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再生と業火の炎
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赤く燃える球体を通過した獣の腕は、まるで業火に焼かれたようになっており、炎が燃え移ることなく煙が出る程の熱だけを残していた。悲鳴を上げながら床でのたうち回る獣。
その姿に一同は一瞬目を奪われるが、炎に焼かれ動きの止まった獣にトドメを刺さんと一人の獣人が動き出し、肉体強化が施された鋭爪で首を刎ねた。
「嬢ちゃん・・・これは一体・・・?」
「御免なさい、私にも分からないわ・・・。でも・・・何でか分からないけど、この暖かさ・・・どこか懐かしい・・・」
獣を燃やした謎の球体が放つ熱に、アカリは目の前で優しく接してくれた獣人を失ったパニックから落ち着きを取り戻し立ち上がる。そして依然として熱と光を放つ宙に浮いた球体へ近づいていくと、彼女にだけ聞こえるような小さな声が語りかける。
「触っちゃダメだ・・・」
「ッ!?」
突然聞こえた少年のような声に、アカリは思わず足を止め伸ばした手を引っ込める。すると、球体の中から炎を纏った何かが下へ向けて伸び始める。次第にその形が人間や獣人のような腕であることが分かるようになる。
そして球体の光と熱をその身に纏い現れたのは、今まさに獣達と戦う獣人のような姿をした人物だった。球体のエネルギーを宿し現れた炎の生き物は、自分が何者であるかを確かめるように、その燃える身体を眺めていた。
「時間がないよ、急いで・・・」
「そうか・・・今一度俺をここへ戻したのは、君なのか・・・」
炎を身体に宿した人物は、アカリにも聞こえた少年の声と話をしている。だがその内容については、アカリにも全く身に覚えがなく想像もつかないようなものだった。
しかし、彼女が聞いた言葉の中にある“今一度戻った“という言葉とその声色に、どこか聞き覚えのある声を重ねていた。それは他ならぬ、この場で惨殺された獣人のもののように聞こえた。
炎を宿した人物は僅かにアカリの方を振り向くと、そのまま目の前に群がる獣の方へと向き直し、歩いて行ってしまった。
「おっおい!これって・・・味方・・・なのか?」
「知るか!・・・けど、俺達に敵意はないようだな・・・」
獣人達を無視して歩みを進める炎の人物は、警戒してこちらを伺うような動きをする獣達の方へと向かっていく。燃える足は床に黒い足跡を残し、メラメラと燃える頭部から放つ視線は、燃え盛る闘志を乗せて獣達に牙を剥く。
対峙していた獣達は、獣人達をそっちのけで炎の人物を今一番最初に狩るべき獲物と定める。そして数体の獣が一斉に炎の人物へ飛びかかると。獣人達も、下手に手は出せぬと退き、アカリを守るように彼女の元へと集まっていく。
炎の人物は飛び掛かってくる獣達に向かって、霧を払うように大きく腕を振り抜く。すると、その腕に纏った炎が迫り来る獣達をまるで包み込むかのように引火し、怒りを体現するかのように燃え盛り、真っ黒に焼き尽くした。
「すっ・・・すげぇ・・・」
「たった一撃であの数を・・・」
獣達は先陣の成れの果てを見て怖気ずいたのか、すぐに炎の人物を勝てぬ相手と見定め撤退を始める。しかし、炎の人物は獣達をこの場から一匹たりとも逃すつもりはないようだ。
逃げ惑う獣達の様子を見て、炎の人物が腕を上げて指をパチンと鳴らす。すると、彼らの戦っていた施設の出入り口や窓、外に通じるすべての道が、瞬く間に炎で塞がれる。
蜃気楼のように歪む視界を受け、自分達も熱で焼かれると思っていた獣人達とアカリだったが、身構える彼らの反応とは裏腹に、心地よい温もりが彼らを包み込んでいた。
「熱く・・・ない・・・?」
「それどころか、戦いの傷が癒えてる・・・この炎は・・・」
「・・・紅葉・・・なの?」
周囲に飛び火する火の粉に熱は感じず、手で触れてみても彼らの身体を燃やすことはなかった。それどころか、炎の人物が出現させた炎に触れると、彼らの身体に蓄積された疲労や怪我、精神的なダメージまでもが癒やされる。
しかし反対に、彼らを襲って来た獣達にはその炎が業火のように襲い、その身を焼き尽くす牙となって猛威を振るっていた。
逃げ場を失った獣達はもがく様に建物内を走り回っては、物や壁に衝突し自滅していく。その様子を見て一行は、改めてその炎が自分達に向けられた物ではないことを確認し、強烈な光景とは真逆に安堵していた。
窮地は一気に退けられ、彼らを襲ってきた獣達は炭の塊へと変貌した。周りを取り巻いていた炎は獣達を焼き尽くすと弱まっていき、次第にその明るさと暖かさを失っていった。
同時に、彼らを守るように現れた炎の人物もまたその姿を徐々に失い、元の球体の形へと戻っていく。
呆気に取られる獣人達とアカリ。するとアカリだけが、その炎から聞こえてきた何者かの声を聞き取ることが出来た。一つは少年の声、そしてもう一つは彼女が感じた通り、自信をあの時の獣人と名乗る者の声であった。
「なるほど・・・特別だったのは君だけではなかったようだ。彼の力を借りて俺は、窮地に残してきた君や同胞達の元へ戻ってくることができた。そして、それを退ける力を得て俺の不安は取り除かれた・・・」
「ねぇ、貴方をここに戻したものって?」
「君の連れていた彼さ。・・・そうか、君は記憶が・・・」
時期に炎の人物の身体はなくなり、球体だけになると再び強い光を放ち始める。
「今度は何だぁ!?」
「アンタ、一体何と話してる!?そこに誰かいるのか?」
「待って!貴方は私の何を知ってるの?彼って一体誰!?」
アカリが記憶を失っていることを知っていた炎の人物は、そのまま謎を残したまま消えようとしていた。自分について何でもいいから情報が欲しかったアカリは、消えゆく炎に言葉を投げかける。
「すまない。俺が留まれる時間は残り僅かだ。質問に答えられる時間は・・・もうない・・・みんな無事でよかった・・・」
その言葉を最後に、アカリにも炎の中からの声が聞こえなくなってしまった。球体は強い光を放った後に周囲の炎と炎を纏った何者かを綺麗に飲み込み、何事もなかったかのようにその場から消え去ってしまった。
その姿に一同は一瞬目を奪われるが、炎に焼かれ動きの止まった獣にトドメを刺さんと一人の獣人が動き出し、肉体強化が施された鋭爪で首を刎ねた。
「嬢ちゃん・・・これは一体・・・?」
「御免なさい、私にも分からないわ・・・。でも・・・何でか分からないけど、この暖かさ・・・どこか懐かしい・・・」
獣を燃やした謎の球体が放つ熱に、アカリは目の前で優しく接してくれた獣人を失ったパニックから落ち着きを取り戻し立ち上がる。そして依然として熱と光を放つ宙に浮いた球体へ近づいていくと、彼女にだけ聞こえるような小さな声が語りかける。
「触っちゃダメだ・・・」
「ッ!?」
突然聞こえた少年のような声に、アカリは思わず足を止め伸ばした手を引っ込める。すると、球体の中から炎を纏った何かが下へ向けて伸び始める。次第にその形が人間や獣人のような腕であることが分かるようになる。
そして球体の光と熱をその身に纏い現れたのは、今まさに獣達と戦う獣人のような姿をした人物だった。球体のエネルギーを宿し現れた炎の生き物は、自分が何者であるかを確かめるように、その燃える身体を眺めていた。
「時間がないよ、急いで・・・」
「そうか・・・今一度俺をここへ戻したのは、君なのか・・・」
炎を身体に宿した人物は、アカリにも聞こえた少年の声と話をしている。だがその内容については、アカリにも全く身に覚えがなく想像もつかないようなものだった。
しかし、彼女が聞いた言葉の中にある“今一度戻った“という言葉とその声色に、どこか聞き覚えのある声を重ねていた。それは他ならぬ、この場で惨殺された獣人のもののように聞こえた。
炎を宿した人物は僅かにアカリの方を振り向くと、そのまま目の前に群がる獣の方へと向き直し、歩いて行ってしまった。
「おっおい!これって・・・味方・・・なのか?」
