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神代 コウ

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情報収集の極意

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 情報収集の為、外へと出たシンとミアは最も人の出入りがある酒場へと向かう。外部からの人間が多く立ち寄るのが酒場であり、酒が入ったことで普段では聞けないような話が聞ける。

 「さて、情報収集がてら・・・」

 「相変わらずだなぁ、ミアは・・・。先にその情報を手に入れてからにしないか?」

 「何言ってんだ。こっちが隙を見せれば、相手もより警戒心を解くってもんだ。酒の席でも、お堅い奴はいるからなぁ」

 そう言って目を細めながらシンを睨むミア。彼女の言うことも一理あるかもしれないが、肝心な時に酔っ払っていては重要なことも聞き逃しかねない。

 だが、こうなってしまったミアを止める術はないと、せめて自分だけは素面でいようと心がけるシンだった。

 実際、酒場での情報収集はミアの方が早く、効率的だった。彼女の手際の良さもあるが、酒の回った男達はやはり若い女と話す方が楽しいようだ。巧みに近づいていったミアは、酒場の男達から次々に話を聞いていくと、あっという間に店の全員から聴取を完了していた。

 「お前は何をやってたんだぁ?シン~。八割以上、アタシの手柄じゃないかぁ?現実で訳のわからん連中のスパイなんてやってるから、こっちでの感覚が鈍ってるんじゃないか」

 「・・・面目ない。返す言葉もないよ・・・。それで?何か有力な情報は掴めた?」

 シンが次の目的地となるであろう、木材の街やグリム・クランプについての情報が掴めたのかミアに聞くと、彼女は口角を上げながら人に頼む時の態度を伺うように、シンの顔を覗き込む。

 「・・・分かった!ミアさんが正しかったです。どうか私めにお聞かせ願えないでしょうか?」

 シンの折れる姿を見て、屈託のない笑顔と満足に満ちた表情で、ミアは酒場の男達から集めてきたと言う情報を語り始めた。

 「アタシは何も言ってないんだけどねぇ~。そんなに頼まれたんじゃぁしょうがない!・・・最初に言っておくが、グリム・クランプってところについての情報は無かった。そもそも、そういった地名すら聞き覚えがないらしい」

 「聞き覚えがない?ここらの人でも耳にしない地名なのか?」

 ツバキがオスカーから聞いたと言う、グリム・クランプという森林地帯。シン達のいる大陸の中にあることは間違いないだろうが、そんなに遠くの場所のことを少年であるツバキに教えるだろうか。

 「アタシも考えたんだけど、その“グリム・クランプ“ってのは、それ自体も隠語なんじゃないかって・・・」

 「隠語?でもそれは、ストレンジャーズ・サンクチュアリっていうのじゃないのか?」

 「アタシもそう聞いてる。ただ、ここまで誰も知らないとくると、そもそもその研究員達の間でそう呼んでるだけなんじゃないかって・・・」

 或いは、そもそもそれほど解明されていない森林地帯なのか。未踏の地が故に、その呼び名すら浸透していないということもあり得る。

 「それじゃぁまだスタートもしてないのに振り出しに戻ったってことか?」

 「まぁ結果を焦るんじゃない。言ったろ?“最初に“って。つまり、他にも情報があるって訳さ」

 「他にも?それって」

 「もう一つ、アタシらが探してる街があんだろ?そっちの情報は掴んだ」

 ツバキがグラン・ヴァーグで働いていた時に、客としてやってきていた海賊から聞いたという、珍しい木材を扱う街。その周辺に彼らの探す、“グリム・クランプ“があるという話だった。

 「それでその街ってのは?」

 「“リナムル“っていう街らしい。以前まではそこまで名の知れ渡るような街じゃなかったようだが、ツバキの言ってた通り希少で珍しい木材を扱うようになってから、様々な方面からの需要が高まったらしい」

 ミアが酒場で手に入れた、木材で有名になったという街、リナムル。他に同じような特徴を持つ街の話が上がらなかったことから、ツバキが聞いたという木材で有名な街というのは、リナムルで間違いないようだ。

 「リナムル・・・。確かにツバキが聞いたっていう特徴と一致するな」

 「あぁ。それに何人にも同じ話をしたが、知ってるっていう奴が口にする街は、そのリナムルって街だけだった。そこが正解と見て間違いないだろうよ」

 「後はその近隣の森や林を探せば・・・」

 「グリム・クランプって場所が見つかるかもな。それと・・・」

 次の目的地を調べ上げるだけでなく、ミアは他にも何かを言いたそうに、得意げな顔をシンへ向ける。

 「まだ何かあるのか?すごいな・・・」

 「まぁこっちは大した事じゃないんだが、珍しい木材を扱うってことで有名になったおかげで、交易がかなり盛んになったようだ。それでこの街から商人達の馬車がたくさん通ってるらしいんだ。つまり・・・」

 「自分達で探す必要がない・・・と?」

 「そういう事だ。今日も昼ごろに、商人の馬車が数台やって来るそうだ。それに乗せてもらえないか頼んでみるとしよう。丁度さっき話を聞いた奴の中に、商人とやり取りしてるって奴がいてな。そいつから話をつけてくれるかもしれない」

 情報を得るまでは考えていたが、まさか移動手段まで用意してしまうなどと、シンは思ってもみなかった。

 「何から何まで・・・。最初からそのつもりだったのか?」

 「そのつもりではいたが、まさかこんなに上手くいくなんて、アタシも思ってなかったよ。早速話をつけて来るから、会計の方は頼んだぜぇ?」

 「えっ!?俺が持つの!?」

 「誰が情報を集めたんだぁ~?」

 そう言って席を立ち、商人と繋がりのあるという人物の元へ向かったミア。シンは彼女に言われた通り、彼女の自分が飲んだ分の会計を済ませ、店の外で待つ事にした。

 シンが店から出てそれ程待つこともなく、ミアが話をつけて店から出てきた。商人の予定が早まり、これからすぐにこちらへ向かって来るのだそうだ。

 二人は商人がやって来るという場所を聞き、宿屋に残してきたツクヨとツバキを迎えに行く事にした。

 「ツバキには悪いが、善は急げってな!行ける時にとっとと行っちまった方がいいだろ。もう歩きは御免だぜぇ・・・」

 「聞いたよ。随分歩いたらしいな。そりゃぁ確かに馬車に乗りたくもなるよなぁ・・・ん?」

 宿屋へ戻る道の途中、街のはずれの方にある茂みの中から、何やら光が視界の中に飛び込んでくる。

 「ミア・・・今の・・・」

 「あぁ、見えたよ・・・。だが、あまり時間もねぇんだ。面倒事は御免だぞ?」

 「ちょっと様子を見るくらいなら・・・」

 「分かったよ!言っても聞かなそうだからな。その代わり私もついていくからな?」

 「助かるよ!」

 二人は茂みの方で見えた光の方へ向かう。街の景観の一部として整えられた茂みの奥で二人が目にしたのは、大きな光で包まれた“繭“のような物だった。
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