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手負の獣
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ミアの使役する精霊ウンディーネの感知を最も容易く抜けたその者は、誰にも怪しまれることなく迂回しリナムルの街へとやって来る。人目につかぬところで、今度はどこにでもいるような街の住人の姿へと変わる。
動物の姿で関所を抜けたその者は、あたかも自分は元からリナムルで暮らしていた人間であるかのように振る舞い、街の風景に溶け込んでいった。
「こんな周りくどい事する必要もないけど、たまにはこういう・・・スリル?って言うのも面白いね!・・・おや?」
街中で周囲を見渡していると、その者の目に留まるとある人物がいた。その人物は紅い鳥を連れた女性で、獣人族の者と一緒に何処かへと向かっている途中のようだった。
「あの子は確か彼らと一緒にいた・・・。ふぅ~ん」
不敵な笑みを浮かべてその者は、そのまま偽りの姿のまま不敵な笑みを浮かべ、彼女らの元へと歩いて行った。
場面は戻り、獣の残党の痕跡を調査していたミア達は、ウンディーネが感じ取った反応の話を同行していた者達にも伝え、同じように見知らぬ強力な反応を感知した時は絶対に近づかぬようにと注意喚起をし、再び痕跡の調査へと戻っていった。
暫くして、魔力の反応を探っていた調査員から現場に残留していた獣と思われる魔力反応と同じものが、その場よりも少し先に現れたという報告を受ける。
「反応はここに残留していた魔力の反応と同じ。同一の生物とみて間違い」
「ウンディーネはどうだ?」
「えぇ、彼の言う通り同じ生物の魔力だと思うわ。・・・でも」
「でも?」
先程の未知なる反応を感知してから、精霊ウンディーネの様子が少しおかしいことにミアが気づいた。その時はその謎の人物の事について何か考察していたのだろうと思いそっとしていたが、自ら何かを語ろうとするならばその内容に耳を傾けない理由はない。
「自信はないわ。さっきの一件があるんだもの。反応自体は私の知っているものだけれど、いざその場についてみたら別の何者かがいるかもしれないわ・・・」
「自分に絶対の自信を持つってのは簡単な事じゃないだろ?それとも、それも精霊としてのプライドがあるからなのか?」
「プライド・・・私は自分の存在にプライドを持っているのかしら・・・。それとも・・・」
「らしくないな。アンタは少し休んでいてくれて構わない。勝手に呼び出してすまなかったな、さっきはありがとう。アンタがあの反応を感知できなかったら、今アタシらは無事じゃなかったかもしれないしな」
ミアはウンディーネに、元のいるべき場所に帰るように促す。彼女にも休息が必要かもしれない。それに人間であるミアのには彼女の悩みは分からない。だが、そう思っていたのはミアだけだったようで、当の本人は無意識に発した彼女の言葉に、僅かながら自信を取り戻していたようだった。
「そっそう?・・・へへ、ありがとう・・・か。えぇそうするわ。申し訳ないけど少し休ませて貰うわね。でもこのままじゃいかないから!この世界の精霊の名において、あの何者かの反応を必ず調べてやるんだからッ・・・!」
「元気が出たようで何よりだ。また何かあったら頼りにするかね、精霊様」
調子を取り戻したような様子で、ウンディーネはミアの言う通りに姿を消した。一行は魔力の反応が現れたと言う場所へ向けて移動を開始し、木の上にいたミアもウンディーネを見送った後にその後を追った。
反応があったという場所に近づくにつれ、獣人族の者やガルム、そして同じく獣人の気配感知能力の一部を手に入れたミアでさえも、その反応を感じ取れるくらいにまでハッキリとし始めた。
「いるな・・・」
「あぁ、間違いない。アジトを襲った奴らと同じだ。あの時は不意打ちを喰らって守らなきゃならねぇモンもあったが、今度はそうはいかねぇぜ!」
いつにもなく気合の入る一行。ガルムが集めた小隊の中には、家族のいる住居地を襲撃された者もいる。仲間達の計らいにより家族は無事だったが、彼を庇って戦った仲間が重傷を負ってしまった。
彼はその仲間の為にも、代わりにリナムル再建の為尽力するという強い意気込みを持っていた。
「ガルム、アタシはまた上から援護するで、いいんだな?」
「あぁ、それで頼む。万が一俺達が逃した時は撃ち抜いてくれ。・・・まぁそうはならんだろうがな」
「そのようだな、期待してる」
暑くなる面々に対し、冷静さを常に維持して戦場を客観視できる者がいなければならない。その役割を担っているのが、小隊のリーダーであるガルムと戦場を把握し狙撃を行うミアだった。
二人がそれぞれ部隊の後方と上方に陣取ると、準備を完了した一行は先陣部隊を筆頭に一斉に獣と同じ魔力反応を放つその者に攻撃を仕掛ける。
その場にいたのは、一行が感知した通り森やリナムルで彼らを襲った獣と同じものだった。獣は手負のようで、獣人族の気配消しと同じように限りなく自身の気配を消した状態で、森に住む野生動物を狩り英気を養っていたようだ。
