814 / 1,646
分断と引き剥がし
しおりを挟む
最も攻撃の通りやすい部位である眼球。ほぼ全ての生物の弱点と言っても過言ではないだろう。それがこれだけ大きければ、スナイパーやアーチャーなど命中率に優れたクラスでなくても、当てるのは容易だった。
ただ、巨人にとってマキナの銃から放たれた銃弾など、目に入ったゴミ程度にしかならないのか、然程痛がる様子もなく、僅かに瞼を震わせる程度に収まった。
しかし、彼らにとったの狙いは寧ろこれからにあった。にぃなの光もマキナの弱点付与も、全てはシンの攻撃へ繋げる為の準備に過ぎなかった。
シンはアサシンのパッシブスキルによる、弱点部位の強調表示を確認し狙いを定める。そして、巨人の手から離れその眼球へと飛び掛かる。
勢いそのままに、空中で体勢を変えたシンは両手に短剣を握り、着地と同時に十字の斬撃で、水の上に敷かれたシートのようにややブヨブヨとした潤いの残る眼球を斬りつける。
ただでさえ、皮膚よりも直にダメージを入れやすい部位である上に、弱点まで付与されているのだ。如何に巨人にとって小さき人間の攻撃であっても、驚きや痛みによる反応が表れた。
すぐに力強く閉まる巨人の瞼。シンは巻き込まれぬよう、すぐさま巨人の身体にかかる影の中へと飛び込み、姿を消した。
巨人は片手で目を押さえながら、フラフラとしながら払うように何度も反対の腕を振るい暴れる。
体勢を整えようと踏ん張る足が地面を踏みしめる度、人間の敷いたコンクリートの大地を砕き、大きな揺れを起こす。無作為に振り回す腕は、誰に当たる訳でもなかったが、にぃなやマキナの方に振われると、台風のような暴風が巻き起こった。
「ひぃぃぃ~ッ!かえって凶暴化しちゃったんじゃないんすか!?」
「口開いてると舌噛むよッ!?」
どこに足を振り下ろすかも分からなくなった今、二人はなるべく距離を取ろうと駆けていく。
影の中を移動し、巨人の身体を足の方へ向かって伝って行ったシンは、地面についたタイミングで影の中から飛び出すと、にぃな達と同じく一旦様子を見るために距離を取る。
その頃、龍を退けた蒼空達も回復を終え、再び一号館の方へと移動を開始していた。そこには、それまで一号館に張り付いていた巨人がやや離れた位置へ移動しており、何やら暴れ回っている様子が飛び込んできた。
「なっ何だ!?一体何が起きてやがる?」
「シン君達の姿がない・・・。あれは恐らく僕の仲間の仕業だね」
MAROの鳥型の式神に乗った蒼空は、一号館の屋上と周辺を見渡し、ついさっきまで一緒にいた筈のシン達がいないことに気づく。
「彼らがサイクロプスの方を引き剥がしてくれてる内に、僕らはあのでっかい龍を何とかしよう!」
龍は依然として雷を身に纏っており、接近するには何か別の手段を考えなければならない。先程の無茶な突撃はもう出来ない。
蒼空達もシン達のように、何とかして龍を会場から引き離せないかと考えていた。だが、こちらはサイクロプスとは違い、見るからに物理タイプというよりは、雷や風を用いた謂わば魔法タイプ。
不用意に近づくのは危険だった。だがこちらにも、遠距離で戦える上に戦力を増やせる者がいる。恐らく戦闘の基盤になるのは、式神を使うMAROになるだろう。接近しなければ能力を発揮できない蒼空と、攻撃に自身の受けたダメージや自傷を伴う峰闇では、探りを入れる余裕はない。
「あの雷、何とかならないか?」
「封印の結界を展開してみます。蒼空さんと峰闇にも、もう一度個人用の式神を用意するから、離れて様子を見て下さい!」
MAROは左右に式神を出現させると、二人ともそれまで乗っていた大きな鳥の式神から移り、言われた通り彼の元から離れ封印の結界が張られるのを見守ることにした。
「頼んだぜ、MARO。頼りにしてっからよ・・・」
「何言ってんの。こっちの攻撃は峰闇、お前に掛かってるんだからな?」
互いに発破をかけた二人は、それぞれの役割を果たさんと動き出す。蒼空はそんな二人のやりとりを見て、自身の気を引き締める。アタッカータイプではない蒼空も、攻撃は峰闇に頼らざるを得ない。
会場に集まったWoFのユーザー達は二手に分かれ、それぞれの巨獣を各個撃破しに掛かる。彼らの話では、今回の襲撃は異例の事態となっているようだ。
何故今回に限って、これ程までの大型モンスターが二体もやって来たのか。連携するくらいの知性を持ち合わせているとはいえ、些か不自然でもあった。
ただ、巨人にとってマキナの銃から放たれた銃弾など、目に入ったゴミ程度にしかならないのか、然程痛がる様子もなく、僅かに瞼を震わせる程度に収まった。
しかし、彼らにとったの狙いは寧ろこれからにあった。にぃなの光もマキナの弱点付与も、全てはシンの攻撃へ繋げる為の準備に過ぎなかった。
シンはアサシンのパッシブスキルによる、弱点部位の強調表示を確認し狙いを定める。そして、巨人の手から離れその眼球へと飛び掛かる。
勢いそのままに、空中で体勢を変えたシンは両手に短剣を握り、着地と同時に十字の斬撃で、水の上に敷かれたシートのようにややブヨブヨとした潤いの残る眼球を斬りつける。
ただでさえ、皮膚よりも直にダメージを入れやすい部位である上に、弱点まで付与されているのだ。如何に巨人にとって小さき人間の攻撃であっても、驚きや痛みによる反応が表れた。
すぐに力強く閉まる巨人の瞼。シンは巻き込まれぬよう、すぐさま巨人の身体にかかる影の中へと飛び込み、姿を消した。
巨人は片手で目を押さえながら、フラフラとしながら払うように何度も反対の腕を振るい暴れる。
体勢を整えようと踏ん張る足が地面を踏みしめる度、人間の敷いたコンクリートの大地を砕き、大きな揺れを起こす。無作為に振り回す腕は、誰に当たる訳でもなかったが、にぃなやマキナの方に振われると、台風のような暴風が巻き起こった。
「ひぃぃぃ~ッ!かえって凶暴化しちゃったんじゃないんすか!?」
「口開いてると舌噛むよッ!?」
どこに足を振り下ろすかも分からなくなった今、二人はなるべく距離を取ろうと駆けていく。
影の中を移動し、巨人の身体を足の方へ向かって伝って行ったシンは、地面についたタイミングで影の中から飛び出すと、にぃな達と同じく一旦様子を見るために距離を取る。
その頃、龍を退けた蒼空達も回復を終え、再び一号館の方へと移動を開始していた。そこには、それまで一号館に張り付いていた巨人がやや離れた位置へ移動しており、何やら暴れ回っている様子が飛び込んできた。
「なっ何だ!?一体何が起きてやがる?」
「シン君達の姿がない・・・。あれは恐らく僕の仲間の仕業だね」
MAROの鳥型の式神に乗った蒼空は、一号館の屋上と周辺を見渡し、ついさっきまで一緒にいた筈のシン達がいないことに気づく。
「彼らがサイクロプスの方を引き剥がしてくれてる内に、僕らはあのでっかい龍を何とかしよう!」
龍は依然として雷を身に纏っており、接近するには何か別の手段を考えなければならない。先程の無茶な突撃はもう出来ない。
蒼空達もシン達のように、何とかして龍を会場から引き離せないかと考えていた。だが、こちらはサイクロプスとは違い、見るからに物理タイプというよりは、雷や風を用いた謂わば魔法タイプ。
不用意に近づくのは危険だった。だがこちらにも、遠距離で戦える上に戦力を増やせる者がいる。恐らく戦闘の基盤になるのは、式神を使うMAROになるだろう。接近しなければ能力を発揮できない蒼空と、攻撃に自身の受けたダメージや自傷を伴う峰闇では、探りを入れる余裕はない。
「あの雷、何とかならないか?」
「封印の結界を展開してみます。蒼空さんと峰闇にも、もう一度個人用の式神を用意するから、離れて様子を見て下さい!」
MAROは左右に式神を出現させると、二人ともそれまで乗っていた大きな鳥の式神から移り、言われた通り彼の元から離れ封印の結界が張られるのを見守ることにした。
「頼んだぜ、MARO。頼りにしてっからよ・・・」
「何言ってんの。こっちの攻撃は峰闇、お前に掛かってるんだからな?」
互いに発破をかけた二人は、それぞれの役割を果たさんと動き出す。蒼空はそんな二人のやりとりを見て、自身の気を引き締める。アタッカータイプではない蒼空も、攻撃は峰闇に頼らざるを得ない。
会場に集まったWoFのユーザー達は二手に分かれ、それぞれの巨獣を各個撃破しに掛かる。彼らの話では、今回の襲撃は異例の事態となっているようだ。
何故今回に限って、これ程までの大型モンスターが二体もやって来たのか。連携するくらいの知性を持ち合わせているとはいえ、些か不自然でもあった。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる