933 / 1,646
先生
しおりを挟む
気を失ってどれくらいの時間が経ったのだろう。
目を覚ましたツバキは、静まり返るオルレラの研究施設の地下階層で気絶し、目を覚ました。
「うッ・・・ここは・・・?あれからどうなった・・・?」
周囲を見渡すと、施設内部は酷く荒らされており様々な機械や道具が転がっている。そこから察するに、この散らばった物は一定の方向から吹き飛ばされたように転がっているように感じたツバキ。
その方向へ顔を向けると、一箇所だけ物が散らばっていない広い空間がある事に気がつく。久しぶりに動いたかのように重たい身体を起こし、彼はその開けた場所へ進む。
床にはまるで爆弾でも爆発したかのように大きな穴が空いており、壊れた床の下から地面が剥き出しになっている。そして視線を上げると、天井にも大きな穴が空いており、一階に通じている風穴が空けられていた。
「確か・・・あのモンスターと戦って・・・」
徐々に記憶が蘇るツバキ。大型のソウルリーパーと戦い、少年達の力を借りながら何とか攻撃を跳ね返した。その後、衝撃波はソウルリーパーに命中し大きな爆発を起こした。
ツバキはその爆風に巻き込まれ気を失ってしまった事を理解した。無事でいるということは、モンスターによる脅威は去ったのだろう。だが、自分はどうやって無事だったのか。他の子供達はどうなったのか。
再びツバキは、その場で周囲の状況を確認する。すると、周りの壁や床には子供達のものであろうレインコートや、その切れ端があった。
恐らく彼らも、あの爆風に巻き込まれたのだろう。あれ程の風力であったのなら、当然フードなど容易く外されてしまったことだろう。
「アイツら・・・あの爆風で・・・」
心が締め付けられるような感覚に苛まれる。無論、ツバキは全力を尽くした。そこに落ち度や後悔はないだろう。それでも、救おうとした彼らと、このような形で別れることになってしまった事に、彼は自身の力不足を感じていた。
そこへ、誰の気配も姿も見当たらなかった施設内に、小さな物音が僅かに響く。辛うじてそれを拾うことが出来たツバキは、音のした方へ歩みを進める。
瓦礫を避けて進んでいくと、不自然に起こされたソファーがあった。背もたれがこちらを向いていた為、そこに何が乗せられているのか分からなかったが、近づくにつれそれはすぐにツバキの前に姿を現した。
ソファーに寝かせられていたのは、彼らが救出したレインコートの子供達に先生と呼ばれ慕われていたという人物だった。
誰に着せられたのか、彼は服を身に纏っており、子供達の着ていたレインコートが掛けられている。
「アイツらがやったのか・・・」
ソファーの正面に回り込んだツバキは、彼の表情を確認する。顔色は救出した時よりも良くなっているようだ。そして何より、穏やかに眠っている。
彼の無事を確認したツバキは、少しでも彼の容態の回復と、早く目を覚ませるようにと薬品が余っていないか探しにいく。
幸いここは研究所。薬品の組み合わせやどういう効果の薬が出来上がるのかを記した資料が、そこら中に散らばっている。いつ目覚めるか分からない彼を待っている間、ツバキは散策を兼ねた薬と道具の開発を行う。
この時、必要になるのか分からないがいざという時の為に、戦いに使用したガジェット程ではないが、動きを強化できるものを作り出す。
目を覚ましたツバキは、静まり返るオルレラの研究施設の地下階層で気絶し、目を覚ました。
「うッ・・・ここは・・・?あれからどうなった・・・?」
周囲を見渡すと、施設内部は酷く荒らされており様々な機械や道具が転がっている。そこから察するに、この散らばった物は一定の方向から吹き飛ばされたように転がっているように感じたツバキ。
その方向へ顔を向けると、一箇所だけ物が散らばっていない広い空間がある事に気がつく。久しぶりに動いたかのように重たい身体を起こし、彼はその開けた場所へ進む。
床にはまるで爆弾でも爆発したかのように大きな穴が空いており、壊れた床の下から地面が剥き出しになっている。そして視線を上げると、天井にも大きな穴が空いており、一階に通じている風穴が空けられていた。
「確か・・・あのモンスターと戦って・・・」
徐々に記憶が蘇るツバキ。大型のソウルリーパーと戦い、少年達の力を借りながら何とか攻撃を跳ね返した。その後、衝撃波はソウルリーパーに命中し大きな爆発を起こした。
ツバキはその爆風に巻き込まれ気を失ってしまった事を理解した。無事でいるということは、モンスターによる脅威は去ったのだろう。だが、自分はどうやって無事だったのか。他の子供達はどうなったのか。
再びツバキは、その場で周囲の状況を確認する。すると、周りの壁や床には子供達のものであろうレインコートや、その切れ端があった。
恐らく彼らも、あの爆風に巻き込まれたのだろう。あれ程の風力であったのなら、当然フードなど容易く外されてしまったことだろう。
「アイツら・・・あの爆風で・・・」
心が締め付けられるような感覚に苛まれる。無論、ツバキは全力を尽くした。そこに落ち度や後悔はないだろう。それでも、救おうとした彼らと、このような形で別れることになってしまった事に、彼は自身の力不足を感じていた。
そこへ、誰の気配も姿も見当たらなかった施設内に、小さな物音が僅かに響く。辛うじてそれを拾うことが出来たツバキは、音のした方へ歩みを進める。
瓦礫を避けて進んでいくと、不自然に起こされたソファーがあった。背もたれがこちらを向いていた為、そこに何が乗せられているのか分からなかったが、近づくにつれそれはすぐにツバキの前に姿を現した。
ソファーに寝かせられていたのは、彼らが救出したレインコートの子供達に先生と呼ばれ慕われていたという人物だった。
誰に着せられたのか、彼は服を身に纏っており、子供達の着ていたレインコートが掛けられている。
「アイツらがやったのか・・・」
ソファーの正面に回り込んだツバキは、彼の表情を確認する。顔色は救出した時よりも良くなっているようだ。そして何より、穏やかに眠っている。
彼の無事を確認したツバキは、少しでも彼の容態の回復と、早く目を覚ませるようにと薬品が余っていないか探しにいく。
幸いここは研究所。薬品の組み合わせやどういう効果の薬が出来上がるのかを記した資料が、そこら中に散らばっている。いつ目覚めるか分からない彼を待っている間、ツバキは散策を兼ねた薬と道具の開発を行う。
この時、必要になるのか分からないがいざという時の為に、戦いに使用したガジェット程ではないが、動きを強化できるものを作り出す。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
戦闘職をしたくてVRMMOを始めましたが、意図せずユニークテイマーという職業になったので全力でスローライフを目指します
地球
ファンタジー
「え?何この職業?」
初めてVRMMOを始めようとしていた主人公滝沢賢治。
やろうと決めた瞬間、戦闘職を選んでいた矢先に突然出てきた職業は【ユニークテイマー】だった。
そのゲームの名はFree Infinity Online
世界初であるフルダイブ型のVRゲームであり、AIがプレイヤーの様子や行動を把握しイベントなどを考えられるゲームであった。
そこで出会った職業【ユニークテイマー】
この職業で、戦闘ではなくてスローライフを!!
しかし、スローライフをすぐにはできるわけもなく…?
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる