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悠久の存在と永遠の存在
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他の者達には感じ取れないものを感じ取ったウンディーネは、その反応の正体を知っているとでもいうのかのようなミアの言葉と反応に、肩を窄めていう通りにする。
「どういう事なの?これは一体何?」
彼女の耳元で小さく囁くように問いかけるウンディーネ。しかし実際のところ、ミアにも彼女が感じ取った反応の正体が分かった訳ではない。ただミアの認識では、ウンディーネはこの世界でも長い年月という時間の中で生きている精霊のように思っていた。
それこそ人間の寿命など一瞬に感じてしまうほど、途方もない時間の流れの中にいる彼女が“知らない“というのが、ミアの中で異常なものを感じ取ったであろうことを察しただけなのだ。
「正直、アタシにも分からない・・・。だが、思い当たるものが無い訳じゃない。もしそれがアタシの思っている者の反応だとすれば・・・それは触れちゃならないものだ・・・」
「あり得ない・・・私の知識でも知り得ないものが、まだこの世界にあるとでも・・・?」
突然発せられたミアの声に、木の下で待機していたガルムが人為的な物音を小さく立てて彼女らの気をひく。それに気がついたミアに、何事かと表情でうっかけるガルムは他の調査を行なっている者達にも合図を送り、手を止めている手際の良さを見せた。
事態が把握できていないミアは、その場では彼らを静止し目立った行動は取らせないようにした。
ウンディーネが捕らえた反応が、ミアの想像する黒いコートの人物だとしたらこちらの動向に気がついて何をしてくるか分からない。
しかしどういう訳か、待てど暮らせどその反応が一行に近づいてくるような気配はなく、寧ろ彼らから離れていくように移動しながら反応は薄れていったのだという。
「・・・どうだ?反応は消えたか?」
「えぇ、離れていったわ。でも感知が出来なくなったというより、文字通り“消えた“と言うべきかしら・・・」
「消えた?」
「感知できる出来ないの領域ではなく、その反応自体が消えたの」
精霊が感じ取れるものは、生命力や魔力だけではなくもっと微量なものまで感知できるのだと言われている。そしてその範囲も獣人やエルフの比ではない。
そんな彼女の能力をもってしても反応が消えたと言わしめた存在。その事からも只者ではない事が伺える。そしてウンディーネはあ、反応が消える前に離れていったと言っていた。
ちなみにどの方角へと離れていったのか尋ねると、その反応は森の敷かれた道にある人間が設けた中継地点のある方角へと消えていったのだという。リナムルの街とは反対方向で、問題がなければ変に追う必要もないかと判断したミアは、もう動いても大丈夫だとガルムに伝えられる。
緊迫した状況から解放され、安堵した様子で木から降りてきたミアは、事の顛末を確認しようと近づいてくる。訳もわからず手を止めさせられた部隊の者達も、ミアから反応が消えたことを伺ったガルムが、獣の調査を再開してほいと呼びかける。
一方、ウンディーネの感知を逃れた存在。それはミアの想像していた通り黒いコートの人物だった。その人物はどうやってここまで来たのか、研究所を脱出してリナムル周辺の森の中にまで侵食してきていたのだ。
「お?この反応は・・・。ふぅ~ん、僕の反応を感知できる奴がいるのか。でも・・・これじゃぁもう僕のことは追えないんじゃないかなぁ?」
そう言うと黒いコートの人物は、森の中を歩きながら服装ごと別の者へと姿を変えた。それは木々の合間を抜ける一瞬の出来事だった。彼という存在を木の幹が重なった瞬間、その姿はどこにでもいるような森の動物の姿へと変わり、何処かへと走り去っていってしまった。
「どういう事なの?これは一体何?」
彼女の耳元で小さく囁くように問いかけるウンディーネ。しかし実際のところ、ミアにも彼女が感じ取った反応の正体が分かった訳ではない。ただミアの認識では、ウンディーネはこの世界でも長い年月という時間の中で生きている精霊のように思っていた。
それこそ人間の寿命など一瞬に感じてしまうほど、途方もない時間の流れの中にいる彼女が“知らない“というのが、ミアの中で異常なものを感じ取ったであろうことを察しただけなのだ。
「正直、アタシにも分からない・・・。だが、思い当たるものが無い訳じゃない。もしそれがアタシの思っている者の反応だとすれば・・・それは触れちゃならないものだ・・・」
「あり得ない・・・私の知識でも知り得ないものが、まだこの世界にあるとでも・・・?」
突然発せられたミアの声に、木の下で待機していたガルムが人為的な物音を小さく立てて彼女らの気をひく。それに気がついたミアに、何事かと表情でうっかけるガルムは他の調査を行なっている者達にも合図を送り、手を止めている手際の良さを見せた。
事態が把握できていないミアは、その場では彼らを静止し目立った行動は取らせないようにした。
ウンディーネが捕らえた反応が、ミアの想像する黒いコートの人物だとしたらこちらの動向に気がついて何をしてくるか分からない。
しかしどういう訳か、待てど暮らせどその反応が一行に近づいてくるような気配はなく、寧ろ彼らから離れていくように移動しながら反応は薄れていったのだという。
「・・・どうだ?反応は消えたか?」
「えぇ、離れていったわ。でも感知が出来なくなったというより、文字通り“消えた“と言うべきかしら・・・」
「消えた?」
「感知できる出来ないの領域ではなく、その反応自体が消えたの」
精霊が感じ取れるものは、生命力や魔力だけではなくもっと微量なものまで感知できるのだと言われている。そしてその範囲も獣人やエルフの比ではない。
そんな彼女の能力をもってしても反応が消えたと言わしめた存在。その事からも只者ではない事が伺える。そしてウンディーネはあ、反応が消える前に離れていったと言っていた。
ちなみにどの方角へと離れていったのか尋ねると、その反応は森の敷かれた道にある人間が設けた中継地点のある方角へと消えていったのだという。リナムルの街とは反対方向で、問題がなければ変に追う必要もないかと判断したミアは、もう動いても大丈夫だとガルムに伝えられる。
緊迫した状況から解放され、安堵した様子で木から降りてきたミアは、事の顛末を確認しようと近づいてくる。訳もわからず手を止めさせられた部隊の者達も、ミアから反応が消えたことを伺ったガルムが、獣の調査を再開してほいと呼びかける。
一方、ウンディーネの感知を逃れた存在。それはミアの想像していた通り黒いコートの人物だった。その人物はどうやってここまで来たのか、研究所を脱出してリナムル周辺の森の中にまで侵食してきていたのだ。
「お?この反応は・・・。ふぅ~ん、僕の反応を感知できる奴がいるのか。でも・・・これじゃぁもう僕のことは追えないんじゃないかなぁ?」
そう言うと黒いコートの人物は、森の中を歩きながら服装ごと別の者へと姿を変えた。それは木々の合間を抜ける一瞬の出来事だった。彼という存在を木の幹が重なった瞬間、その姿はどこにでもいるような森の動物の姿へと変わり、何処かへと走り去っていってしまった。
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追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
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