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訪れた者と物
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鑑識と言っても、現代のような最新鋭のものではなく、医者の立ち会いの元様々な場所を調べ、毒が塗られていないか、何か犯人の証拠になり得るものはないか。
そしてこの世界特有の、魔力の痕跡などを調査するのが、今ジークベルトの死体が見つかった部屋で行われているものだった。
ここで一行が再会することになったのは、ツクヨとアカリが博物館で遭遇したというアルバの街医者“カール・フリッツ“だった。
「カールさん、進捗の方はどうですか?」
ケヴィンに声を掛けられたふくよかな体型の男が振り返る。その顔を見てツクヨとアカリは驚いたかのように、僅かに目を見開いた。
「ん~・・・それがなかなか・・・。貴方が望んていたような毒の反応は出てきませんな。おや?」
すると、男もケヴィンの他にゾロゾロと多くの人物達を連れているのに気がつき、状況を把握したように頷いていた。
「あぁ、貴方も“お目付役“をつけられたというところ・・・ですかな?」
「ふふ、まぁそんなところです。ですが私にはかえって好都合ですがね」
「またいらぬ事をして、余計な疑いを増やさないでくださいよ?」
「冗談は置いといて・・・。本当に毒が検出されなかったと?」
再び男の言葉を確認するケヴィン。彼が推理していた通りだと、ここでジークベルトの遺体や部屋から何らかの毒が検出される筈だった。医者の男が嘘をつく理由もない。
寧ろ教団の警備との共同調査で、偽りの調査結果を公表すれば真っ先に自分が疑われる。カールは医者という事で他の者達よりも行動制限が緩やかになっているが、その分余計な行動や発言をすれば犯人に繋がるとして、一気に疑いの目を向けられるリスクも伴っている。
「私も医者の端くれです。自分の行いや仕事には誇りを持っています。どんな事情があれ、仕事に手を抜いたり嘘をついたりはしません」
「そうでしたね。しかし困りました・・・。これでは捜査が難航しそうですね」
「残留している魔力反応も調べましたが、こちらも何ら異常は見当たりませんでしたな。外の護衛の方々の目もありましたし、スキルによる犯行の線はほぼほぼ無いと思っていいでしょうなぁ」
カール曰く、もし部屋で何らかのスキルが行われた、或いはスキルによって部屋に何らかの仕掛けを仕向けたのなら、その痕跡は毒の痕跡よりもはっきりとその場に残るのだという。
その場に漂う空気のように自然な魔力反応。そこに個人の微量な魔力や、漂う魔力の動きや残留する特定の魔力反応を検出し、それに該当する人物を割り出すというものらしい。
「ただ、毒では無いのですが・・・」
するとカールは、証拠らしい証拠が出てこずガッカリするケヴィンに、彼の興味をそそる情報を提示したのだ。それはジークベルトの遺体の一部から検出された妙な反応について語る。
「彼の遺体から、死に至るまでに行っていた行動の記録がありまして・・・」
「行動の記録?」
「直前に行っていた行動と言いますか、痕跡がまだ新しい方である為、そのように推測しているのですが彼の唇と、彼が使っていたと思われるカップに同じ紅茶の反応があったのです」
「紅茶?つまりジークベルト氏は死の直前に紅茶を口にしていたと?しかし、毒は検出されなかったんですよね?」
「えぇ、そうなのですが・・・。その紅茶に使われていた茶葉に、アルバでは出回っていないものの反応があったのです」
含みを持たせる言い方だったが、その紅茶から出てきた成分が人体に悪影響を及ぼすことは無いらしい。だが、過剰な摂取により目眩や動悸を起こさせる成分でもあることが、別の事件の記録から確認されているのだと語る。
「それなら、その成分を出していた茶葉こそが死因に繋がったんじゃありませんか?」
「勿論、それも調べさせましたが人体に影響が出るほどの量となると、相当分摂取する必要があるか、或いは血管に直接その成分を注射する必要があるのですよ・・・」
「スキルの反応は無く、可能性の一つとして死因になり得る成分は、彼の遺体からは僅かにしか検出されなかった・・・と、いうわけですか・・・」
調査結果に関しての話をするケヴィンとカール。それを聞いていたミアが、とある疑問を彼らに問う。今の話からすると、直接その成分を身体に注射器などを使って摂取する必要があるとのことだったが、ジークベルトの遺体にはそのような痕跡は見当たらない。
だがもし、その成分をコーティングするようなスキルがあり、お湯を注いだ時にそれが解除されるような仕掛けがあったとするならば、という疑問だった。
「面白い発想ですね。して、その紅茶が彼の元へやって来たのはいつ頃ですか?それとも彼が自ら紅茶を淹れたとか?」
「彼の部屋に紅茶が運び込まれたのは、パーティーが終わり彼が死体となって発見された部屋について少しした後だったようですね。使いの者が部屋を訪れたのを護衛隊の方々が確認しております。勿論、薬物反応や魔力の反応については厳しくチェックしたようですが」
「そこでは何の反応もなかった・・・というわけですね?」
カールはケヴィンの言葉に頷いた。ジークベルトの部屋へは何人か訪れているが、例外なく護衛の者達による厳しいチェックを受けている。少しでも疑いようのある要素があると中へは通してもらえず、要件がある場合扉の前で護衛の者達の立ち合いのもと、やり取りが行われていたようだった。
