World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
792 / 1,646

電子データ

しおりを挟む
男の語る“俺らという存在の概念“に強い興味を惹かれるイヅツ。彼の推測では、デューンは恐らくスペクターらフィアーズの連中と同じ存在。そしてその存在について、概念についてはまだ明かされていなかった。

 この男が語ることが真実かどうかは分からないが、謀反を起こそうとする者として、相手の弱点となり得る要素を知ることは、この上ない武器となる。

 「なんだ・・・概念って?」

 「いくら俺でも、ここら一帯にこんな短時間でこれ程の罠を張るなんてことは出来ねぇよ。元いた世界ならな。お前らもそうなんだろ?その身体、本来の姿では発揮出来ない動きや力がある・・・」

 「ッ・・・!?」

 デューンはイヅツがWoFのユーザーであることを見抜いていた。自分が異世界から人間や、この世界の住人であるかなど語った覚えはない。この男には、この世界の人間か異世界からやって来た者であるのか、一目d見分けることが出来るということだ。

 「何故知ってるって顔だなぁ?それについちゃぁ難しい話じゃぁねぇ。アンタ、アイツらの片割れをつけてきた時はその姿で、あの部屋に着いたら元の姿に戻ったろ?そういう切り替えが出来るのはアンタらだけだ」

 言われてみれば、確かに驚くことでもない普通のことだった。だが、イヅツらWoFのユーザーには、彼ら異世界からの流れ者が姿を変えられるかどうかなど、確認のしようがなかったのだから。

 何の因果か、イヅツの周りには腹の内を明かさぬような流れ者達ばかりに囲まれていたため、彼らの言葉が真実か偽りかを見分けることなど出来なかった。

 本当はイヅツらのように、別の姿を持っており普段はバレぬよう隠している可能性だって十分に考えられる。何が自分の身を脅かす弱点になり得るのか分からぬのだ、黙するというのは賢明な判断と言える。

 「全員が全員そういう訳かどうかなんて俺ぁ知らねぇ。だから難しく考えるのはやめたんだよ。この世界の者か否か、その二つしかねぇってな。だがこれが、案外的外れでもなくってよぉ。検証を重ねれば重ねるほど、見分けるのは簡単になっていった」

 可能性を見出すのは重要なことだが、時にそれは判断を鈍らせ決断力を失わせる。デューンはそれを分かっていたのか、見事に的確な判断を下し結果を得ていた。

 「そして同時にこうも思った。“姿を変えられるのはアイツらだけなのか?“ってよぉ」

 イヅツにとって男の話は、興味深い発想だった。確かにWoFのユーザーは現実の世界に生きていた人間が、ゲームのキャラクターを反映させることにより、謂わば変身しているようなもの。

 しかし、異世界から彼らの現実の世界へやって来た者達は、元の世界の能力や性質をそっくりそのまま持ってきただけに過ぎないのか。

 無論、そのままの姿では現実に生きる人間達に、その存在を視認されることはなく、一方的に関与することもない。一部の人間、出雲明庵のように可視化する機器を保有しているのなら別だが。

 「そこで目をつけたのが、この世界で流行ってるっつぅ仮想世界を体験するWoFってゲームの存在だぁ。妙なことになってんのは、そのゲームを遊んでる連中だけなんだろ?ならそこに秘密がある、当然のことだ」

 「それはそうだろう。だが現状、調べられないのが事実。運営会社にアクセスしようとしても、データベースが見つけられない。あるのは公開されている情報だけだ」

 WoFについての調査は、フィアーズやアサシンギルドも既に実行している
。だが、この異変に関するような情報は得られず、機密情報は厳重に守られ隠されている。

 多くの人々に注目され、有名なゲームとなればハッカー達の標的にされることも多くある。実際WoFの運営にも、多くのハッキングが実行されていたに違いない。

 それでもチートやbotが横行しなかったことも、多くの注目を集めた。しかし、逆にそれがハッカー達の目指す目標となってしまっていた。

 難攻不落の絶対防御を突破して、世界に誇る最強のハッカーである称号を打ち立てんと、彼らの技術を発展させる要因となった。

 「だが、重要なのはそこじゃぁない。俺達のようなこの世界の住人じゃない流れ者は、コンピュータ内に入れるってことさ」

 「何・・・!?」

 デューンの話に上がったそれこそ、この世界の住人である先程のハッカー達が彼の存在を認識出来ていた謎の実態だったのだ。

 デューンは彼らのコンピュータ上に入り込むことで自身を電子データ化し、モニター越しに可視化することが可能だという。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

戦闘職をしたくてVRMMOを始めましたが、意図せずユニークテイマーという職業になったので全力でスローライフを目指します

地球
ファンタジー
「え?何この職業?」 初めてVRMMOを始めようとしていた主人公滝沢賢治。 やろうと決めた瞬間、戦闘職を選んでいた矢先に突然出てきた職業は【ユニークテイマー】だった。 そのゲームの名はFree Infinity Online 世界初であるフルダイブ型のVRゲームであり、AIがプレイヤーの様子や行動を把握しイベントなどを考えられるゲームであった。 そこで出会った職業【ユニークテイマー】 この職業で、戦闘ではなくてスローライフを!! しかし、スローライフをすぐにはできるわけもなく…?

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

処理中です...