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潜入部隊の編成
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ポータルを抜け、何処ともわからぬ森の中へ飛ばされたアズールは、着地と同時にそこが踏みなれた大地であることを確信する。エルフ族が言っていた通り、やはり施設があったのは彼らの巣食う森の中だったようだ。
「この土、この匂い・・・間違いない、俺の知る森のものだ。やはり敵はすぐ側に隠れていたのか・・・」
顔を上げると前方に見えるのは、施設と言う割には想像していたものよりも小さな建造物だった。今まで何気なく過ごして場所に、斯くも恐ろしいものが存在していようとはと目を疑うアズールの元に、先に転移していたエルフ族の戦士が歩み寄る。
「獣人族の長よ。貴方も気付いているようだな、この異様な雰囲気に・・・」
気配や魔力を、より鮮明に感じ取ることが出来る種族達だからこそ、目の前の施設内から感じる通常とは異なる生命の鼓動や、今までに感じたこともない異様な生物の気配に、屈強な戦士であっても背筋に寒気さを感じているようだった。
「アズールで構わん。確かに、生物というには些か不気味な気配が混じっている・・・これも研究とやらがもたらした結果なのか・・・」
「ならば私も“エイリル“と呼んでくれ。中から我々エルフ族の魔力も感じる・・・。だが貴方の言う通り、私達の魔力とは違って別のものが混じっているようだ・・・」
「森に巣食う他種族を捕らえていたのは、生物実験を行う為と見て間違いなさそうだな・・・。クソッ・・・!こんな物に今まだ気づけなかったとは・・・!」
「仕方がないさ。そもそも魔力や気配を遮断する為に、こういった仕掛けまで準備していたんだ。それだけ相手も身を隠す術を心得ていて、我々を警戒していたと言うことなんだろう」
エルフの戦士は名を“エイリル“と言った。彼もまた自分と同じ魔力を施設内に感じ取っているようだ。だがそれは彼らと同じ魔力ではなく、別の生物の魔力や人工的に作り出された何かによる不純物で犯されている語る。
オルレラの研究施設では、人間の子供を燃料としていたくらいだ。より自然な魔力を保有するエルフ族や、肉体的に強靭である獣人族といった者達の存在は、彼らにとってとても魅力的な実験体であったに違いない。
「だけど私達のような人間の気配もしないかい?まぁ、正確には少し違うみたいだけど・・・」
獣の力の影響で、ツクヨとシンにもある程度ではあるが、施設内の気配の動きが感じ取れていた。その中には、全く魔力を持たない人間と思われる気配も多く存在していた。
「多分、俺達と違って全く魔力を持っていない者達もいるんだろう。数的に施設の関係者ってところだろうな」
連れ攫われた生物の中には人間も混じっていた。全く魔力を持たない人間の中には、実験体として拉致された者達もいるだろうが、その大半は施設の研究者であった。
当時のダマスクと同様、彼らも様々な理由や意思を持って研究を行なっているのかもしれないが、周りから見ればとても真面とは思えないマッドサイエンティストと呼ばれても相違ない者達に思われるだろう。
現にダマスクは研究の段階で精神を壊してしまい、常人の精神を持った人間では躊躇われるような研究にも、何も感じることなく寧ろ好奇心が彼らの背中を押しているような雰囲気さえある。
「私達の目的は、施設の機能停止・・・だよね?彼らも殺すのかい?」
指揮系統は依然として獣人族の長であるアズールにある。人間を酷く恨んでいた彼ならば、一族を玩具にした者達を前に実力行使を実行しかねない。恐る恐る彼の心境を確認するツクヨ。だが、アズールもポータルの外に置いてきた二人の言葉に、冷静に目的の最優先を謳う。
「殲滅してやりたい気持ちも無くはない。だがあくまで我々の目的は施設の機能停止、並びに重要機材と思われる物の破壊だ。その為にダラーヒムという人間から小型の爆弾を託されたんだ。それに・・・ポータルの外では彼らがまだ戦っている筈・・・。すぐに事を成し遂げ、彼らの援護に向かう」
