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しかし、いつでも現実世界の人間に接触出来るわけではないようで、データ化するには彼らの協力が必要なのだという。
「まぁ、アンタらと違っていつでもどこでもって訳にはいかねぇんだけどよ」
もし男の言うことが本当なら、肉体的に不可能な速度で移動することも可能だろう。幸いこの世界には、通信回線やインターネットといったインフラは既に出来上がっている。
それが人の多く住む都心なら尚更。路地裏であろうと地下であろうと、それはまる空気のように行き渡り、いつでもどこでもインターネットに接続することが可能だ。
存在をデータ化出来るとするならば、イヅツらのように強化された身体能力よりも、遥かに素早く移動することが可能だ。つまり、デューンは自身をデータ化し、この迷路のような路地にこの僅かな時間で、罠を張り巡らせていたのだ。
「だが一体どうやってそんなことを・・・?」
「まぁ俺が初めて姿を変えられたのは、偶然といってもいいだろうな・・・。こんな世界で何もわからず、ただ疑心暗鬼になり戦いの日々を送るような奴らじゃ、そうそう気付けるもんじゃぁねぇ」
「それがあの男達と行動を共にする理由化?」
「まぁそんなところだ。俺にとってもアイツらは利用価値がある。それに俺にはデメリットなんかねぇ。アイツらがどうなっても、次を見つけるだけさ」
デューンのその口振りからは、どうやらハッカーである彼らである必要はないように思える。そうやってこの男は、この世界で生きていく術を見つけたのだろう。
それを知っているかどうかで、同じような境遇の相手を欺けたり有利に立つことが出来る。
「その方法とやらを誰かに話したか?」
イヅツはその手段を知りたくもあったが、同時にフィアーズらの手に渡ることを恐れた。もしもこんな力を身につけたら、何を考えているか分からない連中のことだ。何をしでかすか分かったものではない。
だが、デューンはイヅツの質問を大きな声で笑い飛ばした。
「ハハハッ!まさか!アンタは一生困らない程の金や地位や力を手にして、その方法を誰かに教えるのか?それが答えだ」
男の言葉に、イヅツは心の奥でホッとした。偶然見つけたと言うのなら、この男から聞き出せなくとも見つける方法は必ずある。
「さて、お喋りが過ぎたようだな・・・。アンタの追ってるアイツらから連絡が来ちまった。話はこれでお終いだ。じゃぁな、名もしれねぇ兄ちゃん」
随分と長いこと話し込んでしまっていたのか、どうやら約束の足止めという役割を達成してしまっていたようだ。戦闘狂という訳でもないデューンは、そのままイヅツに背を向け何処かへ飛び立とうとする。
「イヅツと言う、俺の名だ。本当の名前ではないが・・・」
少し驚いたように振り返るデューンは、その後すぐにその口角を上げて笑う。
「変な奴だな。敵に名前を教えちまうなんてよ・・・。だが気に入った!俺はデューン。機会があったらまた会おうぜぇ~!」
それだけ言い残すと、彼は周囲の砂と共に何処かへと消え去ってしまった
。ハッカー集団の調査で男達を訪ねた筈だったが、それよりも有益な情報を得ることが出来た。
「目的は果たせなかったが、まぁ向こうも期待してはないだろう。・・・それよりも、どうやってこれをアイツらに知らせるか、だよなぁ~・・・。こいつぁ俺達にとって重要なファクターになる。慎重にやらねぇとな」
フィアーズらの弱点になり得る情報を手に入れたイヅツは、それを如何にして組織に悟られずに仲間達と共有するかを考えていた。
何はともあれ、逃げた男達の情報を洗おうと彼らのいた部屋へと戻ることにしたイヅツ。重要な手掛かりは既に持ち出されてしまっているかもしれないが、それでも少しでもフィアーズの連中への誠意を見せるため、部屋に残された機材からデータを移行する。
「まぁ、アンタらと違っていつでもどこでもって訳にはいかねぇんだけどよ」
もし男の言うことが本当なら、肉体的に不可能な速度で移動することも可能だろう。幸いこの世界には、通信回線やインターネットといったインフラは既に出来上がっている。
それが人の多く住む都心なら尚更。路地裏であろうと地下であろうと、それはまる空気のように行き渡り、いつでもどこでもインターネットに接続することが可能だ。
存在をデータ化出来るとするならば、イヅツらのように強化された身体能力よりも、遥かに素早く移動することが可能だ。つまり、デューンは自身をデータ化し、この迷路のような路地にこの僅かな時間で、罠を張り巡らせていたのだ。
「だが一体どうやってそんなことを・・・?」
「まぁ俺が初めて姿を変えられたのは、偶然といってもいいだろうな・・・。こんな世界で何もわからず、ただ疑心暗鬼になり戦いの日々を送るような奴らじゃ、そうそう気付けるもんじゃぁねぇ」
「それがあの男達と行動を共にする理由化?」
「まぁそんなところだ。俺にとってもアイツらは利用価値がある。それに俺にはデメリットなんかねぇ。アイツらがどうなっても、次を見つけるだけさ」
デューンのその口振りからは、どうやらハッカーである彼らである必要はないように思える。そうやってこの男は、この世界で生きていく術を見つけたのだろう。
それを知っているかどうかで、同じような境遇の相手を欺けたり有利に立つことが出来る。
「その方法とやらを誰かに話したか?」
イヅツはその手段を知りたくもあったが、同時にフィアーズらの手に渡ることを恐れた。もしもこんな力を身につけたら、何を考えているか分からない連中のことだ。何をしでかすか分かったものではない。
だが、デューンはイヅツの質問を大きな声で笑い飛ばした。
「ハハハッ!まさか!アンタは一生困らない程の金や地位や力を手にして、その方法を誰かに教えるのか?それが答えだ」
男の言葉に、イヅツは心の奥でホッとした。偶然見つけたと言うのなら、この男から聞き出せなくとも見つける方法は必ずある。
「さて、お喋りが過ぎたようだな・・・。アンタの追ってるアイツらから連絡が来ちまった。話はこれでお終いだ。じゃぁな、名もしれねぇ兄ちゃん」
随分と長いこと話し込んでしまっていたのか、どうやら約束の足止めという役割を達成してしまっていたようだ。戦闘狂という訳でもないデューンは、そのままイヅツに背を向け何処かへ飛び立とうとする。
「イヅツと言う、俺の名だ。本当の名前ではないが・・・」
少し驚いたように振り返るデューンは、その後すぐにその口角を上げて笑う。
「変な奴だな。敵に名前を教えちまうなんてよ・・・。だが気に入った!俺はデューン。機会があったらまた会おうぜぇ~!」
それだけ言い残すと、彼は周囲の砂と共に何処かへと消え去ってしまった
。ハッカー集団の調査で男達を訪ねた筈だったが、それよりも有益な情報を得ることが出来た。
「目的は果たせなかったが、まぁ向こうも期待してはないだろう。・・・それよりも、どうやってこれをアイツらに知らせるか、だよなぁ~・・・。こいつぁ俺達にとって重要なファクターになる。慎重にやらねぇとな」
フィアーズらの弱点になり得る情報を手に入れたイヅツは、それを如何にして組織に悟られずに仲間達と共有するかを考えていた。
何はともあれ、逃げた男達の情報を洗おうと彼らのいた部屋へと戻ることにしたイヅツ。重要な手掛かりは既に持ち出されてしまっているかもしれないが、それでも少しでもフィアーズの連中への誠意を見せるため、部屋に残された機材からデータを移行する。
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