたアンドレイ一行は、話を聞いていたシェフにお礼をした後、そのまま行動を共にしていた者達を連れて厨房を去っていった。すると、アンドレイらと話していたシェフは真っ直ぐケヴィンの元へと歩み寄り、慣れた様子で話を切り出してきた。
「貴方達も大司教様の事で・・・ですよね?どうぞ、何でもお話ししますよ」
「その様子だと、もう何度も同じ質問をされたようですね・・・」
「えぇ、まぁ・・・。鑑識結果が出てから、皆さん食事や食器についていろいろ聞きにいらっしゃっておりました。なんでも、毒素になり得る成分が検出されたそうですね・・・」
「もうご存知だったのですね」
「誰が出したとか誰が料理したとか。準備はいつからしてたとか色々と。私達も全員取り調べや事情聴取は受けました」
「その上で彼らはどんな質問を?」
するとシェフはケヴィンの質問に対し、少し考えるそぶりを見せた後、先程のアンドレイ一行に妙な質問をされたと語った。
「そういえばアンドレイさんのところは、他とは違う質問が多かったですね」
「他とは違う・・・どんな質問でしたか?」
シェフが言うには、彼らはやたらと料理に使っていたハーブや植物の類について質問していたという。他の者達が毒素そのものについて追求する中、変わった質問の数々に強く印象に残ったのだそうだ。
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