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教団の目指すもの
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「神園還教は世界中にその信者を抱えています。教団の主な活動は、その教えを広めたり慈善活動にあるんですが、無償の救いにも資源やお金が掛かるんです」
別行動となっていたツクヨ達もまた、街医者のカールに教団のことに関する質問をしていた。カールも彼らが教団に興味を持ってくれたのかと、嬉しそうに神園還教についての話を繰り広げる。
彼らにとっては願ってもないことだった。自ら教団を探るように情報を集めれば、確かに教団に関する情報や、その中でジークベルト大司教の事を聞けるかもしれない。
だがそれでは、警備や事前にシンから聞いていた探偵などという、隠れた刺客に疑いの目を向けられてしまうからだった。
その点カールは、ツクヨとアカリとは面識があり、興味を示した彼らに対し自ら教団の話を始めた。これが彼らにとって非常に都合が良かったのだ。
教団の話を聞いていくうちに、その中には気になるワードもいくつか含まれていた。それはWoFのユーザーであるツクヨにとっても、こちらの世界で出会ったツバキやアカリにとっても、無視できない内容になっていた。
そもそも、最初に教団が結成された地というのが、シン達が目指していたアークシティなのだとカールは語った。その時点で驚きの情報だったのだが、カールの語る教団の活動や理念、目的の中にシン達と旅をする中で想いを託されたツバキの目的にも繋がっていたのだ。
教団の最終的な目的とされているのは、どうやら教団の名前にもなっている通り、神がいるとされている楽園へ還るというものだった。人間はかつて罪を犯し神々の楽園から追放された。
その際、人間には絶対に克服することが出来ず、許されることのない罪という鎖で、追放された地に繋がれるようになってしまった。それがかの有名な“七つの大罪“と呼ばれる、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すものだった。
鎖がある限り、人はその地を離れる事が出来ず、神の楽園へ還ることも出来ない。神園還教はその人の罪を克服し断ち切ることで、追放された地を飛び立ち楽園へと還ること目指していた。
教団の解釈では、人間が楽園から追放されたという地がこの星であり、神々のいる楽園は星の外、所謂宇宙のどこかにあると信じていた。
「宇宙だって・・・?」
「・・・ツバキ・・・」
ツバキは俯きながら小さな手を握りしめていた。それを見て彼を心配するツクヨは、彼がオルレラの街で出会った少年達や、その子供達の解放の為に尽力していたオスカーの思いを託されていた事を思い出す。
オルレラの研究所は、アークシティの研究の一環で設けられた施設であり、そこでは宇宙へ飛び立つ為のロケットの燃料として、魔力を集めやすい人間の子供を燃料として使う研究が行われていたのだ。
会ったばかりのツバキを命懸けで救ってくれた彼らに、これ以上こんなあ悲惨な出来事が行われぬようアークシティの研究を止めてくれと遺言を託されたツバキにとって、その教団の言う宇宙を目指すという目的は、潰すべき対象でもあったのだ。
「カールさん・・・宇宙へはどうやって向かうのですか?」
小さく震えるツバキを宥め、ツクヨは彼に代わりその詳細について尋ねる。しかし、教団の中でも末端のものであるカールには、その詳細な内容についてはわかる筈もなかったようだ。
「これはあくまで教団の掲げる目標であって、宇宙調査の為の口実なのではと思いますが・・・。私が知る限りでは、ロケットという乗り物によって宇宙へと飛び立つそうです。その研究や燃料にもお金が掛かるようで・・・」
「アンタは、そのロケットに使われる燃料を知っているのか?」
これまでとは突然様子の変わったツバキが、カールの目も見ずに質問する。その声は怒りに震えていたが、当然カールには何故ツバキの様子が変わったのかなど知る由もなかった。
「いえ・・・私はそのような話には疎いので。しかし宇宙というのはどんなところなのでしょうなぁ?楽園と言われているほどの場所とあらば、私達では想像もつかない場所なのでしょうなぁ」
ツバキの様子とは反対に、呑気に本当に存在するのかさえ分からない楽園について妄想するカール。彼は本当にロケットの燃料については知らないようだった。
無論、ツバキもカールに悪意がないのは分かっている。それに彼がツバキらの心情を知る由もなく、言葉に配慮することすら出来ないのも分かっていた。ツクヨに拳を解くように諭されるツバキは、ストンと肩の力を抜くと分かっているとツクヨに伝え、その上でカールに対しロケットに使われている燃料について、教えることもしなかった。
「ったく、呑気なもんだな」
「ははは。あくまでそれは比喩的な表現に過ぎませんよ。要は皆の中から悪意を消し去り、平等で平和な星にしていこうという話です」
子供にも分かるように、カールは教団の目的を簡略化してツバキに伝える。この時のツバキは、自らの感情を抑え込むことで少しだけ成長し、いつもなら子供扱いされることに口答えしていたが、すんなりとそれを受け入れていた。
「嘘!?あのツバキさんが大人な対応を!?」
「悪いかよ?」
だがあくまでそれは、この祝宴の場と目立つ行いを避けるため、人前では大人しく振る舞っていただけで、ツバキの変化に驚いたアカリの皮肉には、いつもの調子を見せていた。
