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百足男
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咄嗟に振り払おうとするアズールだったが、その百足のように長い胴体に無数の足を生やした虫は、彼の皮膚に噛み付き必死に振り落とされまいと耐えていた。
暴れるアズールの動きを止め、急停止によって大きく振られて浮いた百足の胴体を、シンが短剣で両断する。アズールの背に取り残された頭側半分の虫に、エイリルが脱力の魔法を掛け顎の力を削ぐ。
噛み付く力すら奪われた百足は床に落ち、その様子を目にしたアズールは百足を躊躇いなく踏み潰した。
しかし、彼らに聞こえていた声は再度別の場所から聞こえてきた。さっきの声の主は百足のいたところから聞こえていたが、今度の声は部屋全体に響き渡るような放送機の音のように彼らの耳に届けられる。
「ふははははは。そう慌てるな、ただの挨拶がわりだよ」
「陰険な奴だ。自信があるのなら姿を見せたらどうだ?それとも勝てる見込みがねぇと表には出れねぇタイプなのか?」
「・・・安い挑発だ。いいだろう、元々これも実験の一環だったんだ。もう獣達相手ではデータが取れなくてね。アレを退けられる者達で試さないと・・・ねぇ」
男の言葉が途切れると、シンが切り落とした尻尾側半分の百足が動き出し、ブクブクと膨れ上がっていく。警戒して飛び退くシンは、後退しながら数本の短剣を投擲し命中させていくが、彼の投げ放った短剣は膨れ上がる肉の塊に飲み込まれていった。
「うっ・・・!何だこれは」
皮膚を纏わぬ肉の塊は徐々に形を形成していき、人の姿へと変わっていく。大きさにして三メートル程で髪や服までも肉塊から作り上げていた。白衣を纏うには似つかわしく無い体格のその男は、変身を終えると彼らの方へ振り返る。
「おいおい、変身中に攻撃するなんて御法度だろぉ?そういう“常識“、教わってない訳ぇ?」
「今の常識はやられる前にやるんだよ。知らねぇのか?虫野郎ぉ」
人の姿へと変貌した肉塊は、胴体よりも逞しい百足の尻尾を腰から生やしていた。肉塊が形を変えている隙に、アズールもまた自身の肉体強化を果たし、一気にケリをつけようと、まだ初々しく生まれ変わったばかりの男との距離を一瞬にして詰め寄り、鋭い拳を撃ち放つ。
アズールの拳は見事に男の頭部に命中。男の頭は跡形もなく吹き飛び、首を失った胴体は棒立ちの状態で立ち尽くしていた。
あまりにも呆気なく決まった一撃に、一行は唖然としていたが、それは男の異形な存在を垣間見る発端に過ぎなかった。
頭部を失った男の首元から無数の百足が触手のように生え、アズールの腕を絡みとる。
「くッ・・・!何だってんだこいつぁ!?」
アズールは捕まった腕を引き剥がそうと後ろへ下がるも、ズルズルと伸びる百足の触手はそれを許さなかった。
すかさずシンとエイリルが百足の触手へ刃を突き立てる。一見硬そうに見えるその百足の触手だったが、彼らの一撃で容易に切断する事ができた。二人のおかげで腕を解放する事ができたアズールは、自分の腕に異常がないかどうか調べる。
「以外にも簡単に切れたな」
「力で引き剥がそうとしても、あの身体からはいくらでも出てくるのかもな。斬属性に耐性がないようだ。打撃よりも切断をメインに攻めた方が良さそうだな」
本体から切り離された百足の触手は、それまでの拘束力を失いアズールの力で簡単に引き剥がすことができた。つまり本体と繋がっていなければ本来の力を引き出せないのだろう。
「なるほど・・・。耐性が分かっちまえばそれほどでもねぇって訳だ」
力任せの肉体強化から、今度は爪を刃のように鋭く変化させたアズールは戦闘方法を変更し、今度は棒立ちになる男の胴体を両断せんと懐へ飛び込んでいく。
一行の中で最も火力があるのはアズールで間違いない。迫るアズールを近づけまいと男の身体からは百足の触手が差し向けられる。
本体を守るように立ち塞がる触手を、シンとエイリルが左右に分かれ見事な連携で切断し、アズールの活路を開く。
そして男の懐まで接近することができたアズールは、鋭利に尖らせた爪で男の身体を引き裂いた。身体を両断するまでには至らなかったが、肩口から脇腹の辺りまで深々と切り裂かれた男の身体からは、人のものと同じ真っ赤な血飛沫が噴き出す。
「うッ・・・!」
ダマスクの一件で返り血に抵抗感を覚えていたアズールは、なるべくその血を浴びぬようにとすぐに距離を取った。
「どうだ?なかなかいい一撃が入ったとは思うが・・・」
「攻撃方法についてはアズールに任せるさ。俺達では負荷では与えられない・・・。ならばサポートと奴の能力の解析に努める。エルフ達にはどこかに身を隠して・・・!」
とても戦闘には参加させられない妖精のエルフ達には、戦況を見ながら巻き込まれない場所へ身を隠してもらおうとしたその時、三人いた筈のエルフの内の一人が見当たらないことにエイリルが気づく。
「何ッ!?お前達、もう一人はどこへ・・・」
周囲を見渡すと、いつの間にか壁から生えていた百足の触手に絡め取られ、動けなくなっているエルフを見つける。
「何故あんなところに触手がッ・・・!?」
すぐに解放させようと動き出すエイリルだったが、その足は何かに絡め取られるように動かなくなっていた。視線を下ろすと床からも同じ百足の触手が現れ、蠢くようにエイリルの足に絡まりながら登ってきていた。