つまり、運び込まれた紅茶も厳しいチェックを受けたものであり、護衛隊もその譲渡の様子を確認していたのだそうだが、何らおかしな点はなかったらしい。
そしてこの世界特有の、魔力の痕跡などを調査するのが、今ジークベルトの死体が見つかった部屋で行われているものだった。
ここで一行が再会することになったのは、ツクヨとアカリが博物館で遭遇したというアルバの街医者“カール・フリッツ“だった。
「カールさん、進捗の方はどうですか?」
ケヴィンに声を掛けられたふくよかな体型の男が振り返る。その顔を見てツクヨとアカリは驚いたかのように、僅かに目を見開いた。
「ん~・・・それがなかなか・・・。貴方が望んていたような毒の反応は出てきませんな。おや?」
すると、男もケヴィンの他にゾロゾロと多くの人物達を連れているのに気がつき、状況を把握したように頷いていた。
「あぁ、貴方も“お目付役“をつけられたというところ・・・ですかな?」
「ふふ、まぁそんなところです。ですが私にはかえって好都合ですがね」
「またいらぬ事をして、余計な疑いを増やさないでくださいよ?」
「冗談は置いといて・・・。本当に毒が検出されなかったと?」
再び男の言葉を確認するケヴィン。彼が推理していた通りだと、ここでジークベルトの遺体や部屋から何らかの毒が検出される筈だった。医者の男が嘘をつく理由もない。
寧ろ教団の警備との共同調査で、偽りの調査結果を公表すれば真っ先に自分が疑われる。カールは医者という事で他の者達よりも行動制限が緩やかになっているが、その分余計な行動や発言をすれば犯人に繋がるとして、一気に疑いの目を向けられるリスクも伴っている。
「私も医者の端くれです。自分の行いや仕事には誇りを持っています。どんな事情があれ、仕事に手を抜いたり嘘をついたりはしません」
「そうでしたね。しかし困りました・・・。これでは捜査が難航しそうですね」
「残留している魔力反応も調べましたが、こちらも何ら異常は見当たりませんでしたな。外の護衛の方々の目もありましたし、スキルによる犯行の線はほぼほぼ無いと思っていいでしょうなぁ」
カール曰く、もし部屋で何らかのスキルが行われた、或いはスキルによって部屋に何らかの仕掛けを仕向けたのなら、その痕跡は毒の痕跡よりもはっきりとその場に残るのだという。
その場に漂う空気のように自然な魔力反応。そこに個人の微量な魔力や、漂う魔力の動きや残留する特定の魔力反応を検出し、それに該当する人物を割り出すというものらしい。
「ただ、毒では無いのですが・・・」
するとカールは、証拠らしい証拠が出てこずガッカリするケヴィンに、彼の興味をそそる情報を提示したのだ。それはジークベルトの遺体の一部から検出された妙な反応について語る。
「彼の遺体から、死に至るまでに行っていた行動の記録がありまして・・・」
「行動の記録?」
「直前に行っていた行動と言いますか、痕跡がまだ新しい方である為、そのように推測しているのですが彼の唇と、彼が使っていたと思われるカップに同じ紅茶の反応があったのです」
「紅茶?つまりジークベルト氏は死の直前に紅茶を口にしていたと?しかし、毒は検出されなかったんですよね?」
「えぇ、そうなのですが・・・。その紅茶に使われていた茶葉に、アルバでは出回っていないものの反応があったのです」
含みを持たせる言い方だったが、その紅茶から出てきた成分が人体に悪影響を及ぼすことは無いらしい。だが、過剰な摂取により目眩や動悸を起こさせる成分でもあることが、別の事件の記録から確認されているのだと語る。
「それなら、その成分を出していた茶葉こそが死因に繋がったんじゃありませんか?」
「勿論、それも調べさせましたが人体に影響が出るほどの量となると、相当分摂取する必要があるか、或いは血管に直接その成分を注射する必要があるのですよ・・・」
「スキルの反応は無く、可能性の一つとして死因になり得る成分は、彼の遺体からは僅かにしか検出されなかった・・・と、いうわけですか・・・」
調査結果に関しての話をするケヴィンとカール。それを聞いていたミアが、とある疑問を彼らに問う。今の話からすると、直接その成分を身体に注射器などを使って摂取する必要があるとのことだったが、ジークベルトの遺体にはそのような痕跡は見当たらない。
だがもし、その成分をコーティングするようなスキルがあり、お湯を注いだ時にそれが解除されるような仕掛けがあったとするならば、という疑問だった。
「面白い発想ですね。して、その紅茶が彼の元へやって来たのはいつ頃ですか?それとも彼が自ら紅茶を淹れたとか?」
「彼の部屋に紅茶が運び込まれたのは、パーティーが終わり彼が死体となって発見された部屋について少しした後だったようですね。使いの者が部屋を訪れたのを護衛隊の方々が確認しております。勿論、薬物反応や魔力の反応については厳しくチェックしたようですが」
「そこでは何の反応もなかった・・・というわけですね?」
カールはケヴィンの言葉に頷いた。ジークベルトの部屋へは何人か訪れているが、例外なく護衛の者達による厳しいチェックを受けている。少しでも疑いようのある要素があると中へは通してもらえず、要件がある場合扉の前で護衛の者達の立ち合いのもと、やり取りが行われていたようだった。
つまり、運び込まれた紅茶も厳しいチェックを受けたものであり、護衛隊もその譲渡の様子を確認していたのだそうだが、何らおかしな点はなかったらしい。
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