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オルレラ二日目
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一方、オルレラでの二日目の朝を迎えたミアとツクヨは、前日と変わらぬ朝を迎えていた。
ただ、一日目と違い先に起きたのはミアの方だった。
カーテンの隙間から差し込む陽の光に目を覚まし、隣で寝ているツバキを起こさぬ様ベッドから出る。寝起きでまだ覚束ない意識の中、外の様子を見ようとカーテンの隙間から窓の外を見る。
街には既に人の往来があり、他の街や村からやって来る行商人だろうか、多くの馬車も見受けられた。
ミアはカーテンが二重になっていることに気づくと、内側の厚めのカーテンを音を立てないようにゆっくりと開け、部屋に優しい陽の光と暖かさが入ってくる。
まだツバキが起きる様子はない。その内起きるだろうと、ミアはツクヨのいるリビングへと向かう。
こちらでもカーテンが閉まっており、折角の気持ちの良い陽の光が遮られてしまっていた。ミアは寝室と同じように、内側のカーテンを開けるとその段階で、ソファーで横になっていたツクヨが目を覚ました。
「起しちゃったか?」
「ん・・・いや、大丈夫だよ。おはよう、ミア」
起きてしまったのであれば構わないと、ミアは陽の光を遮っていたカーテンを手際良く開けていく。ツクヨとはその後、前日にどんなことをして過ごしていたのかや、街で暮らす人々の話などを整理した。
ツクヨの行っていた冒険者ギルドでの依頼や、ギルドマスターのちょっとした手伝いなどで、オルレラの街周辺のモンスター事情や、外国からの輸入輸出の代物の話などを行商人から聞いたのだという。
その中には、彼らが次の目的地と定めていたアークシティからの商品もあったそうだ。
反対にミアは、オルレラの街の中で錬金術のクラスを活かした調合や、道具の修理などの仕事を手伝いながら、オルレラの街の事や関連している街や村、国のことなどの情報を集めていたのだという。
オルレラの街には、特定のクラス限定のギルドは存在せず、共通のクエストや時々珍しいもので、一部のクラスの力を必要とするものもあり、その時は近くの街や村にも冒険者の募集をかけているそうだ。
ミアが情報収集をした中で興味深いものとして、オルレラの街の一角にアークシティから仕入れている物を使い、近代化に向けた技術の研究を行っている施設があるそうだ。
「アタシは今日、その施設に行ってみようと思う。何かアークシティに関わる情報を得られるかも知れないしな」
「私も行こうか?」
「いや、一人で十分だ。どうやらこの街には危険もなさそうだしな。そんなに急ぐこともないし、お互いやりたいようにやろう」
ミアの提案を受け入れ、二人はツバキを部屋に残し一階へと降りて行く。
初日にエディやその妻と共に食事をした食堂には、既に二人の姿があり、ミア達の朝食の用意もされていた。
「おはよう、二人とも」
「おはようございます、エディさん。・・・すみません、まだあの子は起きてなくて・・・」
「ははは、構わないよ。お腹が空いたらいつでもおいでと、彼に伝えておいてくれないかい?」
「ありがとうございます」
二人は食卓につき、ローヴェン夫妻と共に朝食を摂る。その中でエディは、二人にこれまでの旅で、思い出に残る話を聞く。
それほど長い旅ではなかったが、思い返せば印象深いものばかりだった。そして勿論、楽しいことばかりではなく、寧ろ苦労した事や辛かった事の方が多かった。
それでも、一つの街に留まり暮らしていたエディにとっては、新鮮な話ばかりでとても楽しそうに聞いてくれた。
彼もどうやら、若い頃は冒険というものに憧れ、モンスター退治など、ギルドにある依頼を受けていた頃があった様だが、残念ながら戦闘の才能がなかったらしく、いつも仲間達に助けられてばかりだったのだという。
歳月が経つにつれ、人には向き不向きがあることを身をもって知ることになり、当時の仲間達とは別々の道を歩むことになっていったのだと、彼は少し寂しそうに語った。
しかし、そのおかげで妻であるパウラと出会い、夫婦になることが出来たのだと、細やかで微笑ましい惚気話も聞かされた。
