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自分の為のお節介
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カタリナという女性歌手の背景を知り、博物館での態度の裏にはそういった思いがあったのかと、一行は言葉が出てこなかった。
「少し長くなってしまったかな。中には俺の誇張もあったと思うが、彼女はああ見えて苦労人なんだよ。それを知ると、もっと応援したい気持ちになるんだ」
「うん、それは分かります。雑誌で見るような有名な方々が、条件はあるとはいえ一般の人達に特別な演奏や歌を披露してくれるのを、単なる仕事や売名くらいに思ってました」
「勿論それもあるだろう。彼らもきっとそれは否定しない。だが名を売らなければ、届けたい思いすら届かないんだと、俺は解釈しているよ」
「そうですね・・・」
才能を見出され、異例のデビューをしたりあまり深くない知識の中で突然有名になった人物を見かけると、何がそんなに凄いのか、大したことないのに名ばかり売れてと偏見の目を向けられることもあるだろう。
きっとその活動によって嫌いになってしまう人もいるかもしれない。しかし、それでも多くの人々の目を集めることで脚光を浴びた者が、真にその実力を問われるのはその後の本人の力に違いない。
堕落する者はそこで有頂天になり、不祥事を起こしたりボロが出る。また、周りの努力で注目を浴びていただけで、いざ一人で活動するとなると何も成果を出せない、謂わば偽りの演者になるということも少なくない。
そんな中でも、カタリナが耐えることなく脚光を浴び続けたのは、他ならぬ彼女の実力とその精神力にあるのだろう。
「さて、俺はそろそろ彼女の護衛に戻るよ。他の仲間達においしい思いばかりさせていられないからな。よかったらアンタ達も彼女の歌を聞いて見てくれよ!絶対損はしないから!」
「えぇ、是非とも。お話ありがとうございました。カタリナさんについて知るいい機会になりました」
「なんのなんの。俺ぁただ彼女のファンを増やしたいだけだからよ!じゃぁな」
陽気な護衛の者は、ツクヨ達に手を振りながら下の階層へ続く階段を降りていく。カタリナ・ドロツィーアという歌手の情報が彼らにとって重要となるかは分からないが、影響力を持つ人物の人柄を知っておくのは損ではないはず。
宮殿でなすべき事は果たしている三人は、手持ち無沙汰が故にカタリナ本人からもファンだという護衛からもお薦めされた、一階の会場で披露されるという舞台を見にしようと、中央の下を見渡せる席へと移動した。
「こっからでも十分見えそうだな」
「音も・・・辛うじて聞こえるって感じですかね。ですがこれでは・・・」
「シン達に相談してみようか?ただ待機してるだけなら、一階にいても三階にいても変わらないだろうし。なんならアカリだけでも・・・」
「いえ!そこまでして頂くわけには・・・」
自分だけ好き勝手は出来ぬと、ツクヨの申し出を断ろうとするアカリだったが、彼女にせっかくの宴を楽しんでもらおうと、ツクヨはアカリの事をツバキに任せ少しだけ二人の側を離れ、シン達のいるテーブルへと向かった。
「別にそこまでしなくてもいいのに・・・」
アカリがボソッと口にした言葉は、ツバキの耳にも届いていた。アカリよりもツクヨとの付き合いが長いツバキは、彼の面倒見の良さをよく知っている。自分だけではなくアカリも仲間として同行することになり、ツクヨのそんな一面は更に如実になったとツバキは感じていた。
きっとそれはツクヨにとって苦になっている訳ではなく、寧ろ彼が無意識に押さえていた部分が表に出てきて、本来のツクヨらしくなってきたのではないかとツバキは思っていた。
そしてそんなツバキの考えはあながち外れていた訳でもなく、ツクヨはアカリの姿に僅かながら自身の娘の姿を重ねていたのだ。同じ子供ならツバキの方が先にいたが、どちらかというと性格的にはアカリの方が似ており、何よりその容姿や振る舞いがアカリの方が女らしくあったのも要因となっていた。
「まぁ、ツクヨのしたいようにさせてやんな」
「え?それは一体どういう事です?」
「記憶を無くしてるお前に、少しでも楽しんでもらいてぇんだろ。それは気を遣ってるとこじゃなくて、ツクヨがお前の為に何かしたいんだ。結果それがツクヨの為にもなるんだよ」
「・・・どうしてそうなるんです」
「さぁ・・・なんとなくだがよ、ツクヨの様子を見てカタリナっていう人の話を聞いて、なんかスイッチでも入ったんじゃねぇかなって思っただけだ。ここは少し大人になって、ツクヨのお節介に付き合ってやんな」
「それでツクヨさんが喜んで頂けるのなら・・・」
ツバキの話を聞いて、先程のツクヨの様子を思い浮かべるアカリ。確かに彼のいう通り、ツクヨの表情は明るく見えた。いつも面倒を見てもらう側の立場にいたアカリは、それが皆んなへの負担になるのでは思っていたが、大人しくそれに付き合うのもツクヨの為だと先輩であるツバキ教わったアカリは、理解を深める為にもツバキの言う通り、ツクヨのお節介を受け入れる。