思っていたよりもずっと冷静なな判断を下せていたアズールに、一行は安心と信頼の眼差しで彼を見つめては力強く頷く。
「さて、潜入するに当たり全員で突入するには目立ち過ぎる。そこで作業の効率化も図り部隊を二手に分ける。そこの人間二人に関しては、戦力や能力はある程度把握しているが・・・エイリル、お前はどの程度戦える?」
シンとツクヨに関しては、森での獣達との戦闘やケツァルから戦力としての力を認めていたアズール。しかし、戦士の格好をした人間サイズのエルフ族であるエイリルに関しては情報が未知数だった。
「そうだな・・・人間の種族で言うところの“魔法剣士“のクラスと思ってくれて構わない。ただ剣術よりも、魔法寄りといった感じだがな」
魔法剣士のクラス自体は珍しいものではない。戦士のクラススキルと、魔法使いや魔道士のクラススキルを保有し、武器や防具に魔法を纏わせることにより、相手の弱点を突いた戦い方や戦闘の補助、ある程度の支援スキルといった幅広い戦略が可能というバランスのいいクラスだ。
ただし、器用であるが故に特化した戦闘力というものはない。臨機応変に闘うことは可能だが、相手の弱点を突けなければ、火力面で不足を感じることはあるだろう。
部隊を二つに分ける時、火力面で不安のあるエイリルに最適の人材が彼らの中にはいた。
「なるほど・・・ならば丁度いい。俺とお前で隊を組む。お前達も人間同士の方が何かと都合が良かろう」
「あぁ、手の内が知れてるもの同士の方が連携が取りやすいからな、助かるよ」
「この者達の配置については・・・」
二人ずつで分かれる事となった彼らは、残りの妖精姿のエルフ族をどう分けるかについて思考する。ポータルを通りこちらへやって来たのは五人。それぞれが自分自身を別の場所へ転移させることができる能力を持っている。
しかし、別の者を転移させるとなると二人以上の力が必要となり、数によって準備にかかる時間も変わってくるのだという。
そこでシンが提案したのは、アズール達の方に三人、そしてシン達の方に二人という采配だった。
「この土、この匂い・・・間違いない、俺の知る森のものだ。やはり敵はすぐ側に隠れていたのか・・・」
顔を上げると前方に見えるのは、施設と言う割には想像していたものよりも小さな建造物だった。今まで何気なく過ごして場所に、斯くも恐ろしいものが存在していようとはと目を疑うアズールの元に、先に転移していたエルフ族の戦士が歩み寄る。
「獣人族の長よ。貴方も気付いているようだな、この異様な雰囲気に・・・」
気配や魔力を、より鮮明に感じ取ることが出来る種族達だからこそ、目の前の施設内から感じる通常とは異なる生命の鼓動や、今までに感じたこともない異様な生物の気配に、屈強な戦士であっても背筋に寒気さを感じているようだった。
「アズールで構わん。確かに、生物というには些か不気味な気配が混じっている・・・これも研究とやらがもたらした結果なのか・・・」
「ならば私も“エイリル“と呼んでくれ。中から我々エルフ族の魔力も感じる・・・。だが貴方の言う通り、私達の魔力とは違って別のものが混じっているようだ・・・」
「森に巣食う他種族を捕らえていたのは、生物実験を行う為と見て間違いなさそうだな・・・。クソッ・・・!こんな物に今まだ気づけなかったとは・・・!」
「仕方がないさ。そもそも魔力や気配を遮断する為に、こういった仕掛けまで準備していたんだ。それだけ相手も身を隠す術を心得ていて、我々を警戒していたと言うことなんだろう」
エルフの戦士は名を“エイリル“と言った。彼もまた自分と同じ魔力を施設内に感じ取っているようだ。だがそれは彼らと同じ魔力ではなく、別の生物の魔力や人工的に作り出された何かによる不純物で犯されている語る。
オルレラの研究施設では、人間の子供を燃料としていたくらいだ。より自然な魔力を保有するエルフ族や、肉体的に強靭である獣人族といった者達の存在は、彼らにとってとても魅力的な実験体であったに違いない。
