World of Fantasia

神代 コウ

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資料館と謎の展示物

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 ジャンク屋を去った後、ミアはもう少しオルレラの街について調べてみようと一旦エディ邸に戻り、何処か良い場所は無いかとエディに尋ねようとした。

 しかし、当然ながらエディは仕事中であった為、使用人に止められてしまう。が、この使用人もオルレラについては詳しく、事情を話したところ“資料館“ではどうかと勧められた。

 歴史や情勢の記録を残しているであろう街の図書館も兼ねている、資料館であればミアの知りたいと思っている情報について、何か分かるかもしれない。

 どうせ使おうと思っていて空いた時間なのだと、もし無駄足になろうと時間潰しにはなると思い、ミアはオルレラの資料館へ向かうことにした。

 建物自体はそれほど大きくなく、資料や書物に関しては余所者であるミア達でも閲覧が可能なようだった。

 受付を済ませたミアは、係員の人に昔のオルレラを調べるならどこを調べるのが良いのかを尋ねる。そして案内された場所へ向かい、先ずは展示されている資料に目を向けた。

 「こんな資料館や展示会に来るのなんて、いつ以来だろうな・・・」

 現実世界でもWoFの世界でも、歴史的な資料や書物、小説や図鑑などといった物をあまり読んだり見たりする方ではなかったミアは、まさか自分からこんなところへ足を運ぶことになるとは思ってもみなかったようだ。

 展示されている物の中には、昔に使われていたであろう古びた機械や、珍しい生き物かモンスターの化石など、文字通り資料館の名に恥じないものとなっていた。

 その中でもミアが興味を持っていたのは、イクセンの居るガラクタの山でもみた過去の機械だった。あの人形の他にも、何かあの研究施設に関する物は無いかと、機械類を中心にあまり時間を掛けないで次々に眺めていく。

 だが、これといって有力な情報源と思われる代物は見つからない。このまま無駄足に終わるかと思われた時、機械の展示物から別の種類の項目へ差し掛かろうとしたところで、生物の骨のような物が展示されているのが目に入る。

 ミアは思わず、展示されている項目を少し戻り確認する。生物に関する項目は既に通り過ぎていたはず。そして再度、先程の展示物のところまで行き、もう一度展示物とその詳細を確認した。

 骨自体は、生物の物と同じく風化しており、所々欠損してしまっている部分や、ひび割れが目立つ。だが、注視すべきはそこではなく、外殻に空いている穴から見える内部にあった。

 その骨の内部には、本来の骨の中に見られるような海綿骨や髄腔、細胞や血管といったものは無く、代わりに機械やコードが詰まっていたのだ。

 認識にない構造と組み合わせに、ミアは不気味さと悪寒を感じた。例えるならば、外見や食感はチョコなのに、味はカレーのルーだったり、お茶を飲んでいたと思ったら、飲み終えたコップに付いている茶葉が実は、小さな虫だったりといった衝撃。

 「なんだ・・・これ。なんで骨の中に・・・?」

 近くにあった展示物の紹介文には、オルレラの街で発見された物と書いてあり、その年代や詳細については書かれていなかった。他の物に比べ、明らかに情報量が少ないことに違和感を持ったミアは、係員の元へ赴き機械の詰め込まれた骨について尋ねる。

 「申し訳ありません。私達にも、アレに関して分かっていることが少なく、劣化も激しい為、不用意には調べることが出来ないのです」

 「じゃぁ、よく分からない物を展示してるってのか?」

 「都合が合い次第、外部から考古学者の先生や機械に詳しい方を呼んで、調査して頂く話は出ているのですが・・・」

 どうやら街の中にも、調べようとする者やそういった動きはあるようだ。しかし、機械に詳しい人間ならイクセンでもいいのではないのだろうか。それに、考古学者と予定を合わせるにしても、それほど時間のかかるものとは思えない。

 それ程この世界には、考古学者というクラスに就いている者が少ないのだろうか。それとも、予定が合わないのはオルレラ側の事情なのか。

 ならば自分からイクセンに直接聞いてみようと思ったミアだったが、街で一般開放されている展示物を、彼が独自に調べていないとは考えづらかった。

 あれほど人形とメモリーカードに残された映像に興味を惹かれていたのだ。それなら、今や瓦礫の山と化している施設について調べる為に、資料館を訪れない筈はない。

 彼に聞くのはいつでものできる。今は折角足を運んでいる資料館で、他にオルレラの廃墟に関する資料はないかと探すミア。

 展示室を粗方回り終わったが、例の骨以外に妙な物は見当たらなかった。今度は資料に目を通そうと、彼女は別室に移動し書物や文献の保存されている図書館エリアへ向かう。

 図書館と称するだけあって、多くの棚に本が敷き詰められている。当然、全部読んでいる暇もなければ気力もない彼女は、展示室の時と同じく、受付の係員にオルレラの事について調べるには、どうすればいいかと尋ね、直近のニュースや周辺地域の事件についてまとめてある新聞や資料のあるスペースを勧められる。

 ここからは更に忍耐力が必要となる作業に入る。ミアが調べようとしている事柄は大きく分けて二つ。オルレラの街にある今は廃墟となってしまった研究施設についてと、そこで行われていた研究についてだった。

 年代については一切の情報はない。要点を絞るには、施設に関する記事や研究の歴史、或いはオルレラの街に起きた大きな事件といったところだろうか。

 手始めに彼女が手を出したのは、オルレラに関する大きな事件や出来事についてだった。そもそもオルレラの事について知らない余所者である為、大まかな発展の歴史やどのような街として、周辺の諸国や町村との役割を果たしているのかを知る必要がある。

 それに、もしかしたらミア達の目指すアークシティに関する情報も得られるかもしれない。現にオルレラの街は、アークシティとの物流の繋がりはある。

 最悪、オルレラについて何も分からずとも、アークシティについて少しでも前知識はつけておいて損はない。
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