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進路を定めて
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街灯も無い真っ暗な道を、まるで夜逃げのようにオルレラを出立し、歩み進むミア達。危惧していたアークシティからの刺客や、研究員などに襲われることもなく道なりに進み、ツバキがオスカーから託された思いの場所、グリム・クランプと呼ばれる森林を目指す。
「ツバキ、大丈夫かい?君はまだ本調子じゃないだろう」
「大丈夫だ。俺だってそんなにヤワじゃねぇ・・・」
口では強がっているものの、ツバキの呼吸はミアやツクヨに比べ、明らかに荒く上がっていた。実際には数日間寝ていたように思える彼の身体だが、その精神や魂はオスカーの作り出したもう一つのオルレラの中で消耗していた。
子供の肉体では到底太刀打ち出来ないような大型のモンスターと戦い、本人が思っている以上に疲労が蓄積されていたのだ。
このまま彼に無理をさせる訳には行かないと、ミアとツクヨは彼に気付かれぬよう視線を合わせる。お互いに考えている事は同じようだった。
直接、問題のグリム・クランプという場所を目指すより、休憩を兼ねて何処か情報を集められる都市や街はないか、探すことを提案した。
「なぁ、ツバキ。アンタはグリム・クランプってのが何処にあるのか知ってるのか?」
「・・・正直、俺も正確な場所は知らない・・・。それでも俺はッ・・・」
「分かってるよ。アタシらだって別に行かねぇって言ってるんじゃないさ。でも、当ても無いのに闇雲に探すのはどうだって話だ。先ずは先立つものでも見つけないとなぁ」
「・・・・・」
ツバキ自身も、思いが先走り冷静さを欠いていた部分もあったと、少しだけ冷静になりミアの言葉を受け止めていた。彼の考えが変わらないうちに、次の目的地の前に何処か休める場所はないかという流れを作るため、ツクヨは話を続ける。
「ミアはそのグリム・クランプってところに心当たりはないのかい?私はその・・・聖都からあまり外に出たことがない身でね・・・」
ツバキの手前、ツクヨやミアがWoFとは別の世界からやって来たことを隠しつつ、地理や外界に疎いことをアピールするツクヨ。
実際彼は、そもそもWoFというゲームの世界で遊んでいた人間ではない。妻や娘からうっすら話を聞いていた程度で、どんな世界観でどんな種族がいるなどという、ある程度の予備知識すら無い状態だった。そう言った点では、彼の疎さは本物だと言えるだろう。
「さぁな・・・アタシは聞いた事もない。そもそも、それだけ秘密を厳守しようとする連中だ。そう簡単に辿り着けるような、誰でも知る場所に怪しい施設を作るなんて考えづらいだろう?」
「う~ん・・・確かに。返す言葉もないよ。でもオスカーって人の話によると、何処かの森だとか森林にあるんだろ?それならその周辺に詳しい人に話を聞けないかな?」
「森に詳しいっつったってなぁ・・・。狩人の部族とか獣人種の集落とかか?それもそれで、また一悶着ありそうな場所だな」
狩りを主体とする生活をする部族や、自然の中で生きる獣人種などは、それこそ自分達のテリトリーを重要視するところがある。そんな者達に、余所者の彼らに自分達の縄張りの中を案内してもらおうなど、考えるだけでも騒動が起きそうな予感しかしない。
そこへ、疲労していたツバキが情報を集められそうな場所について、いくつかの候補を挙げた。どうやら彼は、ウィリアムの元で造船技師として働いている時に、客として訪れる海賊達の話を聞いていたようだ。
「前に・・・」
「ん?どうした、ツバキ?」
「じじいのとこで働いてた時、珍しい木材を使った木造の船を持ち込んだ海賊がいたんだ・・・。そいつらの話では、ホープ・コーストから北へ道なりに行った先に、木材の流通で近頃一部の界隈で話題になってるって言う街があるって言ってた・・・」
「本当かい!?ホープ・コーストって・・・レースのゴール地点になってた街だよね?」
彼らが参加したWoFでも大きな大会である、フォリーキャナルレース。グラン・ヴァーグからホープ・コーストへ渡る一大レースの終着点。そこからアークシティを目指し、彼らは道なり歩みを進めてきた。
オルレラまでは、ツバキの言う街へ向かう道順と同じく、北へと進んでいた。そこから逃げるように街を飛び出した三人は、やや進路はズレてしまっているものの、少し修正すれば北への道に出る。
「今の正確な進路が分からないが、オルレラの近くにもそれなりに栄えている街がいくつかある・・・。多少道は長くなるが、その北にあるって言う街を目指すか、近場の街を巡りながら情報を集めるか・・・」
ツバキ自身も、その珍しい木材を扱うと言う街の位置が正確に分かっている訳ではないようだ。最も近道なのは、彼の情報通り北への道を進み、その街を探す事だろうが、近場の街があるならツバキの休息がてら、その街の情報を集める方がいいだろう。
徐々に息の上がるツバキの様子を見れば、口論する余地もないとミアとツクヨの意見は合致した。
「そうだな、先ずは近場の街へ向かおう。そこで木材の街の情報も集めれば一石二鳥だろう」
「それがいいね!ツバキ、そのオルレラに近い街の場所は分かるかい?」