「だけど私達のような人間の気配もしないかい?まぁ、正確には少し違うみたいだけど・・・」
獣の力の影響で、ツクヨとシンにもある程度ではあるが、施設内の気配の動きが感じ取れていた。その中には、全く魔力を持たない人間と思われる気配も多く存在していた。
「多分、俺達と違って全く魔力を持っていない者達もいるんだろう。数的に施設の関係者ってところだろうな」
連れ攫われた生物の中には人間も混じっていた。全く魔力を持たない人間の中には、実験体として拉致された者達もいるだろうが、その大半は施設の研究者であった。
当時のダマスクと同様、彼らも様々な理由や意思を持って研究を行なっているのかもしれないが、周りから見ればとても真面とは思えないマッドサイエンティストと呼ばれても相違ない者達に思われるだろう。
現にダマスクは研究の段階で精神を壊してしまい、常人の精神を持った人間では躊躇われるような研究にも、何も感じることなく寧ろ好奇心が彼らの背中を押しているような雰囲気さえある。
「私達の目的は、施設の機能停止・・・だよね?彼らも殺すのかい?」
指揮系統は依然として獣人族の長であるアズールにある。人間を酷く恨んでいた彼ならば、一族を玩具にした者達を前に実力行使を実行しかねない。恐る恐る彼の心境を確認するツクヨ。だが、アズールもポータルの外に置いてきた二人の言葉に、冷静に目的の最優先を謳う。
「殲滅してやりたい気持ちも無くはない。だがあくまで我々の目的は施設の機能停止、並びに重要機材と思われる物の破壊だ。その為にダラーヒムという人間から小型の爆弾を託されたんだ。それに・・・ポータルの外では彼らがまだ戦っている筈・・・。すぐに事を成し遂げ、彼らの援護に向かう」
思っていたよりもずっと冷静なな判断を下せていたアズールに、一行は安心と信頼の眼差しで彼を見つめては力強く頷く。
「さて、潜入するに当たり全員で突入するには目立ち過ぎる。そこで作業の効率化も図り部隊を二手に分ける。そこの人間二人に関しては、戦力や能力はある程度把握しているが・・・エイリル、お前はどの程度戦える?」
シンとツクヨに関しては、森での獣達との戦闘やケツァルから戦力としての力を認めていたアズール。しかし、戦士の格好をした人間サイズのエルフ族であるエイリルに関しては情報が未知数だった。
「そうだな・・・人間の種族で言うところの“魔法剣士“のクラスと思ってくれて構わない。ただ剣術よりも、魔法寄りといった感じだがな」
魔法剣士のクラス自体は珍しいものではない。戦士のクラススキルと、魔法使いや魔道士のクラススキルを保有し、武器や防具に魔法を纏わせることにより、相手の弱点を突いた戦い方や戦闘の補助、ある程度の支援スキルといった幅広い戦略が可能というバランスのいいクラスだ。
ただし、器用であるが故に特化した戦闘力というものはない。臨機応変に闘うことは可能だが、相手の弱点を突けなければ、火力面で不足を感じることはあるだろう。
部隊を二つに分ける時、火力面で不安のあるエイリルに最適の人材が彼らの中にはいた。
「なるほど・・・ならば丁度いい。俺とお前で隊を組む。お前達も人間同士の方が何かと都合が良かろう」
「あぁ、手の内が知れてるもの同士の方が連携が取りやすいからな、助かるよ」
「この者達の配置については・・・」
二人ずつで分かれる事となった彼らは、残りの妖精姿のエルフ族をどう分けるかについて思考する。ポータルを通りこちらへやって来たのは五人。それぞれが自分自身を別の場所へ転移させることができる能力を持っている。
しかし、別の者を転移させるとなると二人以上の力が必要となり、数によって準備にかかる時間も変わってくるのだという。
そこでシンが提案したのは、アズール達の方に三人、そしてシン達の方に二人という采配だった。
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