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作戦のその先
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アズールの身体を乗っ取っていた不気味な存在。煙の姿で実体のない、対象の意識の中へ入り込むという海賊ロッシュの能力以来の、現実世界とWoFの世界の中でも類を見ない恐ろしい能力を持った煙の人物。
意識の中へ潜られてしまうと、普通の者達には一切手の付けられない非常に厄介な性質を持っていたが、同じくロッシュのスキルから新たな力を得ていたシンにより、絶対不可侵の領域から引き摺り出す事に成功。
煙の人物の侵略から解放されたのか、アズールの身体からは乗っ取られていた時には感じなかった本人の気配が増し始めていた。
「ガレウス!アズールの様子がッ・・・!」
「あぁ、これはアズール本人の気配だ。紛い物じゃねぇ、漸く帰って来やがったか?」
煙の人物の封印に全力を尽くし、作戦の成就の為に騙したとはいえ、ガレウスの強烈な一撃を受けて動けなくなってしまっているシンを尻目に、ガレウスら獣人達は立ち尽くすアズールに近づいていく。
「おい!ガレウス」
「ケツァル!お前はそいつらの面倒でも見ておけ」
「そうじゃない!まだアズールは・・・」
煙の人物の支配から逃れたとはいえ、完全には消滅していない筈の煙の人物の能力。直に入り込まれていたアズールの身体の中には、その能力の残骸がまだ残っている。
だが、ケツァルの静止を無視してガレウス達はアズールの元へ。嫌な予感を感じつつも、その場を離れる事のできないケツァルは彼らの歩みを見つめる。
同じく倒れるシンにより沿っていたダラーヒムは、苦しみながらもアズールの元へ向かう彼らを見ながら、何かを必死に訴えようとするシンの姿に気がつき、代わりに言葉を受け取る。
「あっ・・・うぐっ・・・」
「シン・・・?どうした?何か分かったのか?」
「いや、大丈夫・・・それほど重要なことではない・・・。それに奴は大半の力を失った。新たな依代を得て乗っ取るにも、時間が必要だろう・・・けど・・・」
含みを持たせた言い方に焦ったさを感じたダラーヒムが、シンに何を伝えたいのかを問うと、要するに煙の人物の能力は力を失い、以前のようにアズールなどの依代となった器を操る力は残っていないが、その能力の根源は彼の中に残っているのだという。
それがいつ覚醒し、能力を開花させるか分からないということだった。シンの言葉を受け取ったダラーヒムは、彼の言葉を踏まえてガレウスらの動向を伺う。
アズールの肉体は、強化状態を解除し元のサイズへと戻っていた。魔物のように鋭い眼光を放っていた彼の目も元通りに治っており、虚な瞳に光が戻ってくる。
「う・・・!俺は一体何をっ・・・」
「アズール!正気に戻ったのかぁ?」
「正気・・・?何だか長い夢を見ていたようだ・・・」
自身がどのような状況にあったのか分かっていない様子のアズール。ガレウスらは簡潔にアズールの身に起きていた事を説明すると、全ては理解できなくとも事態を飲み込んだアズールは、その間見ていた夢の話を始める。
その内容は彼の幼少期の頃や、ケツァルやガレウスが彼の側近として就任するまでの過去の回想だった。
そして、そんな思い出話のような夢の事を話す中で、アズールの記憶ではない別の光景も彼の記憶の中に残っていた。
見たこともない施設に、多くの白衣を着た人間達。こちらへ向けて何かを語りかけてくる者達や、無数の記憶の映像が散らばる空間を沈んでいくという不思議な体験をした記憶など、それはまるでアズールの中へ入ったシンの見た光景にも似ていたのだ。
「何だそりゃぁ・・・。まぁお前が正気に戻ったようで安心したぜ。もう身体は大丈夫なのか?」
「あぁ、少し怠い気もするが問題ない」
するとそこへ、ダラーヒムの肩を借りてシンが近づいてくる。彼の話を遠巻きに聞いていたシンは、アズールの意識の中へ潜った際、それと同じ記憶を自分も見たと話した。
二人の記憶にない光景ということからも、それが煙の人物の記憶なのではないかという推測が立った。そして最も重要なのが、その光景の中にはリナムル近郊の森の光景や、見たこともない施設の光景もあった。
その話が上がった時点で、一行はその施設こそ獣人達や森に住む他種族、そして別のところからやって来た人間達を狙い攫うと言われる人物の根城であるのではないかと、意見が一致した。
何より森の中にあるというその施設の場所を知っているのではないかと思われていたダラーヒムの証言とも、位置的には重なっていたのだ。この事によりダラーヒムが本当の事を言っていたということが信憑性を増し、獣人達の疑いを晴らす事にも繋がった。
「じゃぁその記憶の場所に向かえば、俺達の宿敵を場所が分かるってことか?」
「確証はないが、可能性は高いな・・・。これまでこの森で生活してきた我々が、そんな施設を一度も目にしていないというのはおかしい。何らかの仕掛けはあるのだろうが・・・」
人間だけでなく、感知能力に長けた獣人族や豊富な魔力を有するエルフ族でも、その施設を見つけることができなかった事からも、その施設や近隣のエリアには結界や幻覚などの術が張り巡らされている可能性が高い。
「何か仕掛けがあるのだとしたら、その記憶の光景ってのにヒントがありそうだな・・・」
「それについては考えがある・・・」
