World of Fantasia

神代 コウ

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音楽の街

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 「ここがアルバ・・・」

 「凄いね!なんかヨーロッパみたいな雰囲気だ」

 ツクヨの言葉の通り、アルバの街並みは現実世界で言うところのヨーロッパを参考にして作られた街だった。だが当然、そんな話をしていると聞き慣れない地名にツバキが頭を傾げる。

 「よーろっぱ?何だそりゃぁ?」

 「えっ!?・・・あぁ~・・・え~っと・・・」

 返答に困っているところに助け舟を出したのはミアだった。彼女は正直にそれが地名であると語る。ただ、あくまで実在しているのか分からないと言った様子で濁し、噂話で聞いた程度のものだと説明した。

 それを聞いて納得した様子のツバキは、ウィリアムの造船所で海賊から聞いた話に、似通った街があった事を語る。シン達はその話を聞いて、別段疑問に思うことはなかった。

 現実世界のものを参考にして街が作られていくのは、ゲームとして珍しい話でもない。似たような街がいくつも存在していたとしても、おかしい事はないだろう。

 もっとも、文字通りそっくりなだけでなく全く同じものが存在していると言うのなら、何かしら彼らの追っている“異変“に関係しているのかもしれない。

 「別に変わった様子は無いな・・・」

 「音も見えないし、おかしくなっている様子の人も見当たらない」

 「おかしいって・・・例の噂話?確かに洗脳じみた虜になる人々が多いって話だったよね?でもそんなにおかしな話かな。居心地が良ければまた来たいと思うもんだろうし、余程気に入ったのなら住みたいと思うのも普通だと思うけど?」

 シン達が疑い深くなってしまっているのは確かな事だった。少しでも怪しいと思うと、疑わずにはいられなくなってしまう。だがそれは決して悪いことではない。むしろ彼らにとって、そのくらい注意深くなければ神出鬼没な黒いコートの者達に対抗できない。

 「なぁ~んかきな臭いんだよな・・・。これまでもそうだっただろ?一見平和そうに見えるのが、逆に怪しいんだよなぁ」

 「まぁ疑ってかかる気持ちは分かるぜ。オルレラの街じゃぁそれでまんまと嵌められたからな。何はともあれ、おかしいと思ったことはどんなに小さなことであれ共有しておこうぜ!」

 当然、この世界の住人であるツバキも警戒心を怠っている訳ではなかった。それこそツバキの言うようにオルレラの街では、何の変哲もない街並みと人々、そしてその景観からいつの間に術中に嵌ってしまっていたのかさえ気付かなかった程だった。

 それを思うと、ミアの言葉は彼らの過去に突き刺さるものもあった。しかし、一行のパーティーへの加入が遅かったアカリに関しては、警戒すると言うよりも、新たな土地や街に訪れる新鮮さの方が優っているようだった。

 「でも皆さんといれば大丈夫ですよ。リナムルの時もそうでしたし。ただ、バラバラになった時は少し不安でしたけど」

 「ははは、そうだな。今度はバラバラにならないようにしような」

 新天地での日々に期待と不安を抱くアカリの頭を、優しく撫でるミア。男ばかりのパーティーに、漸く女らしい女性メンバーが加わったことで、まるで妹のように接するミア。

 パーティーの為に努力するアカリの姿を見て、嘗ての自分が若かりし頃の青春を捧げて努力してきた結果、本当に欲しかった光景を彼女には見させてあげたいという思いを胸に秘めていたミアは、自分の姿を重ねるようにアカリを支える。

 街での過ごし方や考え方について一行が話していると、馬車は大きな建物の前で止まった。

 「長旅、お疲れ様でした。ここが目的地であるアルバとなります。護衛の依頼はここまでとなりますので、報酬は街の商業組合でお受け取りください。それでは皆さん、ありがとうございました。良い旅を」

 一行が降ろされた場所は、どうやらアルバの街でも有名な建物だったらしく、馬車が到着するや否や中からやって来た人達が、早速商人達と会話を交わし荷物を中へと運んでいた。

 「ここは・・・?」

 「そうか、アンタ達はこの街が初めてだって言ってたな。アルバは音楽で有名な街だ。いろんな作曲家や作詞家、歌手なんかが足を運ぶその筋じゃ有名な街だ。それ以外にも有名な噂があるだろうが、とにかく心地のいい街だ。そしてここは、とある作曲家の博物館って訳だ」

 戸惑う一行に、同行していたギルドの男が目の前の建物について説明してくれた。シン達を乗せた商人の馬車は、どうやらこの博物館へ荷物を運んでいたようだった。

 「さぁ、俺達は早速商業組合に向かうが、アンタらはどうする?よかったら案内しようか?」

 初めての街で右も左も分からない一行は、報酬を受け取る為にもギルドの傭兵達と共に商業組合があるという場所へ案内してもらう事にした。

 様々なデザイン性のある街灯が夜の街を照らし、そんな雰囲気だけでもまるで別の世界に迷い込んだかのような気持ちと、オシャレな空気に高揚を隠しきれずにいた。
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