「知るか!・・・けど、俺達に敵意はないようだな・・・」
獣人達を無視して歩みを進める炎の人物は、警戒してこちらを伺うような動きをする獣達の方へと向かっていく。燃える足は床に黒い足跡を残し、メラメラと燃える頭部から放つ視線は、燃え盛る闘志を乗せて獣達に牙を剥く。
対峙していた獣達は、獣人達をそっちのけで炎の人物を今一番最初に狩るべき獲物と定める。そして数体の獣が一斉に炎の人物へ飛びかかると。獣人達も、下手に手は出せぬと退き、アカリを守るように彼女の元へと集まっていく。
炎の人物は飛び掛かってくる獣達に向かって、霧を払うように大きく腕を振り抜く。すると、その腕に纏った炎が迫り来る獣達をまるで包み込むかのように引火し、怒りを体現するかのように燃え盛り、真っ黒に焼き尽くした。
「すっ・・・すげぇ・・・」
「たった一撃であの数を・・・」
獣達は先陣の成れの果てを見て怖気ずいたのか、すぐに炎の人物を勝てぬ相手と見定め撤退を始める。しかし、炎の人物は獣達をこの場から一匹たりとも逃すつもりはないようだ。
逃げ惑う獣達の様子を見て、炎の人物が腕を上げて指をパチンと鳴らす。すると、彼らの戦っていた施設の出入り口や窓、外に通じるすべての道が、瞬く間に炎で塞がれる。
蜃気楼のように歪む視界を受け、自分達も熱で焼かれると思っていた獣人達とアカリだったが、身構える彼らの反応とは裏腹に、心地よい温もりが彼らを包み込んでいた。
「熱く・・・ない・・・?」
「それどころか、戦いの傷が癒えてる・・・この炎は・・・」
「・・・紅葉・・・なの?」
周囲に飛び火する火の粉に熱は感じず、手で触れてみても彼らの身体を燃やすことはなかった。それどころか、炎の人物が出現させた炎に触れると、彼らの身体に蓄積された疲労や怪我、精神的なダメージまでもが癒やされる。
しかし反対に、彼らを襲って来た獣達にはその炎が業火のように襲い、その身を焼き尽くす牙となって猛威を振るっていた。
逃げ場を失った獣達はもがく様に建物内を走り回っては、物や壁に衝突し自滅していく。その様子を見て一行は、改めてその炎が自分達に向けられた物ではないことを確認し、強烈な光景とは真逆に安堵していた。
窮地は一気に退けられ、彼らを襲ってきた獣達は炭の塊へと変貌した。周りを取り巻いていた炎は獣達を焼き尽くすと弱まっていき、次第にその明るさと暖かさを失っていった。
同時に、彼らを守るように現れた炎の人物もまたその姿を徐々に失い、元の球体の形へと戻っていく。
呆気に取られる獣人達とアカリ。するとアカリだけが、その炎から聞こえてきた何者かの声を聞き取ることが出来た。一つは少年の声、そしてもう一つは彼女が感じた通り、自信をあの時の獣人と名乗る者の声であった。
「なるほど・・・特別だったのは君だけではなかったようだ。彼の力を借りて俺は、窮地に残してきた君や同胞達の元へ戻ってくることができた。そして、それを退ける力を得て俺の不安は取り除かれた・・・」
「ねぇ、貴方をここに戻したものって?」
「君の連れていた彼さ。・・・そうか、君は記憶が・・・」
時期に炎の人物の身体はなくなり、球体だけになると再び強い光を放ち始める。
「今度は何だぁ!?」
「アンタ、一体何と話してる!?そこに誰かいるのか?」
「待って!貴方は私の何を知ってるの?彼って一体誰!?」
アカリが記憶を失っていることを知っていた炎の人物は、そのまま謎を残したまま消えようとしていた。自分について何でもいいから情報が欲しかったアカリは、消えゆく炎に言葉を投げかける。
「すまない。俺が留まれる時間は残り僅かだ。質問に答えられる時間は・・・もうない・・・みんな無事でよかった・・・」
その言葉を最後に、アカリにも炎の中からの声が聞こえなくなってしまった。球体は強い光を放った後に周囲の炎と炎を纏った何者かを綺麗に飲み込み、何事もなかったかのようにその場から消え去ってしまった。
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