現にエディは、このオルレラの街で役人になるくらいに出世を果たし、豪華な暮らしが出来ている。自分に何が向いていて、何が得意なのかを見つけて実行に移し、成功を収めているのも本人の夢とは別として、十分に恵まれた境遇だったのだと言えるだろう。
やりたい事だけをするのが人生ではない。身の丈にあった選択肢を、着実に積み重ねていくことで見えてくる人生もあるのかも知れないと、エディは語った。
「そういえば、ギルド長の“ルーカス“がまたツクヨ君の力を借りたいと言っていたよ?随分と気に入られたみたいだね」
「本当ですか?それは良かった。エディさんの顔に泥を塗るわけにはいけませんからね」
「そんな事気にしなくていいのよ?貴方達は本来、客人なのだから。寧ろ私達が助けられているんだもの。断りたかったら遠慮しないでね?」
優しい笑顔と声でツクヨ達の心配をしてくれるパウラ。彼女はそう言ってくれているが、宿代がタダになっている上に、食事まで出してもらっている状況で、厚意に甘えきるほど堕落はしていなかった。
それにこれは、彼らの目的にも間接的に関わってくる事なのだ。ただ何事もなくこのWoFの世界を周るのは、異変に巻き込まれている彼らにとって、自分の身を危険に晒しかねない行為になる。
それはグラン・ヴァーグの酒場で出会ったキングが、シン達が聖都の事件の関係者であることに感づいていたように、彼らの行動や行いを調べる者も何所かにいるということだ。
情報は身を守る為の力だということを、ミア達はよく心得ている。
一向は食事を終えると、それぞれの行動へと移り始める。ツクヨは先程エディからも言われた、ギルドマスターでもあるルーカスという人物の元へ向かい、依頼を受ける。
そしてミアの方は、前日に集めた情報の中にあった研究施設について、エディに尋ねる。すると、彼から意外な言葉が返ってきたのだ。
彼の話によると、研究施設は今は稼働していないようで、電子機器の再利用や新たな部品の調達をするといったジャンク屋となっているらしい。
何故街の者が詳しく把握していなかったのかは分からないが、関係者でないと分からない部分もあるのだろうと、ミアはそこまで気にすることもなかった。
「ジャンク屋か・・・。それなら何か、力になれるかもな」
施設について教えてくれたエディにお礼を言うと、ミアは早速そのジャンク屋へと向かった。
しかしそこは、施設と言われている割には整備が行き届いておらず、少し錆びれた様子が見受けられる廃墟のような場所となっていた。本当にこんなところで商売をしている人間がいるのだろうか。
ミアは一抹の不安を抱きながらも、施設の敷地内へと足を踏み入れる。
ただ、一日目と違い先に起きたのはミアの方だった。
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街には既に人の往来があり、他の街や村からやって来る行商人だろうか、多くの馬車も見受けられた。
ミアはカーテンが二重になっていることに気づくと、内側の厚めのカーテンを音を立てないようにゆっくりと開け、部屋に優しい陽の光と暖かさが入ってくる。
まだツバキが起きる様子はない。その内起きるだろうと、ミアはツクヨのいるリビングへと向かう。
こちらでもカーテンが閉まっており、折角の気持ちの良い陽の光が遮られてしまっていた。ミアは寝室と同じように、内側のカーテンを開けるとその段階で、ソファーで横になっていたツクヨが目を覚ました。
「起しちゃったか?」
「ん・・・いや、大丈夫だよ。おはよう、ミア」
起きてしまったのであれば構わないと、ミアは陽の光を遮っていたカーテンを手際良く開けていく。ツクヨとはその後、前日にどんなことをして過ごしていたのかや、街で暮らす人々の話などを整理した。
ツクヨの行っていた冒険者ギルドでの依頼や、ギルドマスターのちょっとした手伝いなどで、オルレラの街周辺のモンスター事情や、外国からの輸入輸出の代物の話などを行商人から聞いたのだという。
その中には、彼らが次の目的地と定めていたアークシティからの商品もあったそうだ。
反対にミアは、オルレラの街の中で錬金術のクラスを活かした調合や、道具の修理などの仕事を手伝いながら、オルレラの街の事や関連している街や村、国のことなどの情報を集めていたのだという。
オルレラの街には、特定のクラス限定のギルドは存在せず、共通のクエストや時々珍しいもので、一部のクラスの力を必要とするものもあり、その時は近くの街や村にも冒険者の募集をかけているそうだ。