「・・・あぁ、ここから・・・」
三人は一先ず、オルレラから最寄りの街を目指すことを決め、グリム・クランプという場所や、木材の街に関する情報を集めながら休息を取る事となった。
「ツバキ、大丈夫かい?君はまだ本調子じゃないだろう」
「大丈夫だ。俺だってそんなにヤワじゃねぇ・・・」
口では強がっているものの、ツバキの呼吸はミアやツクヨに比べ、明らかに荒く上がっていた。実際には数日間寝ていたように思える彼の身体だが、その精神や魂はオスカーの作り出したもう一つのオルレラの中で消耗していた。
子供の肉体では到底太刀打ち出来ないような大型のモンスターと戦い、本人が思っている以上に疲労が蓄積されていたのだ。
このまま彼に無理をさせる訳には行かないと、ミアとツクヨは彼に気付かれぬよう視線を合わせる。お互いに考えている事は同じようだった。
直接、問題のグリム・クランプという場所を目指すより、休憩を兼ねて何処か情報を集められる都市や街はないか、探すことを提案した。
「なぁ、ツバキ。アンタはグリム・クランプってのが何処にあるのか知ってるのか?」
「・・・正直、俺も正確な場所は知らない・・・。それでも俺はッ・・・」
「分かってるよ。アタシらだって別に行かねぇって言ってるんじゃないさ。でも、当ても無いのに闇雲に探すのはどうだって話だ。先ずは先立つものでも見つけないとなぁ」
「・・・・・」
ツバキ自身も、思いが先走り冷静さを欠いていた部分もあったと、少しだけ冷静になりミアの言葉を受け止めていた。彼の考えが変わらないうちに、次の目的地の前に何処か休める場所はないかという流れを作るため、ツクヨは話を続ける。
「ミアはそのグリム・クランプってところに心当たりはないのかい?私はその・・・聖都からあまり外に出たことがない身でね・・・」
ツバキの手前、ツクヨやミアがWoFとは別の世界からやって来たことを隠しつつ、地理や外界に疎いことをアピールするツクヨ。
実際彼は、そもそもWoFというゲームの世界で遊んでいた人間ではない。妻や娘からうっすら話を聞いていた程度で、どんな世界観でどんな種族がいるなどという、ある程度の予備知識すら無い状態だった。そう言った点では、彼の疎さは本物だと言えるだろう。
「さぁな・・・アタシは聞いた事もない。そもそも、それだけ秘密を厳守しようとする連中だ。そう簡単に辿り着けるような、誰でも知る場所に怪しい施設を作るなんて考えづらいだろう?」
「う~ん・・・確かに。返す言葉もないよ。でもオスカーって人の話によると、何処かの森だとか森林にあるんだろ?それならその周辺に詳しい人に話を聞けないかな?」
「森に詳しいっつったってなぁ・・・。狩人の部族とか獣人種の集落とかか?それもそれで、また一悶着ありそうな場所だな」
狩りを主体とする生活をする部族や、自然の中で生きる獣人種などは、それこそ自分達のテリトリーを重要視するところがある。そんな者達に、余所者の彼らに自分達の縄張りの中を案内してもらおうなど、考えるだけでも騒動が起きそうな予感しかしない。
そこへ、疲労していたツバキが情報を集められそうな場所について、いくつかの候補を挙げた。どうやら彼は、ウィリアムの元で造船技師として働いている時に、客として訪れる海賊達の話を聞いていたようだ。
「前に・・・」
「ん?どうした、ツバキ?」
「じじいのとこで働いてた時、珍しい木材を使った木造の船を持ち込んだ海賊がいたんだ・・・。そいつらの話では、ホープ・コーストから北へ道なりに行った先に、木材の流通で近頃一部の界隈で話題になってるって言う街があるって言ってた・・・」
「本当かい!?ホープ・コーストって・・・レースのゴール地点になってた街だよね?」
彼らが参加したWoFでも大きな大会である、フォリーキャナルレース。グラン・ヴァーグからホープ・コーストへ渡る一大レースの終着点。そこからアークシティを目指し、彼らは道なり歩みを進めてきた。
オルレラまでは、ツバキの言う街へ向かう道順と同じく、北へと進んでいた。そこから逃げるように街を飛び出した三人は、やや進路はズレてしまっているものの、少し修正すれば北への道に出る。
「今の正確な進路が分からないが、オルレラの近くにもそれなりに栄えている街がいくつかある・・・。多少道は長くなるが、その北にあるって言う街を目指すか、近場の街を巡りながら情報を集めるか・・・」
ツバキ自身も、その珍しい木材を扱うと言う街の位置が正確に分かっている訳ではないようだ。最も近道なのは、彼の情報通り北への道を進み、その街を探す事だろうが、近場の街があるならツバキの休息がてら、その街の情報を集める方がいいだろう。
徐々に息の上がるツバキの様子を見れば、口論する余地もないとミアとツクヨの意見は合致した。
「そうだな、先ずは近場の街へ向かおう。そこで木材の街の情報も集めれば一石二鳥だろう」
「それがいいね!ツバキ、そのオルレラに近い街の場所は分かるかい?」
「・・・あぁ、ここから・・・」
三人は一先ず、オルレラから最寄りの街を目指すことを決め、グリム・クランプという場所や、木材の街に関する情報を集めながら休息を取る事となった。
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