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腹の探り合い
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隙を突かれた蛇女の身体は後方へと飛ばされる。そのまま室内の機材を破壊しながら倒れるが、すぐにアズールの攻撃を受けた箇所の回復を行い状態を立て直す。
「虫けらの分際で・・・。ただでは済まさぬぞッ・・・!」
「それはこっちの台詞だよ。俺達はお前らのお飯事を終わらせに来たんだからな」
シンは再び物陰に姿を隠し、隠密に徹する。黒炎の侵食は着実に進んできているものの、まだ大きなダメージに繋がる様子はない。幸い黒炎の性質上、そこから光が漏れることはなく。隠れている位置が蛇女に目視されることはない。
しかし先の一撃でシンが研究室内に潜み、拘束系統のスキルでアシストしようとしている事が蛇女にバレてしまった。これからはその点についてのカバーも行ってくる筈。容易に動きを止めることが出来なくなってしまったが、その代償にアズール以外にも警戒しなければいけない者がいるという意識を植え付けた。
これによりアズールとの戦闘に僅かながらの隙が生まれるようになる。シンの影のスキルは、直接相手にその能力の効果を与えると、次に視界の中で影が動くとそちらに注意が向いてしまうという、視覚的な弊害が生まれるようになる。
ふとした時に、視界の端で何かが動いたように感じる事はないだろうか。普段の生活の中であればそれほど問題にはならないが、運転中や危険な物を取り扱っている時にそれが起こると、何もないのに止まってしまったり妙に気になってしまうものだろう。
そして今まさに、命のやりとりをしている中で引き起こされるその現象は、一瞬の隙を相手に与えてしまう致命的なものになり得るのだ。現に再び戦闘を始めたアズールの動きは然程変わっていなくとも、蛇女の攻撃はアズールの神経をすり減らす程の効果は失われつつあった。
要はアズールにも、回避に徹しなくても反撃の機会が生まれるようになった事になる。大きな尻尾による攻撃も、芯を捉えた鋭利な槍のように鋭い一撃から、どこかに隠れているやも知れぬシンを警戒してか、多くを巻き込む範囲攻撃が中心になっていた。
大きく室内の床を払うように振り抜かれた尻尾を飛び越え、強化した腕による重たい一撃を回避と共に尻尾へと叩き込む。すると、これまで強固に守られていた鱗が砕け散りダメージを負わせることに成功した。
「うッ・・・!?」
「なるほど・・・鱗の硬さはお前自身の生態によるものではなかったのか」
「・・・たまたま入った一撃で随分と嬉しそうじゃのう。何を分かったつもりになっているのかは知らぬが、この程度すぐにこの通り・・・元通りじゃ」
アズールの攻撃で剥がれた尻尾の鱗は、破損した箇所から歯が生え変わるように古いものを押し出し、新たな鱗が生えそろう。蛇女の言う通り、下半身への攻撃はあまりダメージとして期待できそうにない。
だが決して無駄だった訳ではなかった。その様子を隠れて見ていたシンにも、蛇女の鱗の強度の仕組みが理解できた。
様々な種族を捕らえ、その性質を自身に取り込み化け物の姿を手に入れた蛇女は、人間や獣人は捕らえる価値がないような事を言いながらも、アズールという獣人の個体に興味を示していた。
獣人を調べ尽くしたということは、獣人の能力についても理解している。そしてその中に有用なものがあれば自分の中に取り込んでいるはず。獣人族の戦闘における特徴は、その身体能力の高さと肉体強化だ。
つまり、最初に全く攻撃が通用しないと思っていた強固な守りの尻尾は、獣人族の肉体強化を用いて防御力を高めていたが故の硬さだったことのなる。強化をしている様子が見受けられなかったが、それは戦闘が始まる前に事前に補助スキルをかけておくように前もって準備していたのだろう。
カラクリが分かれば突破口も見出せる。アズールは肉体強化の比率を両腕に集め始める。これで移動速度や回避能力は下がったものの、今の蛇女の攻撃であれば多少能力が落ちたところで回避すること自体は難しくない。
再び振り払うように襲い掛かる尻尾を飛び越えたアズールは、左の拳で再度生え変わった鱗を粉砕し、守りの薄くなったところへ槍のように鋭利に強化した爪で突き刺す。
「ぐ・・・またッ・・・!!」
「すぐに再生なんかさせねぇよッ!!」
アズールは突き刺した爪をそのまま蛇女の本体の方へ動かし始め、抉るように傷口を広げていく。ダメージを受けた蛇女は、堪らずアズールを振り払おうと激しく暴れ始める。同時に複数ある腕の一部を使って傷の回復を図り、別の腕で風の刃を放つ魔法でアズールを襲う。
突き刺した腕を引き抜いたアズールは、今度は強化の比率を足に集め、攻撃型から素早い動きを重視した回避型の肉体強化に切り替え、次々に放たれる魔法を蛇女の尻尾を足場に素早い身のこなしで避けながら、本体の方へと駆け上がって行く。
「鬱陶しい虫けら風情がッ・・・!」
「鱗の強化は我ら獣人族のものだな?攻撃を受ける際や鱗で攻撃する際に強化を施し、俺に打ち破れぬ強固な守りであるという意識を植え込ませた!」
シンのアシストがどこから飛んでくるか分からぬように、アズールは蛇女の周囲を素早い動きで飛び回り翻弄する。すぐに攻撃しないのはこちらの手の内を明かしたくないのと、シンにタイミングを図る意図を伝えるため。