ミアが情報収集をした中で興味深いものとして、オルレラの街の一角にアークシティから仕入れている物を使い、近代化に向けた技術の研究を行っている施設があるそうだ。
「アタシは今日、その施設に行ってみようと思う。何かアークシティに関わる情報を得られるかも知れないしな」
「私も行こうか?」
「いや、一人で十分だ。どうやらこの街には危険もなさそうだしな。そんなに急ぐこともないし、お互いやりたいようにやろう」
ミアの提案を受け入れ、二人はツバキを部屋に残し一階へと降りて行く。
初日にエディやその妻と共に食事をした食堂には、既に二人の姿があり、ミア達の朝食の用意もされていた。
「おはよう、二人とも」
「おはようございます、エディさん。・・・すみません、まだあの子は起きてなくて・・・」
「ははは、構わないよ。お腹が空いたらいつでもおいでと、彼に伝えておいてくれないかい?」
「ありがとうございます」
二人は食卓につき、ローヴェン夫妻と共に朝食を摂る。その中でエディは、二人にこれまでの旅で、思い出に残る話を聞く。
それほど長い旅ではなかったが、思い返せば印象深いものばかりだった。そして勿論、楽しいことばかりではなく、寧ろ苦労した事や辛かった事の方が多かった。
それでも、一つの街に留まり暮らしていたエディにとっては、新鮮な話ばかりでとても楽しそうに聞いてくれた。
彼もどうやら、若い頃は冒険というものに憧れ、モンスター退治など、ギルドにある依頼を受けていた頃があった様だが、残念ながら戦闘の才能がなかったらしく、いつも仲間達に助けられてばかりだったのだという。
歳月が経つにつれ、人には向き不向きがあることを身をもって知ることになり、当時の仲間達とは別々の道を歩むことになっていったのだと、彼は少し寂しそうに語った。
しかし、そのおかげで妻であるパウラと出会い、夫婦になることが出来たのだと、細やかで微笑ましい惚気話も聞かされた。
現にエディは、このオルレラの街で役人になるくらいに出世を果たし、豪華な暮らしが出来ている。自分に何が向いていて、何が得意なのかを見つけて実行に移し、成功を収めているのも本人の夢とは別として、十分に恵まれた境遇だったのだと言えるだろう。
やりたい事だけをするのが人生ではない。身の丈にあった選択肢を、着実に積み重ねていくことで見えてくる人生もあるのかも知れないと、エディは語った。
「そういえば、ギルド長の“ルーカス“がまたツクヨ君の力を借りたいと言っていたよ?随分と気に入られたみたいだね」
「本当ですか?それは良かった。エディさんの顔に泥を塗るわけにはいけませんからね」
「そんな事気にしなくていいのよ?貴方達は本来、客人なのだから。寧ろ私達が助けられているんだもの。断りたかったら遠慮しないでね?」
優しい笑顔と声でツクヨ達の心配をしてくれるパウラ。彼女はそう言ってくれているが、宿代がタダになっている上に、食事まで出してもらっている状況で、厚意に甘えきるほど堕落はしていなかった。
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それはグラン・ヴァーグの酒場で出会ったキングが、シン達が聖都の事件の関係者であることに感づいていたように、彼らの行動や行いを調べる者も何所かにいるということだ。
情報は身を守る為の力だということを、ミア達はよく心得ている。
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何故街の者が詳しく把握していなかったのかは分からないが、関係者でないと分からない部分もあるのだろうと、ミアはそこまで気にすることもなかった。
「ジャンク屋か・・・。それなら何か、力になれるかもな」
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しかしそこは、施設と言われている割には整備が行き届いておらず、少し錆びれた様子が見受けられる廃墟のような場所となっていた。本当にこんなところで商売をしている人間がいるのだろうか。
ミアは一抹の不安を抱きながらも、施設の敷地内へと足を踏み入れる。
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