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イーラ・ノマド
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男達の一人がノートパソコンを開き、アプリを起動し何かのコードを打ち込む。すると画面に、人の顔のようなものが映し出される。
「デューン、元気してたぁ?ちょっと頼まれ事なんだけどぉ?」
「あぁ、お前らん家のカメラから見てたよ」
「じゃぁどんな状況か、もうお分かり?」
「おうよ!アイツを足止めすりゃぁいいんだろ?」
「いいねぇ~イケてる!んじゃ、大丈夫そうだったらこっちから連絡するわ。そっちも片付いたら連絡頂戴なぁ~」
「了解!ちったぁ楽しめんのかなぁ~?」
それだけ言い残すと、ディスプレイから姿を消した“デューン“と呼ばれる男。その後、男達はノートパソコンを閉じて大通りに出ると、堂々と無人タクシーを拾い何処かへと走り去って行った。
その頃、男達の部屋の中で周辺機器へコードを繋ぎ、ウイルスを流し込んで情報を引き抜こうとしていたイヅツだったが、どうやらNAというハッカー集団に関するデータや足跡になりそうなものは、全て抜き出された後だった。
「クソッ・・・!何処にもデータが見当たらない・・・。持ち出されちまったか?なら、直接奴らを追うまでだ」
イヅツはスマートフォンを取り出すと、忍び寄った際に男達に仕掛けたGPSを起動し、どこへ行ったかを確認する。画面に表示されていたのは、狭い路地裏にて点滅する二つの反応。
だが、奇妙なことにそれらの反応は移動せずにそこに止まっていたのだ。
「あぁ?動いてねぇ・・・」
明らかに不自然な反応に、罠である可能性や気づかれてしまったのかと考えている内に、今度はイヅツの背後に忍び寄る影が近づいていた。
「アイツらなら、もう行っちまったよ。今時、そんなしょっぺぇ玩具で追跡なんか出来るかよ」
何処からともなく聞こえてくる男の声。部屋中を見渡してもその姿はないが、確かに何者かが室内に入り込んでいる。
「誰だ、コソコソしてないで姿を表したらどうだ?」
イヅツの問いに大きな声で笑い出す男。すると何故か、言われた通り素直に姿を表す。そしてその男の周りには、室内にも関わらず砂塵のような風が舞い上がる。
「誰だって聞かれて答える馬鹿がいるかよ。けど俺、そういうド直球なの好きだから応えちゃうぜ?」
何処から入り込んだのか、砂が集まり大人一人分がすっぽりと入るくらいの塊を作ると、その中から一人の男が現れた。その所業や姿から、明らかに現実世界の人間ではないことが分かる。
問題はそれが、WoFのユーザーであるのか、はたまた別の者であるのかだ。
「俺の名は“デューン“。訳あってアイツらに協力してる者さ」
「お前、この世界の人間か?」
「この世界?・・・あぁ、違う違う。俺ぁ流れモンでねぇ。この世界の連中には、“イーラ・ノマド“って呼ばれてる」
デューンと名乗る男の言葉に、イヅツは聞き覚えがない単語があった。一応この世界の人間ではあるが、“イーラ・ノマド“などという言葉は聞いたことがなかった。
「イーラ・ノマド・・・?」
「よくわかんねぇが、どうやら流れ者って意味で使われてるらしい。別に時代を流れてる訳じゃぁねぇんだけどな。気付いたら見知らぬ世界にいたって訳ぇ~」
イヅツは直感で分かった。このデューンという男は、スペクターやランゲージらと同じく、異世界からやって来た者なのだと。ただ違うのは、組織に属しているか否かだけ。
「何故ハッカー集団に与している?」
「何故ってそりゃぁ、利用価値があるからだろ。それにアイツら、俺の力を見せたらすげぇ喜んでてよぉ!この世界のことを色々と教えてくれたぜ」
この世界のことを何もしらない自分に、様々なことを教えてくれた恩を返すという意味で与しているのか。しかし、利用価値という言葉から恩などを感じるようなタイプではないように思える。
「お前は自分の世界に戻りたいとは思わないのか?」
「あぁ?別に思わねぇよ。俺のいた世界は、クソどうでもいい肥溜めみてぇな世界だったからな。俺にしちゃぁこっちの世界の方が、ずっと居心地がいいぜぇ?」
同じだ。やはりどの世界にも、自分の存在する世界を窮屈に思う人間というものはいるのだ。異世界の者達からすれば、シンやミア、ツクヨのように現実世界で酷い目に遭ってきたこの世界でも、快適に思えるのだろう。
それはこの世界の縮図や、この世界に無い力を引き継いできているからこそ思えることなのかもしれない。
例えるなら、モンスターと戦えるような力もなく異世界へ放り込まれ、何も分からないところでその身一つで暮らしていけるだろうか。
戦闘センスやステータスなど、それはゲームから与えられている力に過ぎない。実際は剣を振るう才能や弓を引く才能など、スポーツと同じように持って生まれたものと、個々の努力で成長できる器には限りがある。
それこそモンスターを倒して生計を成り立たせようとするということは、戦争に行って人を殺して稼ぐのとそう変わらないのかもしれない。
生身の状態でいつ死んでもおかしくない世界に放り込まれて、そんな世界で希望や興奮に胸躍らせる人間が一体どれだけいるのだろうか。
側から見れば、それは異端者であるに違いない。イヅツの前にいる男は、そういった類の人間であるのだ。
「最後に聞くが、俺はさっきの奴らが所属するハッカー集団について知りたい。誰かを殺そうだとか、組織を破壊しようなどとは思わない。ただ知りたいだけだ。・・・お前はそれを邪魔しに来たのか?」
「そういうことになるなぁ。俺はアイツらにアンタを食い止めるよう言われてる。難しい事は抜きにして、簡潔に言ってやるぜ。俺はお前と戦いに来た“敵“だ。和解や交渉に応じる気はねぇ。それは俺の雇い主次第だからよぉ!」
そう言ってデューンは、素早い踏み込みと共にイヅツへと殴りかかって来た。
「デューン、元気してたぁ?ちょっと頼まれ事なんだけどぉ?」
「あぁ、お前らん家のカメラから見てたよ」
「じゃぁどんな状況か、もうお分かり?」
「おうよ!アイツを足止めすりゃぁいいんだろ?」
「いいねぇ~イケてる!んじゃ、大丈夫そうだったらこっちから連絡するわ。そっちも片付いたら連絡頂戴なぁ~」
「了解!ちったぁ楽しめんのかなぁ~?」
それだけ言い残すと、ディスプレイから姿を消した“デューン“と呼ばれる男。その後、男達はノートパソコンを閉じて大通りに出ると、堂々と無人タクシーを拾い何処かへと走り去って行った。
その頃、男達の部屋の中で周辺機器へコードを繋ぎ、ウイルスを流し込んで情報を引き抜こうとしていたイヅツだったが、どうやらNAというハッカー集団に関するデータや足跡になりそうなものは、全て抜き出された後だった。
「クソッ・・・!何処にもデータが見当たらない・・・。持ち出されちまったか?なら、直接奴らを追うまでだ」
イヅツはスマートフォンを取り出すと、忍び寄った際に男達に仕掛けたGPSを起動し、どこへ行ったかを確認する。画面に表示されていたのは、狭い路地裏にて点滅する二つの反応。
だが、奇妙なことにそれらの反応は移動せずにそこに止まっていたのだ。
「あぁ?動いてねぇ・・・」
明らかに不自然な反応に、罠である可能性や気づかれてしまったのかと考えている内に、今度はイヅツの背後に忍び寄る影が近づいていた。
「アイツらなら、もう行っちまったよ。今時、そんなしょっぺぇ玩具で追跡なんか出来るかよ」
何処からともなく聞こえてくる男の声。部屋中を見渡してもその姿はないが、確かに何者かが室内に入り込んでいる。
「誰だ、コソコソしてないで姿を表したらどうだ?」
イヅツの問いに大きな声で笑い出す男。すると何故か、言われた通り素直に姿を表す。そしてその男の周りには、室内にも関わらず砂塵のような風が舞い上がる。
「誰だって聞かれて答える馬鹿がいるかよ。けど俺、そういうド直球なの好きだから応えちゃうぜ?」
何処から入り込んだのか、砂が集まり大人一人分がすっぽりと入るくらいの塊を作ると、その中から一人の男が現れた。その所業や姿から、明らかに現実世界の人間ではないことが分かる。
問題はそれが、WoFのユーザーであるのか、はたまた別の者であるのかだ。
「俺の名は“デューン“。訳あってアイツらに協力してる者さ」
「お前、この世界の人間か?」
「この世界?・・・あぁ、違う違う。俺ぁ流れモンでねぇ。この世界の連中には、“イーラ・ノマド“って呼ばれてる」
デューンと名乗る男の言葉に、イヅツは聞き覚えがない単語があった。一応この世界の人間ではあるが、“イーラ・ノマド“などという言葉は聞いたことがなかった。
「イーラ・ノマド・・・?」
「よくわかんねぇが、どうやら流れ者って意味で使われてるらしい。別に時代を流れてる訳じゃぁねぇんだけどな。気付いたら見知らぬ世界にいたって訳ぇ~」
イヅツは直感で分かった。このデューンという男は、スペクターやランゲージらと同じく、異世界からやって来た者なのだと。ただ違うのは、組織に属しているか否かだけ。
「何故ハッカー集団に与している?」
「何故ってそりゃぁ、利用価値があるからだろ。それにアイツら、俺の力を見せたらすげぇ喜んでてよぉ!この世界のことを色々と教えてくれたぜ」
この世界のことを何もしらない自分に、様々なことを教えてくれた恩を返すという意味で与しているのか。しかし、利用価値という言葉から恩などを感じるようなタイプではないように思える。
「お前は自分の世界に戻りたいとは思わないのか?」
「あぁ?別に思わねぇよ。俺のいた世界は、クソどうでもいい肥溜めみてぇな世界だったからな。俺にしちゃぁこっちの世界の方が、ずっと居心地がいいぜぇ?」
同じだ。やはりどの世界にも、自分の存在する世界を窮屈に思う人間というものはいるのだ。異世界の者達からすれば、シンやミア、ツクヨのように現実世界で酷い目に遭ってきたこの世界でも、快適に思えるのだろう。
それはこの世界の縮図や、この世界に無い力を引き継いできているからこそ思えることなのかもしれない。
例えるなら、モンスターと戦えるような力もなく異世界へ放り込まれ、何も分からないところでその身一つで暮らしていけるだろうか。
戦闘センスやステータスなど、それはゲームから与えられている力に過ぎない。実際は剣を振るう才能や弓を引く才能など、スポーツと同じように持って生まれたものと、個々の努力で成長できる器には限りがある。
それこそモンスターを倒して生計を成り立たせようとするということは、戦争に行って人を殺して稼ぐのとそう変わらないのかもしれない。
生身の状態でいつ死んでもおかしくない世界に放り込まれて、そんな世界で希望や興奮に胸躍らせる人間が一体どれだけいるのだろうか。
側から見れば、それは異端者であるに違いない。イヅツの前にいる男は、そういった類の人間であるのだ。
「最後に聞くが、俺はさっきの奴らが所属するハッカー集団について知りたい。誰かを殺そうだとか、組織を破壊しようなどとは思わない。ただ知りたいだけだ。・・・お前はそれを邪魔しに来たのか?」
「そういうことになるなぁ。俺はアイツらにアンタを食い止めるよう言われてる。難しい事は抜きにして、簡潔に言ってやるぜ。俺はお前と戦いに来た“敵“だ。和解や交渉に応じる気はねぇ。それは俺の雇い主次第だからよぉ!」
そう言ってデューンは、素早い踏み込みと共にイヅツへと殴りかかって来た。
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