シンとダラーヒムが、煙の人物を封印する力と作戦を企てながらも、何故その全ての力を封印しなかったのか。無論、相手がそもそも余力をアズールの中に残そうとしていたことから、それ自体が不可能であったこともそうだが、それを見越して、反撃できない状況に追い込み、その後で情報を抜き取ろうというのが、シンの本当の狙いだった。
意識の中へ潜られてしまうと、普通の者達には一切手の付けられない非常に厄介な性質を持っていたが、同じくロッシュのスキルから新たな力を得ていたシンにより、絶対不可侵の領域から引き摺り出す事に成功。
煙の人物の侵略から解放されたのか、アズールの身体からは乗っ取られていた時には感じなかった本人の気配が増し始めていた。
「ガレウス!アズールの様子がッ・・・!」
「あぁ、これはアズール本人の気配だ。紛い物じゃねぇ、漸く帰って来やがったか?」
煙の人物の封印に全力を尽くし、作戦の成就の為に騙したとはいえ、ガレウスの強烈な一撃を受けて動けなくなってしまっているシンを尻目に、ガレウスら獣人達は立ち尽くすアズールに近づいていく。
「おい!ガレウス」
「ケツァル!お前はそいつらの面倒でも見ておけ」
「そうじゃない!まだアズールは・・・」
煙の人物の支配から逃れたとはいえ、完全には消滅していない筈の煙の人物の能力。直に入り込まれていたアズールの身体の中には、その能力の残骸がまだ残っている。
だが、ケツァルの静止を無視してガレウス達はアズールの元へ。嫌な予感を感じつつも、その場を離れる事のできないケツァルは彼らの歩みを見つめる。
同じく倒れるシンにより沿っていたダラーヒムは、苦しみながらもアズールの元へ向かう彼らを見ながら、何かを必死に訴えようとするシンの姿に気がつき、代わりに言葉を受け取る。
「あっ・・・うぐっ・・・」
「シン・・・?どうした?何か分かったのか?」
「いや、大丈夫・・・それほど重要なことではない・・・。それに奴は大半の力を失った。新たな依代を得て乗っ取るにも、時間が必要だろう・・・けど・・・」
含みを持たせた言い方に焦ったさを感じたダラーヒムが、シンに何を伝えたいのかを問うと、要するに煙の人物の能力は力を失い、以前のようにアズールなどの依代となった器を操る力は残っていないが、その能力の根源は彼の中に残っているのだという。
それがいつ覚醒し、能力を開花させるか分からないということだった。シンの言葉を受け取ったダラーヒムは、彼の言葉を踏まえてガレウスらの動向を伺う。
アズールの肉体は、強化状態を解除し元のサイズへと戻っていた。魔物のように鋭い眼光を放っていた彼の目も元通りに治っており、虚な瞳に光が戻ってくる。
「う・・・!俺は一体何をっ・・・」
「アズール!正気に戻ったのかぁ?」
「正気・・・?何だか長い夢を見ていたようだ・・・」
自身がどのような状況にあったのか分かっていない様子のアズール。ガレウスらは簡潔にアズールの身に起きていた事を説明すると、全ては理解できなくとも事態を飲み込んだアズールは、その間見ていた夢の話を始める。
その内容は彼の幼少期の頃や、ケツァルやガレウスが彼の側近として就任するまでの過去の回想だった。
そして、そんな思い出話のような夢の事を話す中で、アズールの記憶ではない別の光景も彼の記憶の中に残っていた。
見たこともない施設に、多くの白衣を着た人間達。こちらへ向けて何かを語りかけてくる者達や、無数の記憶の映像が散らばる空間を沈んでいくという不思議な体験をした記憶など、それはまるでアズールの中へ入ったシンの見た光景にも似ていたのだ。
「何だそりゃぁ・・・。まぁお前が正気に戻ったようで安心したぜ。もう身体は大丈夫なのか?」
「あぁ、少し怠い気もするが問題ない」
するとそこへ、ダラーヒムの肩を借りてシンが近づいてくる。彼の話を遠巻きに聞いていたシンは、アズールの意識の中へ潜った際、それと同じ記憶を自分も見たと話した。
二人の記憶にない光景ということからも、それが煙の人物の記憶なのではないかという推測が立った。そして最も重要なのが、その光景の中にはリナムル近郊の森の光景や、見たこともない施設の光景もあった。
その話が上がった時点で、一行はその施設こそ獣人達や森に住む他種族、そして別のところからやって来た人間達を狙い攫うと言われる人物の根城であるのではないかと、意見が一致した。
何より森の中にあるというその施設の場所を知っているのではないかと思われていたダラーヒムの証言とも、位置的には重なっていたのだ。この事によりダラーヒムが本当の事を言っていたということが信憑性を増し、獣人達の疑いを晴らす事にも繋がった。
「じゃぁその記憶の場所に向かえば、俺達の宿敵を場所が分かるってことか?」
「確証はないが、可能性は高いな・・・。これまでこの森で生活してきた我々が、そんな施設を一度も目にしていないというのはおかしい。何らかの仕掛けはあるのだろうが・・・」
人間だけでなく、感知能力に長けた獣人族や豊富な魔力を有するエルフ族でも、その施設を見つけることができなかった事からも、その施設や近隣のエリアには結界や幻覚などの術が張り巡らされている可能性が高い。
「何か仕掛けがあるのだとしたら、その記憶の光景ってのにヒントがありそうだな・・・」
「それについては考えがある・・・」
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