それぞれ距離を取り、三方向から獣を襲撃する先陣部隊。一定の距離まで近付くと獣側も気づいたようで、頬張っていた動物を投げ捨て臨戦態勢に入る。
動物の姿で関所を抜けたその者は、あたかも自分は元からリナムルで暮らしていた人間であるかのように振る舞い、街の風景に溶け込んでいった。
「こんな周りくどい事する必要もないけど、たまにはこういう・・・スリル?って言うのも面白いね!・・・おや?」
街中で周囲を見渡していると、その者の目に留まるとある人物がいた。その人物は紅い鳥を連れた女性で、獣人族の者と一緒に何処かへと向かっている途中のようだった。
「あの子は確か彼らと一緒にいた・・・。ふぅ~ん」
不敵な笑みを浮かべてその者は、そのまま偽りの姿のまま不敵な笑みを浮かべ、彼女らの元へと歩いて行った。
場面は戻り、獣の残党の痕跡を調査していたミア達は、ウンディーネが感じ取った反応の話を同行していた者達にも伝え、同じように見知らぬ強力な反応を感知した時は絶対に近づかぬようにと注意喚起をし、再び痕跡の調査へと戻っていった。
暫くして、魔力の反応を探っていた調査員から現場に残留していた獣と思われる魔力反応と同じものが、その場よりも少し先に現れたという報告を受ける。
「反応はここに残留していた魔力の反応と同じ。同一の生物とみて間違い」
「ウンディーネはどうだ?」
「えぇ、彼の言う通り同じ生物の魔力だと思うわ。・・・でも」
「でも?」
先程の未知なる反応を感知してから、精霊ウンディーネの様子が少しおかしいことにミアが気づいた。その時はその謎の人物の事について何か考察していたのだろうと思いそっとしていたが、自ら何かを語ろうとするならばその内容に耳を傾けない理由はない。
「自信はないわ。さっきの一件があるんだもの。反応自体は私の知っているものだけれど、いざその場についてみたら別の何者かがいるかもしれないわ・・・」
「自分に絶対の自信を持つってのは簡単な事じゃないだろ?それとも、それも精霊としてのプライドがあるからなのか?」
「プライド・・・私は自分の存在にプライドを持っているのかしら・・・。それとも・・・」
「らしくないな。アンタは少し休んでいてくれて構わない。勝手に呼び出してすまなかったな、さっきはありがとう。アンタがあの反応を感知できなかったら、今アタシらは無事じゃなかったかもしれないしな」
ミアはウンディーネに、元のいるべき場所に帰るように促す。彼女にも休息が必要かもしれない。それに人間であるミアのには彼女の悩みは分からない。だが、そう思っていたのはミアだけだったようで、当の本人は無意識に発した彼女の言葉に、僅かながら自信を取り戻していたようだった。
「そっそう?・・・へへ、ありがとう・・・か。えぇそうするわ。申し訳ないけど少し休ませて貰うわね。でもこのままじゃいかないから!この世界の精霊の名において、あの何者かの反応を必ず調べてやるんだからッ・・・!」
「元気が出たようで何よりだ。また何かあったら頼りにするかね、精霊様」
調子を取り戻したような様子で、ウンディーネはミアの言う通りに姿を消した。一行は魔力の反応が現れたと言う場所へ向けて移動を開始し、木の上にいたミアもウンディーネを見送った後にその後を追った。
反応があったという場所に近づくにつれ、獣人族の者やガルム、そして同じく獣人の気配感知能力の一部を手に入れたミアでさえも、その反応を感じ取れるくらいにまでハッキリとし始めた。
「いるな・・・」
「あぁ、間違いない。アジトを襲った奴らと同じだ。あの時は不意打ちを喰らって守らなきゃならねぇモンもあったが、今度はそうはいかねぇぜ!」
いつにもなく気合の入る一行。ガルムが集めた小隊の中には、家族のいる住居地を襲撃された者もいる。仲間達の計らいにより家族は無事だったが、彼を庇って戦った仲間が重傷を負ってしまった。
彼はその仲間の為にも、代わりにリナムル再建の為尽力するという強い意気込みを持っていた。
「ガルム、アタシはまた上から援護するで、いいんだな?」
「あぁ、それで頼む。万が一俺達が逃した時は撃ち抜いてくれ。・・・まぁそうはならんだろうがな」
「そのようだな、期待してる」
暑くなる面々に対し、冷静さを常に維持して戦場を客観視できる者がいなければならない。その役割を担っているのが、小隊のリーダーであるガルムと戦場を把握し狙撃を行うミアだった。
二人がそれぞれ部隊の後方と上方に陣取ると、準備を完了した一行は先陣部隊を筆頭に一斉に獣と同じ魔力反応を放つその者に攻撃を仕掛ける。
その場にいたのは、一行が感知した通り森やリナムルで彼らを襲った獣と同じものだった。獣は手負のようで、獣人族の気配消しと同じように限りなく自身の気配を消した状態で、森に住む野生動物を狩り英気を養っていたようだ。
それぞれ距離を取り、三方向から獣を襲撃する先陣部隊。一定の距離まで近付くと獣側も気づいたようで、頬張っていた動物を投げ捨て臨戦態勢に入る。
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