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初めてのイーラ・ノマド
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イルの差し向けた巨獣達を倒し、負傷者の回復と治療にあたっていたシン達と親衛隊の二人。その中枢を担うのは、ヒーラー職のにぃなだった。
戦闘中の魔力消費を抑えたおかげで、彼女にはまだ十分な魔力が残っていた。サイクロプスを相手にしていたシン達の方は、外傷こそ少ないものの、大きな動きによる疲労と、相手を欺くために使ったスキル等に使用した魔力は、決して無視できるものではなかった。
一方、親衛隊のMAROと峰闇の方は、数々の式神による援護を行っていたMAROの魔力消費が激しく、前線で龍と直接対決をしていた峰闇は、自身の自傷スキルによるものも大きいが、外傷が多く身体に蓄積されたダメージ量も、他の者達とは比較にならなかった。
あれだけ大きな相手を真っ向から打ちのめしたのだ。当然と言えば当然の結果なのかもしれない。
優先的に回復が必要となったのは、誰の目にも明らかだった。皆もそれが分かっていたからこそ、峰闇に最優先でにぃなの回復をあてた。巨獣と戦っていいた時の全力を出せるまでには戻らなかったものの、ある程度なら戦えるまでに回復した。
その後は魔力消費の多かったシンとMAROへの魔力供給、並びにそれぞれの手持ちアイテムによる補充をしていた。
しかしその一方で、体力も魔力も消費をある程度に抑えられていた蒼空が、ステージの方を見てくると言ってから全く動きも見られなければ、メッセージも届かない。
「遅いなぁ、蒼空・・・。何かあったのかな?俺、ちょっと様子見てくるよ」
十分魔力を回復できたシンは、他の者達に変わりステージへ向かった蒼空の様子を見てこようかと提案する。
「あっ!ずるい!俺達もライブの続き見てぇ~・・・」
「まだ危険が潜んでるかもしれない。まだ万全じゃないみんなを守ってくれないか?それに、今一番動けるのは俺だし・・・。何かあればすぐに連絡するよ」
もしまだ何者かが潜んでいるのなら、弱っている彼らを一網打尽にできるチャンス。最悪なのは全滅すること。それに、シンも様子を確かめたらすぐに戻るつもりだった。危険を冒したくないのは彼も同じ。
周囲の敵にバレないように偵察するのには、シンのアサシンとしてのクラスとスキルは適任だった。
まだ戦闘に不慣れなマキナと、戦闘向きではないにぃなを守れるのは、今は彼らしかいない。二人はケイルという、もう一人の親衛隊のメンバーの確認も含めシンに頼んだ。
彼はすぐに戻ると彼らに言い残し、その場を後にした。巨獣達との戦闘によって破壊されていた赤レンガ倉庫も、暫く時間が経ったおかげでだいぶ元通りになっていた。
シンが最初に会場へ訪れた時とは違い、ステージや周囲の演出が変わっていた。会場の照明は落とされ、プロジェクターにより会場全体がファンタジーの世界間に変貌しており、各種映像内に設けられたそれぞれのステージで、アイドルの友紀が歌って踊っている。
正面中央のメインステージに視線を向けると、そこに友紀本人の姿はない。代わりに、二人の人物のシルエットが見えた。蒼空と友紀のマネージャー天臣だ。
二人はイルの姿を失い、唖然とするようにステージの傍で立っていた。
「蒼空っ!蒼空・・・?どうしたんだ一体。それに・・・あれ?岡垣友紀がいないじゃないか」
蒼空の名を呼びながら近づいてきたシンを見て、少しだけ身構えた天臣だったが、すぐに敵ではないことが蒼空から説明された。遅れてきた彼に、蒼空はこれまでの経緯を語る。
巨獣を友紀のイベントやライブに差し向けていたであろう黒幕の存在。それがフィアーズやアサシンギルドの面々と同じく、異世界からやって来た者であること。
そしてその能力のことや、突然本物の友紀と共に何処かへと消えていってしまったこと。
「消えた?それはそのイルって奴の能力じゃなくて・・・?」
「先ほども伝えた通り、奴の使うスキルには黒い靄が付き物だ。物体が身体を透過する時や、移動をする時には必ず奴の周りにその黒い靄が発生している。だが・・・最後に彼女を連れ去った時には、それがなかった。僕だけじゃない、それは彼も確認している」
蒼空が視線を向けた先を追うと、天臣が二人の顔を見ながら頷いている。二人の人間が目にしているのだから、恐らく間違い無いだろう。
もしくは、イルと呼ばれる人物の術中にハマり、幻覚を見せられているかだ。だがその線は薄いだろう。姿を隠しているのなら、シンに何かしらの痕跡が見えていることだろう。それが無いということは、つまりそういうことだ。
この時のシン達は、まだイーラ・ノマドと呼ばれるフィアーズと同じく異世界からの放浪者で、どこにも属さぬ者達と出会ったことがなく、その存在を知らない。
故に、どうやって自身のスキルとは別に、瞬時に移動することが可能なのか、理解するには至っていない。
イルは、イヅツが出会ったイーラ・ノマド、デューンと同じく、自身の存在をデータ化することができるのだ。それにより彼らには、一瞬にして姿を消したように見えていた。
まだ確かな情報ではないが、そんなデータ化したイルと接触していた友紀も、恐らく同じ状態になっていたのだろう。
戦闘中の魔力消費を抑えたおかげで、彼女にはまだ十分な魔力が残っていた。サイクロプスを相手にしていたシン達の方は、外傷こそ少ないものの、大きな動きによる疲労と、相手を欺くために使ったスキル等に使用した魔力は、決して無視できるものではなかった。
一方、親衛隊のMAROと峰闇の方は、数々の式神による援護を行っていたMAROの魔力消費が激しく、前線で龍と直接対決をしていた峰闇は、自身の自傷スキルによるものも大きいが、外傷が多く身体に蓄積されたダメージ量も、他の者達とは比較にならなかった。
あれだけ大きな相手を真っ向から打ちのめしたのだ。当然と言えば当然の結果なのかもしれない。
優先的に回復が必要となったのは、誰の目にも明らかだった。皆もそれが分かっていたからこそ、峰闇に最優先でにぃなの回復をあてた。巨獣と戦っていいた時の全力を出せるまでには戻らなかったものの、ある程度なら戦えるまでに回復した。
その後は魔力消費の多かったシンとMAROへの魔力供給、並びにそれぞれの手持ちアイテムによる補充をしていた。
しかしその一方で、体力も魔力も消費をある程度に抑えられていた蒼空が、ステージの方を見てくると言ってから全く動きも見られなければ、メッセージも届かない。
「遅いなぁ、蒼空・・・。何かあったのかな?俺、ちょっと様子見てくるよ」
十分魔力を回復できたシンは、他の者達に変わりステージへ向かった蒼空の様子を見てこようかと提案する。
「あっ!ずるい!俺達もライブの続き見てぇ~・・・」
「まだ危険が潜んでるかもしれない。まだ万全じゃないみんなを守ってくれないか?それに、今一番動けるのは俺だし・・・。何かあればすぐに連絡するよ」
もしまだ何者かが潜んでいるのなら、弱っている彼らを一網打尽にできるチャンス。最悪なのは全滅すること。それに、シンも様子を確かめたらすぐに戻るつもりだった。危険を冒したくないのは彼も同じ。
周囲の敵にバレないように偵察するのには、シンのアサシンとしてのクラスとスキルは適任だった。
まだ戦闘に不慣れなマキナと、戦闘向きではないにぃなを守れるのは、今は彼らしかいない。二人はケイルという、もう一人の親衛隊のメンバーの確認も含めシンに頼んだ。
彼はすぐに戻ると彼らに言い残し、その場を後にした。巨獣達との戦闘によって破壊されていた赤レンガ倉庫も、暫く時間が経ったおかげでだいぶ元通りになっていた。
シンが最初に会場へ訪れた時とは違い、ステージや周囲の演出が変わっていた。会場の照明は落とされ、プロジェクターにより会場全体がファンタジーの世界間に変貌しており、各種映像内に設けられたそれぞれのステージで、アイドルの友紀が歌って踊っている。
正面中央のメインステージに視線を向けると、そこに友紀本人の姿はない。代わりに、二人の人物のシルエットが見えた。蒼空と友紀のマネージャー天臣だ。
二人はイルの姿を失い、唖然とするようにステージの傍で立っていた。
「蒼空っ!蒼空・・・?どうしたんだ一体。それに・・・あれ?岡垣友紀がいないじゃないか」
蒼空の名を呼びながら近づいてきたシンを見て、少しだけ身構えた天臣だったが、すぐに敵ではないことが蒼空から説明された。遅れてきた彼に、蒼空はこれまでの経緯を語る。
巨獣を友紀のイベントやライブに差し向けていたであろう黒幕の存在。それがフィアーズやアサシンギルドの面々と同じく、異世界からやって来た者であること。
そしてその能力のことや、突然本物の友紀と共に何処かへと消えていってしまったこと。
「消えた?それはそのイルって奴の能力じゃなくて・・・?」
「先ほども伝えた通り、奴の使うスキルには黒い靄が付き物だ。物体が身体を透過する時や、移動をする時には必ず奴の周りにその黒い靄が発生している。だが・・・最後に彼女を連れ去った時には、それがなかった。僕だけじゃない、それは彼も確認している」
蒼空が視線を向けた先を追うと、天臣が二人の顔を見ながら頷いている。二人の人間が目にしているのだから、恐らく間違い無いだろう。
もしくは、イルと呼ばれる人物の術中にハマり、幻覚を見せられているかだ。だがその線は薄いだろう。姿を隠しているのなら、シンに何かしらの痕跡が見えていることだろう。それが無いということは、つまりそういうことだ。
この時のシン達は、まだイーラ・ノマドと呼ばれるフィアーズと同じく異世界からの放浪者で、どこにも属さぬ者達と出会ったことがなく、その存在を知らない。
故に、どうやって自身のスキルとは別に、瞬時に移動することが可能なのか、理解するには至っていない。
イルは、イヅツが出会ったイーラ・ノマド、デューンと同じく、自身の存在をデータ化することができるのだ。それにより彼らには、一瞬にして姿を消したように見えていた。
まだ確かな情報ではないが、そんなデータ化したイルと接触していた友紀も、恐らく同じ状態になっていたのだろう。
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