しかし、ここで時間を稼いでしまったのは彼らにとって裏目に出る結果となってしまう。
「虫けらの分際で・・・。ただでは済まさぬぞッ・・・!」
「それはこっちの台詞だよ。俺達はお前らのお飯事を終わらせに来たんだからな」
シンは再び物陰に姿を隠し、隠密に徹する。黒炎の侵食は着実に進んできているものの、まだ大きなダメージに繋がる様子はない。幸い黒炎の性質上、そこから光が漏れることはなく。隠れている位置が蛇女に目視されることはない。
しかし先の一撃でシンが研究室内に潜み、拘束系統のスキルでアシストしようとしている事が蛇女にバレてしまった。これからはその点についてのカバーも行ってくる筈。容易に動きを止めることが出来なくなってしまったが、その代償にアズール以外にも警戒しなければいけない者がいるという意識を植え付けた。
これによりアズールとの戦闘に僅かながらの隙が生まれるようになる。シンの影のスキルは、直接相手にその能力の効果を与えると、次に視界の中で影が動くとそちらに注意が向いてしまうという、視覚的な弊害が生まれるようになる。
ふとした時に、視界の端で何かが動いたように感じる事はないだろうか。普段の生活の中であればそれほど問題にはならないが、運転中や危険な物を取り扱っている時にそれが起こると、何もないのに止まってしまったり妙に気になってしまうものだろう。
そして今まさに、命のやりとりをしている中で引き起こされるその現象は、一瞬の隙を相手に与えてしまう致命的なものになり得るのだ。現に再び戦闘を始めたアズールの動きは然程変わっていなくとも、蛇女の攻撃はアズールの神経をすり減らす程の効果は失われつつあった。
要はアズールにも、回避に徹しなくても反撃の機会が生まれるようになった事になる。大きな尻尾による攻撃も、芯を捉えた鋭利な槍のように鋭い一撃から、どこかに隠れているやも知れぬシンを警戒してか、多くを巻き込む範囲攻撃が中心になっていた。
大きく室内の床を払うように振り抜かれた尻尾を飛び越え、強化した腕による重たい一撃を回避と共に尻尾へと叩き込む。すると、これまで強固に守られていた鱗が砕け散りダメージを負わせることに成功した。
「うッ・・・!?」
「なるほど・・・鱗の硬さはお前自身の生態によるものではなかったのか」
「・・・たまたま入った一撃で随分と嬉しそうじゃのう。何を分かったつもりになっているのかは知らぬが、この程度すぐにこの通り・・・元通りじゃ」
アズールの攻撃で剥がれた尻尾の鱗は、破損した箇所から歯が生え変わるように古いものを押し出し、新たな鱗が生えそろう。蛇女の言う通り、下半身への攻撃はあまりダメージとして期待できそうにない。
だが決して無駄だった訳ではなかった。その様子を隠れて見ていたシンにも、蛇女の鱗の強度の仕組みが理解できた。
様々な種族を捕らえ、その性質を自身に取り込み化け物の姿を手に入れた蛇女は、人間や獣人は捕らえる価値がないような事を言いながらも、アズールという獣人の個体に興味を示していた。
獣人を調べ尽くしたということは、獣人の能力についても理解している。そしてその中に有用なものがあれば自分の中に取り込んでいるはず。獣人族の戦闘における特徴は、その身体能力の高さと肉体強化だ。
つまり、最初に全く攻撃が通用しないと思っていた強固な守りの尻尾は、獣人族の肉体強化を用いて防御力を高めていたが故の硬さだったことのなる。強化をしている様子が見受けられなかったが、それは戦闘が始まる前に事前に補助スキルをかけておくように前もって準備していたのだろう。
カラクリが分かれば突破口も見出せる。アズールは肉体強化の比率を両腕に集め始める。これで移動速度や回避能力は下がったものの、今の蛇女の攻撃であれば多少能力が落ちたところで回避すること自体は難しくない。
再び振り払うように襲い掛かる尻尾を飛び越えたアズールは、左の拳で再度生え変わった鱗を粉砕し、守りの薄くなったところへ槍のように鋭利に強化した爪で突き刺す。
「ぐ・・・またッ・・・!!」
「すぐに再生なんかさせねぇよッ!!」
アズールは突き刺した爪をそのまま蛇女の本体の方へ動かし始め、抉るように傷口を広げていく。ダメージを受けた蛇女は、堪らずアズールを振り払おうと激しく暴れ始める。同時に複数ある腕の一部を使って傷の回復を図り、別の腕で風の刃を放つ魔法でアズールを襲う。
突き刺した腕を引き抜いたアズールは、今度は強化の比率を足に集め、攻撃型から素早い動きを重視した回避型の肉体強化に切り替え、次々に放たれる魔法を蛇女の尻尾を足場に素早い身のこなしで避けながら、本体の方へと駆け上がって行く。
「鬱陶しい虫けら風情がッ・・・!」
「鱗の強化は我ら獣人族のものだな?攻撃を受ける際や鱗で攻撃する際に強化を施し、俺に打ち破れぬ強固な守りであるという意識を植え込ませた!」
シンのアシストがどこから飛んでくるか分からぬように、アズールは蛇女の周囲を素早い動きで飛び回り翻弄する。すぐに攻撃しないのはこちらの手の内を明かしたくないのと、シンにタイミングを図る意図を伝えるため。
しかし、ここで時間を稼いでしまったのは彼らにとって裏目に出る結果となってしまう。
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