「少し長くなってしまったかな。中には俺の誇張もあったと思うが、彼女はああ見えて苦労人なんだよ。それを知ると、もっと応援したい気持ちになるんだ」
「うん、それは分かります。雑誌で見るような有名な方々が、条件はあるとはいえ一般の人達に特別な演奏や歌を披露してくれるのを、単なる仕事や売名くらいに思ってました」
「勿論それもあるだろう。彼らもきっとそれは否定しない。だが名を売らなければ、届けたい思いすら届かないんだと、俺は解釈しているよ」
「そうですね・・・」
才能を見出され、異例のデビューをしたりあまり深くない知識の中で突然有名になった人物を見かけると、何がそんなに凄いのか、大したことないのに名ばかり売れてと偏見の目を向けられることもあるだろう。
きっとその活動によって嫌いになってしまう人もいるかもしれない。しかし、それでも多くの人々の目を集めることで脚光を浴びた者が、真にその実力を問われるのはその後の本人の力に違いない。
堕落する者はそこで有頂天になり、不祥事を起こしたりボロが出る。また、周りの努力で注目を浴びていただけで、いざ一人で活動するとなると何も成果を出せない、謂わば偽りの演者になるということも少なくない。
そんな中でも、カタリナが耐えることなく脚光を浴び続けたのは、他ならぬ彼女の実力とその精神力にあるのだろう。
「さて、俺はそろそろ彼女の護衛に戻るよ。他の仲間達においしい思いばかりさせていられないからな。よかったらアンタ達も彼女の歌を聞いて見てくれよ!絶対損はしないから!」
「えぇ、是非とも。お話ありがとうございました。カタリナさんについて知るいい機会になりました」
「なんのなんの。俺ぁただ彼女のファンを増やしたいだけだからよ!じゃぁな」
陽気な護衛の者は、ツクヨ達に手を振りながら下の階層へ続く階段を降りていく。カタリナ・ドロツィーアという歌手の情報が彼らにとって重要となるかは分からないが、影響力を持つ人物の人柄を知っておくのは損ではないはず。
宮殿でなすべき事は果たしている三人は、手持ち無沙汰が故にカタリナ本人からもファンだという護衛からもお薦めされた、一階の会場で披露されるという舞台を見にしようと、中央の下を見渡せる席へと移動した。
「こっからでも十分見えそうだな」
「音も・・・辛うじて聞こえるって感じですかね。ですがこれでは・・・」
「シン達に相談してみようか?ただ待機してるだけなら、一階にいても三階にいても変わらないだろうし。なんならアカリだけでも・・・」
「いえ!そこまでして頂くわけには・・・」
自分だけ好き勝手は出来ぬと、ツクヨの申し出を断ろうとするアカリだったが、彼女にせっかくの宴を楽しんでもらおうと、ツクヨはアカリの事をツバキに任せ少しだけ二人の側を離れ、シン達のいるテーブルへと向かった。
「別にそこまでしなくてもいいのに・・・」
アカリがボソッと口にした言葉は、ツバキの耳にも届いていた。アカリよりもツクヨとの付き合いが長いツバキは、彼の面倒見の良さをよく知っている。自分だけではなくアカリも仲間として同行することになり、ツクヨのそんな一面は更に如実になったとツバキは感じていた。
きっとそれはツクヨにとって苦になっている訳ではなく、寧ろ彼が無意識に押さえていた部分が表に出てきて、本来のツクヨらしくなってきたのではないかとツバキは思っていた。
そしてそんなツバキの考えはあながち外れていた訳でもなく、ツクヨはアカリの姿に僅かながら自身の娘の姿を重ねていたのだ。同じ子供ならツバキの方が先にいたが、どちらかというと性格的にはアカリの方が似ており、何よりその容姿や振る舞いがアカリの方が女らしくあったのも要因となっていた。
「まぁ、ツクヨのしたいようにさせてやんな」
「え?それは一体どういう事です?」
「記憶を無くしてるお前に、少しでも楽しんでもらいてぇんだろ。それは気を遣ってるとこじゃなくて、ツクヨがお前の為に何かしたいんだ。結果それがツクヨの為にもなるんだよ」
「・・・どうしてそうなるんです」
「さぁ・・・なんとなくだがよ、ツクヨの様子を見てカタリナっていう人の話を聞いて、なんかスイッチでも入ったんじゃねぇかなって思っただけだ。ここは少し大人になって、ツクヨのお節介に付き合ってやんな」
「それでツクヨさんが喜んで頂けるのなら・・・」
ツバキの話を聞いて、先程のツクヨの様子を思い浮かべるアカリ。確かに彼のいう通り、ツクヨの表情は明るく見えた。いつも面倒を見てもらう側の立場にいたアカリは、それが皆んなへの負担になるのでは思っていたが、大人しくそれに付き合うのもツクヨの為だと先輩であるツバキ教わったアカリは、理解を深める為にもツバキの言う通り、ツクヨのお節介を受け入れる。
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