「何ぃッ!?これはまさかッ・・・!」
何かに気づいた様子のエイリルがシンやアズールの方を向くと、彼らもまた百足の触手に捕まり動きを封じられていた。
暴れるアズールの動きを止め、急停止によって大きく振られて浮いた百足の胴体を、シンが短剣で両断する。アズールの背に取り残された頭側半分の虫に、エイリルが脱力の魔法を掛け顎の力を削ぐ。
噛み付く力すら奪われた百足は床に落ち、その様子を目にしたアズールは百足を躊躇いなく踏み潰した。
しかし、彼らに聞こえていた声は再度別の場所から聞こえてきた。さっきの声の主は百足のいたところから聞こえていたが、今度の声は部屋全体に響き渡るような放送機の音のように彼らの耳に届けられる。
「ふははははは。そう慌てるな、ただの挨拶がわりだよ」
「陰険な奴だ。自信があるのなら姿を見せたらどうだ?それとも勝てる見込みがねぇと表には出れねぇタイプなのか?」
「・・・安い挑発だ。いいだろう、元々これも実験の一環だったんだ。もう獣達相手ではデータが取れなくてね。アレを退けられる者達で試さないと・・・ねぇ」
男の言葉が途切れると、シンが切り落とした尻尾側半分の百足が動き出し、ブクブクと膨れ上がっていく。警戒して飛び退くシンは、後退しながら数本の短剣を投擲し命中させていくが、彼の投げ放った短剣は膨れ上がる肉の塊に飲み込まれていった。
「うっ・・・!何だこれは」
皮膚を纏わぬ肉の塊は徐々に形を形成していき、人の姿へと変わっていく。大きさにして三メートル程で髪や服までも肉塊から作り上げていた。白衣を纏うには似つかわしく無い体格のその男は、変身を終えると彼らの方へ振り返る。
「おいおい、変身中に攻撃するなんて御法度だろぉ?そういう“常識“、教わってない訳ぇ?」
「今の常識はやられる前にやるんだよ。知らねぇのか?虫野郎ぉ」
人の姿へと変貌した肉塊は、胴体よりも逞しい百足の尻尾を腰から生やしていた。肉塊が形を変えている隙に、アズールもまた自身の肉体強化を果たし、一気にケリをつけようと、まだ初々しく生まれ変わったばかりの男との距離を一瞬にして詰め寄り、鋭い拳を撃ち放つ。
アズールの拳は見事に男の頭部に命中。男の頭は跡形もなく吹き飛び、首を失った胴体は棒立ちの状態で立ち尽くしていた。
あまりにも呆気なく決まった一撃に、一行は唖然としていたが、それは男の異形な存在を垣間見る発端に過ぎなかった。
頭部を失った男の首元から無数の百足が触手のように生え、アズールの腕を絡みとる。
「くッ・・・!何だってんだこいつぁ!?」
アズールは捕まった腕を引き剥がそうと後ろへ下がるも、ズルズルと伸びる百足の触手はそれを許さなかった。
すかさずシンとエイリルが百足の触手へ刃を突き立てる。一見硬そうに見えるその百足の触手だったが、彼らの一撃で容易に切断する事ができた。二人のおかげで腕を解放する事ができたアズールは、自分の腕に異常がないかどうか調べる。
「以外にも簡単に切れたな」
「力で引き剥がそうとしても、あの身体からはいくらでも出てくるのかもな。斬属性に耐性がないようだ。打撃よりも切断をメインに攻めた方が良さそうだな」
本体から切り離された百足の触手は、それまでの拘束力を失いアズールの力で簡単に引き剥がすことができた。つまり本体と繋がっていなければ本来の力を引き出せないのだろう。
「なるほど・・・。耐性が分かっちまえばそれほどでもねぇって訳だ」
力任せの肉体強化から、今度は爪を刃のように鋭く変化させたアズールは戦闘方法を変更し、今度は棒立ちになる男の胴体を両断せんと懐へ飛び込んでいく。
一行の中で最も火力があるのはアズールで間違いない。迫るアズールを近づけまいと男の身体からは百足の触手が差し向けられる。
本体を守るように立ち塞がる触手を、シンとエイリルが左右に分かれ見事な連携で切断し、アズールの活路を開く。
そして男の懐まで接近することができたアズールは、鋭利に尖らせた爪で男の身体を引き裂いた。身体を両断するまでには至らなかったが、肩口から脇腹の辺りまで深々と切り裂かれた男の身体からは、人のものと同じ真っ赤な血飛沫が噴き出す。
「うッ・・・!」
ダマスクの一件で返り血に抵抗感を覚えていたアズールは、なるべくその血を浴びぬようにとすぐに距離を取った。
「どうだ?なかなかいい一撃が入ったとは思うが・・・」
「攻撃方法についてはアズールに任せるさ。俺達では負荷では与えられない・・・。ならばサポートと奴の能力の解析に努める。エルフ達にはどこかに身を隠して・・・!」
とても戦闘には参加させられない妖精のエルフ達には、戦況を見ながら巻き込まれない場所へ身を隠してもらおうとしたその時、三人いた筈のエルフの内の一人が見当たらないことにエイリルが気づく。
「何ッ!?お前達、もう一人はどこへ・・・」
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「何故あんなところに触手がッ・・・!?」
すぐに解放させようと動き出すエイリルだったが、その足は何かに絡め取られるように動かなくなっていた。視線を下ろすと床からも同じ百足の触手が現れ、蠢くようにエイリルの足に絡まりながら登ってきていた。
「何ぃッ!?これはまさかッ・・・!」
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