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もう一度記憶の中へ
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前回の木の根のように何処かにヒントが隠されているかもしれないと、一行はその地下への扉の周りを捜索し始める。地中に隠されていたこともあり、血面を中心に調べるダラーヒムら人間達と嗅覚の効く獣人族。エルフ族はその魔力活かし、広範囲にわたる探知を行う。
シンは再び周囲の状況と扉の様子、そしてパネルの接写などのデータを白獅へと送り、現実世界の手を借りていた。
しかし、今回ばかりはシンが望むような情報が得られず、地下へのパスワードを得ることは出来なかった。パネル式の入力ということもあり、指紋や触れられた回数の多い箇所などの分析も行ったようだが、現実世界のそれとは違い土の中で埋まっていた事によりその痕跡も残ってはいなかったという。
「駄目だッこればかりは何処かにヒントがあるとは思えない・・・」
「そりゃぁそうだ。セキュリティーを解除するパスワードをわざわざ外に記しておくようなモンだからな。期待は出来ない・・・」
「シン、お前のクラスで何とかならないのか?アサシンなら開錠系のスキルを覚えていても不思議ではなさそうだが?」
盗賊や忍者にも通じるスキルを持つアサシンというクラスだが、下位のクラスである盗賊やシーフと呼ばれるものの方が、開錠や罠解除などのダンジョンを補助するスキルは長けている。
戦闘に特化し始めてしまった上位クラスは、下位のクラスのスキルを全て網羅できる訳ではないのだ。故に、サブクラスとして盗賊のクラスに就くというケースも多く、メインのクラスで戦闘に特化し、サブで足りぬところを補強するという組み合わせがWoFの中ではメジャーとなっていた。
「悪いがこれは無理だ・・・。出来るのは鍵穴のあるような簡単なものの開錠だけで、複雑なものやこういったキーを入力するタイプのものは開錠出来ない」
「なら今回はお手上げだな。こんなもの関係者でもない限り分からんだろう。それか別の関係施設でも調べないと、ヒントなんて分かる筈もない・・・」
ダラーヒムの会話から、シンはとある事を思い出した。それは彼が現実世界へ帰っている間に、彼の仲間達が経験した不思議な出来事。旅の途中で訪れたオルレラの街で経験したという、無意識の内に同じ日を繰り返すというループに囚われた話だ。
その現象を引き起こしていた首謀者がオルレラの街に嘗てあったと言われる、人体実験を行なっていた施設の研究者である“オスカー“という人物だった。
彼もまたそういった研究を行う組織の被害者の一人で、その研究の中で実験体として使われていた子供達を守る為、そのような現象を引き起こしていたようだ。
直接施設に潜り込んだ訳ではないが、その組織の関係者と接触したであろうツクヨであれば何かを目撃していてもおかしくはない。同行した仲間の中にいる彼に、シンは当時の記憶を思い出せないか尋ねる。
「そういえばツクヨは、オルレラの件でここの施設に関係する何かを目にしていないか?もしかしたらその中の解除のパスワードに関する情報が・・・」
可能性としてはなくもない話だったが、事前にこのようなパスワードが必要と分かっていなければ、中々パスワードらしき数字や文字の羅列を覚えようとは思わないものだろう。
それに加え直近の出来事という訳でもない。大まかな出来事自体は覚えていたとしても、細かなところは抜け落ちているだろう。一行の期待や各種族の運命を委ねるにはあまりにも重い。
「済まないが・・・あまり当時の記憶はハッキリしていないんだ。記憶に干渉されていた事もあるのか、正直自信を持って話せるような内容じゃないんだ・・・」
「そうか、それじゃぁしょうがないか」
「シン、彼を責めるなよ?例えパスワードを目にしていたとしても、寧ろ覚えていて正確に言える方が異常だ」
「分かってるさ。ただ少しでも情報があればと思っただけで・・・。これじゃぁ当事者のツバキに聞いたところで分かるはずもないか」
皆が扉を開けるパスワードに頭を悩ませていると、アズールがシン達の元へやってきて最もパスワードを知っているであろう可能性のある人物の名を挙げる。
「いるだろ。俺達の中に関係者が。そいつに吐かせればいい」
そう言って指を刺したのはシンだった。とはいってもアズールのいう人物というのはシンではなく、彼の持つ小瓶に入れられた人物だった。それはダマスクであり彼ならば施設への入り方を知っている筈。
協力すると申し出た彼からならば聞き出すのも容易い。しかし、当の本人は意外な言葉を彼らに返したのだ。会議の時にも話に上がっていた通り、ダマスクは以前の記憶がない。
それは研究者としてローズらを使った生物実験をしていた頃の記憶もそうであるように、施設に出入りしていた時の記憶もだった。彼にあるのは今の身体になってからの記憶と、実験体として容器に入れられていた時の新しく目覚めた時の記憶しかない。
そして新たな能力を手にして生まれ変わったダマスクは、どういった理由か施設の外へ放たれ、自分の力だけで生き抜く他なかった。
要するに今のダマスクには、施設へ出入りしていた時の記憶はなく、このような扉があった事さえ覚えていないのだ。
唯一の手掛かりすら消えたと思われた時、アズールは言葉の意味を訂正しその真意を彼らに話す。
「そうではない。俺の中でそいつの記憶を見たと言ったろ?なら、もう一度お前がそいつの記憶を探ってこい。施設にいた頃の記憶が見れたのなら、その中にヒントが・・・或いはパスワード自体を見つける事だって出来るかもしれないだろ」
すると、瓶の中のダマスクが話を続ける。
「俺じゃぁ俺自身の記憶は分からない。だが、お前が俺の記憶を見れるのならお前に見てきてもらうしかない。そいつの中にいた時とは違って、直接俺の記憶を探ればもっと他の記憶も見えてくるのだろうか・・・」
アズールの中でダマスクの記憶を見ていた時は、アズールの記憶の奥にあったダマスクの記憶を見ていたので、景色に制限が掛かっていた。直接ダマスクの記憶を探るのであれば、彼のいう通りより多くの、より鮮明な記憶を覗けるかも知れない。
シンは再び周囲の状況と扉の様子、そしてパネルの接写などのデータを白獅へと送り、現実世界の手を借りていた。
しかし、今回ばかりはシンが望むような情報が得られず、地下へのパスワードを得ることは出来なかった。パネル式の入力ということもあり、指紋や触れられた回数の多い箇所などの分析も行ったようだが、現実世界のそれとは違い土の中で埋まっていた事によりその痕跡も残ってはいなかったという。
「駄目だッこればかりは何処かにヒントがあるとは思えない・・・」
「そりゃぁそうだ。セキュリティーを解除するパスワードをわざわざ外に記しておくようなモンだからな。期待は出来ない・・・」
「シン、お前のクラスで何とかならないのか?アサシンなら開錠系のスキルを覚えていても不思議ではなさそうだが?」
盗賊や忍者にも通じるスキルを持つアサシンというクラスだが、下位のクラスである盗賊やシーフと呼ばれるものの方が、開錠や罠解除などのダンジョンを補助するスキルは長けている。
戦闘に特化し始めてしまった上位クラスは、下位のクラスのスキルを全て網羅できる訳ではないのだ。故に、サブクラスとして盗賊のクラスに就くというケースも多く、メインのクラスで戦闘に特化し、サブで足りぬところを補強するという組み合わせがWoFの中ではメジャーとなっていた。
「悪いがこれは無理だ・・・。出来るのは鍵穴のあるような簡単なものの開錠だけで、複雑なものやこういったキーを入力するタイプのものは開錠出来ない」
「なら今回はお手上げだな。こんなもの関係者でもない限り分からんだろう。それか別の関係施設でも調べないと、ヒントなんて分かる筈もない・・・」
ダラーヒムの会話から、シンはとある事を思い出した。それは彼が現実世界へ帰っている間に、彼の仲間達が経験した不思議な出来事。旅の途中で訪れたオルレラの街で経験したという、無意識の内に同じ日を繰り返すというループに囚われた話だ。
その現象を引き起こしていた首謀者がオルレラの街に嘗てあったと言われる、人体実験を行なっていた施設の研究者である“オスカー“という人物だった。
彼もまたそういった研究を行う組織の被害者の一人で、その研究の中で実験体として使われていた子供達を守る為、そのような現象を引き起こしていたようだ。
直接施設に潜り込んだ訳ではないが、その組織の関係者と接触したであろうツクヨであれば何かを目撃していてもおかしくはない。同行した仲間の中にいる彼に、シンは当時の記憶を思い出せないか尋ねる。
「そういえばツクヨは、オルレラの件でここの施設に関係する何かを目にしていないか?もしかしたらその中の解除のパスワードに関する情報が・・・」
可能性としてはなくもない話だったが、事前にこのようなパスワードが必要と分かっていなければ、中々パスワードらしき数字や文字の羅列を覚えようとは思わないものだろう。
それに加え直近の出来事という訳でもない。大まかな出来事自体は覚えていたとしても、細かなところは抜け落ちているだろう。一行の期待や各種族の運命を委ねるにはあまりにも重い。
「済まないが・・・あまり当時の記憶はハッキリしていないんだ。記憶に干渉されていた事もあるのか、正直自信を持って話せるような内容じゃないんだ・・・」
「そうか、それじゃぁしょうがないか」
「シン、彼を責めるなよ?例えパスワードを目にしていたとしても、寧ろ覚えていて正確に言える方が異常だ」
「分かってるさ。ただ少しでも情報があればと思っただけで・・・。これじゃぁ当事者のツバキに聞いたところで分かるはずもないか」
皆が扉を開けるパスワードに頭を悩ませていると、アズールがシン達の元へやってきて最もパスワードを知っているであろう可能性のある人物の名を挙げる。
「いるだろ。俺達の中に関係者が。そいつに吐かせればいい」
そう言って指を刺したのはシンだった。とはいってもアズールのいう人物というのはシンではなく、彼の持つ小瓶に入れられた人物だった。それはダマスクであり彼ならば施設への入り方を知っている筈。
協力すると申し出た彼からならば聞き出すのも容易い。しかし、当の本人は意外な言葉を彼らに返したのだ。会議の時にも話に上がっていた通り、ダマスクは以前の記憶がない。
それは研究者としてローズらを使った生物実験をしていた頃の記憶もそうであるように、施設に出入りしていた時の記憶もだった。彼にあるのは今の身体になってからの記憶と、実験体として容器に入れられていた時の新しく目覚めた時の記憶しかない。
そして新たな能力を手にして生まれ変わったダマスクは、どういった理由か施設の外へ放たれ、自分の力だけで生き抜く他なかった。
要するに今のダマスクには、施設へ出入りしていた時の記憶はなく、このような扉があった事さえ覚えていないのだ。
唯一の手掛かりすら消えたと思われた時、アズールは言葉の意味を訂正しその真意を彼らに話す。
「そうではない。俺の中でそいつの記憶を見たと言ったろ?なら、もう一度お前がそいつの記憶を探ってこい。施設にいた頃の記憶が見れたのなら、その中にヒントが・・・或いはパスワード自体を見つける事だって出来るかもしれないだろ」
すると、瓶の中のダマスクが話を続ける。
「俺じゃぁ俺自身の記憶は分からない。だが、お前が俺の記憶を見れるのならお前に見てきてもらうしかない。そいつの中にいた時とは違って、直接俺の記憶を探ればもっと他の記憶も見えてくるのだろうか・・・」
アズールの中でダマスクの記憶を見ていた時は、アズールの記憶の奥にあったダマスクの記憶を見ていたので、景色に制限が掛かっていた。直接ダマスクの記憶を探るのであれば、彼のいう通りより多くの、より鮮明な記憶を覗けるかも知れない。
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