結局、カールは教団の表向きな事しか知らなかったようだ。だがその教団の目的というのは、憎きアークシティの非道な研究に繋がっており、話に聞く限りではいずれシン達の前に立ちはだかる“敵“として対立してしまう事になりそうだと、一行は感じていた。
別行動となっていたツクヨ達もまた、街医者のカールに教団のことに関する質問をしていた。カールも彼らが教団に興味を持ってくれたのかと、嬉しそうに神園還教についての話を繰り広げる。
彼らにとっては願ってもないことだった。自ら教団を探るように情報を集めれば、確かに教団に関する情報や、その中でジークベルト大司教の事を聞けるかもしれない。
だがそれでは、警備や事前にシンから聞いていた探偵などという、隠れた刺客に疑いの目を向けられてしまうからだった。
その点カールは、ツクヨとアカリとは面識があり、興味を示した彼らに対し自ら教団の話を始めた。これが彼らにとって非常に都合が良かったのだ。
教団の話を聞いていくうちに、その中には気になるワードもいくつか含まれていた。それはWoFのユーザーであるツクヨにとっても、こちらの世界で出会ったツバキやアカリにとっても、無視できない内容になっていた。
そもそも、最初に教団が結成された地というのが、シン達が目指していたアークシティなのだとカールは語った。その時点で驚きの情報だったのだが、カールの語る教団の活動や理念、目的の中にシン達と旅をする中で想いを託されたツバキの目的にも繋がっていたのだ。
教団の最終的な目的とされているのは、どうやら教団の名前にもなっている通り、神がいるとされている楽園へ還るというものだった。人間はかつて罪を犯し神々の楽園から追放された。
その際、人間には絶対に克服することが出来ず、許されることのない罪という鎖で、追放された地に繋がれるようになってしまった。それがかの有名な“七つの大罪“と呼ばれる、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すものだった。
鎖がある限り、人はその地を離れる事が出来ず、神の楽園へ還ることも出来ない。神園還教はその人の罪を克服し断ち切ることで、追放された地を飛び立ち楽園へと還ること目指していた。
教団の解釈では、人間が楽園から追放されたという地がこの星であり、神々のいる楽園は星の外、所謂宇宙のどこかにあると信じていた。
「宇宙だって・・・?」
「・・・ツバキ・・・」
ツバキは俯きながら小さな手を握りしめていた。それを見て彼を心配するツクヨは、彼がオルレラの街で出会った少年達や、その子供達の解放の為に尽力していたオスカーの思いを託されていた事を思い出す。
オルレラの研究所は、アークシティの研究の一環で設けられた施設であり、そこでは宇宙へ飛び立つ為のロケットの燃料として、魔力を集めやすい人間の子供を燃料として使う研究が行われていたのだ。
会ったばかりのツバキを命懸けで救ってくれた彼らに、これ以上こんなあ悲惨な出来事が行われぬようアークシティの研究を止めてくれと遺言を託されたツバキにとって、その教団の言う宇宙を目指すという目的は、潰すべき対象でもあったのだ。
「カールさん・・・宇宙へはどうやって向かうのですか?」
小さく震えるツバキを宥め、ツクヨは彼に代わりその詳細について尋ねる。しかし、教団の中でも末端のものであるカールには、その詳細な内容についてはわかる筈もなかったようだ。
「これはあくまで教団の掲げる目標であって、宇宙調査の為の口実なのではと思いますが・・・。私が知る限りでは、ロケットという乗り物によって宇宙へと飛び立つそうです。その研究や燃料にもお金が掛かるようで・・・」
「アンタは、そのロケットに使われる燃料を知っているのか?」
これまでとは突然様子の変わったツバキが、カールの目も見ずに質問する。その声は怒りに震えていたが、当然カールには何故ツバキの様子が変わったのかなど知る由もなかった。
「いえ・・・私はそのような話には疎いので。しかし宇宙というのはどんなところなのでしょうなぁ?楽園と言われているほどの場所とあらば、私達では想像もつかない場所なのでしょうなぁ」
ツバキの様子とは反対に、呑気に本当に存在するのかさえ分からない楽園について妄想するカール。彼は本当にロケットの燃料については知らないようだった。
無論、ツバキもカールに悪意がないのは分かっている。それに彼がツバキらの心情を知る由もなく、言葉に配慮することすら出来ないのも分かっていた。ツクヨに拳を解くように諭されるツバキは、ストンと肩の力を抜くと分かっているとツクヨに伝え、その上でカールに対しロケットに使われている燃料について、教えることもしなかった。
「ったく、呑気なもんだな」
「ははは。あくまでそれは比喩的な表現に過ぎませんよ。要は皆の中から悪意を消し去り、平等で平和な星にしていこうという話です」
子供にも分かるように、カールは教団の目的を簡略化してツバキに伝える。この時のツバキは、自らの感情を抑え込むことで少しだけ成長し、いつもなら子供扱いされることに口答えしていたが、すんなりとそれを受け入れていた。
「嘘!?あのツバキさんが大人な対応を!?」
「悪いかよ?」
だがあくまでそれは、この祝宴の場と目立つ行いを避けるため、人前では大人しく振る舞っていただけで、ツバキの変化に驚いたアカリの皮肉には、いつもの調子を見せていた。
結局、カールは教団の表向きな事しか知らなかったようだ。だがその教団の目的というのは、憎きアークシティの非道な研究に繋がっており、話に聞く限りではいずれシン達の前に立ちはだかる“敵“として対立してしまう事になりそうだと、一行は感じていた。
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